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未来のロボット博士たちへ
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分解に使用されたfuRoの「morph3」 |
8月3日開催
日本科学未来館で3日、「ロボット解体LIVE2004」が開催された。主催は千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(Future Robotics Technology Center:fuRo)、後援は読売新聞社。fuRo所長・古田貴之氏が、自身が開発したヒューマノイドロボット「morph3」の実物を解体しながら子供達に向けて仕組みを解説するイベントだ。
日本科学未来館の会場。あっという間に満席に |
会場には600人以上が詰めかけ、日本科学未来館のホールは、夏休み中の小中高校生やロボット好きの大人たちで満員となった。
解体を含む講演時間そのものは60分。しかし、今回のイベントのために204枚のスライドを用意した古田所長は子供達を前にして最初からいつも以上に興奮気味。「授業じゃないから、話がつまらなければつまらないと言って下さい。ロボット解体というより、古田という男をいじめちゃおうライブでいいですから、聞きたいことは何でも言って下さい」とLIVEの口火を切った。
morph3は科学技術振興機構ERATO 北野共生プロジェクトと、工業デザイナー 山中俊治氏率いるリーディング・エッジ・デザインが共同開発したヒューマノイドロボット。身長38cm、体重2.4kg(バッテリ含む)。自由度30、部品点数は2万個、全身に138個のセンサーを持つ。CPUはNECのVR5500(400Mhz)をベースにしたモジュール「ATOM」、OSにはウインドリバー株式会社のリアルタイムOS「VxWORKS」が使われている。
morph3の概要 | ロボットとは「モーター&センサー&コンピューターの塊」 |
「ATOM」は発表当時「みかんサイズ」として話題を呼んだT-Engineベースの極小キューブPC「T-Cube」にも使われているCPUモジュールである。また、同じくfuRoとリーディング・エッジ・デザインが開発した8本足のコンセプトカー「ハルキゲニア」にも使われている。
さらに全身にはサブCPU「morpheus」が13個、分散配置されていて、体内LANで接続されている。一つのサブコントローラーがモーター3つを制御する。そのほか、画像処理ボードも搭載している。センサーはジャイロ、加速時計、足裏センサー、触覚力センサー、地磁気センサーなど11種類。合計138個が分散センサネットワークを形成している。
morph3の構成 | サブコンピュータ「morpheus」 |
morph3のコンセプトは無駄をそぎ落とした「メタルアスリート」。部品1つ1つについて機能とデザインを追求して製作が進められたという。ボディのカバーもタッチセンサーに利用するなど、全身を機能部品としてすることが基本コンセプトとして設計されている。
今回のイベントは主に子供向けということもあり、古田氏はまず「誰でもロボットは作れます(ただしお金があれば)」と述べ、会場に、morph3の値段はどのくらいだと思うか、と質問した。実はmorphの価格は3,000万円。ジュラルミンや超超ジュラルミンの削りだし特注部品の塊で、ねじ1つ1つも特注なのでどうしても高くなってしまうのだという。ちなみに会場の小学生は「10万円?」と答えていた。
分解は、会場から子供たちを1人ずつ呼び、ネジを回させたりして進められた。
子供達は意外と馴れた手つきで精密ドライバーを回す |
中には4歳の子も登場 | VR5500-ATOMモジュールを引き抜く。ここはさすがに古田氏自身の手 |
一通り分解が終了したあと、「壇上に上がってロボットにさわってもいいよ」といったところ、会場はもう大変なことに。
子供たちにいじりたおされる3,000万円のmorph3 |
分解されたmorph3。左端の白いパーツは背中に取り付けられていたカバー | 足裏には4つのセンサーを搭載 |
カバーが外された脚部の構造 | 背中のカバーを外すと多数の配線が剥き出しに |
その後、会場からの質疑応答がフランクな雰囲気のなかで進められた。「プラレス3四郎のような動きを実現するためにソフト、ハードにおいて足らない部分はなにか」、「運動の効率という観点から武道の動きについてどうおもうか」、「平地移動で効率にまさる車輪があるのに、それに対する脚歩行の意義はなにか」などの質問が出た。
なかでも「ロボットを研究する博士になりたいんだけど、どうすればいいか」という質問に対しては、「面白そうなことをとことんやること。やりたいと思えば勉強はあとからついてくる。ロボットが好きだから嫌なこともできる。だから好きだと思ったことはとことんやってみる。難しそうと思ってもたいしたことない。だから好きだったらやってみること。あー、でも、勉強はある程度はやったほうがいいかもね(笑)」と、とにかく「好きなことを夢中でやることが大切だ」と強調した。
そのほか、「ロボット作りのコツ、あるいは難しいところは」、「ロボット開発においてセンスは必要か」、「寝ずに開発を進めるほどのモチベーションはどうやって維持するのか」、「デザイナーと組んでやることの大変さは」、「最終的にどんな機械を作っていきたいか」、「ヒューマノイドの位置決め再現性は」、「ヒューマノイドを作ることの倫理的問題についてどう思うか」、さらに「巨大ロボットはできるか」、「自分で自分のこと変な人だと思われますか」、「変形ロボットはできますか」、はては「好きなタイプの女性は」などの質問が会場から続いたが、古田氏はそれぞれの質問に丁寧に答えていた。
開発時にほとんど寝ない生活を送ったために体重が75kgから45kgへと激減したエピソードも披露 | 14歳の頃に夢想した「足イス」。将来はこのような、実際に役に立ち、人間を幸せにする機械を作っていきたいという |
古田氏自身は、もともと機械が好きだったこと、そして14歳のころに車いす生活を送ったことが、ロボット開発のモチベーションになっている。最後に会場の若い世代に向けて「ロボットの中身を見て、『ロボットって楽しそうだな』と思ってくださると嬉しい。次の世代のロボットの研究者を目指してほしい」と語った。
なおこのイベントは巡回展で、8月12日には水戸、18日には福岡、20日には静岡、24日には仙台で開催される。
□千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)
http://www.furo.org/
□ROBOT解体LIVE 2004
http://www.furo.jp/
□fuRoブログ
http://furo.cocolog-nifty.com/
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【2003年12月12日】TRONSHOW2004レポート ~極小キューブPCやCEとの複合機を展示
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1127/kyokai18.htm
【2003年4月5日】【森山】ROBODEX2003レポート 展示はここを見ろ編(2)
~会場に展示された個性豊かななロボットたち
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0405/kyokai06.htm
(2004年8月4日)
[Reported by 森山和道]
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