大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ソーテック、山田健介新社長インタビュー
「これからのソーテックについて、すべてを話そう」




ソーテック 山田健介社長
 ソーテックの新社長に、元シャープ常務取締役の山田健介氏が就任して、約2カ月半が経過した。創業者である大邊創一会長、および同社の筆頭株主でありベンチャーキャピタリストのアクティブ・インベストメント・パートナーズ出身の平沢潔社長がともに退任。経営体制を一新した形でのスタートとなった。

 果たして、ソーテックは、どんな企業へと生まれ変わろうとしているのだろうか。そして、新社長が取り組む課題も山積している。山田社長に、今後のソーテックについて聞いた。



●社内に赤字に対する危機感がない!

−−新社長として、社員にはどんなことを言っていますか。

山田 それは単純明快です。ひとことでいえば、「会社を黒字にする」ということです。

−−確かに明確ですね。早くも第1四半期(4〜6月)は、黒字化していますが。

山田 第1四半期の黒字なんて、まぐれですよ。通期で黒字化するかどうかは微妙なところです。ですから、社員には、まず黒字化することが大切であることを徹底した。赤字では、会社が存続しないのは誰もが知っている。だが、それに対する危機感がない。半期に20億円もの赤字を出しているのに、その危機感がないというのはどういうことなのか。しかも、当社はPC専業メーカーである。PC以外に頼るところがない。それなのにPC事業をしっかりやっていくという気持ちも薄かった。まずは、ここから変えていかなくてはならない。

−−赤字の原因はどこにあると。

山田 過去の経営に問題があったといえます。ソーテックは、時代の変化を的確に読めなかった。また、リストラをやるべき時にやってこなかった。ソーテックは、創業以来、大邊前会長がリーダーシップを取る、いわば大邊カンパニーだった。大邊前会長の物づくりには、天性のものがある。だが、IPOをしても、個人カンパニーの体質が変わらなかったのが大きな要因です。また、公開企業であるという観点で見て、あまりにも経営がずさんだった。赤字の原因の7〜8割はそこにあると思っています。

−−アクティブ・インベストメント・パートナーズが経営に参画してから、経営体質はずいぶん改善されたのではないですか。

山田 確かに、それは変わった。だが、まだまだ変えなくてはならないところが多い。私は、昨年9月からソーテックの経営に参画していましたが、経営会議でも、経営に関する数字は出てくるようになっていた。「大邊カンパニー」という個人経営体質からの脱皮という点でもたくさんのメスが入っていた。だが、経営陣が、経営会議に出てきた数字を理解し、突き詰めていくことができない。なぜ、そうなっているのか、それをどうすれば改善できるのか。次の一手はどう打つか。そういったものが導き出せなかった。ソーテックに入っての最初の印象は、正直にいえば、「めちゃくちゃな会社に入ってしまったなぁ」ということでしたよ(笑)。

−−山田社長は、ソーテック入りした段階から社長就任含みだったのですか。

山田 いいえ、違います。シャープでは、ずっと事業責任者や部門トップなどの仕事をやってきましたから、ナンバー2の仕事をやりたかった(笑)。ナンバー2は、比較的、やりたいことができて、それに対して、最終責任を取らなくていいですから。憧れていましたよ(笑)。

−−そもそも、なぜソーテックに入ったのですか。

山田 シャープ時代には、情報システム事業部長としてパソコン事業を担当し、メビウスを市場に送りだした経験がありますが、パソコン事業にこだわっていたわけではなかった。

 実は、シャープを定年で退職してから、大学の教壇に立つことになっていた。実際に、退職後に、何度か教壇に立って見たのですが、わかったのは、この仕事はどうも自分には向いていないな、ということでしたよ。これまで長年に渡り、切った張ったの世界でやってきたわけですから、どうもそういう世界にいないと満足しない(笑)。スローライフはまだまだだと。

 そんな時に、平沢前社長から、ソーテック入りのお話しをいただいた。他にも話はあったが、一番状況が悪いのがソーテックだった。赤字のソーテックをなんとかすることに挑みたい。そこに自分の経験が生きるのではないか、そう考えたのです。いま考えると、お受けしない方がよかったかなぁ、なんて冗談を言っているんですよ。ここまでひどいとは思わなかったですから(笑)。

−−何年間、社長をやるつもりですか。

山田 PC専業メーカーとして、しっかりとした体質ができあがるまではやりたいですね。売上高でいえば、500億円から600億円といった規模にまで拡大したい。

−−売り上げ規模でいえば、現在の倍以上ですね。3年程度では届きそうにないと思いますが。

山田 いや、早ければ3年で行けるかもしれない。だけど、もしかしたら、5年以上かかるかもしれない。まぁ、売り上げ規模も大切だが、やはりしっかりとした体質を作り上げることを優先したい。

−−しっかりした体質とは、具体的になんのことを指しますか。

山田 企業にはにじみ出てくる文化というものがある。それが積み重なって、1つの言葉が生まれる。企業のキャッチフレーズのようなものです。しかし、ソーテックにはまだない。ファブレスメーカーであるため生産や技術で強いわけではない。マーケティングや販売でも中途半端な力しかない。サポートも課題は多い。これぞ、ソーテックというものがない。

 もちろん、私が、「これからのソーテックはこうなんだ」と、なにかしらの言葉を掲げることはできる。だが、こういうものは理屈で言って浸透するものではない。むしろ、企業のなかからにじみ出てこなくては意味がない。そうしたソーテックの文化というものを在任中に作り上げたいと思っています。また、それとは別の意味で、私が退いた後、少なくとも3〜4年間に渡って利益を出せる体質であってほしいと思います。

●ソーテックには思いつきが多すぎた!

−−山田新社長体制になって、いくつかの疑問があります。1つは、大邊カンパニーからの脱皮が、マイナスにならないかという点です。もともと大邊前会長の求心力、あるいは製品企画、アイデア力によってソーテックはユニークな製品を市場に投入してきた。それがなくなってしまうことは、これまでのソーテックとは明らかに異なる製品企画が始まることを意味しますが。

山田 すでに昨年末から個人カンパニーのソーテックからの脱皮に向けた取り組みが始まっています。確かに、指摘されるように、おぉっ、と思う製品が過去のソーテックにはあった。しかし、世間を驚かせても、それがビジネスとして継続的に出来ているかというと疑問です。一過性のブームで終わり、経営へのプラスインパクトが少ない。むしろ、こういう体質から脱皮しなければならない。

 私がいたシャープでも、メビウスで狙った製品領域に対して、継続的に、徹底して取り組んでいけば、新たな活路があったかもしれない。それを追求し続けたのが松下電器のLet's noteですよね。継続してビジネスを行なうこと前提とした事業計画を立案し、それを実行するということは大切なことです。これまでのソーテックにはあまりにも思いつきが多すぎた。

 DELLとソーテックの創業は、同じ'84年です。どちらも同じPC専業メーカーとしてスタートしたのにも関わらず、21年を経過して、なんでここまで差がついてしまったのか。ソーテックは、一過性のものに一喜一憂しすぎた。それに対して、DELLは、徹底してDELLモデルというビジネスモデルの構築に取り組み、事業基盤を確立するという地道な取り組みに力を注いできたのです。ここに差がある。継続するという視点を持ち、しっかりとしたビジネス基盤を構築するということに取り組んでいきたい。

−−2つめは、PCの基本路線をどこに置くかという点です。例えば、低価格路線でいくのか、それとも高付加価値路線にシフトするのか。ここ数年フラついていた感がありますが。

山田 ソーテックには安いというイメージがある。そのイメージがあるのならば、それを生かしたい。ただ、「安くて悪い」ということでは困る。「安くて、いい」という形に変えていかなくては。高付加価値路線では、いまのソーテックは勝てない。

 実際、昨年4月以降、一時的に高機能を追求した高付加価値モデルに主軸をシフトする方針を打ち出したが、結果は失敗した。逆に、量販店では、eMachinesにその領域を取られてしまうというマイナスまで生んでしまった。ソーテックは、店頭からなにを望まれているのかをしっかりと捉えなくてはならない。もし、それが「安い」ということなのであれば、それをやめてしまってはいけない。

 先日、無料パソコンを開始しましたが、これが高い評価を得た。次はソーテックから5,000円払って売ってみたらどうか、と私は言っているんですよ。こっちが払うのですから「売る」という表現が正しいとは言えないかもしれませんが(笑)、これならば売れる。やるならば、徹底してやらなくてはいけない。

−−最後に、品質の問題です。これまでにもユーザーは品質で痛い目にあってきた。この改善には、どう取り組んでいきますか。

山田 品質には、大きく2つの意味があります。1つは、製品品質。これは、開発、設計を行ない、工場で生産して、顧客の手元に渡るまでの品質です。ここは、他社と差がないところまできていると判断している。台湾のベンダーに生産を委託しているが、ソーテックからも人を送り込んで改善を加えた。不良率は格段に減少しており、心配するレベルにはないと思っています。

 だが、もう1つの品質が悪い。それは、市場品質と呼ばれる、市場に製品が出た後の品質です。ひとことでいえば、顧客のもとで発生した不良や問題を、いかにすばやく解決するか、ということができていない。

 私も、コールセンターに行って対応の様子を見てみたが、あまりにもひどい。これでは評価が落ちるのも当然です。問題から逃げようとしているし、すぐに対応しようという意識が見られない。「それは知りません」とか、「そんなことは初めてです」なんて言葉を平気で使う。責任者をすぐに呼び出して、改善するように伝えたが、これが改善できなければ、すぐに人を変えるつもりだ。私自身も何度もコールセンターに足を運んで、現場に入っていって、状況を把握することを怠らないつもりです。

−−社内ではコワモテで通っていそうですね。

山田 そうでしょうね。怖い存在だと思いますよ。でも、いまはそういう人が必要なんです。

●嘘をつくな! 逃げるな!

−−冒頭の質問で、黒字化を最大の課題としましたが、黒字化に向けての具体的な施策はなんですか。

山田 DELLモデルを1つのお手本としたい。DELLは、BTOやCTOといった、顧客の要求にあわせてPCを組み上げる手法が高い評価を得ている。当社でも同様のサービスを行なっているものの、これまでは実際の組み立てに関しては他社に委託していた。これを内部に取り込む。

 また、現在は、BTO対応が売上高構成比では10〜12%程度に留まっているが、これを一気に引き上げたい。できれば50%程度はこうした出荷形態にしたい。しかも、法人からの注文に対しても1台から対応できるように、小回りを利かせたい。これが収益構造の改革に大きく寄与すると予想しています。

−−利益を生むには、さらにリストラが必要でしょうか。

シンボル的存在だった横浜のランドマークタワーを出て、東京に営業拠点を移す(右)
山田 リストラはまだやっていく必要がある。本社も横浜市金沢区のサービスセンターがある場所へと移転。営業本部や商品本部機能の一部や管理本部は、東日本橋に東京事務所を新たに開設して移転する。ランドマークタワーは、家賃が高すぎるし、ここでは人が集まらない。そして、得られる情報量が違う。これだけネットが発達して、場所は関係ないとは言われるが、やはり都心にいないと入ってくる情報も入ってこない。

 それと気になっているのは、社員の給料が安いということです。会社に残ってがんばってくれている人たちに報いることができる給与体系にしていきたい。新給与体系は、来年4月から実施する予定です。

 また、韓国の法人では、金銭を巡るトップの不正があったが、これは提訴しており事実を追及していく。中国の合弁についても清算にかかっている。

 一方、本社部門では、私と一緒にシャープで仕事をしていた管理のプロフェッショナルが、手伝ってくれているので、これから経営管理を強化していく。つまり、ソーテックのなかに、シャープの管理手法が取り入れられることになるでしょう。定年で辞めた優秀な人が、比較的安い給料で手伝ってくれる。いまは、こうした人たちのノウハウを利用して、きちっとした会社にしていくことが必要です。そののちに、若い人にバトンを渡していく。こういうシナリオを描いています。

−−縮小均衡の利益確保になりますか。

山田 いや、縮小均衡では復活はしない。これは私の信念です。一時的な利益は出るが、将来に渡って利益を確保するには、拡大路線をとらなくてはならない。もちろん、赤字を脱却するために、ある程度のリストラは必要です。どこまでリストラをするか、そして、どこまで耐えられるか。これは綱渡りみたいなものですが、リストラを我慢するのではなく、リストラをすることを我慢する場面もあるでしょう。とにかくギリギリのところでやっていく。ここしばらくが正念場です。

−−PC以外の領域に進出し、そこから収益を確保するという手段は考えていますか。

山田 それはないですね。ただ、パソコン用周辺機器は本気でやっていこうと考えています。いまも外付けHDDや、OCRなどの製品を持っている。周辺機器の売り上げ構成比はまだ1桁台ですが、将来的には、全社売り上げの3分の1程度にまで広げたい。しかし、本業はPCだということはブレないように徹底しますよ。

−−山田カラーは、どんな形で表れますか。

山田 原則は3つ。嘘をつくな、逃げるな、数字と情報に強くなれ。この3つの原理原則を社内に浸透させる。いまのソーテックに足りないのは、この部分だと思いますよ。


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(2005年9月12日)

[Text by 大河原克行]


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