プロカメラマン山田久美夫の

キヤノン「EOS 20D β機」ファーストインプレッション



 待望の本格派中堅モデル「EOS 20D」の試作機β版ボディが、ようやく手元に届いた。

 今回実写したのは、「EOS 20D」のβ版と、同時発表となる注目の光学手ブレ補正機能搭載標準ズーム「EF-S17-85mmF4.0-5.6 IS USM」のセット。さっそく、ファーストインプレッションをお届けしよう。

 なお、β版ボディのため、最終的な画質については若干変わる可能性もあることをご了承いただきたい。また、製品の仕様などについては、関連記事を参照されたい。


●ストレスフリーな実力派中堅機

 「ついに中堅一眼レフもここまできたか」というのが、本機で実写しての第一印象。

 これまでのデジタル一眼レフは、何らかの形での我慢しなければならない点があったが、本機にはそれがほとんど見あたらず、35mm一眼レフと同じ感覚で、ストレスを感じることなく、軽快に撮影できるモデルに仕上がっている。

 本機は昨年春に発売された「EOS 10D」の後継機になるわけだが、とにかく、その進化には目を見張るものがある。

 もちろん、新開発のAPS-Cサイズ800万画素CMOSセンサーや高速な画像処理エンジンである「DIGIC IIの搭載など、デジタル部分も進化しているが、これまでお座なりになりがちだった、一眼レフカメラとしてのメカ的な部分が大幅に進化しているのが、本機の大きな特徴といえる。

 そのため、仕様で見る以上に、実際に使ってみると、明らかに1ランク上のモデルへと進化しているのが体感できる。

 撮影感覚は軽快そのもの。とにかく「10D」でストレスを感じていた、起動の遅さや連写速度が大幅に改善されており、AF測距も9点式と大幅に進化している。

 なかでも、進化をもっとも体感できるのが連写速度。先代の「10D」が秒間3コマだったのに対して、本機では一気に秒間5コマまで高速化された。もちろん、実際の撮影では、秒5コマで連写するケースは少ないわけだが、コマ速の高速化により、次のコマを撮影できる準備が整うまでの時間が非常に短くなっており、カメラ全体の動作もかなり機敏に感じられるようになった。

 そのぶん、「10D」のような静かなシャッター音ではなくなってしまったが、それと引き替えに「EOS-1D Mark II」に近い切れ味のよさを得た感じだ。

 また、連写時など撮影直後のミラーの振動もよく抑えられている。そのため、高速連写中でも、ファインダー像の乱れが少なくピントもしっかり確認でき、連写中のマニュアルフォーカス操作さえ可能になるなど、一眼レフとしてのメカ部分もきちんと押さえられている。この点では35mm中堅一眼レフにありがちだった、”数字だけの秒5コマ”とは一線を画している。

 JPEG時の連続撮影枚数は23枚(Fine時)と十分なもの。これだけの連写ができれば、スポーツ撮影や動きの速いポートレート撮影にも十分対応できる。

 一方、RAWデータ時の連写枚数は「10D」の9枚から、「20D」では6枚(RAW+JPEG)に減っているが、実際にはDIGIC IIの搭載により処理速度がより高速化されているため、バッファーがフルになってからの解放されるまでの時間が短くなっている。そのため、RAW+JPEG設定で高速連写をしない限り、ストレスを感じることは少ない。

 正直なところ、ここまで連写性能が上がれば、普通の撮影で「EOS-1D MarkII」の必要性を感じることは、ほとんどないだろう。

 さらに、レリーズタイムラグの短さやAF測距性能も、EOS-1D系に迫るレベルであり、本格的なスポーツ撮影にも耐えるレベルの高速連写性能を実現している。とくに、新開発の9点測距AFは高速で使い勝手もよく、測距点選択がボディ背面のジョイスティックで感覚的に変更できる点にも好感が持てる。

 ファインダーの見え味も上々。倍率も十分に高く、アイポイントも十分に確保されているため、眼鏡をかけていても、全視野が容易に確認できる点が好ましい。さらに、新設計のフォーカシングスクリーンもよくできており、若干マット面が粗めに感じられることはあるが、その分、ピントが確認しやすく、ボケた部分も不自然ではなく、それでいて、ファインダー像も比較的明るいという、バランスのとれた見え味を実現している。

 このあたりは、地味なところだが、一眼レフの生命線であり、実際の使い勝手を大きく左右する部分だけに、この点に注力している点は高く評価できる。

●ワンランク向上した画質

 やはり気になるのは画質。先代の「10D」も、画質面で定評のあるモデルだったが、本機はそれをさらにリファインした感じだ。

 センサーは「10D」と同じAPS-Cサイズだが、画素数は600万画素から800万画素へと、約3割ほどアップしており、Kiss DIGITALとの差別化がなされている。

 今回は画素数が増えただけではなく、ローパスフィルターが「EOS-1D Mark II」と同じ構造の3枚構成になったことで、モアレを抑えながら、高い解像感を実現しているのが大きな特徴といえる。

 ただ、本機は素材重視のセッティングのため、デフォルトでは輪郭強調処理が弱めなので、標準設定では、意外にソフトな印象だ。

 そのため、A3くらいのプリントでは「10D」との大きな違いを感じることは少なく、800万画素になったからといって、見違えるほどシャープになっているわけではない。もちろん、カメラ内の設定や後処理で輪郭強調を強めにすれば、かなり解像感の高い画像が得られるので安心してほしい。

 また同じセンサーサイズで画素数がアップするのに伴って、画素サイズもやや小さくなっている。だが、マイクロレンズの見直しなどセンサー自体の改良とDIGIC IIの採用により、色や階調再現性も向上している。

 色調は上級機であることを考慮し、どちらかというと「EOS-1D」系のおとなしい、素材重視セッティングになっている。そのため、デフォルト設定でのJPEGデータを見ると、結構渋めの色調に仕上がっており、ややインパクトに欠ける部分がある。この辺りはやや好みが分かれるところだろう。もちろん、色調はカメラ内で設定を変更することで、「Kiss DIGITAL」寄りの見た目重視の設定にすることもできる。

 ノイズレベルも以前より軽減されており、高感度撮影と長時間露出時には、その違いを明確に感じることができる。高感度撮影時のノイズはよく抑えられており、ISO400でも安心して常用できるレベル。

 そのため、ノイズを極端に抑えたい場合など特殊な条件でない限り、最低感度のISO100を使う必要はなく、通常はISO200〜400くらいにセットしておいたほうが、ブレも軽減できるため、使いやすいだろう。

 さらにISO1600まで感度を上げても、やや色ノイズが増えるとはいえ、十分実用レベルの画像が得られる。そのため、同時発表の光学手ブレ補正機能内蔵のISレンズを組み合わせれば、これまで実現困難だった“ズームレンズによる夜景の手持ちスナップ”さえ可能だ。

 長時間露出にも強く、ISO100で30秒露出をしても、さほどノイズっぽさを感じることはない。これなら、よほど積極的にノイズを抑えたい場合以外は、撮影後に同じ露光時間シャッターを開いてノイズ軽減をするカスタム設定の「長時間露出時のノイズ低減」をONにする必要はないだろう。

●魅力的な手ブレ補正標準ズーム

 今回は本機の推奨ズームとなる、EF-Sシリーズの光学手ブレ補正機能搭載標準ズーム「EF-S17-85mmF4.0-5.6 IS USM」をメインに撮影した。

 35mm判換算で27〜136mm相当の常用域を広くカバーする5倍ズームだけに、ほとんどの撮影はこれ一本で足りてしまう。また、EF-Sレンズのため、イメージサークルがAPS-Cサイズに特化することで、比較的コンパクトに仕上がっている。

 また、最短撮影距離もズーム全域で35cmと短く、使い勝手は上々。望遠側では1/5倍のマクロ撮影が楽しめるわけだが、これはL判プリントの半分の範囲が、画面いっぱいに写るもので、かなり強力なマクロ機能といえる。そのため、マクロレンズを用意しなくても、身近な花や静物の撮影を気軽に楽しむことができる点もこのレンズの大きな魅力といえる。

 もちろん、このレンズは同社自慢の光学手ブレ補正機能を搭載しており、その効果は絶大。シャッター速度換算で約3段分の補正効果があるというが、そのうたい文句はほぼ信頼できる感じだ。もちろん、補正機能を過信するのは禁物だが、一種の保険として考えると、これほど安心感のある機能はない。

 とくに、夕夜景や屋内での自然光撮影など、光線状態が厳しいシーンで手持ち撮影をしたときの効果は計り知れないものがある。

 画質もなかなか良好。さすがにワイド系からの高倍率ズームだけに、画質は極上とはいえないが、通常の撮影で不満を感じるケースは少ない。あえていえば、ワイド側の画面周辺部でやや解像感が低下し、色の滲みが見られるが、使い勝手の良さを考えれば、許せるレベルだ。

 価格は87,000円とそれなりに高価。しかもEF-Sレンズのため、現時点では、Kiss DIGITALと本機でしか使えないことを考えると、ちょっと躊躇してしまう部分もある。だが、これらの点に納得できるのであれば、これほど魅力的な常用レンズは類を見ないだろう。

 もっとも、同じAPS-CサイズのCMOSセンサーを搭載した先代の「EOS 10D」に、このレンズが装着できないのは、なんとも理解しがたい部分もあるわけだが。

●30秒露出撮影

ノイズリダクションなし

ノイズリダクションあり

●感度アップ+手ブレ補正レンズ

ISO 400+手ブレ補正

ISO 1600+手ブレ補正

●やや高価で面白味に欠けるが完成度はピカイチ

 本機は「EOS 10D」の後継機だが、その欠点だった部分は、ことごとく改善されており、とても完成度の高いモデルに仕上がっている。実際に使ってみると、むしろ「EOS-1D MarkII」に近い存在の上級モデルという印象だ。

 しかし、いくら完成度が高いとはいえ、さすがに気になる部分もある。

 もっとも気になったのは、ファインダー視野率。95%と数値的にはまずまずといった印象だが、実際に撮影してみると、やや不満を感じるレベル。コストやボディサイズとの絡みもあるとは思うが、20万円近いボディであれば、やはり97〜98%くらいの視野率を実現して欲しいところだ。

 液晶ディスプレイも従来の「10D」と同じ1.8型であり、画像表示が小さく、メニューの文字がやや見にくく感じられる。本来なら2.0型以上の、より見やすいもの液晶を奢って欲しいところ。

 また、D70のようにヘルプ機能が充実したり、用語がわかりやすい言葉に置き換えられたりしているわけでもなく、総じてユーザーフレンドリーな印象が薄い。このあたりはEOS Kiss DIGITALにも相通じるところがあるわけで、EOS DIGITAL全体の課題といえそう。

 つまり、本機はハードとしての完成度が高く、とても実用的な半面、優等生的であまりユーザーフレンドリーな部分がなく、イマイチ、可愛げがないのが、本機の一番のウィークポイントといえるかもしれない。

 ボディの実売価格は約19万円前後。画質や機能、使い勝手を考えると仕方ない部分もあるが、それでも本音のところでは、ちょっと高価な感じもする。

 特に、17〜85mmISレンズとのセットでは、実売で約26万円と相当な出費になる。なにせ、単純計算では「Kiss DIGITAL+18〜55mmセット」の約2倍もするわけだ。

 いくら使い勝手がよく、完成度が高くても、この価格帯になると、さすがに、誰にでも気軽に勧められるわけではないし、気軽にデジタル一眼レフを楽しみたい人にとっては、やや荷が重い感じがする。

 むしろ本機は、予算にある程度の余裕があり、デジタル一眼レフで本格的に撮影を楽しみたい人にオススメしたい本格派モデルといえる。

 とくに、これまで35mm一眼レフで写真を趣味として楽しんでいる人が、本腰を入れてデジタルに移行したいときに最適な、バランスの取れた中堅モデルといえそうだ。


●一般


●人物

ISO 100 ISO 400


●定点撮影

ISO 100 ISO 200
ISO 400 ISO 800
ISO 1600 ISO 3200


●定点撮影2

ISO 100 ISO 200
ISO 400 ISO 800
ISO 1600 ISO 3200


●マクロ撮影

17-85mmISの最短撮影距離付近でのマクロ撮影。アダプターなしで、ここまで寄れるので使い勝手は上々


●連写


□キヤノンのホームページ
http://canon.jp/
□製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/20d/index.html
□関連記事
【8月20日】キヤノン、820万画素デジタル一眼レフ「EOS 20D」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0820/canon1.htm
【8月24日】写真で見る「キヤノン EOS 20D」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0824/canon.htm

(2004年9月4日)


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[Reported by 山田久美夫]


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