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ソニー、出井=安藤体制で最後の株主総会を開催
~経営体制に関する質問が続出

6月22日 開催



 ソニー株式会社は22日、東京・高輪の新高輪プリンスホテルで第88回定時株主総会を行なった。

 朝からの雨の影響もあって、開会の午前10時に会場に訪れた株主は、2,590人と昨年の総会開会時を下回っていたが、最終的には6,449人の株主が参加。一昨年の6,257人を上回り、過去最高の会場出席数となった。

 インターネットを利用して議決権を行使した株主を含めて108,597人が参加。出席株主が有する議決権個数は5,808,149個となった。

 出井伸之会長、安藤国威社長の最後の株主総会となったこと、ストリンガー氏が率いる新体制への期待などが、株主の関心を呼んだものと見られる。

 総会は約2時間20分に渡って行なわれ、第1号議案から第3号議案までの会社提案の議案はすべて可決。第4号議案として株主から提出された「取締役の報酬の株主への個別開示に関する定款変更」については、前日までの採決で賛成が38.8%に留まり、会場の参加者の賛同も得られずに否決された。同社取締役会では、第4号議案に反対していた。

●ソニーのエレクトロニクス事業の現状と今後

 株主との質疑応答では、過去10年に渡る出井会長体制に関する質問や、低迷するエレクトロニクス事業に関するものが相次いだ。

 先頭を切ったソニーOBとする株主は、「ソニーの社員は元気がなく、自信を持たなくなった。経営陣に問題があるのではないか」と指摘。中鉢新社長に対しても、「雲の上の人になってしまったという声を聞いた」などとした。これに対して、中鉢氏は、「私自身も、経営と現場の距離やギャップを、現場の立場から感じたことがある。対話によってこれを詰める。ソニー復活の鍵は、社員との信頼関係にある」とした。また、ストリンガー氏は、「私はソニーの戦士であり、ソニーらしいと言われる名声をソニーのエレクトロニクス事業に取り戻すことに責任を持つ。ソニーであるべき地位を、ソニーが確保することに取り組む」とした。

 また、「TR(トランスフォーメーション)60で掲げた、2006年度の営業利益率10%の目標設定に甘さがあったのではないか」との質問に対しては、出井会長が回答。「ソニーは全世界で多くの企業と戦っており、そのためには営業利益率が10%ぐらいないと競争するのは難しい。中長期的な視点で掲げた。10%の目標に対しては苦戦しているが、10%を超えている事業も出てきた。ただ、これほどまでにエレクトロクス事業を取り巻く環境が厳しいとは思わなかった。読みが甘かった。目標に到達していないことに対しては責任を痛感しているが、高い営業利益率を掲げ、引っ張っていくことができたという点では、間違っていなかったと考えている」とした。

 さらに、「エレクトロニクス事業の不振の要因はなにか」、「ワクワクする製品が登場しなくなった理由はなにか」という質問に対しては、中鉢氏が代表して回答し、「エレクトロニクス事業不振の原因を分析してみたが、技術力は依然として強いものがあると考えている。だが、カスタマーの目線で捉えることができていなかった。今年4月からカスタマービューポイントを各プロジェクトの中に盛り込み、カスタマーは何を望んでいるのかをつぶさに調べた。これにより、商品づくりの原点に立ち返った体制とした。また、ソニーの商品を支える技術力の強化、メーカーとしての強いインフラを実現するため設計、製造現場が一体となって推進するオペレーション力の強化も必要だ。ソニーの高い技術力を背景にした感動商品をユーザーが望んでいることをヒシヒシと感じる」とした。

 一方、出井会長は、自らの経営を振り返り、「10年前には、インターネットを利用しているのはソニーの中でも少数だったが、それがいまでは株主総会の議決権を行使する手段としても利用されるなど、世の中は激変した。そのなかで、エレクトロニクス事業だけでなく、エンターテインメント事業とあわせてネット時代に対応できる体制づくりにも取り組んできた。また、21世紀のソニーとして、今後発展させることができる種をたくさん蒔いてきたし、経営と執行の分離ということにも取り組んできた。その中で、良いマネジメントチームに次の経営を渡すことができた」と総括。

 また、「経営者に必要なのは、日本人か、外国人かということではなく、経営者としての力を持っているか、良いスピリットを持っているかである。中鉢は、私と対極にあるような生粋の技術者で、今こそ真の技術者である中鉢をエレクトロニクス事業の最高責任者にする必要があった。また、ストリンガーは、コストカッターや短期的な視点を持っている人ではなく、ソニースピリットを良く理解している人。この新たな経営チームには、1年を準備期間として、日本発のグローバルカンパニーとしてやってもらいたい。21世紀においても、夢と情熱を失わない若々しい会社であってほしい」とした。

 出井会長とともに、一線を退く安藤社長は、「エレクトロニクス事業は厳しい状況にあるが、新しいマネジメントチームが率いることで、近い将来、力強く復活することを信じている」と、新経営陣にエールを贈った。

 そのほかの質疑応答では、Blu-rayに関しては、「話し合いを続けているが、交渉の途中であり、いつどのような形で決まるかは言及できない」(西谷清業務執行役常務)とし、「ただし、ソニーが発売するハイビジョン製品において、Blu-rayフォーマットは不可欠なものであり、設計、開発は積極的に進めていく」とした。

 加えて、女性の管理職が少ないことに対する質問には、社外取締役ながら女性としてソニーの経営に携わっている取締役監査委員の橘・フクシマ・咲江氏がコメントし、「ソニーの全管理職のうち、女性は2.4%。米国の31%に比べると少ない。私のように社外からではなく、中から育ってほしい」としたほか、唯一の女性執行役であるニコール・セリグマン氏は、「より多くの女性がソニーの経営に参加してくれることを期待している。女性のエグゼクティブは会社の前進のためには必要だ」とした。出井会長も、これを受けて、「女性の役員の登場は時間の問題だと考えている」と付け加えた。

●技術、製品、そして経営体制

 このように、審議では株主から積極的な質問が出たが、次世代技術として話題を集めているCellや、発表されたばかりのPLAYSTATION 3などのソニーの新技術、新製品に関する質問は皆無で、取締役会もそれらの点をアピールすることなく終わった。

 今後、ストリンガー会長、中鉢社長体制になり、エレクトロニクス事業の復権を掲げているだけに、それを支える次世代技術や製品をもっとアピールしても良かったかもしれない。株主の質問も、ソニーの技術そのものにフォーカスしたものがないという点では残念だったといえる。株主総会という性格上、経営そのものに質問が集中するのは仕方がないのかもしれないが、ソニーの復活の鍵を握るはずの「技術」、「製品」に焦点を当てることを忘れた点に、いまのソニーの苦戦ぶりの素地があるのかもしれない。

 なお、約2時間に渡る株主総会の終了後には、取締役会が開催され、ハワード・ストリンガー会長、中鉢良治社長による新体制が正式にスタートした。23日には、新経営陣による報道関係者向けの会見が行なわれる予定だ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp
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【4月4日】【大河原】薄型TVで浮き彫りになったソニーの課題
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0404/gyokai120.htm

(2005年6月22日)

[Reported by 大河原克行]

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