第260回
1/1.8インチ700万画素機は本当にダメか?



 なにやら最近、デジタルカメラの話題が多いPC Watch。デジタルカメラの成長が止まり、すでに“デジタル三種の神器ではなくなった”と言われる時代の流れと逆行しているようにも見えるが、いやいや、まだまだ読者の興味は引き続き高いようだ。

 筆者自身、D30以来、ずっと使い潰すが如く毎年出る一眼レフデジタルカメラを買い換えたり買い増したり。おまけに焦点距離が使いにくくなったり、デジタルでの画質が今ひとつ不満なレンズ、重くて大きすぎるレンズなどを処分し、デジタル用にレンズを買い換えることも多くなった。

 一眼レフシステムはボディを買うのではなく、レンズシステムを買うものだと思って買い溜めてきたが、ここまで色々な常識が変わってくると、いっそのこと総入れ替えした方がスッキリするかと思いつつ、苦労して揃えたレンズシステムはやっぱり変えられなかったり。とはいえ便利な焦点域のレンズも欲しいなぁと、レンズ買い増しを検討している自分もある。いや、なんと物欲の恐ろしいことか。

 先日も、本誌でお馴染みの山田久美夫氏に「騙されたと思って買うと、安いし軽いしイイよ」と言われたシグマの「55-200mm F4-5.6 DC」を見に行ってみると、たまたま「18-50mm F2.8 EX DC」を発見。試写してみると、ワイド端/開放では今ひとつでボケもきれいじゃないが、テレ端は悪くないし歪曲も優秀。ちょっと絞ればかなりシャープでコントラストや色乗りも悪くない。レンズメーカー製品は買ったことがない筆者ながら、思わず手を出しそうになってしまった。

 もっとも、どこでも一眼レフを持ち歩いているワケじゃない。仕事から離れてプライベートで、しかも“写真を撮ろう”と思わずにいるときには、やっぱりコンパクトカメラを一番よく使う。

●ちょっとした驚き

 普及するに従い、ユーザーの中にはデジタルカメラにまつわる様々な(ユーザーから見た)常識が生まれてきた。その中のひとつに「画素の小さな撮像素子(CCDなど)と高画素の組み合わせは最悪」というものがある。画素数なんか増やすのではなく、特性改善などの進化をピクセルあたりの質を高める方向で開発すべきだと強弁を振るう人も少なくない。

 かくいう僕も、某誌にデジタルカメラの連載を持っていた頃は(タイトル扉用写真や作例の撮影を毎月やるのが、あんなに大変とは思わなかった)、画素数の増加ペースとCCDの特性改善が同期していない(特性が十分に改善されていないのに画素数が増え続ける)ことに否定的な事ばかり書いていた記憶がある。

 感光することでCCD画素に溜まる電荷の事を、よくバケツに入った水に例えることがある。大きなバケツ(大きな画素)でも、小さなバケツ(小さな画素)でも、いっぱいの時とカラの時の間を、同じ分解能(bit数)で区切って水の量を読み取るならば、ダイナミックレンジは変わらない。だから画素は小さくなっても、A/Dコンバータさえしっかりした良いものであれば、画質にさほど影響はないという人もいる。実際、白飛びに関してはバケツの水をどのような加減で埋めていくか? という要素が強い。

 しかし、忘れてはならないのはノイズの存在だ。S/N比が悪すぎれば、結果的にシャドウ側のダイナミックレンジが狭くなるだけでなく、単板CCDの色情報予測が不安定、不正確になり、画質低下へとつながっていく。もちろん、感度を上げるためのゲインアップによる悪影響も受けやすいから……と、何も良いことはない。小さなバケツのCCDは、同程度のノイズに対して大きなバケツのCCDよりも敏感と言えるから、やっぱりバケツは大きい方がいい、という結論になる。

 ただし、“素子の基本的なノイズ成分が、同じ量だけ、どの撮像素子にも発生するならば”という条件が付くことも同時に覚えておかなければならない。技術は進化するモノだ。そう実感させられたのは、今最新の1/1.8インチ740万画素CCD(総画素数)は、いったいどの程度の実力があるのかと興味を惹かれてキヤノンから試用させていただいた、PowerShot S70とG6を使ってみた時のことだ。

 700万画素クラスの初物だから、きっとS/Nも悪く500万画素の方がまだマシって事になるに違いないと思って使ってみると、これが意外に悪くない。少々、無理にノイズを目立たせない処理をしているように見えなくもないが、少なくとも1/1.8インチCCDにおける初物400万画素、初物500万画素の時に感じた失望感はない。画素が増えた分、きちんと500万画素製品よりも良いと実感させるデキだった。

 最後に購入したキヤノンのコンパクトカメラ(PowerShot S30。最高ISO800までゲインアップ出来る点が、お仕事用には丁度良かった)ぐらいの高感度耐性が欲しいし、せめてISO100〜200ぐらいを標準的に使えるようになってほしいとは思うが、現在のコンパクトデジタルカメラ事情(ISO50標準が普通)を考えると、700万画素機は決して悪くなさそうだ。

PowerShot S70 PowerShot G6

●高画素CCDは高画素デジタルイメージだけのもの?

 カメラをお借りした時期と海外出張が重なってしまい、きちんとテストらしい撮影を全くせず、実につまらないカンファレンスや展示物の写真ばかりを撮っていたのが、今更ながらに悔やまれる。いや、実際のところ1/1.8インチ740万画素センサー(キヤノンが採用しているのは、ソニーのICX489AQFという素子だ)の素性が、最近の小型高画素センサーの中でもかなり良いと思われるだけに、ちゃんとサンプルらしい写真を撮影しておくべきだったと後悔している。

PowerShot S70で撮影した画像
(クリックすると撮影したデータそのものを別ウィンドウで開きます)
img_1545.jpg img_1552.jpg
1.65MB 3072×2304ピクセル
1/800秒 / F3.5 / 0.00EV補正 / AWB
1.65MB 3072×2304ピクセル
1/800秒 / F3.5 / 0.00EV補正 / AWB
img_1554.jpg img_1555.jpg
2.97MB 3072×2304ピクセル
1/800秒 / F2.8 / 0.00EV補正 / AWB
3.22MB 3072×2304ピクセル
1/640秒 / F2.8 / 0.00EV補正 / AWB

 話によると、CCDのフォトセンサーに溜まった電荷をA/Dコンバータに運ぶまでの間が、もっともノイズを拾いやすいとのこと。740万画素の素子では、その部分を徹底的にノイズ対策することでS/Nを良くしているのだとか。この素子の画素サイズ(2.35μm角)は、1/2.7インチ423万画素CCDの2.5μm角よりも小さいというのだから、そこから良好な画質を取り出せている事は驚異的とも思える。

 デジタル処理ではない、素のCCD特性を改善できたわけで、どうせなら、同じだけの技術で作った400万画素、500万画素も見てみたいものだと思う。

 もっとも、1/1.8インチCCDの画素数がこれで打ち止めということではなく、さらに高画素になっていくというから、画素が少なくて特性が良い素子は、まだ高画素化の壁にぶつかるまではないのかも。次モデルまでには少し間が開くようだが、740万の次が出るとすれば、1,000万画素クラスになるかもしれない。ニーズが存在する限り、この流れは止まらないだろう。

 個人的には“もう画素はおなかいっぱい”と思っていた時期もあるものの、画質さえ落とさなければ、イケルところまで行けばいい。技術者が進化に向けて努力しているところに、“もうそろそろいいんじゃない?”なんて無粋な事は言えない。しかし、画素数が増えるばかりではなく、画素数を別の事に活かせないか? とは思う。

 以前、まだ200万画素機が出始めた時代のこと。あるメーカーの映像処理技術者に「今度の製品のSVGA出力画像はゲインアップでも、そこそこいいですよ」と言われたことがあった。1,600×1,200ピクセルに対して800×600ピクセルだから4ピクセルを1個の画素として出力する事になる。

 4つの画素にはそれぞれランダムにノイズが乗っているが、それを足すと信号レベルは4倍になるが、平均のノイズレベルは2倍にしかならないというのが、そのカラクリの正体だった(ノイズはランダム成分なので、n個の信号を足すとルートn倍、S/Nが改善される)。なるほどとは思ったものの、実際に使ってみると当時のCCDでは、ノイズ低減の効果のほどを実感するべくもなく、ゲインアップではノイズまみれ。そのうち、そうした話も聞かなくなった。

 しかし、センサー特性が改善され、コンパクト機が1,000万画素に届こうとしている今時のこと。しかもセンサーの輝点情報から画像を作り出すプロセッサの能力も、格段に上がっているのだから、たくさんの画素情報から、様々なサイズの画像をスケーラブルに出力してくれてもいいんじゃなかな?

 1,000万画素センサーの出力は1,000万画素が基本かもしれないが、300〜400万画素に出力すると画質が上がったり、ゲインアップ耐性が高まったりすれば、使い方や状況次第で出力画素を積極的に選択したいと思う(いや、そんなことをするのは、ごく一部のユーザーだけかもしれないが)。たとえば、光量が十分ではない場所では、むしろゲインアップしてシャッタースピードを稼いだ方が良い結果になるかもしれない。

 というわけで、新しいPowershotを切っ掛けに、僕は頭ごなしの微細画素批判や、最初から期待しない、などと言って評価を放棄することを止めることにしたい。画素数が増えるのと同じように、その周辺の技術も進歩しているのだから。

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(2004年9月7日)

[Text by 本田雅一]


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