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ソニーCEOに内定したストリンガー氏が会見
~最強のエレクトロニクスカンパニーを目指す

CEOに就任するストリンガー氏

3月7日 発表



●新人事は現首脳が決断

 ソニー株式会社は7日、代表執行役会長兼グループCEOへの就任が内定したハワード・ストリンガー取締役執行役副会長兼COO、同じく代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOに内定した中鉢良治COO、井原勝美グループCFOの新経営陣および、6月に退任予定の出井伸之代表執行役会長兼グループCEO、安藤国威代表執行役社長が会見し、新経営体制などについて説明を行なった。

 出井伸之会長は、「中期経営計画であるTR60の目標をやり遂げないのは残念であるが、出井・安藤体制によって、変革の種をマネジメントから社員に至るまで植え付けることができた」と任期の10年を振り返り、「交代はいまが最良のタイミングであり、この人たちならば、自由闊達というソニーのDNAを生かしたグローバルな経営体制を継続できると考えた。退任することについては、ちょっぴり寂しい気持ちもあるが、次世代のページを作ったというさわやか感の方が大きく、ハッピーである」とした。

 また、「今朝から、この人事は誰が決めたのかということばかりを聞かれているが、企業のトップ人事は、委員会やOBの意志によって決まるのではない。24時間、社員のことを考えているマネジメントが決めるものであり、今回の人事も私と安藤さんの2人で決めて、それをみんなで話しあった。2人の意見はかなり似ており、私が自信を持ってお知らせできる人事である」と、社外取締役などが主導で決定したとする一部報道を否定した。

赤いネクタイで揃った新経営陣左からストリンガー氏、中鉢氏、井原氏 左から、安藤、出井、中鉢、ストリンガー、井原の新旧幹部 会見には多くの報道関係者が訪れた

●オペレーションは4月から新体制に

 冒頭、挨拶した出井会長は、「新体制は、6月22日の取締役会で正式決定することになるが、オペレーションは、新しい期が始まる4月から、可及的速やかに実行に移してもらうことになる」と前置きし、「ストリンガー氏は、'97年の入社以来、米州の代表として、エンターテイメント分野だけでなく、エレクトロニクス分野の経営もしっかりとみてきた。私自身は、'97年の入社直前からの知り合いでお互いに信頼関係がある。2000年頃からは私がハリウッドに足を運ばなくてもよくなり、ニューヨークのオフィスにも月に1度いくかいかないという状況でも安心して任せることができた。MGMに関しても素早く解決できるマネジメントチームを作ってくれた。今後の経営体制になって、ストリンガー氏が東京の本社にいなくても、中鉢氏と井原氏によるいいマネジメントチームが作れれば、グローバルなCEOとして新たなマネジメントシステムを確立できる」とした。

 また、外国人会長の就任に関しては、「ソニーの15万人の社員のうち、10万人が外国人であり、71%が海外からの売り上げである。また、'95年にソニーがハリウッドに進出した時には、日本の会社がマネジメントできるわけがないといわれたが、いまではソニーがハリウッドでマネジメントをして不思議だという人がいなくなった。外国人だから日本の企業の経営ができないというわけではない。たまたま英国生まれの米国人というだけであり、ソニーとしては懸念がない。唯一あるとすれば、本社のエグゼクティブのスケジュール表が日本語で書かれていることだけだ」などとした。

 ストリンガー氏も、「私はハリウッドに住んでいないが、映画の事業を担当し、歌を歌わないが音楽の事業をやってきた。中鉢氏と良好な関係を打ち立てられれば、私の強みが中鉢氏の強みになり、中鉢氏の強みが私の強みになる。私のいいところは、知らないことは知らないといい、他の人のいいところを引き出すことだ。21世紀の世の中には、テレビ会議も携帯電話もあり、飛行機に乗っていても、歩いていても連絡をとることができるし、逃げることもできない。日本語の問題を懸念する声もあるが、ソニーはグローバルな企業であり、英語に堪能な女性も多い。問題はまったくないと考えている」とした。

●中鉢氏はソニーを一丸とする最適な人物

 また、出井会長は、中鉢氏と井原氏についても触れ、「中鉢さんは、キーデバイス、生産を担当してきた人物で、表の商品力、裏のオペレーション力とするのならば、ソニーをオペレーションから見てきた人である。最終商品を担当していないという指摘もあるが、エレクトロニクス分野で育った純粋なエンシニアであり、いま、ソニーが一丸となるには、この人しかない。人の話をよく聞くグッドリスナーであり、ここは、ぜひ中鉢さんにお願いしたいと話した。心が広く、大胆で、率直に意見をいい、軸がぶれない性格だ。一方、井原さんは、ガッツがあり、率直に物を言う人物。ストリンガーさん、中鉢さんとのコンビネーションはすばらしいと考えている。ラグビーでは、ALL for ONEという言葉があるが、いまはチームワークが最重要。3人のチームワークで引っ張っていってもらいたい」とした。

 一方、安藤国威社長は、「2005年から攻めに転じる今は、バトンタッチには最大のチャンスである」とし、「ソニーが持っているいいDNAをきちっと継承してくれる経営者であり、本当の意味でのトランスフォーメーションがスタートできる」と新体制を評した。

●3人が赤いネクタイを着用

 ストリンガー氏は、新CEO就任内定の挨拶で、「今日は、3人(ストリンガー氏と中鉢氏、井原氏)が3人とも赤いネクタイなのは偶然。だが、揃ったことは幸先がいい」とジョークを述べたあと、「ソニーには成功のためのリソースがある。これを地面の上に掘り越し、花を咲かせたい。タレント性のある若い能力を活用し、利益をあげることができる真の成長を遂げたい。また、いまは、ソニー歴史のなかでも、新たな流れのなかにあり、大変エキサイティングな時期でもある。さらに変化を加速させ、最強のエレクトロニクスカンパニーになる。コスト削減だけでは成長はない。変化をおそれない組織を目指す」と語った。

 また、中鉢氏は、「2005年はソニーにとって大きな転換点であり、大役に責任を感じている。憧れて入社したソニーが、いま難局にある。エレクトロニクス事業の復活によって、この難局に対して立ち向かっていきたい。エレクトロニクス事業の復活なくして、ソニーの復活はないと考えている。出井会長、安藤社長の体制で着々と布石は打ってきた。これをベースに一致団結して開花結実させたい。難局ではあるが、私は、現場の力は健在だと思っている。設計、物づくり、マーケティングの現場では、自由闊達なソニーのDNAがあり、意欲もエネルギーも健在だ。だが、現場とより深いコミュニケーションを行ない、欠けていたお客の目線で物づくりを捉えることがこれからは必要だろう。顧客がなにを求めているのかという原点に立ち返ることが必要。この営みの連携が緩んでいた。また、現場を見るマネジメント側の視点が的確であるかどうかという点にも注意していく必要がある」とした。

●中期経営計画の旗は降ろさず

 中期経営計画のTR60では、2006年度までに営業利益率10%を目標としているが、今年度の見通しは1.5%と、2年後の達成を危ぶむ声が大勢だ。

 これに関してストリンガー氏は、「ソニーが戦い続ける目標として置いておくことはいいと考えている。ソニーのエグゼグティブがハングリー精神を忘れないための目標としたい。目標を変えるよりも、積極果敢に取り組むことが重要であり、エンカレッジメント(励み)として残したい」とした。

 今回の新体制への移行は、いくつかの見方ができる。

 ひとつは、米国で音楽/映画事業を立ち上げる一方で、徹底したリストラを敢行したストリンガー氏のグループCEOへの就任で、全世界規模でのリストラを実施するのではないかとの見方。それによって、TR60によって掲げた計画を大幅に見直し、60周年以降となる2007年度からの体制建て直しの準備に取り組むという下地づくりだ。

 今回の人事では、次期社長の有力候補と見られていた井原勝美氏と、久多良木健氏のうち、井原氏が残った形になるが、創立61年目に突入する2年後には、出井会長がCEOに就任した57歳となるだけに、井原氏登板を見込んでのワイポイント人事との見方も関係者の間では出ている。

 一方、キーデバイスの内製化率を引き上げることで収益改善を狙いたいソニーにとって、技術者に信頼が厚い中鉢氏の社長就任によって、技術者の社内引き留め効果を狙うとの見方もある。会見の最中にも、「グッドリスナー」、「一丸にする役割」など、とりまとめ役としての中鉢氏の手腕を高く評価する声が繰り返し出ている点からも、中鉢氏に求められているのが、技術者からの信頼を背景にした経営手腕である点といえそうだ。

 新体制で、ソニーはどう変われるのか。その体制は、わずか25日後の4月1日から、事実上、スタートすることになる。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200503/05-014/ (新経営体制)
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200503/05-015/ (役員人事)
□関連記事
【3月7日】ソニー、新会長にストリンガー氏
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0307/sony.htm

(2005年3月7日)

[Reported by 大河原克行]

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