笠原一輝のユビキタス情報局

デジタルホームとWMA 9 Professional 5.1chの良い関係



デジタルホームヨシモトドットコム

 Intelが吉本興業の子会社であるベルロックメディアに出資し、デジタルホーム向けのコンテンツ配信を行なうことは、6月に発表された。Intelと吉本興業、一見するとシリコンベンダというお堅い会社と“こてこて”のお笑いの会社という2つの会社の協業は奇異に見えるが、デジタルホームを実現したいIntelと、そこにコンテンツを配信したい吉本興業、という観点で見ると利害関係は一致している。

 さて、そのベルロックメディアは8月の終わり頃から、新しいコンテンツの配信を行なっている。それが、お笑いグループ“ガレッジセール”による新しいショートムービーだ。内容の方はビデオを見ていただくとして、技術的にはこのショートムービー、ちょっと要注目なのだ。というのも、解像度が1,280×768ドット、ビットレートが6Mbpsと高解像度・高ビットレートになっているほか、オーディオがWMA(Windows Media Audio)の5.1chになっているのだ。

 MicrosoftのWMAには、5.1chの再生が可能な、WMA 9 Professionalと呼ばれる仕様が用意されている。このWMA 9 Professionalによる5.1chオーディオ、実はいろいろおもしろい使い方が可能なのだ。


●WMP 9以降でサポートされるWMA 9 Professional

 WMAと言えば、読者にとっては、Windows Media Playerで標準でサポートされている圧縮形式であり、音楽配信などにも利用されるフォーマット、という印象ではないだろうか。しかし、WMAにはいくつかの拡張仕様がある。有名なのはロスレス形式と呼ばれる可逆圧縮の方式で、そのほかにも可変ビットレート(VBR)形式などもある。

 今回取り上げているWMA ProfessionalもWMAの拡張形式で、現在のWindows Media Palyer 10ではWMA 9 Professionalがサポートされている。WMA Professional 9の特徴は、マルチチャンネルをサポートしていることだ。具体的には、DVDなどで採用されているAC3(Dollby Digital)などと同じように、5.1ch(フロント左右、センター、サブウーハー、サラウンド左右)構成をサポートしている。

 冒頭で紹介した、ベルロックメディアのHDコンテンツも、このWMA 9 Professionalによる5.1chオーディオ形式でオーディオを格納している。お笑いに5.1chの音声が必要か、という議論はとりあえず置いておくとして、HDDに格納したファイルから5.1ch音声が再生できるというのは、ユーザーにとっても新鮮ではないだろうか。

●ほとんどのAVアンプでは対応していないWMA 9 Professional

 ただし、WMA Professionalによる5.1chオーディオを楽しみたい場合には、オーディオのデコーダが必要になる。PCのラインアウトに6つのスピーカーをつなげているユーザーの場合は、Windows Media Player 10をインストールすればデコーダがPCに導入されるので、そのまま再生できる。

 現在は2つのスピーカーしかつないでいない、というユーザーであれば、残り4つのスピーカーを追加するだけでよい。ただし、PCやマザーボードによっては、5.1chのアナログ出力には対応していないという場合があるので、PCやマザーボードのマニュアルなどを確認したい。

 S/PDIFを経由して外部にAVアンプを接続し、そこに5.1chのスピーカーを接続しているという場合には、注意が必要だ。この場合、PCにインストールされたデコーダは利用されず、オーディオのデコードはAVアンプ側で行なわれる。そこで、問題になるのが、AVアンプのデコーダがWMA Professional 9に対応しているかどうかだ。

 残念ながらほとんどのAVアンプはWMA Professional 9には対応していないので、そのままでは再生できない。現時点でWMA Professional 9に対応しているAVアンプはパイオニアの一部製品(VSX-915、VSX-515など一部モデル)程度で、ヤマハやオンキョー、デノン、ソニーといった他のメジャーベンダのAVアンプは対応していない。これらのAVアンプを利用している場合には、PC側でS/PDIFに出力する前にWMA Professional 9をAC3などにリアルタイムで変換して出力すればよい。

 メーカー製PCの場合、Dollby Digital Liveと呼ばれる追加ソフトウェアがプリインストールされている場合がある。Dollby Digital Liveは、Intel 915以降でサポートされているHDオーディオのコーデックと組み合わせて利用できるソフトウェアで、前述のWMA Professional 9などをAC3にリアルタイム変換して出力することが可能になるものだ(ソニーのVAIO type Rなど一部製品にプリインストールされている)。

●WMA 9 Professional対応コンテンツは増えていくのか?

 なお、NTT東日本が運営しているフレッツスクエア(フレッツに加入しているユーザーのみが視聴できる)でも、WMA 9 Professionalによる5.1ch音声を格納したWMVファイルがストリーミング形式で提供されている。

 すでに、日本では光ファイバーによるブロードバンドサービスがかなりの勢いで普及しつつある。今後、こうしたブロードバンド配信のサービスが増えていくときに、WMA 9 Professionalによる5.1ch音声を格納したコンテンツが増えていく可能性は当然あるだろう。

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(2005年9月26日)

[Reported by 笠原一輝]


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