●Efficeon搭載!
Be Silent Mt6600はイーレッツ株式会社が販売しているCPU付きベアボーンキット。Be Silentシリーズについては前から興味はあったものの、既に常用しているCPUと同じPentium Mだったり、VIA Edenだったりと、筆者にとってはイマイチ押しが弱かった。しかし今回Desktop PCとしては珍しい(たぶん初)Transmeta Efficeon TM8600 1GHzを搭載と聞きさっそく手配した。TransmetaのCPU(Crusoe)搭載機を最後に使ったのは約3年半前。その進化版に相当するEfficeonはどんな感じなのか興味津々だ!
詳細は同社のHPやEfficeon関連の記事をご覧頂きたいが、Be Silent Mt6600の仕様を簡単に述べると、次のようになる。
- CPU Transmeta Efficeon TM8600 1GHz搭載(CPUファンレス)
- Chipset TM8600内蔵、サウスブリッジ ALI M1563M
- Video ATI M7-CSP16 (MOBILITY RADEON 7500) / ビデオメモリ16MBオンボード
- Memory 最大1GB DDR-SDRAM(PC2100またはPC2700 200ピン SO-DIMM 1 slot)
- IDE Ultra ATA100 ×2
- LAN 10/100/1000Mbps ×1(RTL8110s)
- その他 USB2.0 ×2, PS/2キーボード&マウス, AC97互換ALI M1563M内蔵オーディオ
- 内蔵ベイ 2.5インチHDD ×1
- 電源 DC12V/5A ACアダプタ
IEEE 1394が無かったり、内蔵CD/DVD-ROMドライブ(オプション扱い)が無かったりと、家で使うには弱い部分もあるが、何と言っても「CPUのTDPが5W!」、この一言ですべてが許せてしまう。PCなのに水冷だったり、巨大なCPUファンが付いているマシンより機械的なトラブルも少ないハズだ。過去筆者が所有していたPCで故障した理由は、CPUファンが壊れて止まっているにも関わらず、気付かずそのまま使い続けてCPUが壊れたというのが最も多かったからだ。また長年使っているとファンにホコリが溜まり徐々にノイジーになってくる。そういった意味でCPUファンレスは安心して使うことができる。
フロントビュー透明なアクリル板を付け、デザインはPCっぽくなくスッキリしている。パワーLEDは青、HDDのアクセスランプは赤になっている |
リアビューリアは特に書くことは無い。筆者的にイマイチなのは、トップに付いているファン。これでデザインが台無しになっていると思う |
付属のACアダプタDC12V/5A出力のアダプタだ。プラグもよく見かけるサイズ。ACインレットは普通のPCに使われているタイプと同じである |
サイズは204×197×73mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.6kg。見た目は非常にコンパクトだ。実はいろいろ評価したり、写真を撮ったりと、マシンをカバンに入れて何ヶ所かに持ち運んだのだが、さほど重く感じなかった。考えてみればノートPC以外をカバンに入れて持ち運んだことは無く、このコンパクトさは意外に便利。設置場所に困ることはまず考えられない。ThinkPad X31を上に積んだところ、床面積はMt6600の方が二周り以上小さかった。ルックスもフロントパネルはシンプルで仕上げも良くどこに置いてもマッチする。
リアのコネクタ類左下に見える長細いコネクタはIDEポート、右の黄色いRCAコネクタはビデオアウトである。他は一般的なPCと同じだ |
裏から開けたところ裏蓋を開けると、2.5インチのHDDと先のIDEポート(同社ではエマージェンシーIDEポートと呼んでいる)が現れる |
内部シャーシいっぱいにマザーボードが配置されているのがわかる。高さもギリギリ。これ以上は物理的に小さくできそうもない |
メモリマザーボード前方の真ん中に配置されたDDR-SDRAM(PC2100または2700 200ピン SO-DIMM)用のスロットが1つ |
CPU周辺CPUは残念ながらヒートシンクで見えない。また、PCIバススロットが1つあるものの、ケースの関係で使えなくなっている |
冷却ファン12V駆動の静音ファンを5Vの低電圧で駆動し、回転数も4,500rpmから2,100rpmに落としているので、静かだ |
蓋を開けるのは裏のネジ4本を外せばOK。ドライバは必要であるが、メンテナンス性も良さそうだ。ただ写真を撮って元の状態へ戻し電源ONしたところ、冷却ファンの電源ラインがファンに当たってしまいガラガラと音がしてしまった。気が付けば直ぐに治る問題であるが、CPUの真上にあるだけに注意した方がいいだろう。何より印象的だったのは、昔のi386やi486などを想い出させる小さいヒートシンクだ。TDP 5Wはダテじゃない。VIA Edenのヒートシンクも小さいが、CPUクロックや作動速度を考えるとやはりEfficeonに軍配があがる。
●使用感は!?
TransmetaのCPU=Crusoeには、どうしてもアプリケーションやいろいろな作動がカクカク引っかかる感じで動く……というイメージを持っていた。しかし、このEfficeonを搭載したこのマシンを触った瞬間、そんなイメージは完璧に吹き飛んでしまった。キビキビ動き、使い勝手は非常に良く、Intel CPUと比較して何ら悪い印象は持たなかった。3年半の月日はCPUを進化させるには十分の時間だったようだ。
システムプロパティWindows XPでしっかりEfficeon 1GHzと認識されている。メモリ容量が半端な値なのはCMS(Code Morphing Software)で使用しているからだ |
HDBENCHの結果もうベンチマークテストはどうでもいいと思うがいちおう計った。HDDは搭載するユニットで値が変わるのでデータを取っていない |
付属のObserver4LongRun関連のツールは見当たらなかった。このソフトはシステムを監視するツールだ。温度がかなり低いことがわかる |
体感的には十分な速度なのであまり意味が無いと思われるが、一応比較対照として、筆者が使っているThinkPad X31(Pentium M 1.30GHz)のHDBENCHも測ったところ、
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Pentium M 1.3GHz |
Efficeon TM8600 1GHz |
差 |
CPU |
Intenger |
64,801 |
84,205 |
130% |
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Float |
65,415 |
36,670 |
56% |
Memory |
Read |
53,139 |
76,280 |
144% |
|
Write |
36,911 |
45,306 |
123% |
|
Read&Write |
69,712 |
89,897 |
129% |
こんな結果となった。Float以外はすべてクロック数の低いEfficeonが優秀という結果になっている。昔からIntelのCPUはFloatだけは速かったが、今回でも例外ではないようだ。これからもわかるようにEfficeon 1GHzは十分な速度を持っていると言えよう。640×480ピクセルフルフレームのMPEGデータなど比較的重い動画も再生した見たが特に問題無し。気になる音も完全ファンレスには勝てないものの、低回転のファンにより十分“Be Silent”だ。
LongRunパワーマネージメント[パフォーマンスモード]で負荷をかけたところ |
実はここまでで記事を終わろうと思ったが、3年半前の記事で紹介した「VAIO C1VJ LongRun Setting Utility for Windows」が動くかも!? と試したところビンゴだった。このツールを使えば、
- 最低CPUパフォーマンス 533MHz/0.8V
- 最高CPUパフォーマンス 1000MHz/1.3V
- LongRunパワーマネージメント[エコノミーモード]
- LongRunパワーマネージメント[パフォーマンスモード](標準設定)
以上4つの設定が可能だ。標準では“LongRunパワーマネージメント[パフォーマンスモード]”に設定されている。いろいろ負荷をかけて試すと、533MHz/0.8V、600MHz/0.9V、700MHz/1.1V、833MHz/1.1V、1,000MHz/1.3Vの5段階でCPUの動きが変動し、HDBENCHの値も変わってくる(最低CPUパフォーマンスだとIntenger:46,147、Float:19,547になる)。ノートPCではないので、省電力設定が重要というわけでも無いと思うが、使えるハズの機能を確認できるだけでも嬉しいものだ。
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