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続・アイ・オーの外付けハイパーマルチ実力検証テスト
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DVR-UM16S |
前回の「アイ・オーの外付けハイパーマルチ実力検証テスト」では、アイ・オー・データ機器(以下アイ・オー)のハイパーマルチ外付けドライブ「DVR-UM16S」がIntelのチップセット環境で、規定の16倍速に達しないという記載を行なった。
掲載した25日にアイ・オーの技術部門から、次のような電話があった。
・社内の計測では、Intelのチップセットを使った環境でも、掲載したテスト結果のように急速に書き込み速度が落ちることはない。悪くても、15倍速を切るような状況は確認されていない
・バッファローが公開した環境も再現したが、その環境でのテストでも問題は生じていない
つまり、Intelチップセットを使っても、弊誌のテストのような結果は確認できないというわけである。
また、同社がIntelチップセットではなく、NVIDIAチップセットのテスト機を送ったのは、NVIDIAの結果が一番良いからだという。アイ・オーによれば、結果が良い順にNVIDIA、SiS、Intelなのだそうだ。つまり、Intelは一番悪い環境だが、それでも15倍速は維持できて、他のチップセットならもっと良い結果がでるというわけである。
そこで、改めて、より厳密な測定環境を用意し、追試してみることにした。
●バッファローの計測環境を再現する
左から編集部、バッファロー、アイ・オーの各PC |
バッファローが発売中止の告知をしたページで公開している環境は次のものだ。
M/B:ASUS P5GD1
CPU:Pentium4 2.8GHz
Memory:512MB
OS:WindowsXP SP2
BenchMark:CD-DVD Speed Ver3.75
メディア:16倍速対応DVD+Rメディア(国内メーカ製)
編集部でも、これと同じ環境を用意した。ビデオカードについては、特に記載がなかったのだが、GIGABYTEの「GV-NX57128G」であることが確認できた。ただし、この製品はPCI Express初期の商品であり店頭にはすでになかったので、同じチップを使用したカードで代用した。
このほか、アイ・オー、バッファロー両社の厚意により、両社がそれぞれ検証/開発で使用した同構成のPCを借用した。つまり3台とも同じパーツを使用したPCだ。なお、アイ・オーから送られてきたPCにはビデオカードがセットされていなかったので、前述のカードを使用している。
テストに使用した4台の外付けハイパーマルチドライブ。一番上がバッファローの試作機 |
ドライブも、「DVR-UM16S」に加え、前モデルの「DVR-UM16A」も用意した。この2台以外に、アイ・オーからも「DVR-UM16A」を借用した。これには、アイ・オーが用意したドライブには改良版のファームウェアが適用されているという。これに加え、バッファローが製品化をあきらめた「DVSM-DM516U2」の試作機もお借りし、計4台のドライブをそろえた。
この環境で、アイ・オーとバッファローの両方が推薦メディアとしている太陽誘電の16倍速対応DVD-Rメディアでテストし、計測した。
今回の最大のテーマは「バッファローが製品化をあきらめた環境で、本当にアイ・オーの製品はきちんと動くのか」ということだ。
また、「アイ・オー自身の環境で、店頭で買ってきたドライブが15倍速以上で動作し、波形の乱れなど出ない」のか、という点も追求してみたい。
●店頭で購入した旧機種「DVR-UM16A」の結果
テスト機材が多いので、各PCと各ドライブは次のように略称する。
【A】編集部が購入した「DVR-UM16A」(旧機種)
【B】編集部が購入した「DVR-UM16S」(新機種)
【C】アイ・オーの貸し出しドライブ
【D】バッファローの試作ドライブ
【1】編集部のPC
【2】アイ・オーのPC
【3】バッファローのPC
まず、編集部が購入した旧機種の「DVR-UM16A」【A】から見ていこう。
【A】×【1】 |
【A】×【2】 |
【A】×【3】 |
編集部のPC【1】、アイ・オーのPC【2】、バッファローのPC【3】いずれも、前回と同じように12倍速から16倍速に変わるあたりで乱れが生じ、書き込み速度は16倍速に達していない。書き込み時間も、6分11秒から6分15秒であまり差はない。
●店頭で購入した新機種「DVR-UM16S」の結果
【B】×【1】 |
【B】×【2】 |
【B】×【3】 |
店頭で購入した新機種「DVR-UM16S」の結果はやや異なる。いずれも書き込み速度は16倍速に達していないが、【1】と【3】は乱れが大きく、書き込み時間は6分11秒と6分23秒だ。【2】は波形の乱れはあるもののほぼ15倍速に達しており、書き込み時間も6分6秒と短い。波形のパターンも他と異なるのも不思議だ。
●アイ・オー提供の新ファーム搭載「DVR-UM16A」の結果
【C】×【1】 |
【C】×【2】 |
【C】×【3】 |
アイ・オーが送ってきた改良版の新ファームウェアを搭載した【C】では、環境を問わず、ほとんど乱れもなく、16倍速を実現している。予想通りファームウェアの更新で修正できるような問題だったのだ。
書き込み時間は【1】、【2】、【3】とも5分55秒で安定している。
●バッファローの試作ドライブの結果
【D】×【1】 |
【D】×【3】 |
バッファローが試作した外付けドライブ【D】は、【A】や【B】よりさらに悪く、ほぼ12倍速で頭打ちになる。バッファローが公開したテスト結果と同様で、この状態であれば16倍速ドライブとして販売することを断念してもおかしくない。
【2】の計測中に、HDDがエラーになってしまい、リセットしても起動しない状態となった。復旧を試みたが起動しなかったため、割愛している。
書き込み時間は【1】6分47秒、【3】6分41秒だった。
●いきなり新ファームの予告が
アイ・オーが公開した現行製品のベンチマークテスト結果 |
話がやや前後するが、26日、ベンチマークの計測中に、アイ・オーのサイトに、改良版のファームウェアの予告が掲載された。「DVR-UM16A」用が4月28日、「DVR-UM16S」用は5月中旬という。
このリリースには、アイ・オーが計測した旧ファームでの「DVR-UM16A」の計測結果が初めて公開されている。倍速は16倍速には届かず、波形も乱れている。少なくとも、「Intel環境でもちゃんと動き、波形に乱れもない」というのは正しい説明ではないことは明らかだ。
最初から、このグラフのような症状を認めてくれるか、公開を教えてくれれば追試などしなくてすんだのにと思う。ちなみに、アイ・オーに確認したところ、編集部に送られてきているドライブのファームウェアと28日に公開されるファームウェアは、別のものだという。新ファームウェアが公開された時点で、また検証したい。
●分かったことと、残る疑問
今回の計測結果ではっきりしたことが2つある。
・店頭で現在販売されているアイ・オー製外付けハイパーマルチドライブは、Intel環境では16倍速に達しない
・アイ・オー提供の新ファームウェアは有効で、適用した「DVR-UM16A」は、Intel環境でも安定して16倍速を実現できる
新しいファームウェアが出ることで、ユーザーの手元に、当初から約束されていた性能が届けられることが確認できたのは何よりだ。
しかし、なぜ現行の「DVR-UM16S」【B】とアイ・オーのPC【2】の組み合わせのときだけ、倍速が上がるのだろう。同じマザーボード、同じビデオカードなのに、異なる結果が出るのがわからない。また、「DVR-UM16S」【B】およびアイ・オーから借用したドライブ【C】とアイ・オーのPC【2】の組み合わせのときだけ、NEROで表示されるデバイス名の先頭が、他のPCとは異なるのもわからない。
念のため、アイ・オーに何か特殊なドライバを入れているのかと確認したが、「OSをクリーンインストール後にマザーボード付属のチップセットCDを入れたのみである」という。
そこで、アイ・オーの許諾を得て、新しいHDDをもう1つ用意し、【2】のPCにWindows XP Professinalをクリーンインストールした。つまりWindowsの標準環境で測り直してみようというわけだ。この環境を【4】とする。
【A】×【4】 |
【B】×【4】 |
【C】×【4】 |
【D】×【4】 |
ここまでのベンチマークテストの結果を表にまとめてみよう。
ドライブ/PC | 【1】編集部PC | 【2】アイ・オーPC | 【3】バッファローPC | 【4】アイ・オーPC2 |
【A】「DVR-UM16A」 | 6分12秒 | 6分15秒 | 6分11秒 | 6分12秒 |
【B】「DVR-UM16S」 | 6分11秒 | 6分06秒 | 6分23秒 | 6分11秒 |
【C】アイ・オー貸与品 | 5分55秒 | 5分55秒 | 5分55秒 | 5分55秒 |
【D】バッファロー試作機 | 6分47秒 | × | 6分41秒 | 6分29秒 |
【4】の結果は、編集部が用意したPC【1】に近いものとなった。とくに、DVR-UM16Sの結果【B】×【4】は、送られてきた状態【B】×【2】より5秒遅くなり、倍速も15倍速に届かなくなっている。また、デバイス名も他のPCと同じく[2:0]と表示されるようになった。
●バッファローは新ファームを知らなかったのか
もう1つ、残った疑問がある。
新ファームウェアを搭載したドライブは、Intelチップセット環境でもきちんと16倍速で動く。ということは、バッファローが発売中止を決めた時点では、このファームウェアの存在を知らなかったことになる。
少なくとも、ハイパーマルチドライブでは、アイ・オーが先行しており、バッファローが追いかける形になっている。そういう意味では、OEM元からの情報提供に差があるのかもしれない。
バッファローに確認すると、それには回答できないが、近日中になんらかのお知らせはできるだろうという。アイ・オーの新ファームウェアの改善度を見ると、なんらかの形で復活するのはまちがいないだろう。
●自社のユーザーに恥じることのない姿勢を
今回の取材とテストでは、アイ・オーの対応に失望させられることが多かった。
なんと言っても、Intel環境でも問題がないと言われた翌日に、対策済みの新ファームの発表が行なわれたのには呆然とさせられた。また、その計測環境についても疑問は残る。
アイ・オーは、PC-9801シリーズ用のメモリー技術や、ビデオチップの自社開発などで、技術指向の会社というイメージを確立し、長年に渡り信頼を集めている企業だ。昔のことだが、他社の営業担当者が筆者の目の前で「自分で買うんならアイ・オーのカードを買いますよ」と言ったことすらある。
筆者自身も、ネットワークHDDなど、複数のアイ・オー製品を使っているだけに、今回の対応は残念でならない。
前回の繰り返しになるが、自社のユーザーに恥じることのない、正確な情報提供を常に心がけてほしいと思う。
【追記】neroによるデバイス名と結果が異なる問題は、アイ・オー提供のPCにASPIドライバが入っていたことによるものと判明しました。
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~松下製16倍速ドライブは外付けでも実力が発揮できるのか
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【4月26日】アイ・オー、外付けハイパーマルチで16倍速記録を実現するファームを予告
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0426/iodata.htm
(2005年4月27日)
[Reported by date@impress.co.jp]