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複雑になったIntelのモバイルCPUロードマップ




●Meromはハイエンドから徐々に浸透

 Intelは、モバイルの次世代マイクロアーキテクチャCPU「Merom(メロン)」を2006年後半に投入する。Intelは、もともとMeromを2006年中盤投入の予定で開発を進めていた。若干後ろへとずれているが、比較的順調に推移しているように見える。

 もっとも、Intelは2006年後半に、Meromの前に、次期CPU「Yonah(ヨナ)」の動作周波数を1グレード引き上げる。Yonahは2.17GHz(x50)で2006年Q1に登場、2006年後半に2.33GHz(x60)へとクロックが上がる。わざわざYonahの高周波数版を投入するのは、Meromの投入時期が比較的後ろで、間があるからかもしれない。デスクトップでは新アーキテクチャの「Conroe(コンロー)」が2006年Q3に登場するが、モバイルの方がプラットフォームの設計に時間がかかるため、ConroeとMeromが同期して開発されていても、市場投入はMeromの方が後ろへずれる可能性はある。

 Meromの動作周波数はまだわからない。しかし、Napaプラットフォームに納めるとなると、当初は周波数は抑えなければならないはずだ。MeromではCPUコアの規模も大型化し、トランジスタ数も増えると推定され、同じTDPの枠内では周波数を上げにくい。もっとも、Meromは、パフォーマンス/サイクルが高いCPUコアだと推定されるため、それでも性能面での問題は生じないとIntelは考えていると推測される。ちなみに、IntelはモバイルCPUにも2006年中にEM64Tが導入されると顧客に伝えているため、MeromでEM64Tがイネーブル(有効)になることは間違いがないだろう。

 Meromは、伝統的なハイエンドCPUと同様に、まず高価格帯から登場する。Intelの最近の新CPUは、ハイエンドだけでなくメインストリームまで一気にファミリ展開するのが普通だが、Meromは今のところトップしか投入されない。これは、Meromが完全に新しいアーキテクチャであるためだ。Intelとしても、検証に時間をかけると同時に、バリューを保ちたいところだろう。また、ダイ(半導体本体)の小さなYonahと比べると、Meromはかなり大型ダイで製造コストも高いと推定される。

 ちなみに、Meromの後には、Meromの45nmプロセスシュリンク版が続いている。Merom+と呼ばれていたこのCPUは、もともと2007年後半の予定だったが、現在のプロセス技術のサイクルを考えると、2008年にずれ込む可能性も高い。また、Meromは、もともとの計画では超低電圧(ULV)版とバリュー版は投入されず、微細化したバージョンからULV版とバリュー版が出てくる計画となっていた。現状では、MeromのLV版も、まだ投入時期が見えていない。

Intel Mobile CPU Roadmap
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●Yonahはトップツーボトムで一斉に登場

 Intelの次期モバイルCPUであるYonahは、Meromがすぐ後ろに迫っていることでやや微妙な位置にある。しかし、実際には2006年から2007年前半にかけてのモバイルCPUの主役はYonahになるだろう。それは、Meromはトップツーボトムで投入されるのではなく、高価格帯から次第に下へ降りてくるウォーターフォールを取るからだ。これは、上から下まで一気に登場するYonahとは大きく異なる点だ。そのため、メインストリームがMeromへと置き換わるには時間が必要だろう。ULV版やバリュー版は、登場しないか、登場するとしても後になることを考えると、Yonahの寿命自体は65nmプロセス全体に渡ると思われる。

 目前に迫ってきたYonahだが、今回も製品構成はかなりややこしい。YonahベースのCPUは全部で6種類もあるからだ。

 Pentium系ブランドになると見られるパフォーマンス系CPUが4種類、Celeron MブランドのバリューCPUが2種類。電圧で区分すると、通常電圧版が3種類で、低電圧(LV)版が1種類、超低電圧(ULV)版が2種類。CPUコアの構成に着目すると、デュアルコア版が2種類で、シングルコア版が4種類。L2キャッシュ量ではパフォーマンス系が2MB、バリュー系が1MB。おそらく1つのダイ(半導体本体)からこれだけのバリエーションを派生させる。

 最も一般的なパフォーマンスCPUの通常電圧版Yonahには、デュアルコア版とシングルコア版がある。両バージョンで共通するスペックは、2MB L2キャッシュと667MHz FSB(フロントサイドバス)。

 Intelは、デュアルコア版Yonahを、1.67GHz、1.83GHz、2GHz、2.17GHzの4スキューのフルラインナップで投入する。Processor Numberは最高の2.17GHzで「x50」、つまり、3桁目が決まっていないが、下2桁は50となる。90nm版Pentium M(Dothan:ドタン)の3桁目は「7」なので、順当なら「8」か「9」になるはずだが、まったく変える可能性もある。TDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)は、Dothan FSB533の27Wから若干上がり31Wとなる。

 通常電圧版Yonahのシングルコア版は動作周波数1.67GHzの1スキューだけ。デュアルコア版Yonahのローエンドの周波数に合わせて設定されている。あくまでもメインはデュアルコアで、シングルコアは“オマケ”的な位置づけだ。ちなみに、Yonahデュアルコアでは仮想化技術「VT(Virtualization Technology:コードネームVanderpool)」がイネーブルにされるが、YonahシングルコアではVTもオフにされたままだ。つまり、シングルコア版はクロックを抑えられ、VTもディセーブルされた、減付加価値版ということになる。

Intel CPUコアの移行予想図
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●オマケ的な位置づけのYonahのシングルコア版

 IntelがYonah世代でもシングルコアを投入する目的のひとつは、コアの片方に欠陥が見つかったダイ(半導体本体)でも製品化するためかもしれない。欠陥もあるコアだけを殺してシングルコアCPUとして出荷するなら、Yonah全体の歩留まりはかなり上がるはずだ。歩留まり向上のためのスキューなら、付加価値は減らして、ローエンドに追いやるというのもわかる戦略だ。

 シングルコア版YonahのProcessor Numberは1.67GHzで756、2006年Q3に登場する1.83GHzで766。つまり、1桁目に「6」がつくのがシングルコアYonahという見分け方となる。3桁目は「7」で、90nm版Pentium M(Dothan:ドタン)を引き継ぐ。TDPも、Dothan FSB 533と同じ27Wだ。

 Intelは通常電圧版のパフォーマンスモバイルCPUは、急速にデュアルコアへと移行させようとしている。2006年前半でDothanからYonahへと世代交代を進め、シングルコアCPUはYonahのローエンドのシングルコア版のみへと収束させる。

 さらに、Intelはバリュー向けのCeleron Mブランドでも、第2四半期にYonahベースのシングルコアCPUを投入する。1MB L2キャッシュ、533MHz FSB。Processor Numberは400番台となる。こちらもデュアルコアYonahと同ダイ(半導体本体)で、ある可能性は高い。

 こうしてみると、IntelはDothanからYonahへとかなりアグレッシブな移行を進めようとしていることがわかる。これは、2つの重要なことを意味している。

 (1) まず、Intelは65nmでの量産にある程度自信を持っていること。65nmプロセスへのアグレッシブな移行を達成するには、それだけの生産量を確保できなくてはならない。もっとも、Yonahは比較的ダイが小さく生産がしやすいという利点がある。

 (2) IntelはモバイルCPUでは、シングルスレッド性能に対する懸念を持っていないこと。Pentium系ブランドでは、Dothan→Yonahの移行は、イコールデュアルコア化となる。Intelは、デスクトップCPUでは、シングルコアCPUの方が周波数が高くシングルスレッド性能が勝るケースが出るため、デスクトップではシングルコアとデュアルコアを併走させるロードマップを敷いている。しかし、モバイルではデュアルコアがシングルコアを置き換える。これは、Yonahの2.17GHzという周波数が、2.26GHz(780)止まりのDothanに迫っているからだ。モバイルでは、デュアルコアとシングルコアのギャップは小さい。さらに、YonahコアはDothanコアより改良されているため、Yonahの方がシングルスレッドでも性能が上がる可能性がある。

●ULV版は周波数は据え置きでFSBだけ向上

 Pentium系のLV版Yonahはデュアルコアで、2MB L2キャッシュ、667MHz FSBと基本的なスペックは通常電圧版と同じ。つまり、通常電圧版の電圧と周波数を下げ、消費電力を抑えたのがLV版だ。LV版YonahのTDPは15Wで、通常電圧版31Wの約半分。動作周波数は最高で1.67GHz。つまり、周波数を70数%にすることで、消費電力を50%に抑えたわけだ。TDPは、現在のDothan LVの10Wから15Wに上がる。

 Intelは通常電圧版とLV版では、Yonah世代でTDPを上げてパフォーマンスを向上させた。それとは対照的にULV版ではTDPをDothanと同レベルに止め、パフォーマンスも一定レベルに抑える道を選んだ。Dothanまでは、LV版とULV版の違いは、単純に動作電圧や周波数だけだったが、Yonahでは違う。LV版はデュアルコアなのに、ULV版はシングルコアとなっている。

 Pentium系のULV版Yonahは、シングルコア、2MB L2キャッシュ、533MHz FSB、動作周波数は1.2GHz。スペックだけを見ると、FSBが400MHzから向上した他は、DothanベースのULV版Pentium Mと変わりがない。TDPも5.5Wと、同レベルが予定されている。プロセスが微細化されても消費電力が下がらないという現状は、ここでも示されている。ちなみに、DothanのULV版は、途中からTDPスペックが変更となり、5Wから5.5WへとTDPが上がっている。歩留まりを上げようとすると、0.5Wを下げることも難しいわけだ。

 Celeron MブランドのULV版も第2四半期に登場する。シングルコアで、1MB L2キャッシュ、533MHz FSBと、スペックは通常電圧版のCeleron Mと同じ。

Intel Mobile CPU比較
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●平均消費電力が若干上昇するYonah

 Yonahは、2コアをスマートに電力制御する。そのため、CPUコア数が2倍になった割にはTDPが31Wと低い。しかし、コアのトランジスタ数が倍増する分、どうしてもDothanよりは増えてしまう。Intelは今年前半に顧客に対して、Yonahの平均消費電力についても予測などを出している。その時点では、Yonahの平均消費電力は1.35W程度で、Dothan 2.13GHz(770)が1.04Wより30%ほど増えていた。平均消費電力は、トランジスタのリーク(漏れ)電流の影響を受けやすいため、どうしてもトランジスタ数が増えると上昇してしまう。

 それでも、システム全体で見ると、現在のSonomaプラットフォームより、YonahベースのNapaプラットフォームの方が平均消費電力は低くなるという。理由は簡単で、チップセットの電力消費が下がるからだ。Yonahと組み合わせられる第2世代PCI Expressチップセットは「Intel 945GM/PM/955XM(Calistoga:カリストガ)」では、平均消費電力が現行の「Intel 915/910(Sonoma)」ファミリより下がる。

 まず、Calistogaのノースブリッジチップの消費電力は機能が向上するにもかかわらず、Sonomaとほぼ変わらない。それに対して、サウスブリッジチップの平均消費電力は、SonomaのICH6-Mが1.5Wなのに対して、NapaのICH7-Mでは0.9〜1.1Wに下がる。つまり、CPUの平均消費電力の上昇分は、サウスブリッジチップの電力を引き下げることで相殺する。トータルのシリコンの平均消費電力は、Napaは3.4〜4.07 Wで、Sonomaの4.2Wよりも低くなるという計算だった。これらの数値は、現在は変更されているかもしれないが、基本的な考え方−CPUの上昇分をチップセットでカバーする−は変わらないだろう。

Intel Mobile CPU TDP Roadmap
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【7月28日】【海外】IntelデスクトップCPUロードマップアップデート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0728/kaigai200.htm

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(2005年8月8日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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