笠原一輝のユビキタス情報局

Intelのデジタルホーム戦略の基礎となる
「Glenwood/Lakeport」チップセット




 前回は、Intelが2005年に導入を予定している新しいデジタルホーム向けブランド戦略“East Fork”についてお伝えした。Intelは、Intel製プロセッサ、チップセット、ネットワークコントローラ、そしてデジタルホームソフトウェアをパッケージにすることで“East Fork”(EF)印のPCとしてマーケティングを行なっていくことになる。

 EF印PCのチップセットとして採用される予定なのが、Intelの次世代デスクトップPC向けチップセット「Glenwood」(グレンウッド)と「Lakeport」(レイクポート)の2製品だ。来年の第2四半期にリリースが予定されているこの2製品は、現行のIntel 925X/915から正統進化した製品となる。


●Intel 925X/915からの正統進化バージョンとなるGlenwood/Lakeport

 Glenwood、Lakeportは、現世代のIntel 925X/915の後継チップセット製品となるが、Intel 925X/915ほどの“革新的な製品”というわけではなく、“正統進化”的な製品となる。というのも、現世代のIntel 925X/915が、前世代から大幅なジャンプであったためだ。

 Intel 925X/915では、ノースブリッジに接続されているGPUのバスがAGPからPCI Express x16になったり、メモリはDDR1からDDR2へ、サウスブリッジのバスがハブリンクからDMIになる……といったように各部で新しい技術が採用され、変わっていない部分を探す方が大変なぐらいの大きな進化だったと言える(だからこそ、型番も3桁目が"8"から"9"へと繰り上げられた)。

 これに対して、Glenwood、Lakeportでは、基本的にはIntel 925X/915のスペックを若干向上させたものとなる。たとえば、システムバスに関しては800MHzから1,066MHzに引き上げられ、メモリはDDR2-533からDDR2-667、シリアルATAもシリアルATA-150からシリアルATA-300になるなど、Intel 925X/915の延長線上にある製品だ。

●進化した内蔵グラフィックスをサポートするLakeport-G

 Glenwood、Lakeportの位置づけは、現在のIntel 925XとIntel 915の位置づけと同様で、Lakeportのチューンナップ版がGlenwoodという位置づけとなる。

 Glenwoodには、Intel 925Xと同じように“Turbo Mode”と呼ばれるメモリ周りのチューニングが施され、環境にもよるが全般的にLakeportに比べて3~7%程度の性能向上が実現されるという。

 いずれの製品も、システムバスはIntel 925X/915シリーズの800MHzから1,066MHzへと引き上げられる。なお、OEMメーカー筋の情報によれば、IntelはSmithfieldをGlenwoodおよびLakeportでサポートすると説明しているが、Smithfieldに関しては800MHzのシステムバスにとどまると説明している。

 Lakeportには、Intel 915がそうであったように、内蔵グラフィックスとPCI Express x16をサポートするLakeport-Gと、内蔵グラフィックスを持たずPCI Express x16のみサポートするLakeport-Pの2つの製品が用意される。また、Intel 915と同じように、内蔵グラフィックスのみサポートするGV、GL版も用意される予定というが、詳細は明らかになっていない。

 内蔵グラフィックスに関しては、Intel 925X/915で採用されたDirectX 9に対応したGMA 900を進化させたものとなる。具体的には内蔵グラフィックスのパイプライン構成などはそのままに、内蔵コアのクロック周波数を引き上げるなどの改良となるという。また、PCI Express x16に挿して外部出力などを増設するためのADD2カードも、若干改良されADD2+へと進化する。

【Glenwood、Lakeport-P、Lakeport-Gのスペック(筆者予想)】
  GlenwoodLakeport-GLakeport-P
CPUSmithfiled
Pentium 4
Celeron D-
システムバス1066MHz
800MHz
533MHz-
メモリDIMM構成2DIMM×2チャネル2DIMM×2チャネル2DIMM×2チャネル
DRAM種類DDR2-667/533DDR2-667/533DDR2-667/533
Turbo Mode--
ECCサポート--
最大メモリ容量8GB4GB4GB
メモリクロック構成1066/DDR2-6671066/DDR2-6671066/DDR2-667
1066/DDR2-5331066/DDR2-5331066/DDR2-533
800/DDR2-667800/DDR2-667800/DDR2-667
800/DDR2-533800/DDR2-533800/DDR2-533
-533/DDR2-533533/DDR2-533
グラフィックス PCI Express x16PCI Express x16/内蔵PCI Express x16

Glenwoodのブロック図(筆者予想)
Lakeport-Gのブロック図(筆者予想)

●最大で8GBのメモリ容量を実現するGlenwood

 メモリに関しては、Glenwood/Lakeportともに、DDR2-667をサポートする。IntelはOEMメーカーに対して、DDR2-667はエンジニアリングサンプルのバリデーションが行なわれている段階で、来年の第1四半期に顧客向けのサンプルを提供、第2四半期に製品の供給が開始されると説明しているという。

 また、Glenwood/Lakeportに関しては、DDR2のみのサポートとなり、DDR1はサポートされない。このため、OEMメーカーはDDR1からDDR2への移行を行なわなければならないことになる。現時点ではDDR2-533はDDR400に比べてやや高めの価格に設定され、普及は思ったように進んでいないが、IntelはOEMメーカーに対してDDR2-533の価格はLakeportのリリース時にはDDR400と同じレベルに落ち着くと説明しており、問題はないというのがIntelの見解であるようだ。

 なお、DRAMデバイスは256Mbit、512Mbitに加えて、1Gbitの密度のデバイスもサポートすることになるという。このため、1モジュールで2GBのメモリモジュールをマザーボード上の4スロットすべてに搭載すれば、最大で8GBのメモリモジュールをサポートできる計算になる。

 しかし、最大8GBのサポートはGlenwoodでのみ実現されるという。技術的にはLakeportでも不可能ではないはずなので、Lakeportでは機能制限がされていると考えるのが妥当だろう。

 これによりGlenwood+EM64Tをサポートしたプロセッサの組み合わせで、おそらくPC環境としては初めて32bitメモリアドレスの限界点である4GBの壁を越える環境が実現される。64bitメモリアドレス拡張であるx64(AMD64/EM64T)の意味が初めてでてくることになりそうだ。

●各セグメント向けに5つのモデルが用意されるICH7

 サウスブリッジのICH7も、ICH6から若干の進化にとどまることとなる。

 大きなところでは、PCI Express x1のレーン数がICH6の4レーンから6レーンに増やされる。また、シリアルATAの規格が、従来のICH6で採用されていたシリアルATA-150からシリアルATA IIで規定されているシリアルATA-300へと進化し、帯域幅が150MB/secから300MB/secへと増やされる。なお、シリアルATAのポート数自体は4のままで、ICH6と同等になる。

 ハードウェアレベルでの強化はその程度で、あとはソフトウェア面での実装が主になっている。

 1つは、Intel Active Management Technology(AMT)と呼ばれる機能が実装される。これは、遠隔地からPCの電源を入れたり、OSの動作ステートを変更したりできるほか、遠隔地からのリカバリーや操作といった企業内でのクライアント管理を容易にする機能だ。また、EnergyLakeと呼ばれる省電力機能も実装されることになるが、これについての詳細は判明していない。

 なお、従来のICH6シリーズでは、ICH6R、ICH6W、ICH6RWというRAIDと無線LAN機能の有無でモデル構成されていたのに対し、ICH7では対象となる市場セグメントごとのモデル設定が行なわれている点が大きな違いとなっている。

 ICH7では、ICH7、ICH7DH、ICH7DO、ICH7DE、ICH7Rという5つのモデルが用意される。“DH”はDigital Homeの略でデジタルホーム向けモデル、“DO”はDigital Officeの略で小規模企業向け、“DE”はDigital Enterpriseの略で大規模な企業向け、“R”はRAIDの略で従来のICH6Rの進化版という位置づけとなっている。

 各モデルの大きな違いは、主にRAID機能の実装、PCI Express x1のレーン数、AMTやEnergyLakeなど、ソフトウェア実装の有無などとなっている。

 ICH7のRAID機能は、ICH6よりも進化し、新たにRAID5のサポートも追加されるが、RAID5のサポートはICH7DEだけになるなどの違いがある。

 なお、ICH7では無線LANはサウスブリッジと同時には提供されない。これは、EFのレポートでも紹介したように、EFの条件にはIntelの無線LANコントローラが入っており、わざわざサウスブリッジのモデルとして採用する必要がないと考えられていることと、そもそもICH6Wを採用した製品がかなり少なかったことなどが影響していると考えられる。

【表2】ICH7の各グレード(筆者予想)
 ICH7ICH7DHICH7DOICH7DEICH7R
PCIマスター6デバイス6デバイス6デバイス6デバイス6デバイス
PCI Express x14レーン6レーン4レーン6レーン6レーン
シリアルATA-3004ポート4ポート4ポート4ポート4ポート
Ultra ATA/1001チャネル1チャネル1チャネル1チャネル1チャネル
RAID-RAID0、1、10-RAID5、0、1、10RAID0、1、10
USB 2.08ポート8ポート8ポート8ポート8ポート
100BASE-TX MAC
オーディオHD Audio/AC'97HD Audio/AC'97HD Audio/AC'97HD Audio/AC'97HD Audio/AC'97
AMT---
EnrgyLake----

●同時期にPCI Express対応のGigabit Ethernetコントローラを追加

 IntelはGlenwood/Lakeportのリリース時に、PCI Expressに対応したEthernetコントローラを追加する。それが開発コードネーム「Tekoa」(テコア)と呼ばれる製品と、「Ekron」(エクロン)と呼ばれる製品で、TekoaがGigabit Ethernet(1000BASE-T)、EkronがFast Ethernet(100BASE-TX)に対応した製品となる。

 Tekoaは、リリースが延期されているNorthwayに変わる製品で、AMTのサポートが追加されるなどNorthwayから機能強化が図られているほか、問題になっていた消費電力なども下げられており、Northwayに変わってPCI ExpressのGigabit Ethernetコントローラとして利用される。

●リリースは2005年の第2四半期を予定しており、今四半期中にサンプル出荷を開始

 Intelに近い情報筋によれば、IntelはGlenwood、Lakeportのリリースに向けての準備を進めており、現時点では2005年の第2四半期のリリースが予定されているという。

 それに向け、現在各OEMメーカーはマザーボードの設計などを行なっている。第4四半期中には最初のサンプル(A0バージョン)の出荷が開始され、2月頃には製品相当のサンプルが提供される予定であるという。

 前回のレポートでもふれたように、Intelはデジタルホーム向けの新戦略「East Fork」において、EF PCになるためにはLakeportの採用を条件としている。そうした意味でも、Glenwood、LakeportはOEMメーカーにとって避けて通れない製品となるだろう。

□関連記事 【10月25日】【笠原】Intel、デジタルホーム向け新ブランド戦略“East Fork”を展開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1025/ubiq83.htm

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(2004年10月29日)

[Reported by 笠原一輝]


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