第283回
時代に合わせ新環境に移行した“我が家オフィス”



 このところまったく変化の無かった我が家のPC環境。しかしMac miniがその一員に加わったことで、玉突きのように何年も使い慣れてきたアプリケーション/サーバー/ネットサービスの環境が変化してきている。

 といってもMac miniを導入したことを後悔しているわけではない。今や調べものや文章の執筆、インターネットへのアクセス、デジタル画像の管理や印刷などは、PCではなくMacで行なっているほどだ。

 むしろ8年ほど続いた環境を見直す良いきっかけになったと思う。PCとWindowsで運営してきた我が家の環境は、オフィスというには小さく、運用中のシステムは大きすぎた。今や自宅にサーバーを持たなくても便利な自宅オフィスを作ることぐらいは簡単にできてしまう。

●オープンなプロトコルとオープンソースのアプリケーションへ

 以前にもこの連載で書いたことがあったが、我が家はユーザーが2人しかいないにも関わらず、マイクロソフトのExchangeサーバーとOutookの組み合わせを使ってきた。スケジュール管理を家人に任せているから、というのもあるが、仕事柄、複数台のPCを使い分けたり、仕事で使うPCの入れ替え作業が比較的頻繁に発生するからだ。

 なにもExchangeとOutlookで管理できるメールやPIMデータに限った話ではないが、特定の端末に依存せず、さまざまなコンピュータから単一の情報を扱おうと思えばクライアント/サーバーのシステムを使う方が効率的だ。

 大げさにもExchangeを使ってきたのは、機能的な評価を行なうことがきっかけ。その後も同じ理由でアップデートをしてきた。こうした製品は至れり尽くせりで、GUIでちょいちょいと簡単に環境を作り上げることが可能なので、インストーラが想定している使い方の範囲内であれば、時間をかけずにすぐ使える環境が作れるのも楽だ。

 しかし、一方でExchangeはネイティブプロトコルおよびWebDAV以外でのアクセスパフォーマンスがあまり良くない。具体的にはIMAP4が高速ならば、メールソフトの自由度も高くなり、Windows以外での利用幅も広がるのだが、IMAP4ならばLinuxなどで専用にサーバーを作った方がパフォーマンス的には有利。そもそも、メールボックスの管理をIMAP4でやるのであれば、重いExchangeサーバーを維持する意味もない。

 我が家の場合、サーバー環境のメンテナンス性や構成の柔軟性を上げるため、もともとVMwareでサーバーを運営していたこともあり、軽ければ軽い方がいい。加えてMac OS X環境でEntourage 2004でExchangeと接続する場合、VMwareやVirtual PC上で動作するExchangeサーバーとの同期で著しく速度が遅いという問題も発生したため「ここらが潮時かも?」と判断し、Exchangeはオフィスアプリケーションの動作確認を行なうためにのみ動かす方向で徐々にフェードアウトさせることにした。

 この判断をさらに後押ししたのは、次期Mac OS X(Tiger)の存在だ。もともと、Mac mini導入の目的の1つに、Tigerで実装される「スポットライト」という検索機能があったからだ。メールやスケジュールなども一括で検索可能なスポットライトだが、OSレベルでサポートされるのは、OS標準のアプリケーションで作成可能なデータばかり。Tigerリリース後には、サードパーティ製メーラーやスケジューラもスポットライトに対応するだろうが、いつから利用できるようになるのか明らかではない。

 こうした事情もあり、Mac OS X標準メーラーでも利用可能なIMAP4への移行は、ここしばらく考えていたのだ。

 ではLinuxをインストールしてsendmailを動かして……と話が進むかというと、実はそうではない。物理的に仕事で使うサーバーを維持するのは、なかなか大変なことだ。そこでオリジナルのメールアドレスを作るために使っていたバーチャルレンタルサーバの契約を変更することにした。

●3GB月1,500円! 安くなってきたレンタルサーバー

 メールの最初の受け口として、最初にレンタルサーバーを借りたのは'96〜'97年ぐらいのことだが、当時は数十MBの容量で月20ドル程度ほどの維持費がかかっていた。これを国内のさくらインターネットに切り替えたのが2000年のこと。100MBで月2,000円の価格設定(後に150MBに増量)だ。いずれも基本的には中小規模の企業向けサービスである。

「さくらのレンタルサーバ」コントロールパネル。Webおよびメール関係の機能は非常に充実しており、大部分の設定をWebブラウザ上でこなせる。サーバーへのドメイン割り当てなども、ここから行なう

 しかし、昨年からさくらインターネットが 個人向けに運営している「さくらのレンタルサーバ」だと、300MBのライトプランが年払いで1,500円、スタンダードプランは1GBで月500円もしくは年5,000円、そしてプレミアム契約ならば月1,500円もしくは年15,000円で3GBの容量を得られる。つまり今まで使ってきたサービスの20倍の容量を、月500円も安く提供してもらえるわけだ。

 筆者の場合、従来のサービスで品質面にも信頼がおけたため、あえてほかのサービスプロバイダを探すことはしなかったが、どうやらこのサービスが容量単価で言えば最安値に近いようだ。今後は競合するサービスの容量増加や価格引き下げなどもあるかもしれない。

 企業向けサービスではないため、個人向けにいくつかの制約もあるが、筆者の使い方ならば問題はない。それに、新しい契約ではさまざまな付加機能が最初から利用できる。

 まずIMAP4をサポートしていること。このサービスは3GBの容量をメールにもWebにも好きな割合で使える。このため、(すべてではないが)過去のメールも含め、かなりのメッセージをレンタルサーバー上に置いておける。

 つまりIMAP4をサポートしたメーラーが動くコンピュータなら、WindowsでもMac OSでもUNIX系でも、おなじメールボックスを同期させられる。デスクトップPCとノートPCを併用するユーザーには大容量ということもあり利用価値が高い。また、Webメール機能があるため、その気になればWebブラウザさえ動く環境なら、どこからでもメールボックスにアクセスできる点も便利だ。

 管理も容易で、ほとんどの設定をWebブラウザ上で行なえ(Webブラウザをフロントエンドとしたサーバー上のファイル管理ツールまである)、代表的なCGIプログラムのインストールもブラウザでパラメータを入力し、ボタンをクリックするだけ。メールボックスに対するサーバーレベルのウィルススキャン機能や迷惑メールフィルタも追加料金なしで利用可能。MySQLも提供されており、データベースを必要とするCGIも動かせる。

 まさに至れり尽くせり。ここまで高機能で大容量になると、自宅にサーバーを置かなくともさほど不便は感じない。パフォーマンスも、Webメールがやや重くなることはあるが、今のところ十分なクオリティ。ひとつ残念なのはグループスケジュール用に使いたいWebDAVが利用できないことだが、これはMac miniでもWindowsマシンでも、簡単に動かすことが可能で動作も軽いため、さほど困ることはない。

メールボックス作成画面。各メールボックスに対して容量制限をかけたり、サーバーレベルのウィルスチェックを指定可能 サーバーとのファイル転送はもちろんFTPが使えるが、Webブラウザをフロントエンドとしたファイルマネージャサービスも利用可能 Webメール画面では迷惑メールフィルタや受信拒否リスト、パスワード変更、転送など、メールアカウント個別の設定UIも組み込まれている

●スケジューラはWebDAVサーバーで共有

 さて、メール環境に関しては移行をすでに開始しているが、問題はExchangeで家人に管理を任せてきたスケジュールと連絡先の管理だろう。このほか仕事リストやメモの同期もExchangeで行なってきたが、これはテキストファイルベースでフォルダ同期などをさせれば代用できなくはない。

 しかしスケジュールに関しては比較的解決は簡単だ。WebDAVサーバーを作り、カレンダー専用のパスへのアクセス権を設定しておき、iCalendar対応スケジューラにカレンダー用パスへのURLを設定するだけ。

 WindowsならばMozillaプロジェクトの中で開発されているSunbirdを利用可能。僕自身もWindows上ではこれを使う予定だ。Mac OS Xでは標準アプリケーションのiCal.appがWebDAVサーバーを用いたスケジュールデータの共有をサポートしており、サーバーとのスケジュール同期を行なえる。(なおWebDAVとiCalendarを用いた手順はcaldavの名称でドラフト案が発行されている)

 会議室などのリソース予約や会議開催通知、空き時間チェックなど、複雑なグループスケジューリングを行なおうとすると、Exchangeのような製品が必要になるだろうが、単純にカレンダーデータの共有だけならば、これだけで十分に目的を達成してくれる。

 目下の問題は連絡先の共有。LDAPを用いればサーバー上での連絡先データ管理は可能だが、連絡先データはアプリケーションによってサポートしている項目数や項目の分割の仕方などが異なるため、クロスプラットフォームでどこまでシームレスに相互運用可能なのか、まだ実験をしてない。

 しかし筆者が使うアプリケーションの中でも、Outlookは大きく重いアプリケーションだったため、連絡先データ以外を移行できただけでもかなり身軽さを感じている。しばらくは併用しながら、試行錯誤を続けてみることにしよう。そうしているうちに、MozillaプロジェクトのLightning(Outlookのような統合型情報クライアント)がリリースされるかもしれない(Lightningのリリース予定は今年中頃と言われている)。

●少し肩の力を抜いてみると

 これまで何年もの間、環境を変えてこなかったのは、単に現状でうまく動いているシステムを変えたくなかったからという理由もある。しかし、1番大きな理由は(クロスプラットフォームでの情報共有やアプリケーションの重さを考えなければ)OutlookとExchangeの組み合わせには、インストールしただけである程度のアプリケーションがすぐに動いてしまう手軽さがあった。また、ユーザーが多いだけに、その環境に対応するソフトウェアが多かったことも抜けられなかった理由のひとつ。つまり、やや楽な方向へと逃げていたとも言える。

 しかしインターネット上に巨大なストレージを安価に持てるようになった今、ふと気付いてみると、やや古い常識にこだわりすぎて考え方が固くなっていたのかもしれない。肩の力を少し抜いて落ち着き、そして新しい環境に移行してみると、機能面では完璧ではないにも関わらず、自分の手から外部のサーバーに負担が移行し、ずっと楽な気分だ。

 今回紹介したような手法であれば、小規模オフィスはもちろん、個人レベルでもクライアント/サーバー型のグループウェアのまねごとを手軽に行なえる。サーバーに情報を置き、その複製を持ち歩くスタイルは、モバイルコンピューティングの基本パターン。それを手軽に得られるというのはうれしい。

 個人で運営する場合に、Exchangeがオーバースペック過ぎるという点はともかく、Outlookには多くの良いところもあるが、同様に大きな欠点も数多くある(いまだにローカルの複製データベースに対する検索機能は使い物にならないほど遅い)。

 力が抜ければ周りも見えてくるものだ。マイクロソフトのOutlook開発部隊も、もう少し力を抜いて使いやすいソフトにしてほしい。これまでのバージョンアップで、もっとも大きな進化でもあった現行のOutlookだが、あともう一歩、軽くなれば文句はあまりないのだが……。

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【2004年7月7日】さくらインターネット、月額125円のホスティングサービスを開始(INTERNET)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/07/07/3797.html
【2003年6月9日】【本田】データ同期再び
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0609/mobile204.htm
【'99年11月30日】【本田】次世代メールプロトコルIMAP4のこれから
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991130/mobile30.htm

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(2005年3月30日)

[Text by 本田雅一]


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