買い物山脈

後藤弘茂の人生を変えたこの1品!!




品名ソニー「HMP-A1」
購入価格63,790円
購入日2004年6月
使用期間約2カ月

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

●2台のソニーのビデオプレーヤー

 「Access to Video Any Time,Any Place」が現在のテーマだ。

 どんな場所でもどんな時でもビデオコンテンツを観ることがでるようにする。そこで何を買ったかというと、ソニーのポータブルメディアプレーヤーの「HMP-A1」。例の、20GBのHDDと3.5インチ液晶を内蔵していて、MPEG-1/2/4のビデオとMP3を再生できるプレーヤーだ。ソニースタイルで購入し、価格は63,790円。

 もっとも、正直に言えば、ポータブルビデオプレーヤーを買ったのはHMP-A1が最初ではない。どころか、過去半年間、毎日のようにポータブルビデオプレーヤーを持ち歩いていた。ポータブルビデオプレーヤーにはまった結果、HMP-A1にも手を出したというのが正しい表現だ。

 最初に買ったのは、これもソニーの「PCVA-HVP20」で、20GBのHDDに3.5インチ液晶とほぼスペックはHMP-A1と同じ。HVP20を買ってからは、まず、ほとんど身から離したことがない。時間があけば、すぐに取り出してビデオを観るというビデオサル生活。

 HVP20導入の効果は劇的で、一気にビデオの消費時間が増えた。なにせ、列車の中、食事の最中、マッサージ椅子の上、果てはトイレまで、あらゆる時間がビデオ消費に使えるようになった(トイレに持ち込んでいたらライターのS田氏に笑われた)。果ては、歩きながらビデオを観る(にのきん状態)ようになって、回りから危険だからやめろとさんざん言われている。

 こうして、従来、本や雑誌の紙媒体を消費していた時間が、ポータブルビデオプレーヤーのおかげでビデオを消費する時間に置き換わった。娯楽に使える時間は限られているわけで、その中身が活字からビデオへと劇的な転換を遂げたことになる。活字80%対映像20%だったのが、活字20%対映像80%になったイメージだ。

 これは、ゴトウにとって30年以上の活字中毒からの脱却を意味する。ライフスタイルを変えた画期的なデバイスと言っていいかもしれない。

●なぜポータブルビデオプレーヤーを2台にしたのか

 で、なぜポータブルビデオプレーヤーをもう1台買ったのか。理由は3つある。(1)バックアップ用にデバイスを二重化する、(2)デバイスを比較してみる、(3)2台体制にしてバッテリ駆動時間を伸ばす。

 (1)ゴトウは海外取材にノートPCを3台持って行くくらい、パラノイア的なバックアップ魔なので、重要デバイスはすべからく二重化する。ようは、ポータブルビデオプレーヤーも、二重化が必要なほど必須デバイスになったということ。特に、HVP20は最近どんどんファンノイズが増大しており、“そのうち病院入り?”みたいな雰囲気だったので、ファンレスで稼働部品がより少ないHMP-A1が欲しくなったというのもある。

 (2)デバイスレビューを書かないので、比較すること自体は、仕事に直結しない。ただし、使ってみないと、ニーズや問題がわかってこないのも事実で、それがわからないと技術トレンドが見えてこない。ゲームをしないとゲームのトレンドが見えないのと同じこと。

 (3)これまで、HVP20の最大の悩みはバッテリ駆動時間だった。カタログスペックは約4時間。暗いところで輝度を落として観ていれば4時間以上持つが、逆に劣悪な環境で輝度を上げて観ていると持たない。しかもバッテリははめ殺しなので、ノートPCのように複数バッテリを持って歩くこともできない。最大の問題は、バッテリが半分程度になった状態の時どうするか。そこでまたフル充電すると、バッテリ寿命が短くなる。かといって半充電状態だと、外出中に使い切ってしまう可能性が出てくる。

 HMP-A1もMPEG-2デコードの場合は似たような駆動時間で、バッテリはやはりはめ殺しなのだが、何のことはない2台持てば問題は解決する。2台で最長8時間。しかも、HMP-A1はUSB経由の充電が可能なので、HVP20を使っている間にノートPCでHMP-A1を充電できる。だから、原理的には12時間のフライトの飛行機でも、機上にいる間中、ビデオを見続けることができる。

●ステルヴィアの制服はオレンジか山吹色か

HMP-A1(左)とHVP20。色味はかなり異なる

 というわけで、現在はHVP20とHMP-A1の2台を持ち歩いている。さすがに、こういう人は少ない。で、使ってみると、両マシンにかなりの違いがあるのがわかる。

 まず、“絵”が違う。AVは素人なので正確に説明できないが、デフォルトの状態で、HVP20は色が濃く派手な色調なのに対して、HMP-A1は色も薄くトーンも落ち着いている。それに気がついたのは、HMP-A1を買って、ビデオを再生した瞬間。HVP20で観ているのと同じアニメ「宇宙のステルヴィア」を転送したら、宇宙学校の女の子の制服の色が全然違った(笑)。HVP20で観ていた時はオレンジ色だと思っていた服が、HMP-A1だと山吹色だった。

 余談になるが、この違いが顕著なので、宇宙のステルヴィアをしばらく、人に説明する時のリファレンスにしていたら、回りの反応がすごかった。編集者のO氏には「元SF研がステルヴィアがいいなんてダメです」と怒られ、ライターのY氏には「ゴトウさん、これコンテンツが間違えてるよ」とあきれられた。編集者のA氏から「しーぽん(ステルヴィアの主人公)萌じゃないですよね?」と聞かれた時は、とっさに言葉が出なかった(笑)。

 話を戻すと、両デバイスで、絵の精緻さも違う(と感じる)。個人的な感想だと、HVP20の方が精緻で自然で、HMP-A1の方がドットが目立つような気がする。実際には、両マシンで液晶そのものから違う。どちらも3.5インチの4:3アスペクト比だが、HVP20の液晶は画素数が20万でAV風のデルタ配列(画素の配列がラインごとに半ピッチずれている)。一方、HMP-A1の方は320×240ドットで、カタログに明記されていないが、見た感じではPC風のストライプ配列。

 レビューアではないので、個人的なプリファレンスだけを言うと、HVP20の方が絵自体は好きだ。理由は明快で、ポータブルビデオプレーヤーでビデオを観る環境は、通常ビデオを観る環境とはかけ離れているから。劣悪な環境で観ていると、色調が派手でコントラストがきつくエッジがはっきりして色が濃い方が見やすい。例えば、西日が強烈に差し込む揺れる列車の中で観ようとすると、HMP-A1だとよく見えなくなってしまう。ところが、HVP20だと、それでも観ることができる。

 これは決してプレーヤー自体のせいではなく、あくまでも使い方の問題だ。しかし、ポータブルビデオプレーヤーには、それに向いた絵作りあるかもしれない。もちろん、AVの世界から見れば、再生デバイス側で勝手に絵を作るのは言語道断になるのだろうけど。なにしろ、作り手が意図した絵にはならないのだから。

 とはいえ、HMP-A1の利点も大きい。操作性は格段によくなったし、50グラム軽くなったことも手首の弱い自分にとってはうれしい。それに何といっても静粛性は重要だ。HVP20の場合は、ノイズが大きいので、ヘッドフォンをしてビデオを観てる本人はいいのだが、回りが迷惑する。列車の中は問題はないのだけど、病院の待合い室みたいな比較的静かな環境だとかなりひんしゅくモノだ。その点、HMP-A1だと、ほとんど気取られずにビデオを観ていられる。

 というわけで、必然的に2台のポータブルビデオプレーヤーをTPOで使い分けることになり、その意味でも2台持って歩く必要が生じている。

 ちなみに、立って観るか座って観るかによっても、どちらのデバイスが向いているかが変わる。エルゴノミックス的な話なのだが、HVP20は縦長で、HMP-A1は横長。列車の中で持って始めて気がついたのは、人間の手は立った時には横長が持ちにくいこと。HVP20のフォームファクタの方が、立った時に片手で持つ時はきっちりホールドできて疲れない。逆に、HMP-A1は座って両手でホールドしていると、安定がよくて見やすい。

 結果、列車の中で立っている時は主にHVP20、比較的静かな場所で座ってる時はHMP-A1という使い分けに、現在はなっている。

●1TBのビデオのためにポータブルビデオプレーヤーを導入

 そもそも、ことの起こりは何だったかというと、1テラバイト(TB)のビデオだった。去年からデジタルで録り始めたビデオが、あれよあれよという間に1TBに到達してしまった。家電HDDレコーダはNECのAX20とAX300の2台態勢で、ガンガン録って、収集するコンテンツはPC側に転送して残して……。

 ところがビデオは急増するのに、それを消費する時間が全然ない。貧乏暇無しのライター生活で、テレビの前に座ってビデオを観るなんて贅沢はそうそうできない。週によってはビデオ消費は0時間だったりする。そのため、無意味にビデオが貯まり続けるだけとなってしまった。

 HVP20は、その貯まったビデオを消費する秘策として導入した……はずだった。貯まったビデオを、HVP20で徐々に片づけて行こうと。計算上では1日2GB平均でビデオを見続ければ、新規録画分を含めても2年で消費が蓄積に追いつくはずだった。

 ところが、HVP20でビデオを見始めて2週間くらいで、ポータブルビデオプレーヤーに向いているコンテンツと向いていないコンテンツがあることに気がついた。これまでは、SF映画やSFドラマシリーズを主に録っていた。ところが、ポータブルビデオプレーヤーを使い始めると、その手のコンテンツが合わない。理由は明確で、すでに説明した通り、普通でない環境で観るためだ。コントラストやエッジ、色彩がはっきりしていて、画面上の情報量がある程度限定されている絵が向いている。

 それから、絵だけでなく、コンテンツの長さも意外と重要だったりする。細切れの時間をビデオに使う上に、場合によっては2〜3日ポータブルビデオプレーヤーを使わない時があったりする。すると、2時間クラスの映画を観るのはかなりきつい。そもそも、映画だと続けて観ないと、テンションが落ちてしまう。だから、ポータブル向けには、コンテンツの区切りが短い方がいい。

 というわけで、結論はアニメだった。

 ポータブルビデオプレーヤーにはアニメが合う。まず、絵的にはアニメはポータブルデバイスに最適だ。絵がはっきりしていて、エッジも明瞭で、色彩も派手な作品が多い、画面の情報量もある程度限られている。だから、どんなに劣悪な環境でもそれなりに観ることができる。

 25分というTVアニメのエピソード区切りも最適だ。1エピソードで一応区切りはつくので、細分化された時間でも、うまく当てはめることができる。例えば、自宅から駅まで歩いて15分。往復でほぼ1エピソード。列車でハブ駅まで25分程度、往復で2エピソードとなる。

 以前、ポータブルデバイスになると、眼から画面までの距離が1フィート(約30cm)になり、2フィート(約60cm)のPCや10フィート(約3m)のTVとは異なる世界になると書いた。個人的に感じたのは、1フィートでコンテンツ自体も変わるケースがあるということだ。実際には距離そのものというより、1フィートでビデオを観る環境ということだが、環境とコンテンツには相性がある。

 もちろん、誰にとってもポータブルビデオのコンテンツはアニメがいいという話ではない。アニメはあくまでもゴトウ個人の話だ。

 例えば、ソニー・コンピューターエンタテインメント(SCE)はPSPのプロモーションで、映画とともにミュージックビデオクリップをフィーチャしていたが、あれもいい解だと思う。ミュージックビデオをTVの前では観ないが、列車の中で音楽を聴くだけでなく、ミュージックビデオを観る人は出てくるだろうと、容易に想像がつく。

●870時間分のアニメコンテンツ

 じつは、過去20年間、ほとんどアニメは観ていなかった。まともに観ていたのはかつてのサンライズアニメ全盛期まで。特に、最近10年はアニメ無し状態が続いていた。

 最大の理由は、家族の他のメンバーが観ないから。特に、他では趣味が一致する小学6年の長男が、ほぼアニメを見ない。自分の時間のほとんどをPCとゲーム機に費やしているPC&ゲーム機世代だからかもしれない。そもそも、子どもが3人もいるリビングだと、落ち着いて自分のコンテンツに没頭することは難しい。

 ところが、ポータブルビデオプレーヤーを使っている時は、自分だけの世界。ノイズキャンセラヘッドフォンで周囲と隔絶されて、完全に没頭できる。これもまた、別な意味でプライベートシアタだ。そして、そこに当てはまったのがアニメだった。

 その結果、半年前から猛然とアニメコンテンツの収集を始めた。つまり、デジタル録画でビデオが貯まる→貯まったビデオを消費するためにポータブルビデオプレーヤーを導入→プレーヤーに向いたコンテンツとしてアニメを見始める→新たにアニメを集め始める。こうした経路で、結局、貯まったビデオコンテンツは消費されず、さらにビデオ収集に拍車がかかる結果になってしまった。

 現在、収集しようとリストアップしているアニメビデオコンテンツは合計で1,470時間分。この総数は、面白そうなアニメをリストする度に増えているので、まだ増える可能性がある。現在、そのうち約870時間分を、何らかの形で収集済み。つまり、収集率は現状の目標の60%を超えたわけだ。

 では、ポータブルビデオプレーヤー導入後の、コンテンツの消費はどうなっているのか。現在、収集済みのアニメのうち約180時間分を視聴し終えている。これは過去6カ月の消費なので、1日平均1時間、週7時間づつアニメを消費している計算になる。実際には2回観たり、録画して観たものの、収集せずに捨ててしまったビデオもかなりある。そうした分を含めると週12時間がアニメに費やされていると推定される。

 12時間というのは、それ以前と比較すると劇的に増えたわけだが、それでも収集済み未視聴アニメ約690時間分を消費できる日ははるかに遠い。今すぐに、ビデオ視聴時間の全てを、収集済みアニメの消化に振り向けたとしても1年かかる。実際には、新作アニメの消費もあるので、そうは行かない。リストの1,470時間分となると、おそらく消費するのに3年はかかるだろう。

 この問題を解決するには、アニメを観る時間そのものを増やすしかない。現状では、“交通機関/食事/徒歩/トイレ”の時間をアニメに使っているが、さらにアニメに費やす時間を見つけない限り問題が解決できない。考えられるのは、ポータブルビデオプレーヤーが持ち込めず、まだ紙メディアの聖域として残されている風呂だ。

 1カ月ほど前も、ライターK原氏と、次は風呂だという話で盛り上がった。防水型ビデオプレーヤーで、風呂でビデオを観れるようにすればいいと。面白いのは、その翌日、たまたま台湾でAOPENの知人と話をしていたら、彼が突然「バスルームで費やす時間を有効に使うためのフォームファクタが……」と、全く同じたぐいの話を始めたこと(笑)。国は違っても、みんな考えることは同じ。

 想定しているのは、UPnPデバイスで、無線LAN経由でビデオサーバーにアクセスができるようなハード。デコードさえできれば、ローカルのストレージは持たなくてもいい。

 今、そういうデバイスが登場したら? 躊躇なく買うことは間違いがない。

□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/HMP/

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(2004年7月26日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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