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[特別編] エプソンGT-F550


− フィルムスキャナとしての実力は? −



 特別編として、これから数回、フィルムのスキャンも可能なスキャナをとりあげる。第1弾はエプソンGT-F550だ。

 このGT-F550、フラットベッドスキャナだが、フィルムスキャンを売り物にしている。反射原稿はとりあえずおいて、フィルムのスキャナとしてはどのぐらいの実力があるのだろうか。

 昨年まではまだフラットベッドスキャナでのフィルムスキャンは、「中判以上のスキャンなら実用的」だった。しかし、GT-F550は35mmフィルム専用で、しかもフィルムのオートローダを装備している。フラットベッドスキャナが、いよいよフィルムスキャナの牙城に迫るのだろうか?



●使い勝手はフィルムスキャナに近い

 GT-F550の外観は、まさにフラットベッドスキャナそのものだ。カバーを開けて、保護マットを外すと、フィルムスキャンのための蛍光灯照明部が出てくる。保護マットを装着したままだと、ガラス面に置く反射原稿(写真プリントや書類)しかスキャンできない。フィルムスキャンのための蛍光灯部は小さく、35mm判専用であることがわかる。

 PCとの接続はUSB 2.0。転送速度は十分に速く、最高解像度でも3分以内で終了する。専用のフィルムスキャナにくらべても、遅いという感じはしない。たとえば、筆者が通常使用している、ニコン SUPER COOLSCAN 4000EDでは、転送がIEEE 1394だが、全体のスキャン時間(自動露出や転送など)を含めると、ほぼ同じである。

 カバー上面に35mmフィルムのオートローダー挿入口がある(写真A)。これを開けて、ストリップフィルム(スリーブ仕上げ)のフィルム先端を差し込めば、あとは自動的にフィルムが装填される(写真B)。このあたりの使い勝手は、フィルムスキャナと変わらない。ただし、裏返しにセットする必要がある。スキャナの撮像素子は下側にあるからだ。このあたりはやはりフラットベッドスキャナである。

 マウントに入っているフィルムはフィルムホルダに1コマずつセットして、原稿台の中央奥にセットするようになっている(写真C)。ただ、これは1コマずつなのでかなり面倒だ。フィルムはスリーブ仕上げ(6コマずつカットしたもの)を使い、オートフィルムローダを使うのがベストだ。

【写真A】カバー上面にあるオートフィルムローダのカバー。これを開けてストリップフィルムを挿入する 【写真B】ストリップフィルム(スリーブ仕上げ)を裏返しに挿入すると、自動的に引き込まれ、スキャン準備が完了する
【写真C】マウント入りフィルムはフィルムホルダを原稿台のいちばん奥にセットし、そこにマウントごとセットする 【写真D】操作ボタンは前面にあり、いちばん右が電源スイッチ

 あとは、PC側にインストールしたドライバ(EPSON SCAN)を使う。このドライバは全自動モード、ホームモード、プロフェッショナルモードに切り替えが可能だ。ホームモードでは解像度300dpi、プリントサイズL判(89×127mm)がデフォルトである(図1)。

 本格的なフィルムスキャンをしたいなら、やはりプロフェッショナルモードを選んだほうがいい。これだと最高解像度2,400dpiまでスキャンでき、しかも粒状低減、退色復元、ホコリ除去、アンシャープマスクなどの機能を持つ(図2)。さらに、ストリップフィルムのプレビューも可能だ(これはホームモードでも可能だが)。メインのメニュー画面の右にプレビュー画面が出てきて、チェックを入れることで1枚ずつのスキャンができる(図3)。

【図1】 【図2】 【図3】

 スキャンし終えたフィルムの取り出しは装填口にあるボタンを押すだけ。自動的にフィルムが排出される。PCのメニュー画面からフィルム排出を選ぶフィルムスキャナもあるが、私個人はこのGT-F550の方式がわかりやすいし、出し忘れることがないのでいい。

 前面の操作パネルは非常にシンプルでボタンの数も少なく、わかりやすい(写真D)。なお、フィルムスキャンでは電源ボタン以外、操作する必要はない。

●スキャン画質は予想以上に良かった

 さて、実際にスキャンしてみた結果はどうだろうか。

 まず、このフィルムスキャナをテストするために撮影した女性ポートレート。2,400dpiの最高解像度で、24bitカラー(RGB各8bit)でスキャンしてみた。画像の大きさは3,024×2,087ピクセル、TIFFで保存して約18MBのファイルサイズである。

 最高解像度でスキャンするときには、出力サイズは「等倍」にしておく。この画像を見てみると、ドライバでアンシャープマスクはかかっているが、非常に解像度が高く、発色もいい(写真1A)。さらに、同じ画像を2400dpi、48bitカラー(RGB各16bit)でもスキャンし、TIFFで保存した。さらにキメが細かくなり、とてもフラットベッドスキャナーでスキャンしたとは思えない仕上がりだった(写真1B)。ファイルサイズは約36MBとさすがに重くなるが、専用フィルムスキャナでもこのぐらいのファイルサイズにはなる。

以降に掲載する作例のリンク先は、TIFF形式のスキャン画像をAdobe Photoshop 7.0で、JPEG形式(8bitカラー/画質10)に変換したものです。縦位置の写真は、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。
特に記載がない限り、クリックすると3,072×2,048ピクセルの画像が別ウィンドウで表示されます。
なお、参考として写真1Bのみ、元のTIFF画像をダウンロードできるようにしてあります。
【写真1A(左)と1B(右)】解像度2400dpi、24bitカラー(RGB各色8bit)でスキャン(A)。これでもかなりの高画質だ。同じフィルムから48bitカラー(RGB各16bit)でスキャンしたもの(B)。これだとA4にプリントしても、デジタル一眼レフと比べてそれほど見劣りしない
撮影データ=キヤノンEOS-1V、50mmF1.4、絞りF5.6、絞り優先AE、フジクロームベルビア100F
※ 写真1BのTIFF画像はこちら(36.1MB)

 この写真1BをエプソンのPM-4000PXプリンタで出力してみた。そうすると、A4でもまずまずのレベルである。もちろん、600万画素クラスのデジタル一眼レフで撮影した画像や、あるいは専用のフィルムスキャナで4,000dpiでスキャンしたものに比べれば、画質的にやや見劣りがするのは当然だ。しかし、このプリントだけ見ると、かなりいい感じであり、予想を上回る好成績だった。前述したように、昨年まではフラットベッドスキャナでは、35mmフィルムのスキャン画像はせいぜいWebに使うぐらいだったからだ。これなら、2L判ぐらいのプリントだったら、600万画素クラスのデジタル一眼レフの画像と比べて、それほど遜色はない。もちろん、Webに使うには十分すぎるぐらいの画質を持っている。

 つぎに、明るい部分と暗い部分の差、つまり明暗比が大きい、コントラストの強い画像だとどうなるか、試してみた。こういう画像だと、いままでのフラットベッドスキャナでは、光源ムラのようになってしまうことがあったからだ。そこで、明暗比の大きな被写体を写したフィルムをやはり2,400dpi、48bitカラーでスキャンした。そうすると、驚いたことに、ポジ忠実というか、ほとんどオリジナルの明暗比がそのまま再現された。これだけ再現性が高ければ文句はない(写真2)。

 ただ、一言だけ注文をつければ、スキャンするマスクの関係で、24×36mmの大きさの35mm画面がすべて、約22×32mmにトリミングされてしまうことだ。これはプリントサイズのアスペクト比に合わせてあるものと思われる。ただ、この写真のように、オリジナルには写っている旗の一部がカットされてしまうなどの難点がある。このため、このスキャナを使う場合には、撮影時にあらかじめ少し余裕を持ったフレーミングをしておくことをおすすめする。

 明暗比の大きな被写体のつぎは、さらに意地悪な被写体だ。完全逆光で人物がシルエットになっている写真である。これだと、自動露出の出来具合によっては、かなり露出がばらついてしまうことがある。しかし、実際にスキャンしてみると、ほぼオリジナルどおりに再現された(写真3)。これも予想外のことで、あらためてこのGT-F550の実力を思い知らされたのだった。

【写真2】明るい所と暗い所の差が激しい、コントラストの強い被写体。かなり意地悪なスキャンだが、オリジナルに忠実に出た。ただ、22×32mmにトリミングされてしまうのが残念だ
撮影データ=コンタックスNX、28〜80mmF3.5〜5.6、絞りF8、絞り優先AE、フジクロームプロビア100F
【写真3】さらに意地悪な被写体条件。完全逆光で人物がシルエットになっている。スキャナの自動露出の精度をチェックするためにスキャンした。ほぼオリジナルどおりになった
撮影データ=コンタックスNX、28〜80mmF3.5〜5.6、絞りF5.6、絞り優先AE、フジクロームプロビア100F

 プロフェッショナルモードではさらに粒状改善、退色復元、ホコリ取りなどの機能がある。退色したフィルムは手元になかったので、粒状改善を試してみることにした。ISO1600のポジフィルムで撮影した舞台写真で、さすがに顔のあたりに粒子がやや目立つ(写真4A)。そこで、粒状改善にチェックを入れてスキャンしてみると、わずかだが粒状性(ざらざら感)が改善された(写真4B)。それほどドラスティックに変わるわけではないが、こういう機能があるだけでもいいと思う。

【写真4A(左)と4B(右)】ドライバのプロフェッショナルモードには粒状改善があるので、高感度フィルムの粒子が粗いのをスキャン(A)。そして、粒状改善を行なってみた(B)。それほど大きく変わるわけではないが、それなりの効果はあった。撮影データ=ニコンF5、400mmF3.5、絞りF5.6、絞り優先AE、フジクロームプロビア1600

 最後にこのGT-F550でスキャンした画像を少しだけレタッチしてみた。やや前ピンの画像なので、アンシャープマスクをかけた。さらに、夕方の撮影なので、フィルムはやや赤みがかっていた。それを補正するために、トーンカーブのレッドのチャンネルを少し補正した。こうして仕上げてみると、最初からデジカメで撮影したような画像になる(写真5)。

【写真5】ほかの写真はスキャンしたままだが、これはPhotoshop CSで少しレタッチ。トーンかカーブのRチャンネルを少し青方向にして、さらにアンシャープマスクを200%かけた
撮影データ=コンタックスNX、28〜80mmF3.5〜5.6、絞りF5.6、絞り優先AE、フジクロームプロビア100F

●コストパフォーマンスの高いスキャナ

 以上のように、フィルムスキャンだけを行なってみたが、予想以上に解像度も色再現性も良かった。さらに、反射原稿もスキャンできるわけだから、このGT-F550のコストパフォーマンスは高い。私はほとんどフラットベッドスキャナを使わない人間なので、自前のものはもう何世代も前の製品である。このGT-F550を使ってみて、これならそろそろ買ってみようかという気を起こさせてくれた。

 注文をつければ、フィルムスキャンの解像度をさらにあげて、フィルムスキャナなみにしてもらえば理想的だ。もちろん、現状でもかなりの実力を持つのだが、さらに性能向上を期待したい。

 あと、やはり、フラットベッドスキャナの特長は中判以上の大きなフィルムがスキャンできるということだ。もちろん、上位機種のGT-X700などとの関係もあるのだろうが、せめて6×9cm判までに対応しているとありがたい。たしかに、35mm判に特化したからこそ、オートフィルムローダなどが採用できているわけだが、4×5インチ判はともかく、中判はカバーして欲しい。

 いずれにしても、コストパフォーマンスが高く、魅力的な製品であることにはまちがいない。

□エプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□製品情報
http://www.i-love-epson.co.jp/products/scanner/f550/f5501.htm
□関連記事
【5月19日】エプソン、自動フィルムローダ付きのフラットベッドスキャナ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0519/epson.htm

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(2004年7月29日)

[Reported by 那和秀峻 / モデル 岸 真弓]


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