元麻布春男の週刊PCホットライン

「プレイやん」でMPEG再生機能を試す




 良くも悪くも電車の中のヘッドフォンは、すっかり日常の光景だ。さらに携帯電話を操作する乗客も、もはや見慣れた風景の一部になっている。音楽を聴く、ゲームをする、メールの読み書きを行なう、というのは、活字を読むのと変わらない、電車の中でのヒマつぶしとして完全に定着してしまった。しかし各社の努力にもかかわらず、電車の中でビデオを見ているというのは、まだそれほどポピュラーな行為ではないようだ。

●モバイルメディアプレーヤーとしての携帯ゲーム機

 この数年、ビデオを見ることができる携帯機器は、種類、数とも増加の一途にある。専用プレーヤーはもとより、携帯電話やPDAなど、プロセッサと液晶ディスプレイを備えた機器なら、何でもポータブルビデオプレーヤーの仲間入りをしつつあるといっても過言ではない。プロセッサと液晶ディスプレイを備えたもう1つのデバイス、携帯型ゲーム機もこの機能を備えるものが登場してきた。ソニーの「PSP」がそれである。だが、モバイルメディアプレーヤーとしてPSPを見た場合、難点がないではない。本体が大きく重いことは、その最たるものだが、その代わり大きく見やすいディスプレイを備えているのだから、これはやむを得ないところだろう。

 一方、これまで携帯ゲーム機市場をリードしてきた任天堂は、本業であるゲーム機として順調だったせいか、それほどメディアプレーヤー的な用途に積極的ではなかったように思う。おそらく今でもゲーム機の本分はゲーム、と考えているのかもしれないが、同社製のゲーム機で動画や音楽の再生を行なう周辺機器をリリースした。それが「プレイやん」だ(現時点では直販のみ)。

●任天堂の携帯ゲーム機をモバイルメディアプレーヤーに

 プレイやんの基本は、「ゲームボーイアドバンスSP」以降と互換性を持つSDメモリーカードアダプタ。通常のゲームカートリッジより5mmほど長い(その分、ゲーム機本体から突き出す)。カートリッジ形状的には「ゲームボーイアドバンス」とも互換性を持つが、利用できるのはゲームボーイアドバンスSPと「ニンテンドーDS」の2機種のみとなる(無印ゲームボーイアドバンスでは利用できない)ので注意が必要だ。利用可能なSDメモリーカードについては任天堂のWebサイトで公開されているが、基本的には64MB〜1GBのSDメモリーカードを広くサポートしている。

通常のゲームカートリッジ(左)とプレイやん プレイやんはゲームカートリッジより約5mm長いため、本体から飛び出る

 プレイやんをプレイやんたらしめているのは、内蔵しているメディア再生機能にある。対応するフォーマットは動画がSD-Videoフォーマット、音楽がMP3で、静止画を表示する機能はない。SD-Videoフォーマットは、その名前の通りSDメモリーカードに動画を記録する規格で、ビデオをMPEG-4(SP@LO)、音声をGSM-AMR、G.726、MPEG-2AAC、WMAのいずれかのCODECで記録する(ファイルフォーマットはASF)。

 実際の製品、主に松下ブランドの携帯電話、HDDレコーダー(DIGA)、「D-Snap」シリーズのデジタルカメラ等でサポートされている実質的な標準では音声CODECにG.726を採用しており、プレイやんがサポートするSD-Videoも、最大1MbpsまでのMPEG-4ビデオと、サンプリング周波数8kHz、ビットレート32kbpsのG.726によるモノラル音声の組合せとなる。一方、MP3は32kbps〜320kbpsまでのCBR/VBR/ABRで、サンプリング周波数は32kHz/44.1kHz/48kHzのいずれかだ。

 プレイやんはなかなかフレキシブルで、これらのフォーマットに準拠したデータを、セットするSDメモリーカードに記録しておけば再生できる。要するに、何という名前のフォルダの下に必ず書いておかなければならない、といった決まりごとがなく、電源を入れると自動的に対応するメディアファイルを探し出し、サムネイル(動画)やリスト(音楽)で表示してくれる。

松下の「MediaStage 4.2 for Nintendo」 MediaStageの変換ダイアログ。変換後の推定ファイルサイズもこの時点で分かる

 プレイやんをMP3プレーヤーとして使うのであれば、手持ちのMP3ファイルをSDメモリーカードリーダ等を用いてSDメモリーカードに書き込めばそれでOK。いまさらMP3ファイルの作り方が分からないユーザーもいないだろうが(その気になればWindows Media Player 10でもiTunesでも好きなツールで作れば良い)、SD-Videoを作成可能なソフトはそれほどポピュラーではない。そこでプレイやん単体での販売(5,000円)に加え、松下製のコンテンツ管理ソフトである「MediaStage(MediaStage for Nintendo)」をバンドルしたパッケージ(6,000円)も用意されている。

 MediaStageは、コンテンツ管理ソフトであり、トランスコーダーというより、さまざまなメディアファイルの再生や管理を行なうツールだが、プレイやんとの組合せでは、Windowsでポピュラーな動画ファイルからSD-Videoファイル(ASF)への変換や、SDメモリーカードへの転送(別途カードリーダーが必要)が主な用途となる。同一フォルダにファイルをコピーしても、中身を認識できないファイルは表示しないなど、最初はとまどう。慣れが必要だが、最近、大手PCベンダのTV機能搭載PCに採用されていることが多いため、なじみのあるユーザーも少なくないハズだ。

 同種のソフトとしては、カノープスも「かんたん換太郎 for Nintendo」をリリースしており、単体で購入できる(3,990円、ダウンロード販売のみ)ほか、500台限定でかんたん換太郎とプレイやんをセットにしたパッケージ(7,980円)も発売中だ。MediaStageの対応OSがWindows XP SP1以降(Professional/Home Edition)であるのに対し、こちらはWindows 2000 SP4以降の対応である点が大きく異なるが、MPEG-4 CODECは松下電器産業製であり、画質的な違いは基本的にほとんどないと考えられる。ユーザーインターフェイスがゲームボーイアドバンスSPを模した「かんたんモード」と、WindowsのGUIに近い「エキスパートモード」の2種類が用意されているのが特徴だ。

かんたん換太郎かんたんモード かんたん換太郎エキスパートモード

 今回、MediaStageとかんたん換太郎、2種類のソフトを用いて、プレイやん用のSD-Videoファイルを作成してみた。テスト環境(ハードウェア)は表に示した通り。テストに用いたデータは以前、このコラムで紹介した「Link de 録!!」を用いてキャプチャしたMPEG-2ファイル(標準画質6Mbps、18分44秒、866MB)。Link de 録!!でキャプチャしたファイルは冒頭にノイズ分が含まれており、これがかんたん換太郎を誤動作させ、リップシンクのずれたSD-Videoファイルを生成してしまうことが判明したので、事前に冒頭(と念のため末尾)をペガシスの「TMPGEnc MPEG Editor」でカットしておいた。

【表:テスト環境】
CPUPentium 4 560 (3.60GHz/1MB L2 Cache)
マザーボードIntel D925XECV2
メモリDDR2-533 1GB
HDDHDS722580VLSA80
グラフィックスGeForce 6800 GT

 この2つのソフトはサポートする解像度、ビットレートが微妙にズレているため、変換に要する時間を直接、単純比較することが難しいが、大雑把に見て、変換速度に大差はない、というのが率直なところ(MediaStageの高圧縮/15fpsだけは明らかに速いが)。画質的にも、顕著な差はない。やはりCODECの類似性が高いのだろう。なお、MediaStageは最近アップデートされ、高画質と標準画質のビットレートが見直されたので、これら新しい2つのモードを含めて、計5つのモードを計っている。

【MediaStage】
モードビデオビットレート解像度フレームレート変換所要時間ファイルサイズ
標準画質352kbps240×176ドット30fps10分25秒53.1MB
標準画質(新)480kbps240×176ドット30fps10分35秒69.9MB
高圧縮224kbps240×176ドット15fps6分19秒35.5MB
高画質480kbps240×176ドット30fps10分38秒69.9MB
高画質(新)736kbps240×176ドット30fps10分51秒104MB
【かんたん換太郎】
モードビデオビットレート解像度フレームレート変換所要時間ファイルサイズ
標準512kbps240×176ドット30fps9分37秒74.2MB
長時間256kbps176×144ドット30fps7分44秒40.2MB
高品質768kbps320×240ドット30fps12分19秒108MB

MediaStageで変換した5種類のASFファイルからの静止画キャプチャ(左上から順に標準画質モード、標準画質(新)モード、高圧縮モード、高画質モード、高画質(新)モード)。それほど大きな画質の差は感じない

かんたん換太郎の3つのモードによるASFファイルからの静止画キャプチャ(左から順に標準モード、長時間モード、高品質モード)。こちらは解像度が違うので、明らかに区別できるが、ゲーム機上での再生となると、また別の話

 さて、2つのソフトの比較というだけでなく、それぞれがサポートする画質モードの違いもそれほど大きくは感じられない。というよりゲームボーイアドバンスSPやニンテンドーDSの小さな液晶では、それほど画質の差は気にならない、というのが正直なところだろう。唯一、解像度が高い(320×240ドット)かんたん換太郎の高品質モードは、Windows上で再生した場合、明らかに画質が良いが、ゲーム機で再生した場合にも大きな差を感じるかというと、それほどでもない。

 むしろ、ゲームボーイアドバンスSPとニンテンドーDS、それぞれが採用している液晶の差の方が大きいように感じた。ニンテンドーDSが採用する液晶は、ゲームボーイアドバンスSPに比べ明るく見やすい。ただ、本体サイズも大きくなるため、携帯性、特に電車のつり革につかまるようなシチュエーションでの使い勝手はゲームボーイアドバンスSPの方がベターだ(慣れれば暗いゲームボーイアドバンスSPの液晶もだんだん見えてくる)。ニンテンドーDSでは下部の液晶ディスプレイが利用できず、デッドウエイトになる点も痛い。このあたりは、ユーザー各自がメリットとデメリットの両方を勘案して、自分にふさわしい方を選ぶしかないだろう。

 どちらかというと、画質以上に気になったのは音質の方だ。ゲーム機側のヘッドフォン出力はノイジーだ。プレイやんにもヘッドフォン出力があり、こちらの方がノイズが少なく聞きやすいが、専用のMP3プレーヤー並みの音質までは期待しない方が良い。

 しかし、こうしたハードウェアの問題以上に厄介なのが、動画の音声に用いられているG.726の限界だ。基本的にG.726は、Hi-Fi向けではなく、電話用のCODECである。このため、処理が軽く、バッテリに優しいが、音質的には厳しい。したがって、ニュースや報道番組なら問題ないものの、音楽番組やミュージカルには不向きである。ドラマやアニメも、セリフの部分ではそれほど気にならないが、エンディングで歌が流れると、ちょっとガッカリしてしまう。これは以前、D-Snapを取り上げた時にも感じたことだが、互換性を維持するという観点から、簡単には変えられない、ということなのだろう。なお、G.726はSD-Video変換ソフトといっしょにインストールされるが、デコーダ単体でも下記のURLから入手することができる。

□G.726デコーダダウンロード
http://www.sharp.co.jp/viewcam/download/g726_download.html

●「プレイやん」で気軽にMPEGデータを持ち出す

 ゲーム機とプレイやんの組み合せを、専用のポータブルメディアプレーヤーと比べると、画質や音質の点で見劣りするのは否めない。しかし、ゲームボーイアドバンスSPやニンテンドーDSといった広く普及したポータブルゲーム機が、5,000円の追加出費で、ポータブルメディアプレーヤーに変わると考えれば、悪くないオプションだ。普及に伴いSDメモリーカードの価格も下がっており、激安品なら1GBのメディアが7,000円程度で売られている。いずれかのゲーム機を所有しているユーザーなら、最も安価にポータブルビデオプレーヤーを入手することが可能だ。PCのHDDに貯まる一方のMPEGデータを気軽に変換して持ち出すという点で、まず検討してみる価値があるのは間違いない。

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【2003年1月10日】【元麻布】手にして分かる「D-snap」の魅力
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(2005年3月28日)

[Reported by 元麻布春男]


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