エプソンのサービス専門会社であるエプソンサービス株式会社は、セイコーエプソン社内に発足したカスタマーサービスプロジェクトを前身として、'96年に設立した企業だ。エプソン製品の修理専門会社として、600人の社員が従事。長野県松本市に本社を置く。 同社のインクジェットプリンタ、レーザープリンタ、デジタルカメラ、リアプロジェクションテレビ、ブロジェクターといった製品群の修理に対応する拠点であり、松本のほか、東京、札幌、福岡、沖縄に拠点を設置。東京・秋葉原と大阪・日本橋の2カ所には、エプソンサービススポットとして、その場での短時間修理を実現している。 エプソンサービスの松本本社の修理センターを訪問した。 ●4つのサービスメニュー
エプソンサービスは、プリンタなどのエプソン製品の修理が必要な際には、同社では、大きく4つのサービスメニューで対応している。 1つは、指定業者がユーザーのもとに修理品を引き取りにくる「ドアtoドアサービス」。最短3日間でユーザーに修理品を戻すことができ、引き取り料金は、保証期間内、期間外を問わず、1,575円で済む(保証期間外であれば別途修理費用が必要)。大型のレーザープリンタの場合などは、送料の面だけでも、格安の料金といえる。 「クイックサービス」は直接修理品を修理センターに持ち込むサービスで、約1時間程度での修理が可能。秋葉原、日本橋のサービススポットでの利用が多いが、松本本社の修理センターにも、「松本に車で観光にきたついでに、修理センターに持ち込むというお客様もいる」(エプソンサービスCS技術センター 藤沢康雄部長)という。 「デリバリーサービス」は、ユーザー自身が修理品を梱包、発送し、修理後にユーザー宅配便で届けるという方法。修理日数は最短で1日となっている。 そして、もう1つが「通常持ち込みサービス」で、ユーザーが購入した販売店に持ち込んで、そこからエプソンサービスで修理。修理が完了したら販売店で受け取るというものだ。 こうした持ち込み型の修理サービスは、すべてエプソンサービスで対応しているのである。 ●柔軟に対応する修理体制 エプソンサービスの本社にある松本修理センターでは、修理品が入庫するプラットフォーム荷受作業が午前7時30分からスタートする。実際に修理部門が業務を開始するのは午前8時30分だが、それよりも1時間前から荷受け作業がスタートするのだ。
修理センターに入荷した修理品を開梱し、修理箇所などを確認。受付コーナーで、「RIS(リペア・インフォメーション・システム)」と呼ばれる情報システムに、データが登録され、入庫した製品や修理履歴などが管理される形になる。 情報が登録されると、製品ごとに分割された修理エリアへと運ばれる。
修理エリアは、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、プロジェクターなど製品別に分かれ、1人が1台の修理を担当する。早いものでは約15分程度で終わるものもあるが、なかには1時間以上かかるものもある。 とくに、2004年度からエプソンが本格的に取り組んでいるプリンタ複合機は、修理には比較的時間がかかる。1人あたりが1日に修理する台数は約15台から20台程度で、複合機ではそれが5台から10台程度になるという。今後の課題の1つだろう。 現在、松本本社の修理センターは、150人の社員が勤務。4社の協力会社との協業体制によって、月間の修理能力は約7,000台に達しているという。
修理に必要な部品は、フロア内にある部品倉庫に保管されており、ここから必要な部品を調達する。在庫状態ではエプソン販売の資産だが、修理担当者がこの部品倉庫から部品を持ち出した段階で、エプソンサービスへと資産が移行する。
「6年間の修理期間という規定はあるが、長年に渡ってご利用いただいているお客様もおり、古い部品もなるべく探し出して、修理をしている」と語る。 修理件数が最も多いのがインクジェットプリンタのカラリオ。これは、いわば出荷台数に比例したものともいえ、修理エリアでも最大規模を誇る。 「年末年始時期には、カラリオに修理案件が集中する傾向がある。その際には、レーザープリンタやプロジェクターの修理担当者がカラリオの修理にまわることもある」という。 同社の特徴は、基本的には製品ごとに修理エリアを分割し、それぞれに専任担当制を敷いているものの、実際には、複数の製品の修理が行なえるような体制を整えている点にある。多くの社員が複数の製品の修理を行なえるという。 また、午前中には入庫を担当していた社員は、午後には、出荷口での作業が増えるために、そちらに移行して出荷作業を行なうというように、柔軟に体制を組み替える形としているのも特徴といえよう。 ●「次もエプソンを」実現のために もう1つの特徴が、拠点全体が、お客様の声を直接聞くということにこだわり続けている点だ。 修理エリア内にも、情報オアシスコーナーが設置され、そこでユーザーの声が貼り出されているほか、修理エリアの随所にもユーザーの声を書いた紙を貼り出し、怒っていることや、要望、そして、感謝の声などを社員が共有できるようにしている。 「製品が故障してしまったことで、大変ご迷惑をおかけしているお客様に対して、迅速に修理をするのは当たり前のこと。これを誠心誠意行なうことで、また次もエプソンを購入してもらいたい。そういう気持ちをエプソンサービス全員が持って、取り組んでいる」という意志の表れだ。
もう1つエプソンサービスの欠かせない取り組みの1つが、設計、開発、生産現場との連動だ。 修理を通じて得た情報、ユーザーからの要求、仕様の変更の提案なども、開発部門へとフィードバックしたり、設計部門に対しても、修理が行ないやすいような工夫を要請したりといったことが行なわれる。 また、「生産部門の社員にもきていただき、実際の修理現場で作業をしてもらうことで、生産現場との連携を図るといったことも行なっている。どんなところで問題が起きているのかということを現場、現物、現実の『三現』主義を実践することで、生産現場に反映してもらっている」という。 こうしたエプソンサービスと、セイコーエプソンとの連携も大きなポイントといえるだろう。
□エプソンサービスのホームページ (2005年6月6日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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