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BCN、2004年PC市場分析を発表
~デジタル家電がPCの売上げに影響

株式会社BCN シニアアナリスト 田中繁廣氏

11月5日発表



 株式会社BCNは、第3回BCNフォーラムを開催した。今回のフォーラムでは、2004年のPC市場分析を発表、デジタル家電製品の台頭によるPC製品への影響と、その実態について説明した。

 BCNでは、販売店からのPOSデータ、在庫データだけでなく、購入者の年齢や性別、過去の販売履歴などを、個人が特定出来ないレベルの情報源として入手し、市場分析を実施している。

 それによると、2004年におけるPC市場全体の現状は、金額、台数ともに厳しい状況が続いており、前年同期比でも今年前半から落ち込みが続いている。

 株式会社BCN シニアアナリストの田中繁廣氏によると、金額ベースでは、2004年第1四半期から急激にPC本体の需要が低下し、それに比例するようにして、周辺機器、ソフトウェアがマイナス成長を続けているという。デジタルカメラは依然として2ケタ台の伸びをみせ、携帯オーディオも比較的好調ながら、全体的にPCの不振に引っ張られた状態となっているという。

 過去3年間のデータの推移をみると、2004年は新製品の人気が持続しないというのがもっとも大きな特徴で、「2002年、2003年は年末製品が3月くらいまでは売れていた。今年は1月に発表した製品でも1週間程度で急激に販売台数が低下し、夏モデル、冬モデルでも同様の傾向がみられ、新製品の効果が出ていない」、「特に今年の半ばから、市場の弾性値が緩やかで、販売が盛り上がらない」(田中氏)と、ナショナルブランド製品を取り巻く厳しい状況を説明した。

 同氏は、その理由について、新モデルと旧モデルの在庫状況を示しながら説明し、「最近は各企業ともSCM(サプライチェーンマネージメント)をしっかりやっており、昔のように製品のダブつきが少なくなった。売れ筋は三週間くらいで効率よくまわるようになっている。しかし、売れていない製品の動きが非常に悪い」とした。たとえば、春モデル発売後3週間は、年始モデルとの在庫比率が2:1で、3分の1は旧モデルの在庫を抱えてしまう状況が続き、その処分に足を取られるかたちとなってしまったという。

 この傾向はその後の夏モデルでも同様で、「ユーザーが新製品にすぐ飛びつかなくなり、時間が経過して価格が下がってから購入するケースが増えてきた」と分析。新製品を投入してもユーザーを引きつける力がなく、結果的として市場に活気がなくなってしまうという。

 販売店での売り上げ構成比では、2000~2001年期に30%を占めていたPCも、2003年4月に16%、2004年9月時点では10%に低下。逆に2003年4月に8%程度だったTV製品が躍進し、2004年9月には12%前後と、PCを追い抜くかたちとなっている。

持続しない新製品人気 旧モデル在庫の停滞

●PC市場が伸びない理由

 PC市場が伸び悩む理由として、PCの価格、デジタル家電との競合、購買層の変化、ブランド力の低迷などの視点から検証がされた。

 PCの価格については、PC本体価格の平均購入単価が5年間で30%低下しており、価格低下は十分という見解を示した。しかし、価格の下落は需要増にまったく結びつかず、安くても売れないというのが現在の状況であるという。

PC価格の推移 デジタル家電とPC購入者の年齢分布
【お詫びと訂正】初出時に「デジタル家電とPC購入者~」の画像が誤っておりました。お詫びして訂正いたします

 デジタル家電との競合については、PC、液晶TV、DVD/HDDレコーダと3分野別に購入者の年齢を分析。それによると、PCの購入層は10代~30代が中心で全体の52%、液晶TVの購買層は、40代以上が60%を占めているという。ところが、DVDレコーダの年齢層については、PCとほぼ同じ分布となっており、30代以下のユーザーは51%となった。

 つまり、DVDレコーダ製品が好調の場合、PC製品は伸び悩んでしまうという図式となり、デジタル家電とPCの競合を端的に表しているといえる。ただし、ユーザー層が重なるということは、今後、DVD/HDDレコーダ機能を搭載したPC製品の提案が成功すれば、PCの苦境を打開できる可能性があることも示しているという。

 また、オンデマンドのブロードバンドTVを今後のキラーコンテンツと位置づけ、その普及によりDVD/HDDレコーダ機能搭載PCの需要拡大が期待できるが、その時期は2006年以降とされた。

 PC購入者の年齢構成を見てみると、全年齢層において2001年からほぼ変化しておらず、依然として高齢者への訴求力も衰えていないという。

 2002年3月から2004年9月までに、TV/DVD/デジタルビデオカメラを購入したユーザーを対象とした、年齢別の支出構成比では、20代が27.4%増/31.5%減(デジタル家電/PC、以下同)、30代が26.8%増/31.6%減、40代が25.3%増/29.2%減、50代が25.9%増/26.4%減と、軒並みPCへの支出が減少していることがわかる。

 特に、30代以上のユーザーでは、デジタルビデオカメラを子供の運動会シーズンに合わせて購入すると、その年末にはDVD/HDDレコーダなど、関連するデジタル家電製品を連鎖的に購入するケースが多く見られ、その反面、PCへの支出が減少する結果となっている。

 「マスコミなどがデジタル家電がPCに与える影響についてとりあげるが、データを見る限り予想以上に影響があることがわかる」(田中氏)と、当面の間はデジタル家電製品によってPCのシェアは減少するという見通しを明らかにした。

●PC市場規模そのものはシュリンクしていない

国内コンシューマ市場の年間販売台数

 国内ナショナルブランドメーカーの低迷をうけて、デル、NEC、ソニー、富士通など各社の製品を所有するユーザーへのアンケート結果も公開された。

 それによると、まずデル製品を利用するユーザーのPC利用歴がもっとも長く、積極的にPCを利用するヘビーユーザーが多い傾向にあるという。

 また、他社製品からデル製品への乗り換えユーザーがもっとも大きな理由としてあげられたのが、「価格性能比の高さ」、「不要なソフトウェアが入っていない」、「カスタマイズが可能」の3点。

 田中氏は、「デルは性能面での満足度が他社製品よりも圧倒的に高い。安定性への信頼性も高く、実際に使ってみるとそれぞれのユーザーの用途に合っていて、機能に過不足がない。実際に使っているユーザーたちは、非常に合理的な理由で選択しており、これが製品への満足度に直結していると考えられる」と分析した。

 国内コンシューマPC市場の総数については、「今年は大手メーカーブランド製品が成長率89.9%となり、400万台を割ってしまった。来年もこの傾向が続くが、これらのシェアが低下した部分を補うかたちでショップブランドPCが117.6%、100万台と、着実に成長を続けている」(田中氏)とし、PC市場全体では2002年以降は横這いが続いており、極端に落ち込んでいるわけではないという。

 なお、2004年は自作PC市場が対前年同期比85.7%、120万台と初めてのマイナス成長となったが、これはIntel製チップセットの不具合などによる混乱が原因としており、来年以降は再び108.3%のプラス成長へ回復するという。中古市場については、コンシューマ市場では対前年同期比128.3%、68万台とし、今後も急速に増加するとみている。

 これらの結果を受けて田中氏は、「デジタル家電は、家族や子供といった、需要を誘引する要素が多い。これに対してPCはそういったパーソナルな用途にはまだ向いているとはいえない。デジタル家電との融合が今後のテーマだが、時期尚早の可能性が高い。PCについては多機能/多用途な製品が倦厭され、ショップブランドなどシンプルな製品に業界がシフトしており、大手メーカーはそれに追随できていない」という見解を示した。

□BCNのホームページ
http://www.computernews.com/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0730/bcn.htm

(2004年11月5日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]

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