元麻布春男の週刊PCホットライン

DVDレコーダーらしくなった「PSX」



 いったんは7月に予定されながら延期となっていた、PSXのファームウェアアップグレード第3弾が8月3日より開始された。

 今回のアップグレードによりファームウェアのバージョンは1.31となり、初代PSX(DESR-5000/7000)も機能的には現行PSX(DESR-5100/7100)と同等になる。なお、DESR-5100/7100の出荷時のファームウェアバージョンは1.30であり、最新版へのアップグレードでPlayStation BB関連機能が改善されるため、アップグレードを行なう意味はある。

●大きな変更は3カ所

DVD-RWおよびDVD+RWメディアへの追記がサポートされた

 さて、初代PSXにとって今回のアップグレードで目玉と呼べそうな機能は3つ。DVD+RWおよびDVD-RWメディアへの追記、チャプターマークの設定、DVDメニューのサポート、そして「最適化」のサポートだ。第2弾のファームウェアアップデートにより、DVD+RWメディアへの記録と消去がサポートされたPSXだが、書き込みは一括だけで、一度書き込んだメディアへ追記することはできなかった。

 DVDレコーダーがHDDを内蔵したことで、HDDを内蔵しない単体DVDレコーダーの時代より追記の必要性は減少したものの、あれば便利な機能には違いない。ただ、一度メディアに書き出した番組をHDDに吸い上げることはできないため、HDDの残容量が心細くなってきた場合に緊急避難的にメディアに書いておき、HDDの空き容量を確保した上でHDDに無劣化ダビング、改めて編集した上でDVD-Rメディアに書き出す、といった使い方はできない。

 DVD-Rメディアへの追記、番組単位での消去ができないこと(消去は必ずメディア単位)も残念なところだが、DVD-RWについては他の環境(PC、他のDVDレコーダー等)で番組を消去した場合、それにより生じた空き容量を使ってPSXで録画することは可能だ。

 なお、この追記だが、古いファームウェアで記録済みのメディアに対する追記はサポートされないらしい。記録済みのDVD+RWメディアをセットしてダビングを選択すると、これまで同様、問答無用のフォーマットメニューが表示された。同じメディアを再フォーマットし、新しいファームウェアで記録した後は、問題なく追記が可能だった。また、この変更に伴って、DVDのオプションにメディアのフォーマットという項目が追加された。

 チャプターマークの設定は、文字通り動画にチャプターを設定する機能。けっこう基本的な機能だが、ようやく今回追加されることとなった。チャプターの設定は編集画面で再生バーを選択しておき、設定した場面でリモコンのR3ボタンを押すことで行なう。チャプターの設定は、メディアにダビングしても引き継がれるが、GUI上にこの機能は一切表示されない上、R3ボタンの使用頻度も高くないから、マニュアル(PDFファイルがファームウェアと同じくダウンロード可能)をちゃんと読んでいないと見過ごしてしまうかもしれない。

今回のファームウェアアップグレードで追加されたメニュー作成機能。50種類のテンプレートが用意されている

 DVDメニューの作成も待望されていた機能の1つ。これまでPSXで作成したDVDにはメニューが一切なかったが、今回のファームウェアアップグレードで、50種類のテンプレートからデザインを選択してメニューを作成することが可能になった。

 デザインはシンプルなものからカラフルなものまで様々だが、特定のテーマや具体的なコンテンツの内容を示唆するもの(米国系の一般ユーザー向けPC用DVDオーサリングソフトに多い)より、汎用性の高いものが揃えられている。いわゆるソニー的なセンスが感じられるものが多いように思うのだが、個々については現在PSXのWebページ上で確認できるので、それをご覧いただきたい。

 PSXには、メニューのないDVDを再生中、うっかりメニューボタンを押してしまうと、画面が真っ暗になり結局ホーム画面に戻らざるを得なくなる、という一種の自己矛盾が存在するのだが、メニューを作成しておけば、画面が真っ暗になる事態は避けられる。

 次の「最適化」は聞いただけでは何のことやら分からないが、要するに一度録画したデータに対し、変更を加える処理を指す。PSXではビデオの編集は、いわゆるプレイリスト編集であり、データそのものに対する変更は加えられなかった。再生時にプレイリストにしたがって、不要部分をスキップするだけで、データから不要部分を消去するものではない。したがって、CMなど不要部分をせっせせっせとカット編集しても、HDDの空き容量は増加しない。

 今回加わった「最適化」は、カット編集した結果をデータに反映させること、録画モードの変更(ビットレートの変換)、主音声+副音声で録画した番組の音声選択等を行なうもの。最適化後に、元データを保存しておくか、消去してしまうかも選択することができる。この最適化を行なうことで、カット編集した不要部分をデータから取り除くことが可能だ(当然、HDDの空き容量も増加する)。

ビデオのオプションメニューに追加された最適化。この項目名だけでは何のことやらよく分からない 最適化のメニュー。録画モードの変更が可能になったことが大きい

 録画モードの変更は、ある意味PSXの最大の弱点を補うものだ。PSXの録画モードはHQからELPまでの合計6段階が用意されているが、これまで1度録画した番組のデータを変換することができなかった。したがって、高いビットレートで録画し、データがメディア1枚分を超えてしまうと、ダビング作業が非常に面倒だった(編集作業で1枚目に不要な部分をマスキングしてダビングし、次にいったん編集を解除した上で2枚目に不要な部分をマスキングしてダビングする必要があった)。再変換がサポートされたことで、こうした負担は大幅に軽減される。もちろん、再エンコードによる画質の劣化には目をつぶる必要があるが、できないよりはるかにいい。この録画モードの変更は、最適化以外に、メディアへのダビングの際に行なうことも可能だ。

●DVDレコーダーとして成熟した「PSX」

 ファームウェアアップグレードも3回を重ね、PSXもだいぶ普通のDVDレコーダーらしくなってきた。CPRM対応(コピーワンス番組のCPRM対応メディアへのムーブ)、マニュアルビットレートのサポート、PSXに蓄積したビデオ以外のデータのメディアへの書き出し、キーワードによる番組自動予約など、今後のアップグレードに期待したい機能もあるが、これらの機能は通常のDVDレコーダーだからといって、すべての機種が必ずサポートしているわけではない。そういう意味では、DVDレコーダーとしてのPSXの機能も、一通りの完成を見た、と言えるのかもしれない。

 ただ、PSXをとりまくDVDレコーダーの市場はこの半年あまりで大きく変わった。昨年末PSXがデビューした時点において、PSXはHDD容量の割には安価、という評価ができたが、今では120GBのHDDを内蔵したDVDレコーダーが5万円前後から購入可能となっており、6万円台半ばで160GBのHDDを内蔵するPSXの価格優位性は決して大きくない。ゲーム機としてもPSXを活用するつもりがなければ、割安とは言えない状況になりつつある。とはいえ、そうした価格破壊をもたらした1つの要因がPSX自身であることを考えれば、この状況も本望ということなのかもしれない。この点でのPSXの功績は大きいといえるだろう。

□関連記事
【8月3日】ソニー、「PSX」3度目のアップデートを開始(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040803/sony.htm
【2003年12月26日】【元麻布】PSXファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1226/hot295.htm

バックナンバー

(2004年8月26日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.