ステラナビゲータ Ver.7で楽しむ天体シミュレーション


天体望遠鏡のコントロールやプラネタリウム番組機能も搭載




 PC上に星空を再現する。過去、現在、未来の現象を問わず、さまざまな天体現象のシミュレーションが行なえる。それがアスキーソリューションズから発売された天文ソフトウェア「ステラナビゲータ」だ(開発元:アストロアーツ、価格:15,750円)。

 小中学生の頃、多くの人が触ったことのある星座早見板の外観を持ちながら、背後に膨大な天体データを収録しているソフト。そう想像すれば、この製品の特徴を捉えやすいかもしれない。

 この記事では、ステラナビゲータそのものについて、そして最新バージョンVer.7と、ソフトと連携が可能な周辺機器(天体望遠鏡)について紹介していこう。

●プラネタリウムソフトの域を超えた新バージョン

 最新バージョン「ステラナビゲータ Ver.7」は、従来バージョンから約2年ぶりのアップデートとなる。主に、使い勝手の向上と、収録されている天文データを活用するための工夫が盛り込まれている。

 ステラナビゲータ Ver.7には、今夜見る星空を表示するといった、従来までの趣向とは違ったテーマが採り入れられた。

 国内では、この種のソフトではステラナビゲータがデファクトスタンダードとなっているが、ターゲットが似ている米国市場でのソフト「Starry Night」や、「TheSky」などは、写真のようなリアリティ再現といったキーワードでバージョンアップをしている。これらに対抗する新バージョンともいえる。

 また、後で述べるようなプラネタリウム番組の収録や、さまざまな表示方法を用意することで、カスタマイズによる星空の楽しみ方も提案している。言ってみれば、「必要な機能は前バージョンで十分に揃った。それを使い勝手よく改良したのが、新バージョンのステラナビゲータ Ver.7」ということになるだろう。

 ひと言にPC上に星空を再現するといっても、さまざまな表示方法がある。最もベーシックなものとしては、今夜見上げる夜空を再現表示してみるといった日時を指定するものだろう。

 そのほかにも、これから起こる月食や日食の再現や、月と惑星の接近模様など、あらかじめ現象の日時が分かっていれば、こちらも日時指定で見ることが可能だ。このような用途が、プラネタリウムソフトというカテゴリーに分類される、これまでの主目的だった。

2009年7月22日には、屋久島から奄美大島で皆既日食が見られる。その模様をシミュレーション。アニメーション表示でリアルタイム表示、分、時、月、年などと自由な設定単位で描画更新し続けることもできる 2009年7月22日の皆既日食の様子を、天体の「光跡を残す」設定で5分置きの描画を繰り返したところ。このように推移を表すビジュアルな素材を作り出すことも可能だ

 ステラナビゲータ Ver.7でクローズアップされているのは、日時指定以外にも、条件検索によって現象を探し出すことができる機能などだ。これにより、今後、数年から数十年先の間に起きる珍しい天文現象を表示してみる、といったこともできる。国内では詳細が情報誌に掲載されない、海外での天文現象の時刻を知ることも可能だ。

 たとえば、オーストラリアなど南半球への海外旅行を予定しているが、南十字星は何時にどのあたりに見えるのだろう? などと、海外での星空をシミュレーションできるのもソフトならではの機能だ。

天体どうしが近づく現象「会合」現象。特定の候補を設定して日食や月食、星食などさまざまな現象の検索が可能 夜空を見上げるとほとんどは自らが輝く恒星だ。その等級を自由に設定できる。地域や環境による見え具合に合わせると、実際に見上げた時との比較でリアルさが増す
観測場所をシドニーに設定したところ。南十字星が見える時刻は? といった調査も可能だ 市街地の街灯などによる影響を「光害」と呼ぶ。その環境光もシミュレーションできる。そのメニュー設定周り

 そして、星の明るさ(等級)が調整可能な点も便利なもののひとつ。慢性的なスモッグにより、星が見えづらい地域でも、見つけやすくしてくれるガイド機能にもなっている。

 市街地に住んでいると、街灯などによって星空は見えづらいもの。小中学生の頃に触った星座早見板と、実際の空のイメージがかけ離れていて、星座が思う通りに見つけられなかった。そんな思い出がないだろうか?

 そんな実際の星空とのイメージの違いも、ステラナビゲータが吸収してくれる。人工的な街灯や、満月の明かりによる影響もある程度シミュレーション可能だ。

 コンピュータ制御可能な天体望遠鏡と接続することができるのも持ち味となっている。ステラナビゲータは、望遠鏡のアクセサリとしても用いられているのだ。

 対応するソフト(PC)と天体望遠鏡を接続すれば、天体望遠鏡で実際に見たい天体をクリックすると、望遠鏡が動き出すといった具合だ。詳細は後述するが、石井英男氏が2003年夏に掲載した記事でもだいたいのイメージは感じ取ることができるだろう。

 次に、新バージョンに特化した事項も挙げていこう。

●使い勝手の向上と、多機能さを活用する機能の搭載

 ステラナビゲータ Ver.7でいちばんの特徴は、使い勝手の向上だ。従来までのバージョンは、どちらかというとWindows XPのネイティブな機能が使われていなかったためか、使いづらい面があった。

ステラナビゲータ Ver.7のメニュー周り ステラナビゲータ Ver.6のメニュー周り

 ステラナビゲータ Ver.7では、多くのWindows XPアプリケーションと同じく、想像しやすい操作性になったのだ。また、使い始めれば感じてくるアクセス頻度が高い機能は、ほとんどがフロート可能なツールボタンとしてメインウィンドウ上に配置された。これは多くのWindowsアプリでは当たり前なことだが、ようやく追いついたといった感じだ。

 前でも軽く触れたように「プラネタリウム番組」を搭載したのも目新しいところである。

 ステラナビゲータ Ver.7にはさまざまな天文データが収録されているが、そのほとんどはユーザー指定によって膨大なデータの中から一端が呼び出されるもの。星座早見板がそうであるように、ユーザーによるほとんどの利用シーンは、日時指定で星空を再現するといった感じだろう。

 ステラナビゲータ Ver.7では、プラネタリウムに行った時に特定の番組が流れるように、著名なプラネタリウム解説者のナレーション入りのプラネタリウム番組を収録し、見て楽しむといった趣向が採り入れられている。

 これにより、星空を眺める前に使うソフトといった面だけでなく、季節ごとの見どころとなる星座解説や、神話、代表的な過去、未来の天文イベントなども番組として見ることができるのだ。天文教材としても優れた面を備えたといえる。

 ほかにも、PC上のソフトならではのメリットとして、突発的な天文現象にも追従できるアップデート機能が挙げられる。その代表格なものとしては、太陽(地球)に近づいてから存在が確認されることが多い「彗星」データの追加だ。インターネットを介してアストロアーツから提供されるデータをインポートすることで、ステラナビゲータ Ver.7上に位置表示させることができる。

標準で23のプラネタリウム番組が収録されている。それぞれには、音声付きでナレーター解説が行なわれるものもある インターネットを介して天体データベースの更新が可能。彗星や人工天体など、未知のものにも表示対応する

●天体自動導入望遠鏡との接続にSTARBOOKが追加

ほとんどのコントローラはCOMポート接続になる。STARBOOKのみEthernet接続

 最近では、アマチュア向けの天体望遠鏡でも、上下左右に鏡筒を動かすモーター制御が安価に実現できるようになった。10年ほど前までは、天文学者だけが使用していたような機能であり、コンピュータ制御で天体の自動導入、自動追尾などは高嶺の花だった。

 後で挙げるような対応する天体望遠鏡であれば、手のひら大程度のコントローラ上でメニュー操作をし、全天の中から見たい天体の位置へとナビゲートしてくれるのだ。

 制御部であるコントローラとPCを接続し、制御対応ソフト上で実際に見たい天体をクリックすればよい。天体望遠鏡は、自動的に希望する向きに動き出してくれる。ステラナビゲータ Ver.7では、代表的なコントローラほぼすべてが網羅されており、10種類以上をサポートしている。

 ステラナビゲータ Ver.7で新たにサポートされたのはビクセンの自動導入赤道儀「スフィンクス」のコントローラ「STARBOOK」だ。

 この種類の天体望遠鏡は、天体自動導入望遠鏡とも称されており、ほかにもミードの「ETX」(コントローラ名は、オートスター)、セレストロンの「NexStar」、そしてビクセンのスカイセンサーやスフィンクス(コントローラ名は、STARBOOK)などがある。それぞれのコントローラは、STARBOOK以外、ほとんどが2桁表示程度の簡易ハンドコントローラによるメニュー操作で、天体自動導入の操作を行なうもの。

 それが、コントローラとPCをつなぐことで、2桁表示のCUIではなく、ステラナビゲータの星図表示を見ながら自動導入操作ができるようになるのだ。

 ただし、ステラナビゲータ Ver.7で新たにサポートされたSTARBOOKは、標準でも星図表示が可能なコントローラだ。このため、ステラナビゲータとつないでも機能がダブってしまうため、必須なサポートであったかは疑問が残る。

●眼視の星空模様だけでなく惑星や月の満ち欠けも再現

 ステラナビゲータを起動して、星空のナビゲーション用途として使うのもよいが、星図を何段階にも拡大表示していけば、木星や土星、オリオン大星雲などを、CGによる詳細なディティール表示が可能だ。

木星を拡大表示したところ 土星の拡大表示。2004年前後は最も環が傾いている年になる。今度の環消失と呼ばれる見えなくなる年は2009年頃
オリオン大星雲のあたりを拡大表示したところ。星座は冬の代表的なもののため、読者の多くが知っているだろう 星の光跡を残す設定で時間を進めたもの。北極星を中心に星が流れる様子は、天体写真でも見たことがある人が多いだろう

 木星は約10時間で自転しており、土星は約15年周期で環の傾きが変化している。2003年に大接近した火星も約2年周期で地球への接近を繰り返している。

 このような惑星の見え具合も、星図表示を拡大していくと、まるで天体望遠鏡で見たように様子を観察することができるのだ。

 ほかにも、ステラナビゲータを始めとするプラネタリウムソフト界では、前で挙げたように星空をリアルに再現する機能がトレンドとなっており、ステラナビゲータ Ver.7では星の瞬きも再現したり、前バージョンからは流星を不定期に表示するなど、環境ソフトとしての趣向も盛り込まれている。

●天体観測をナビゲートする機能も豊富に

 従来までのバージョンでは、表示モードによる視野角によって、隣接する天体を的確にクリックすることが困難だった。例えば地図ソフトでいえば、県全体の表示状態で1丁目1番地をクリック表示するようなものだ。

 このため、視野角表示を切り替えて希望する天体をクリックといった手間が必要だった。しかしステラナビゲータ Ver.7からは、隣接する候補がプルダウン表示されるようになっている。

画面を拡大率が低い場合でも的確な天体を指定できるようにプルダウン表示をサポートした 写野角の設定。星空写真を星野写真と呼ぶため、天体写真では写野の角度と表現する

 また、天体写真を撮影する場合に便利なのが写野角枠の表示だ。銀塩、デジタルカメラを問わず、夜空の暗さにはよるものの、60秒程度の露出でも3、4等星程度まで撮影することが可能だ。

 しかし、暗い星空で思い通りの構図を見つけ出すのは困難なもの。さらに、長露光によってやっと暗い星が浮かび上がって写るからなおさらのことだ。そんな時に役立つのが、写野角枠の表示。デジタルカメラのレンズとCCDサイズを参考に、撮影可能な角度を設定できる。

 著名なデジタルカメラ(EOS Kiss Digital、10D/20D、FinePix S2Proなど)や、天体向けのCCDカメラなどは、あらかじめメニュー登録されているため手軽に確認可能だ。

 このようにステラナビゲータ Ver.7は、星空の観測のためのナビゲーションだけでなく、双眼鏡や天体望遠鏡での観測をサポートするソフトとしても役立つ。

 なお、ステラナビゲータ Ver.7には、使用期間30日間、一部の機能が省かれているという体験版が用意されている。アストロアーツのサイトからダウンロードが可能だ。興味のある方は試してみるといいだろう。


□製品情報
http://www.astroarts.co.jp/products/stlnav7/index-j.html
□関連記事
【9月2日】ジョイスティックで太陽系を航行できる「ステラナビゲータ Ver.7」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0902/asciis.htm
【2003年9月17日】約6万年ぶりに「超」大接近した火星の撮影にチャレンジ!(後編)
〜難しいけどやりがいがある天体撮影
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0917/digital004.htm

(2004年10月22日)

[Text by 富澤正弘]


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