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手にして分かる「D-snap」の魅力



●スペックはトイカメラだが……

松下電器「D-snap」

 関東地区にお住まいの方なら、昨年末に一風変わった車内吊り広告に目をとめた方がいるかもしれない。歌手の浜崎あゆみをフィーチャーしたその広告で、彼女はなにやら小さなレンズのついたデバイスを手のひらに載せていた。それが松下電器の「D-snap」だ。正式名称を「SDマルチカメラSV-AV30」と呼ぶこの製品は、SDメモリーカードに静止画(JPEG)、動画(MPEG-4/G.726)、音楽(AAC/MP3)、音声(G.726)の各データを記録し、再生することができる。業務用に使えるものではないかもしれないが、とっても気になるデバイスである。

 しかし、スペック表を見る限りは、D-snapはそれほどチャーミングではない。静止画と動画の撮影用に用意されているのは有効31万画素の1/4型CMOSセンサー。画素数からいくと、ベーシックなDVカムコーダー並みで、デジタルスチルカメラには遠く及ばない。

 撮影可能な静止画は、圧縮率こそ3段階から選べる(ファイン/ノーマル/エコノミー)ものの、解像度はVGA(640×480ドット)に限られる。Webや電子メールに添付するには十分な画像だが、大きくプリントしたり仕事に使うには厳しい解像度だ。

 動画はというと、用意されている解像度はQVGA(320×240ピクセル)とQCIF(175×144ピクセル)の2種。それぞれに圧縮率が2種類用意されており、最も画質の良い方からスーパーファイン(QVGA/圧縮率低)/ファイン(QVGA/圧縮率高)/ノーマル(QCIF/圧縮率低)/エコノミー(QCIF/圧縮率高)の4種類の撮影モードとなっている。

 現在、SDメモリーカードで最も大容量の512MBカードを使うと、スーパーファインで約1時間10分、エコノミーでは約10時間50分の動画の撮影ができる。内蔵バッテリ(リチウムイオン)による駆動時間は約1時間30分とされており、スーパーファインによる1時間の撮影はとりあえず可能だ。

 採用されている光学系は、焦点距離3.55mmの広角系単焦点レンズに、50cm以遠のパンフォーカスという仕様で、光学ズームもオートフォーカスもない(静止画、動画とも)。動画と同時に音声もG.726により録音することが可能だが、内蔵マイクはモノラルである(音声のみなら512MBのメディアに35時間録音可能)。

 D-snapは音楽再生も可能だが、SDメモリーカードに音楽データを保存するには、別売のソフトウェア(SD-Jukebox Ver 3.0)が必要といった調子で、スペックだけを眺めていると、どうも「おもちゃのカメラ」的な印象が拭えない。

本体前面。有効31万画素の1/4型CMOSセンサーを搭載 本体左側面。電源兼モード切替スイッチと録画ボタンを装備 本体背面。クレードル接続端子、ヘッドフォン端子、ボリュームボタンを装備
液晶ディスプレイを開けたところ。操作インターフェイスはここに集中する。録画ボタンはここにも搭載されている 本体右側面にはSDメモリーカードスロット、電源端子を装備 内容物一覧。クレードルを始め、AVケーブル、USBケーブルなどがあらかた同梱されている


●手にして分かるD-snapのチャーミングさ

 だが、こうしたネガティブな印象は、ひとたび実物を手にすると大きく変わる。D-snapは、おそらく実物を見たことがない人が考えているより、あるいは冒頭で触れた広告の印象より、はるかに小さくて軽い。手のひらにスッポリと収まる大きさだ。また、製品を手にした時の質感はそれなりに高く、ちゃちな感じはあまりない。実際に手にすると、実にチャーミングな製品なのである。

 その印象は、D-snapで動画の撮影を行なってみると、一層強くなる。もちろん、ズームもオートフォーカスもないカメラゆえ、ちゃんとしたDVカムコーダーとは画質を比べられるハズもないのだが、TVや内蔵の液晶ディスプレイ(2型)に映し出した動画は思いのほかちゃんとしている。特にQVGAの2モード(スーパーファイン/ファイン)なら、十分鑑賞に堪える気がする(データレートはスーパーファインで1Mbps、ファインで400kbps程度)。TV接続の際に用いる付属のクレードルも便利だ(このクレードルを用いて、外部ビデオをMPEG-4エンコードしてSDメモリーカードに記録することも可能)。

 何より、動画を撮る際の気軽さという点で、D-snapはDVカムコーダーとは全く異なるジャンルの製品に仕上がっている。たとえば散歩の際にポケットに突っ込んでおいて、たまたま通りかかった塀の上を歩いているネコをスナップする、といった使い方はD-snapならではだ。こうした用途には、ズームより画質より、D-snapの手軽さがふさわしい。それなりの重量のあるDVカムコーダーでは、どうしても取り回しに気を使うが、バッテリやSDメモリーカードを合わせても120g程度しかないD-snapなら、全く気を使わなくて済む。自重が軽いということは、多少ぶつけても壊れる心配をあまりしなくて済む、ということでもあるからだ。

 撮影した動画や静止画は、当然PCに取り込むこともできる。本機は付属のUSBケーブルでPCに接続し、標準添付ソフトの「SD-MovieStage」で表示やカット編集が可能だ。画質はPCディスプレイより、TVや内蔵液晶ディスプレイに最適化されている印象を受けるが、オーバーレイサーフェスの画質を独立して調整できるビデオカードなら、それなりの画質で表示できるだろう。

クレードル。取り付け/取り外しに若干の慣れが必要 本体をクレードルに接続したところ 片手にすっぽり収まるサイズ
操作時はこのようにして扱う。録画ボタンが写真の親指付近にもあるのでこの状態での撮影も可能 液晶は2型/20万画素。 撮影画像はサムネール表示もできる


●ライバルはケータイ

 というわけで、商品としての魅力という点で、かなり良好な仕上がりのD-snapだが、競合する製品があるとしたら、それはデジタルカメラやDVカムコーダーではなく、動画機能付ケータイだろう。現時点では動画機能付ケータイの多くは、11万画素程度で、解像度もQCIF以下。CODECも、より非力なプロセッサで利用可能なNancy Technologyが広く用いられている。画質という点で、DVカムコーダーに対しては分の悪いD-snapだが、現状のケータイが相手なら静止画、動画ともにD-snapが確実に上回る。

 しかし、いつまでその優位性は保たれるのだろう。ケータイメーカー、あるいはケータイ用のチップを開発しているベンダ(TI、Intel等)は、ケータイの機能と性能を向上させるべく、開発を続けている。おそらくこれから1~2年の間に、D-snapが持っているレベルの静止画や動画の撮影機能と画質は、ケータイが取り込んでいくことになるだろう。何より、D-snapのコンパクトさと形状そのものが、近い将来のケータイとの融合を示唆している。

 キャリアが販売報奨金を出すことが慣例となっているケータイの世界では、端末は大幅に値引きされることが常態化しており、高度な機能を備えた端末を比較的安価に入手することが可能だ。それを考えると、D-snapの魅力を踏まえてもなお、本機に45,000円近い支出をすることが合理的なことなのかどうか悩んでしまう。もちろん、悩むくらいD-snapが魅力的な製品であることも間違いないのだが。


●実写画像(編集部 撮影)

【静止画】撮影モードはVGA/ファイン。ファイル名以外は未加工で掲載しています。


【動画】撮影モードはQVGA/スーパーファイン。フォーマットはASF。ファイル名以外は未加工で掲載しています。リンクを右クリックしてローカルに保存してご覧ください。

動画1(ファイルサイズ2,074KB)
動画2(ファイルサイズ2,974KB)
動画3(ファイルサイズ2,710KB)
動画4(ファイルサイズ2,138KB)

□関連記事
【2002年10月15日】松下、SDカード利用のMPEG-4カメラ「D-snap」の新モデル(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20021015/pana1.htm

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(2003年1月10日)

[Text by 元麻布春男]


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