プロカメラマン山田久美夫の

カシオ「EXILIM EX-S100」
ファーストインプレッション



 カシオから発表された「EXILIM CARD EX-S100」は、カードサイズの薄型ボディに光学2.8倍ズームレンズを搭載した注目機だ。前回の実写画像に続いて、ファーストインプレッションをお届けする。また、撮影画像も一部追加している。

 なお、撮影モードはオート、ホワイトバランスもオート、露出補正なしで撮影している。マクロ撮影のみ、マクロモードを使用した。画像の解像度は2,048×1,536ピクセルとなっている。

 今回の撮影はベータ機で行なっており、製品版とは画質が異なる。とくに、今回の機材では画面の左下に画像の流れが確認できるが、これについては製品版では修正される。

 また、一部画像については比較用に前機種で単焦点の「EXILIM EX-S3」でも同時に撮影した。

 製品の仕様などについては、関連記事を参照されたい。(編集部)


 今回発表された、EXILIMシリーズのフラッグシップモデルとなる「EX-S100」。このモデルは、先だって開発発表された「ルミセラ」という特殊な光学素材を採用することで、320万画素3倍ズーム機をわずか14.2mmという薄さで実現させた、超薄型モデルだ。と、このように書くと、本機が単なる薄型機の延長上にある、進化モデルだと受け取られるだろう。

 しかし、本機の神髄はむしろ別のところにある。それはこれまでデジタルカメラの世界で未開拓だった「高級感のある超薄型モデル」という新分野にチャレンジしている点といえる。

 もともと、初代の単焦点タイプの「EXILIM」には、どこか嗜好品的な佇まいがあったが、それがズーム機になって実用色が強くなってしまった。もちろん、ズーム版EXILIMは大ヒットし、ビジネスとしては大成功したわけだが、本来のウエアラブルな「EXILIM」のコンセプトをやや弱めてしまった感もある。

 そこで、EXILIM本来のコンセプトを受け継ぎ、その魅力を最大限に引き出そうとしたのが、今回の「EX-S100」といえる。

●磨きたくなる高品位モデル

 「なんか、いい雰囲気のカメラだなあ〜」というのが、本機を実際に手にしての第一印象。

 本機の場合、スペック的にみると、その薄さだけが注目されがちだ。もちろん、この薄さはかなり感動的だが、実機を手にすると、その薄さ以上に感心する部分がある。それが質感の高さだ。

 本機の質感の高さは、外観写真だけではなかなか伝わりにくい部分なのだが、実機をみると、とても高級感があり、これまでのEXILIMとは一線を画すレベル。もちろん、他社のモデルでも、ここまで高級感や造りの良さを感じさせるモデルは数少ない。そのため、いわゆる“モノ”として魅力を感じさせてくれる。

 とくに、鏡面仕上げになっている部分の質感の高さは、他に類をみないレベル。その意味で本機は、“大人のアイテム”という言葉がシックリくる、希有な存在のモデルといえる。

ハードケースESC-101BN
(カラメッロ)
 実用機として考えると、本機はとても指紋がつきやすく、結構汚れが目立つ。ただ、このあたりは、通常のモデルだと大きな欠点になるところだが、本機の場合にはそれが“磨く楽しさ”につながるから不思議だ。

 私はあまりカメラを磨くという習慣はなく、むしろ億劫に感じる方なのだが、このモデルに関しては、使った後に眼鏡用クロスなどで磨くことが多いのに、自分でも驚いてしまった。

 また、同時発表の専用ケース4種(4,200円〜4,500円)もかなり凝ったもの。イタリア製の本革ケースなのだが、色合いもよく、縫製も丁寧で、質感も上々。これなら専用ケースを買う価値は十分にありそうだ。できればウエアラブルな本機らしい、ベルトに装着できるタイプの高品位な専用ケースも用意して欲しいところだ。

●実用十分なスペック

 本機のスペックは、光学2.8倍ズーム機ながらも、厚さ14mmを実現した、1/3.2型320万画素モデルというものだ。

 いくら小型の1/3.2型CCDといえども、2.8倍ズームを14mmの薄さで実現するのは、かなり大変なことだ。そのために同社は超高屈折率を実現できるセラミックスレンズという新技術を共同開発し、この薄さを実現した。

 実際に本機を手にすると、単焦点タイプの「EX-S3」とほとんど同じ薄さで、ズーム機を実現した点に感心してしまう。この薄さならカシオの主張する「EXILIM CARD」というネーミングも十分納得がいく。なにしろ、専用ケースに入れても、「EX-Z40」や他社の薄型ズーム機と同じ。この薄さになると、ワイシャツの胸ポケットはもちろんのこと、ズボンのポケットに入れて持ち歩くことさえできるほど。携帯性という面から見れば、現行機の中でもピカイチの存在といえる。

 もちろん、いまや1/3.2型320万画素というスペックは、ケータイ電話にさえ、追い越されてしまいかねないレベル。実際に同社のau向け端末である「A5406CA」はプログレッシブタイプとはいえ、1/1.8型320万画素CCDを搭載していることを考えると、逆転している感じすらある。

 しかし、その一方では、300万画素あれば、画素数的にはA4判プリントにも耐えられるし、L判プリントなどは楽勝であることを考えると、常時携帯機としては、必要十分なスペックを備えたモデルといえる。

●軽快な操作感と十分な電池寿命

 本機がいくら薄型になったとはいえ、EXILIMシリーズの美点である、高速起動や高速再生、長い電池寿命といった点は、この「S100」にもきちんと受け継がれている。

 起動時間は約1.4秒、撮影間隔も約1.2秒と軽快なもの。最近は1秒を切るような超高速起動モデルが登場しているため、驚くほどの速さではなくなっているが、それでも実際に使ってみると、十分に速い。

 また、本機では、シャッターボタンを一気押しすると、自動的にパンフォーカス(固定焦点)になり、シャッターチャンスを最優先した撮影ができる機能も搭載されている。シャッタータイムラグも0.01秒と短く、シャッターチャンスに強いモデルに仕上がっているのだ。

 液晶モニターは2型を採用。超薄型モデルながらも、このサイズを確保している点はなかなか立派なもの。光学ファインダーは省かれているが、暗い場所で自動的に液晶モニター表示がゲインアップすることもあって、さほど必要性を感じることはない。

 薄型化で気になるのが、電池寿命。というのも、最近発表された薄型モデルの場合、CIPA基準で120枚前後のものも珍しくないが、実際に頻繁に再生したり、ストロボを多用すると、意外なほど早く電池が消耗することがある。

 その点、本機はCIPA基準で約180枚と、薄型モデルのなかでもトップレベルの実力。この点は今回の実写でも十分に体感でき、再生表示する頻度が比較的高く、起動したままシャッターチャンスを待ったりしても、約200枚もの撮影ができた。

 本機はデフォルト設定である300万画素でのJPEGノーマル設定で、ファイルサイズが約1.1MB前後になる。したがって、フル充電1回で、256MB SDカードがほぼいっぱいになるまで撮影できると思えばいい。メモ用途はもちろん、一泊二日程度の旅先でのスナップ撮影には十分な実力といえそうだ。

 もちろん、本機には充電可能なクレードルが付属するため、帰宅したら、必ずクレードルに置く習慣をつければ、電池寿命の心配はほとんど解消されるだろう。

●便利なオートマクロと歪み補正

 撮影していて便利だったのが、オートマクロ機能と歪み補正機能だ。

マクロ撮影

 オートマクロ機能は、デフォルト設定のままでも、近距離撮影時には自動的にマクロモードに切り替わるもの。つまり、AF測距時には、まず、通常撮影距離をスキャンし、そこに適切なピント位置がなかった場合、自動的にマクロ機能に切り替わるわけだ。

 そのぶん、マクロ域ではAF測距時間がかかるわけだが、マクロに切り替えたままなのを気づかずに遠景を撮影してしまい、ピントがボケるといった失敗がなくなるうえ、いちいちマクロモードに切り替えなくても、マクロ撮影が可能なため、使い勝手は上々だ。

 さらに、今回発表のEXILIMから新搭載された歪みの自動補正機能である「ビジネスショット」も実に便利なもの。これはベストショット機能の中にあるモードで、名刺やホワイトボードなどを斜め方向から撮影したときに発生する遠近感による歪みを、カメラ内で矩形に自動補正する機能。このモードで撮影すると、画面内で本来矩形になるであろうエリアを、カメラが自動認識。その後、「補正」ボタンを選択することで、そのエリアだけをトリミングして、矩形に補正するもの。

 簡単にいえば、四角いものを、斜めから撮っても、カメラが自動的に正面から撮ったような感じに補正してくれるわけだ。

補正前 補正後

 その効果は想像以上に絶大。本来は名刺や書類、OHPやホワイトボードなど、いわゆるビジネス用途を前提としたものだが、駅の時刻表などメモ感覚で、斜めから撮影しても、きちんと歪みを補正してくれる。また、補正エリアの自動認識も意外に精度が高いうえ、カメラが複数の選択エリア候補を提示し、ユーザーがそのなかからエリアを選択肢することもできるので、自分の意図も反映しやすい。ただ、矩形にしたい部分と周辺部との境界線が明確でないシーンでは、エリアがうまく認識されないケースもあるため、撮影にはちょっとしたコツが必要な部分もある。

 できれば、次機種では、ユーザーが十字キーを操作して、エリアを指定できるオプション機能を搭載して欲しいところだ。

●割り切りが必要な画質

 今回使用したのは、試作機で、いわゆるベータ版と呼ばれるモデルだ。そのため、最終的な製品では、画質の向上が見込まれるわけだが、現時点で画質を見ると、さすがに良好とはいえず、小型化および薄型化によるデメリットが感じられる。とくに解像感の甘さや逆光撮影時のフレアっぽさは気になる。また、ノイズレベルも少ない方ではない。

屋外撮影例

 そのため、画質を重視するユーザーには、あまりオススメできない。とくに、モニター上で等倍表示して鑑賞するユーザーには不満を感じるレベルだろう。

 もちろん、1/3.2型320万画素という、きわめて小型で高密度なCCDだけに、ダイナミックレンジやノイズレベルの面では、余裕を感じさせるようなレベルではない。また、300万画素機モデルとしては、解像感に欠ける部分もあり、さすがにレンズ側にやや無理があるようだ。なお、今回実写したベータ版モデルでは、画面左下に像が流れ気味になる傾向があったが、これは個体差であり、製品版では問題ないという。

 また、薄さを最優先させるため、レンズの開放F値(明るさ)がF4.0〜6.6と、結構暗めなのも気になるところ。他の薄型モデルよりも、絞り約1段分暗いため、シャッター速度もその分遅くなる。手ぶれには十分な注意が必要だ。 

 本機は、先代の単焦点機「EX-S3」に比べると、画面全体の画像の均一性がかなり向上している。とくにS3で顕著だった画面周辺部での光量低下や色つき(シェーディング)が大幅に軽減されており、同じ3メガ機かつ、CCDサイズが小さくなったとはいえ、実質的な画質は向上している。

 もちろん、通常の条件下で撮影し、使用頻度が高い、L判から2L判くらいまでのプリントを前提として考えれば、必要十分なクォリティといえる。実際、本機は、究極の画質よりも薄さと携帯性を重視したモデルのため、画質面を期待するのは、少々、酷な感じがする。その意味で(個人差はあるにせよ)、常時携帯用のメモカメラとして愛用するには十分な実力だ。

 今回はL判プリントやWeb掲載用の、メモ的な常時携帯機として使ったこともあって、画質面でさほど大きな不満は感じなかった。むしろ、暗めの店内で、ラーメンをISO400で撮っても、これくらい写れば、メモ用途には十分だと感じた。

ISO400による室内での撮影例

●演出の足りないGUI

 本機を使っていて、どうしても気になる点がいくつかある。

 なかでも最大の不満点は、GUIと操作音。本機は外観はかなり凝っているが、中身はほぼ、従来のEXILIMのままであり、液晶メニューやデフォルトの起動音や操作音などが、従来からの「EXILIM EX-Zシリーズ」のものを、そのまま引き継いでしまっている点だ。

 簡単にいうと、高品位で見た目はカッコイイのに、電源を入れると、中身は“普通のEXILIM ”であることを痛感してしまう。せっかくのスタイリッシュな外観も、これでは興ざめだ。

 これは「ソニー DSC-T1」などにも共通していえることだが、外観と中身がアンバランスで、その落差が大きいところが、本機の最大の難点といえる。

 幸い、本機には起動音や操作音が、あらかじめ5種類用意されているので、それを好みに設定すれば、作動音に関する落差は、だいぶ解消される。個人的には、起動音、操作音ともに「サウンド4」がオススメ。この音にセットすると、ちょっと近未来的でサイバーな雰囲気になり、多少なりとも救われる。なお、製品版ではこれがデフォルトとなるそうだ。

 ただ、液晶モニターでの詳細設定画面は、いかんともし難い。同社は「EX-P600」で(好き嫌いはわかれようが)せっかく凝ったGUIを採用したのだから、本機にも外観の雰囲気に合った、気品のあるGUIを用意して欲しかった。

●軽快で高品位なこだわり派向け常用機

 本機は超薄型とはいえ、3メガ3倍ズーム機と考えれば、実売5万円という価格は、高価な印象だ。

 しかし、実機を手にしてみると、その価格に納得がゆくだけの強い個性と、高い質感や独特な存在感を備えていることを体感できる。そのため、本機のたたずまいに魅力を感じる人やスペックだけではない、モノとしての魅力を重視する人にとっては、本機は現時点で唯一無二の存在といえる。

 その意味では、ノートPCでいえば「VAIO PCG-X505シリーズ」にも相通じる潔さを持った、こだわり派向けモデルといえるだろう。

 残念ながら、画質やGUIなどに改良の余地が残っているが、それでもこの薄さや高級感は大きな魅力だ。まだ力不足の感はあるにせよ、これまでになかった、デジタル版“高級コンパクト機”という新分野に一歩踏み出した感がある。

 いまや同じ価格帯で、薄型2.5型液晶搭載500万画素3倍ズーム機が入手できることを考えると、初めてデジタルカメラを買う人や、本機で本格的な作品造りをしようという人には、なかなかオススメしにくい。

 むしろ、本機は、すでにメインになるモデルを持っていて、そのサブ機や常時携帯用モデルを探している人。モノとしての魅力にこだわり人や、ちょっとフォーマルな雰囲気のモデルがほしい人にとって、とても魅力的な選択肢といえるだろう。


●EX-S100 定点撮影

感度 ワイド端 テレ端
ISO 50
ISO 100
ISO 200
ISO 400


●EX-S3 定点撮影(比較用)


※以下の画像は8月25日掲載分の再掲載です。

●EX-S100 定点撮影(夜景)

夜景:通常モード 夜景:夜景モード


●EX-S3 定点撮影(比較用)

夜景:通常モード 夜景:夜景モード


●屋外撮影

ワイド端 テレ端


●EX-S3 屋外撮影(比較用)


●屋内撮影


●マクロ撮影


□カシオ計算機のホームページ
http://www.casio.co.jp/
□関連記事
【8月25日】カシオ、光学2.8倍ズーム カードデジカメ「EXILIM EX-S100」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0825/casio1.htm

(2004年9月3日)


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[Reported by 山田久美夫]


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