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Fall Processor Forum、24日開幕
~メインテーマは「マルチコア」

カンファレンス会期:10月25日~26日(現地時間)

会場:米カリフォルニア州サンノゼ DoubleTree Hotel



 毎年秋に米国シリコンバレーで開催されるプロセッサ技術の講演会「Fall Processor Forum(FPF)」が24日(現地時間、以下同)に開幕する。

 FPFは、マイクロプロセッサ技術の専門誌「Microprocessor Report」を発行しているIn-Statが開催するイベントの1つで、毎年、春に「Spring Processor Forum(SPF)」、秋に「Fall Processor Forum(FPF)」の名称でプロセッサ技術の講演会を主催している。

 開催期間は4日間で、初日と最終日がセミナー、セミナーに挟まれた2日間がカンファレンスというスケジュールが組まれていることが多い。今年も例年通り、10月24日と27日にセミナー、10月25~26日にカンファレンスが開催される。

 開幕の前に、FPFの主軸であるカンファレンスの内容を概観しておこう。

●カンファレンス初日:Xbox 360用PowerPCチップが登場

 10月25日のカンファレンスは、EDA(電子回路の自動設計)ツールの大手ベンダーである米Cadence Design SystemsのCEO、Mike Fister氏によるキーノート講演で始まる。タイトルは 「The Customers' Paradox: The Next Big Challenge in IC and Systems Design」。最先端の半導体設計技術が抱える課題と展望を述べる。

 続く一般講演は、マルチコアプロセッサに関するセッションである。昼食までに、5件の講演が予定されている。まず、米BroadcomがMIPS32ベースのマルチスレッドコア「BMIPS4350」を発表する。富士通はSPARC64アーキテクチャでデュアルコア構成の「SPARC64 VI」プロセッサと4コア構成の「SPARC64 VI+」プロセッサについて述べる。

 それから米IBM Microelectronicsによるマルチコアプロセッサの講演が2件続く。1件目はPowerPCアーキテクチャの高性能プロセッサ「PowerPC970MP」である。PowerPC970MPは、PowerPC970のデュアルコア版。シングルコアのPowerPC970チップに続き、PowerMac G5に搭載された。

 IBMによる講演の2件目は、同社が米Microsoft「Xbox 360」用に開発したPowerPCプロセッサに関するものだ。3つのPowerPCコアを内蔵した対称型マルチコアプロセッサであり、各コアが2つのスレッドを同時に処理する。動作周波数は3.2GHz。

 午前の最後は、米P.A.Semiが締めくくる。同社は、マイクロプロセッサのアーキテクトとして著名なDan Dobberpuhl氏が率いるベンチャー企業である。Dobberpuhl氏は米DEC(Digital Equipment Corp.)でAlphaプロセッサやStrongARMプロセッサなどの開発に携わってきた。米P.A.Semiはマルチコアのプロセッサを開発中とされているが、その内容は明らかになっていない。今回のFPFは、P.A.Semiが開発成果を正式に公表する最初の機会となる。

 昼食後は、特別講演が組まれている。米Azul SystemsのCTOであるScott Sellers氏が、将来のマイクロプロセッサ設計におけるマルチコアの必然性について述べる。同社が開発中のサーバー向けプロセッサも紹介する予定である。

 それから一般講演が再開される。前半はシステムLSI向けのIPコアに関するセッションである。2件の講演が予定されている。

 最初に英ARMが、同社としては初めてスーパースカラー構造を採用したプロセッサコア「Cortex-A8」(開発コード名「Tiger」)の技術内容を紹介する。 ARMは10月上旬に開いた開発者会議で「Cortex-A8」の概要を発表していた。「Cortex-A8」は65nmプロセスで製造したときに600MHzで動く。MHz当たりの性能は2.0DMIPSである。マイクロアーキテクチャはARMv7に基づいており、命令体系ではThumb-2を搭載している。またDSP拡張機能としてNEONを実装した。FPFでは「Cortex-A8」のさらに詳しい内容が公表されると期待されている。

 2件目はスイスのInnovative Siliconによる埋め込みDRAMコア「Z-RAM」の講演である。

 休憩をはさみ、午後の後半はマルチプロセッサ対応コアのセッションとなる。まず、米ARC Internationalが、同社のプロセッサコアARCompactのオーディオ/ビデオ用機能拡張について述べる。そして米Tensilicaが、ビデオ用途に最適化したデュアルコア版の「Xtensa LX」プロセッサコアを紹介する。最後に独Videantisが、携帯機器でビデオを動かすためのVLIWプロセッサコア技術を発表する。

●カンファレンス2日目:マルチコアのソフト開発を議論

 10月26日もマルチコアに関する講演が続出する。まず最初に、米MicrosoftのHerb Sutter氏が「Software and the Concurrency Revolution」のタイトルで基調講演を行なう。マルチコアを動かすソフトウエア開発の難しさを議論し、開発ツールやプログラミングツールなどに対する新たな要求仕様を述べる。

 続いてマルチコアプロセッサのセッションが始まる。組み込みソフトウエア開発ツールの大手ベンダーである米Green Hills Software社が、マルチコアシステムにおけるソフトウエア開発の課題を挙げる。特にデバッグについてふれ、従来のトレースポートに代えて広帯域のデバッグポートを使う手法を紹介する。

 AMDは、x86互換64bitプロセッサ用仮想マシン技術「Pacifica」について講演する。「Pacifica」を搭載したプロセッサシステムでは、複数の異なるOS上でアプリケーションソフトウエアを独立に動かせるようになる。本講演では「Pacifica」を組み込んだマルチコアのサーバー用プロセッサを紹介する。

 また米XenSourceが、マルチコアプロセッサ用の仮想マシン技術を公表する。同社の仮想マシン技術はAMDと共同で、AMD64プラットフォームに移植される予定になっている。

 米Freescale Semiconductorは、同社のデュアルコアPowerPCプロセッサ「MPC8641D」を例に、非対称マルチプロセッシング(AMP)と対称マルチプロセッシング(SMP)のトレードオフを議論する。このほかIBMによる、「Cell」プロセッサ向けソフトウエア開発環境の講演がある。

 昼食をはさんで午後の前半は、高性能DSPのセッションになる。米StarCoreが、同社の最新DSPアーキテクチャ「StarCore V5」の内容を紹介するほか、米Texas Instruments(TI)がオーディオ用DSP「TMS320C672X」を発表する。

 午後の後半であり、一般講演の最後のセッションは、オンチップバスをテーマに据えた。複数のプロセッサコアを内蔵したシステムLSIでは、高性能なオンチップバスが欠かせない。シングルコアのシステムLSIと違い、プロセッサ間でバスアクセスが競合する可能性ある。特に対称マルチプロセッシングでは、オンチップバスの性能がシステムLSI全体の処理性能を左右することになりがちだ。

 このセッションでは2件の講演が予定されている。最初に、非同期回路と同期回路を組み合わせたオンチップバス技術「GALS」を米Fulcrum Microsystems社が発表する。複数のプロセッサコアと周辺回路コアを非同期回路で結ぶ。両者の速度差による性能劣化が、同期回路のバスに比べると少なくなる。そして米Sonicsが、数多くのプロセッサコアと周辺回路コアを内蔵するシステムLSIに向けた、論理合成可能なオンチップバスの詳細を講演する。

 これらの講演の内容をすべて紹介することは難しいが、PCユーザーにとっても興味深い内容は多い。順次レポートを予定しているのでご期待いただきたい。

□Fall Processor Forumのホームページ(英文)
http://www.instat.com/fpf/05/index.htm
□関連記事
【5月31日】Spring Processor Forum 2005レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/link/spf.htm
【5月25日】AMD、仮想化技術「Pacifica」の仕様を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0525/amd.htm
【2月15日】米AMDと米XenSourceと、オープンソース仮想化パッケージをAMD64環境へ移植(エンタープライズ)
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/foreign/2005/02/17/4645.html

(2005年10月24日)

[Reported by 福田昭]

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