プロカメラマン山田久美夫のデジタルカメラレポート

キヤノン「EOS 20D」製品版 実写画像



 9月18日、キヤノンの新世代中堅モデル「EOS 20D」が発売される。

 前回は20Dのβ版インプレッションをお届けしたが、今回は待望の製品版を入手できたので、早速、そのファーストインプレッションをお届けしよう。

 といっても、実のところ、β版と製品版との違いは全くといっていいほど感じられず、基本的には前回お届けしたβ版レポートの使用感や画質と、ほぼ変わるところはない。そのため、基本的な使用感については、前回のレポートを参照いただきたい。

 特記しないかぎり、レンズにEF-S17-85mm F4-5.6 IS USMを使用し、ISO100、オートホワイトバランスで撮影している。

 なお、キャプション内のデータは、「ファイル容量/解像度/露出プログラム/ISO感度/シャッタースピード/絞り値/露光補正量/焦点距離/ホワイトバランス」の順番になっている。

●軽快な使用感

 今回、20D製品版をあらためて使って、「もう、これで十分じゃない!」というのが、正直な感想だ。

 これまでの中堅デジタル一眼レフは、実用十分な性能とはいいながらも、カメラとしての感触や軽快感という点では、やや我慢を強いる部分があった。とくに、ファインダーや連写性能については、高級機との差は歴然としたものがあった。

 その点、本機は、これまでの中堅機とは一線を画すほど、きわめて軽快で心地よく撮影できるモデルに仕上がっている。感覚的にはまさに、ライバル機に比べ、一世代抜きんでた印象だ。

 中でも、秒5コマを実現した連写性能からくる軽快感はなかなかのもの。実際、通常の撮影で秒5コマの連写をするケースは希だが、これだけの連写性能を備えたことで、次のカットが撮影できるまでの待ち時間(といっても、ごくわずかだが)を感じることがほぼなくなった点は大きな進化といえる。

 もちろん、この高速連写は、動体撮影にも威力を発揮する。とくに、連写中でもミラーのバタツキが少ないため、被写体の細部やピントも確認しやすい点は特筆に値する。

 ただ、連写枚数については、もう一息といった印象。普通にJPEGで撮影しているぶんには不満はないが、筆者の場合、RAW+JPEGで撮影することが多いため、連写は6枚しかできず、処理とカード書き込み待ちで焦れったい思いをすることが多々あった。できれば、中堅機といえども、RAW+JPEGでも10枚くらいの連続撮影能力を期待したいところだ。


●定点撮影 1
ISO100
3.16MB / 3,504×2,336ピクセル
絞り優先AE / ISO100
1/125(秒) / F11.0 / 0EV
26.00(mm) / 自動
ISO200
3.32MB / 3,504×2,336ピクセル
絞り優先AE / ISO200
1/250(秒) / F11.0 / 0EV
26.00(mm) / 自動
ISO400
3.60MB / 3,504×2,336ピクセル
絞り優先AE / ISO400
1/500(秒) / F11.0 / 0EV
26.00(mm) / 自動
ISO800
3.79MB / 3,504×2,336ピクセル
絞り優先AE / ISO800
1/1000(秒) / F11.0 / 0EV
26.00(mm) / 自動
ISO1600
3.80MB / 3,504×2,336ピクセル
絞り優先AE / ISO1600
1/1500(秒) / F11.0 / 0EV
26.00(mm) / 自動
ISO3200
4.28MB / 3,504×2,336ピクセル
絞り優先AE / ISO3200
1/4000(秒) / F11.0 / 0EV
26.00(mm) / 自動

●定点撮影 2
ISO100
3.26MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO100
1/125(秒) / F11.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動
ISO200
3.40MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO200
1/250(秒) / F11.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動
ISO400
3.67MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO400
1/500(秒) / F11.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動
ISO800
3.85MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO800
1/1500(秒) / F11.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動
ISO1600
3.87MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO1600
1/2000(秒) / F11.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動
ISO3200
4.30MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO3200
1/6000(秒) / F11.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動

●優秀なファインダー

 さらに、APS-Cサイズセンサー搭載機の中でも、ファインダー倍率が高いため、視野が大きく見え、被写体の細部がファインダー上で確認しやすい点も好ましい。また、ファインダー上で前後のボケ味が素直に見える、新開発されたフォーカシングスクリーンも大きな魅力。

 従来、このクラスの中堅機は、ファインダーの明るさを重視するため、見え味、とくに前後のボケについてはさほど気を使っていないモデルが多かった。とくにマニュアルフォーカスでの撮影については、ほとんど絶望的なモデルも多々あったわけだ。

 その中にあって本機は、一眼レフの命ともいえる、ファインダーの見え味にこだわっており、若干ざらついた感じもあることはあるが、それ以上にボケの確認も容易で、ピントの芯も捕らえやすい点に好感が持てる。

 これで視野率がもう少し高ければいいのだが、この点はコストやサイズの大きく関わってくる部分だけに、中堅機としては仕方のない部分もあるのだろう。とはいえ、次機種では大いに期待したい部分でもある。

●A3オーバーにも耐える本格派画質

 β版でもその画質には感心したが、製品版でもそのクォリティーの高さに感心してしまう。

 解像度は必要十分。もちろん、A3を超えるサイズでのプリントにも十分耐える解像感を備えている。A3サイズといえば、ほぼ半切と全紙の中間的な大きさであり、このサイズがカバーできれば、よほど特別な目的がない限り、必要十分すぎるほどの実力といえる。

 ただ、標準設定時の輪郭強調処理がやや控えめだと感じる人や、後処理をあまりせずにプリントしたい人は、カメラ内の現像パラメータ設定で「シャープネス」を強めにすることをオススメしたい。

 色再現性はごく自然なもの。Kiss DIGITALの「見た目指向」に対して、本機は上級モデルのため、絵作りが素材重視指向になっている。そのため、彩度が全体に抑え気味の設定になっており、標準設定でのJPEG画像を見ると、想像以上におとなしい印象を受ける。いい方を変えれば、撮ったままの画像を見ると、ややインパクトに欠ける嫌いがある。この点は、今回の実写画像を見ていただければ、その雰囲気がある程度、つかめることだろう。

 このあたりは、好みの世界になってくるわけだが、おそらく、コンパクト機からのステップアップや、銀塩リバーサルフィルムからの乗り換えユーザーを考えると、大人しすぎるのでは? という疑問がわいた。この傾向は設定を見栄え優先の「パラメータ1」に設定すれば多少解消されるが、それでも風景撮影などのシーンによっては若干物足りないこともあった。

 もう一点気になったのは、EOS-1D系列ボディーとの色再現性の違い。JPEG画像で色が違うのは仕方ないが、同じシーンを同条件で撮影したRAWデータを、付属ソフトのDPPで処理しても、同じ感じの色調にはならず、その差を後処理で吸収するのは難しい。

 これでは、1Dsや1D Mark IIをメインに、20Dをサブ機として使うときなどに困ってしまう。とくに今後、複数のデジタル一眼レフを同時に併用するアマチュアカメラマンが増えてくることを考えると、機種間での色管理や整合性について、より本格的に取り組んでほしいところだ。

●屋外
3.76MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/125(秒) / F8.0 / 0EV
17.00(mm) / 自動
3.80MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/125(秒) / F8.0 / 0EV
24.00(mm) / 自動
4.79MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/179(秒) / F8.0 / 0EV
85.00(mm) / 自動
4.87MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/125(秒) / F8.0 / 0EV
17.00(mm) / 自動
2.07MB / 3504×2336ピクセル
シャッター速度優先AE / ISO100
1/125(秒) / F6.7 / 0EV
85.00(mm) / 自動
ISO400、レンズはシグマ80-400mmを使用
1.05MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO400
1/3000(秒) / F5.6 / 0EV
400.00(mm) / 自動

●ISO400は常用域、ISO1600も実用域へ

 本機の大きな魅力に、ノイズ感の少なさがあげられる。このあたりは同社が得意とする分野であり、10Dなどに比べて画素ピッチが小さくなったにもかかわらず、ノイズはむしろ減っている点は特筆に値する。

 中でも、高感度設定時のノイズレベルは感心するほど。実際の撮影では、ISO400でもノイズが気になることはなく、画質にとことんこだわるユーザーでない限り、十分常用できるレベル。

 さらに感度が必要なシーンでは、ISO1600に設定しても、意外なほどノイズは少なく、作品の足を引っ張るようなことも少ない。撮影途中で感度が変えられるのはデジタルカメラの大きなメリット。しかも、ここまで超高感度でも、このレベルの仕上がりであれば、F値(レンズの明るさ)の暗いズームレンズでも、手持ちので自然光撮影や、きわめて動きの速い被写体にも十分対応できる。

 今回は300mmまでのズームレンズに、テレコンバーターを2つ(2倍と1.4倍)を装着して、動きの速いカワセミを撮影してみたが、ISO1600まで使えれば、(レンズの描写はともかく)、迫力のある撮影を手軽な機材で楽しむことができた。

 なお、今回は、メーカー保証外になるが、私が常用している、純正以外のレンズメーカー製レンズ(シグマ製)でも撮影してみたが、とくに動作がおかしくなるようなケースはなく、安心して撮影できたことも報告しておきたい。

●超望遠撮影
シグマ120-300mmF2.8+テレコン2倍+テレコン1.4倍、ISO800
1.53MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO800
1/44(秒) / F4.0 / -2.0EV
300.00(mm) / 自動
シグマ80-400mm、ISO1600
1.19MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO1600
1/7999(秒) / F5.6 / 0EV
400.00(mm) / 自動

●魅力的な手ぶれ補正標準ズーム

 レンズは前回のβ版レポート時と同じく「EF-S17-85mmF4-5.6IS」をメインに撮影した。

 このレンズ、F値はやや暗いが、使い勝手は上々。実際に使ってみても、手ぶれ補正効果はシャッター速度で3段分といううたい文句は納得できるレベル。もちろん、手ぶれ補正レンズといっても、動きのある被写体では被写体ブレが発生するため過信は禁物。だが、「EOS 20D」との組み合わせであれば、高感度設定でも十分な画質が得られるため、その安心感は相当なもの。

 前回も報告したように、絞りを開けた状態での画面周辺部の画質低下はやや気になるレベルだが、最短撮影距離も短く、簡易マクロ撮影にも対応できるなど、使い勝手がよく、ほとんどの撮影をこれ一本でまかなうことができる。

 今回はレンズ単体での貸し出しで、別売のレンズフードがなかったため、フードなしでの撮影になった。そのため、逆光気味のシーンでは、レンズ内反射によるコントラストの低下が気になるシーンもあったが、おそらく、専用フードを別途購入すればこの心配は半減することだろう。とはいえ、高倍率で比較的高価なレンズだけに、レンズフードくらい標準で同梱してほしいというのが本音だ。

●安心感のある実力派中堅モデル

 いきなりリアルな話で恐縮だが、本機は本日発売だけに、具体的な実売価格が見えてきた。

 私の知る範囲では、かなり信頼できる店でボディー単体で16万円台(税込)をつけたところもあり、大手量販でもポイント込みで18万円台後半というのが相場。そのため、どうやら当初の予想より手ごろな価格で入手できるようだ。

 同社の高級機である「EOS-1D Mark II」と使い比べると、質感などの点で見劣りする部分はあるが、実用レベルでの機能や使い勝手の違いを考えると、3倍以上の価格差を感じるほどではない。その点ではお買い得なモデルともいえそうだ。(むしろ、20Dの3倍以上も出さなければ、すぐ上のモデルが購入できないというラインナップに疑問を持つが)。

 また、開発期間で見ると、10D発売から今回の20Dまで、約1年半。一眼レフの場合、開発ペースから考えて、今後これ以上短いペースで次期モデルが登場することは考えにくい。しかも、(現時点で考えると)本機の実力があれば、次世代モデルが登場しても、十分にサブ機として活躍できるだけの実力があると思われる。

 そのように考えると、EFレンズユーザーにとっては、そろそろ買い時かな? という感じもあり、実売価格が上記のようなレベルならば、本機はなかなか堅実な選択肢といえそうだ。

 一方、同時発売のEF-S 17-85mmF4-5.6ISも使い勝手がよく、とても魅力的な存在。もちろんEF-Sタイプのため、最高級機のEOS-1D系ボディーや、10Dなどでは利用できない。その点を十分に考慮する必要があるが、20D用標準ズームと考えれば、少々高価だがそれだけの価値は十分にありそう。

 もちろん、価格を考えれば、従来Kiss DIGITALとのセット販売専用だった「EF-S18-55mmF4-5.6」を選ぶという手もあるわけだが、予算に少しでも余裕があるのであれば、レンズ性能や使い勝手、手ぶれ補正機能などの点で17-85mmISレンズをオススメしたい。

 このところ進化著しいデジタル一眼レフも、20万円以下でこれだけの性能を備えた比較的長期間愛用できそうなモデルが入手できる時代になったことは、とても喜ばしい。35mm一眼レフで作品作りを楽しんでいた人も、この機会にデジタル一眼レフへの移行を本機で考えてもいい時期だろう。

 ただ、本機に至っても、まだまだデジタル一眼レフの致命傷である、撮像面へのゴミの付着といった、基本的なトラブルについては全く解消されていない。これは20Dに限ったことではないが、このゴミ問題が解決するまで、まだ時間がかかりそうだ。とても完成度の高い、軽快なモデルだが、この点が本機の最大のウイークポイントといえるだろう。

●屋内
3.81MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/44(秒) / F4.5 / 0EV
17.00(mm) / 自動
2.94MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/30(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動
1.78MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/30(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動
1.78MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/20(秒) / F4.0 / 0EV
17.00(mm) / 自動
2.29MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/44(秒) / F4.5 / 0EV
17.00(mm) / 自動
2.68MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/60(秒) / F5.6 / 0EV
83.00(mm) / 自動
1.91MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/125(秒) / F6.7 / 0EV
85.00(mm) / 自動
ISO400
2.92MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO400
1/20(秒) / F4.5 / 0EV
30.00(mm) / 自動

●夜景
ISO100
2.50MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/1(秒) / F4.0 / 0EV
17.00(mm) / 自動
ISO1600
3.41MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO1600
1/20(秒) / F4.0 / 0EV
17.00(mm) / 自動
ISO1600+手持ち撮影でISの効果を見る
3.81MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO1600
1/15(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動
ISO100+30秒露光(ノイズリダクションあり)
2.53MB / 3504×2336ピクセル
シャッター速度優先AE / ISO100
30(秒) / F22.0 / 0EV
17.00(mm) / 自動

●人物
ISO100
2.00MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/89(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動
ISO400
2.46MB / 3504×2336ピクセル
絞り優先AE / ISO400
1/20(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動

●マクロ撮影
2.12MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/89(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動
1.84MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/20(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動
2.37MB / 3504×2336ピクセル
プログラムAE / ISO100
1/179(秒) / F8.0 / 0EV
85.00(mm) / 自動
1.85MB / 3504×2336ピクセル
シャッター速度優先AE / ISO100
1/125(秒) / F5.6 / 0EV
85.00(mm) / 自動


□キヤノンのホームページ
http://canon.jp/
□製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/20d/index.html
□関連記事
【9月4日】キヤノン「EOS 20D β機」ファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0904/yamada.htm
【8月20日】キヤノン、820万画素デジタル一眼レフ「EOS 20D」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0820/canon1.htm
【8月24日】写真で見る「キヤノン EOS 20D」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0824/canon.htm

(2004年9月17日)


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[Reported by 山田久美夫]


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