笠原一輝のユビキタス情報局

【新生VAIOシリーズインタビュー(5)】
新筐体/DLドライブ採用のフラグシップモデル
〜VAIO type Rインタビュー




ソニー「VAIO type R」

 VAIO開発者インタビューのシリーズもいよいよ最終回となるが、今回はVAIOデスクトップPCの最高峰である「VAIO type R」について取り上げていきたい。

 このtype R、筆者としてもその出来には大変興味を持っていた。というのも、筆者自身がtype Rの前身ともいえる「バイオRZ」シリーズのユーザーだったからだ。また、いち早くIntel 915Pを採用した点も興味深い。

 今回の夏モデルでは、コンシューマ向けモデルにはPCI Expressを採用しないメーカーが多かったのに対し、type Rはいち早くLGA775のPentium 4とIntel 915Pを採用した、非常に意欲的な製品である。

 PCI Expressの投入は、コンシューマ向けとしては1、2世代見送るのが常識的という現状で、そこにあえて挑むあたりが、“R”らしいともいえる。そのあたりの事情を含めて総勢で10名を超えるエンジニアの方々にお話を伺ってきた。


●Intel 915を採用しながらできるだけ静かなマシンを作っていきたい

【Q】今回リリースされたtype Rのコンセプトを教えてください。

【戒能氏】私はマイクロタワー型デスクトップの「R」シリーズを、初代タワーの後半モデルからずっと企画を担当してきました。

 Rシリーズというのは、PCのコンポーネントの中で、常に最もよいものを採用してきたのですが、それだけだと単なる高性能PCになってしまいます。そこで、主に動画、たとえばMPEG-2で録画したり、Premiereをバンドルしたりと、プラスアルファの楽しみ方を極めるモデルとしてやってきました。今回もお客様に提案するコンセプトは変わっていないのですが、デザインを変えておしまい、とはならないように、新しいチャレンジをしてみました。

 幸か不幸かちょうどIntelが新しいプラットフォームを導入する時期と重なったため、デザインや熱設計をそれに併せて新しくしようと。具体的には、Intel 915のリリースにあわせ、できるだけ静かなPCを作っていこうじゃないか、そして新しいプラットフォームに対応することで、よりお客様に良さを体験していただけるようなモデルチェンジをしていこうと考えました。

【Q】これまでのRシリーズは実にユニークな製品でした。コンシューマ向けのPCとしてはあまり例のないDirect RDRAMを採用したり、と。今回も、他のメーカーが様子見をしている中、Intel 915を採用するのはチャレンジングなことだと思いますが。

【戒能氏】企画としては、お客様に「おー」っと思っていただけるものを出さないと売れないぞ、という認識は持っています。担当としては、「やってよ」と言えばすむことなので、いつも設計の皆さんには泣いてもらっています(笑)。しかし今回は、VAIO第2章と重なったこともあり、皆が前向きにがんばってくれました。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 戒能(かいのう)正純氏 ソニー株式会社 HNC バイオデスクトップコンピュータカンパニー 木樽克典氏

【Q】今回は、全モデルでIntel 915を採用していますが、たとえば一番上のモデルだけIntel 925Xという選択肢もあったのではないですか?

【戒能氏】不可能ではないですが、Intel 925Xは915よりもチップ自体のサイズが大きく、microATXのマザーボードを作ると、ルーティングの問題で拡張スロットを1つ減らさざるを得ないのです。

システムのプロパティ画面、ソニースタイルモデルではPentium 4 560(3.60GHz)が用意される(画面は試作機のため実際の製品とは異なります)

【木樽氏】ユーザーの拡張性を犠牲にしてまで、Intel 925Xにするメリットがあるかと言われれば、やはりそうではないと思うので。

【戒能氏】本当に拡張性と機能とどちらをとるのかは難しい問題ですね。お客様の中にはフルタワーでもいいから、という方もいらっしゃいますが、我々としてはマイクロタワーが限界だと考えています。

【Q】DDR2を採用したことはどうでしょう。

【木樽氏】ハイエンドなので、思い切ってというのはあります。弊社はかつて最後までDirect RDRAMをやっていたぐらいですから、やはりDDR1じゃ許されないでしょう、と(笑)。たぶん、コンシューマ向けのPCとしては一番多くDirect RDRAMを売ったと自負してますので(笑)

【戒能氏】システムバスの問題もあって、すぐにDDR2のメリットがでてくるわけではないということはわかっていましたが、このモデルのお客様は長期にわたってこのマザーボードを使うだろうと考えていますし、最もよいプラットフォームも要求してくるだろうと考え、チャレンジすることにしました。

 供給の問題も、もちろん考慮しています。この製品は米国でも販売しますが、そちらの製品はIntel 915でもDDR1を搭載しています。このため、最悪の場合はDDR1へスイッチすることもオプションとして残しつつ平行して検討し、供給量や価格の問題がクリアできそうなので、DDR2にしました。

【Q】今回のIntel 915では、CPUソケットも、メモリも、GPUバスもすべてが新しいものとなっていて、かなり大変だと予想されますが、どのあたりが一番大変でしたか?

【木樽氏】もうすべてが大変でしたね。Intel 915で行こうと決めたのは、昨年の秋頃でした。その頃はまだ仕様も決まっていないという状況ですし、サンプルもない。もちろんGPUもない、と大変でしたね(苦笑)。そういう状況の中で、トラブルが起こっても、どこが悪いのかわからないんですよ。原因がマザーボードなのか、それともビデオカードなのか、はたまた電源なのか……。中でも一番つらいのは、やっぱりビデオカードでしたね。

採用されているはマイクロタワー型のケース。色は紫ベースから黒ベースへと変更されている VAIO type Rに採用されているマザーボード。チップセットにはIntel 915Pを採用している。マザーボードにはPTGD2-VXというシルク表示があるほか、メモリソケットはDDR2用240ピンソケットが4つ用意されている

●最初は強制的に1レーンで動作させたPCI Express対応GPU

【Q】業界でもPCI Expressのビデオの安定性を危惧する声は、早くからでていました。

【木樽氏】正直に言うと、去年の間は、PCI ExpressのGPUがほとんどまともに動作しない状況でした。このため弊社でもIntel 915Gの内蔵GPUを利用してデバックしていたという状況でしたね。とにかく、PCI ExpressのGPUが動くようになるまではかなり大変でした。

【Q】どんな状況だったのですか?

【戒能氏】PCI Expressの動作が安定していないころ、私はラボでPCI Expressのビデオカードのピンをテーピングして動かしていたのを見たことがあります。

【木樽氏】一番最初にもらったPCI ExpressのサンプルGPUは、16レーンだとPCI Expressのバス周りのノイズを拾ってしまってまともに動かなかったんですよ。仕方ないので、1レーン以外のところはテープでマスキングして、強制的にx1として動かしていたのです。16レーンあると、リンクを16回全部しないといけなくなりますが、そうするとどこか1つは動かなかったりして……(苦笑)。そこで、テープを張って1レーンにしていたのです。

【戒能氏】ここまでしないと動かなのでは、本当に大丈夫かなと思いましたね(笑)。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 福田茂伸氏

【福田氏】実際、PCI Expressに対応したGPUがまともに動くようになったのは、2月に入ってからでしたね。最初にGPUベンダから提供されたGPUは全然動かない状況で、システムの担当者からはなんとかしろとせっつかれるのですが、こればかりはどうしようもないですし(苦笑)。

【Q】最終的に安定したのはいつ頃ですか?

【福田氏】4月の中頃には最終版を入手し、安定して動かすことができるようになりました。その後、システムとGPUの担当者が協力して作業を進めましたが、たいていの場合はシステム側に助けてもらいました。

【木樽氏】ちょっと詳しくはいえないですが、BIOSでうまく修正を入れたりとか、いろいろと調整しました。今は問題なく安定して動作するようになっています。

【福田氏】3月頃は問題外でしたね(苦笑)。

【戒能氏】もちろん、製品では安定して動作しているのでご安心ください(笑)。

【Q】確かに、どのベンダもPCI Express、特にビデオ周りに関しては問題を指摘していますね。

【戒能氏】そうですね、なぜAGPも利用できるようにしてくれなかったのかと、恨んでみたり、とか(笑)。

【Q】NVIDIAのHSIを利用したチップを採用するという選択肢はなかったんですか?

【福田氏】もちろん検討しました。ただ、今回はハイエンド向けという位置づけですし、やはりネイティブで行くことにしました。

採用されているPCI Expressのビデオカード。GPUにはATIのRADEON X600が採用されている

【Q】PCI Expressの特徴は、やはり上り帯域幅だと思います。そういった特徴をとらえたアプリケーションなどは今回用意されているのでしょうか?

【戒能氏】そういう意味では、その準備はまだ整っていないと思います。ただ、Premiereのプラグインとして用意したものの中には上り帯域を一部活用できるようなものも入っていますが、まだフルには使っていません。今後の宿題だとは認識しています。

【Q】今回採用したPCI Expressのビデオカードですが、type Rのための専用品だと考えていいでしょうか?

【福田氏】今回使っているビデオカードは、静音化のために大型のファンを搭載できるよう、ボード自体のレイアウトを見直しています。また、3D性能を妥協するわけにはいきませんが、ファンの音が全開というのも許されません。そのあたりのバランスが難しいので、今回の製品では専用のヒートシンクとファンを開発し、ファンコントロールをすることで騒音を抑えています。

【戒能氏】type R向けとして、やはりファンは静かにしたいと思い、そこは強くお願いしました。すでにお話したように、大きなテーマとして「Intel 915でも静かなPC」というのがありまして、今回はそれに併せてケースも全く新しいデザインを採用しています。

 バイオRZシリーズでも、電源を入れてWebサイトを閲覧する程度であれば、それほどうるさくはなかったのですが、TMPGEncを利用してエンコードやトランスコードを開始すると、ファンがうなりをあげ始めるのが問題でした。エンコードは寝ている間にすることもありますから、それでは眠れないですよね(笑)。RZではGPUがGeForce FX 5600でファンの騒音はそれなりに出ていましたので、なんとかしたいなぁと考えていました。

【Q】ビデオカードをファンレスにしようという案はなかったのですか?

【福田氏】あることはありましたが、そうするとヒートシンクのサイズが1スロットに収まらなくなってしまうのです。スロットをつぶして拡張性を犠牲にしてまで得るものがあるかと言えば、そうではないと思いましたので、今回はファンを採用しながらも、できるだけ静かなものにするためファンコントロールの手法を選択しました。

【戒能氏】そういう意味では、BTXも検討はしてみましたけどね。

【Q】でも、あのように正面に吸気穴が空いているようなデザインなどが日本に受け入れられるか、かなり疑問だと思います。

【戒能氏】そうですね。静かにしたいのに正面に穴が開いているのはないだろうということはありました。BTXだと、GPUに風があたるようにGPUの横にスペースができるので、冷却という観点だけでみれば楽なんですが、静音という意味では失うものは少なくないでしょう。

●モデムにもHD Audioのコーデックを利用している

【Q】今回、PCI ExpressをサポートしたIntel 915を採用されていますが、現時点ではGPU以外のPCI Express x1の周辺機器というのは存在していません。

【戒能氏】たしかに現時点ではx1用の周辺機器というのはありません。ただ、今回は将来の拡張用ということで、1スロット用意しました。いずれはホームサーバー用に2つのGigabit Ethernetを利用したりなどの用途が考えられるからです。このため、一番下のスロットに挿さっているモデムを抜けば、PCI Express x1スロットを利用可能です。

【Q】ということはモデムと排他利用ということですね?

【戒能氏】そうです。モデムはもう付けなくていいのではないか、という議論はありました。そういう意味では、FDDもいらないという話もしました。ただ、お客様の中にはADSLが簡単に引けない地域もあるだろうし、今回も残すことになりました。ただ、ソニースタイルモデルを選択していただければ、モデムをはずすことは可能です。

【Q】このモデムですが、よく見たらHD Audioのモデムコーデックを利用したモデムなんですね。

【戒能氏】そうなんです。実はそのために結構たいへんで(苦笑)。

【木樽氏】実は最初、HD Audioに対応したモデムのチップが全然なくて困りました。PCI ExpressとHD Audioのモデムを排他利用できるようにしようという仕様は決定しましたが、モデムが間に合わなかったらどうしよう、とかなりやきもきしましたね(苦笑)。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 黒須茂氏 ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 潘 慶氏

【黒須氏】最悪の事態に備えてPCIのモデムも用意だけはしていました(苦笑)。

【Q】AC'97にしなかったのはなぜですか?

【木樽氏】それは、オーディオとしてHD Audioのコーデックを選択したからです。確かに、Intel 915では、HD Audioに加えて、AC'97もサポートされています。ただ、オーディオをHD Audioで、モデムをAC'97という選択はできないのです。なぜかというと、HD AudioとAC'97は同じピンを利用するので、排他利用になるからです。本当は、両方使えるのがベストなんですけどね。

【Q】HD Audioにしてどのようなことをやらせていますか?

【潘氏】Intel 915の特徴の1つでもありますし、HD Audioの高機能を生かしていきたいというのはありました。今回、HD Audioのコーデックを利用して5.1チャネルの出力をサポートしています。また、ソフトウェア側でですが、DVD再生プレーヤーソフトで、ドルビーバーチャルチャネルヘッドフォン、プロロジック、ドルビーバーチャルスピーカーなどの機能をサポートしています。

 また、HD Audioのユニークな機能はフロントパネルの音声ジャックが入力/出力兼用になっているところです。同じジャックでも、ライン入力のデバイスを接続すると入力として動作し、ヘッドフォンをつなぐと出力として動作します。

【戒能氏】企画側としても悩んだのは、HD Audioって、自由度が高いのです。たとえば、HD Audioを利用すれば、フロントとリアの両方に別々のオーディオを流したりできます。後ろ側のスピーカーで音楽CDを鳴らしながら、フロントから別のアプリケーションで音を鳴らすことができるのです。

 でも、それってどういうアプリケーションなんだろう、という話になってきますよね(笑)。Intelさんがおっしゃるには、CDを聞きながら、IPフォンができるということのようなんですが、今のところうーん、というところです(笑)。

 また、今回はRealtekのコーデックを採用していますが、我々の方から仕様を提案して作ってもらいました。たとえば、普通のAVアンプを買うとスピーカーごとにディレイや音量などの設定ができると思います。普通のPC用コーデックの仕様だとPCのマスターボリュームを変えると、それにつられてせっかく合わせた5.1チャネルスピーカーの設定がリセットされてしまう場合があります。それでは困るので、マスターボリュームを変えてもスピーカーの音量比は変わらないようにしました。

【Q】Gigabit EthernetがPCI接続なのは、やはりNorthway待ちということですか?

【戒能氏】そうですね(苦笑)

【木樽氏】最初はNorthwayを前提に設計していましたが、Northwayが遅れることがわかった段階で、PCIに切り替えました。BroadcomやMarvelも検討しましたが、そちらにもリスクはあるし、調整する余裕はありませんでした。ほかにもいろいろとリスクがありましたから(苦笑)。

HD Audioに対応したモデムコーデックを搭載するモデムカード。PCI Express x1とは排他利用 モデムカートとPCI Express x1のスロットは排他利用となっている
PCの背面パネルと前面パネル。5.1チャネル出力用のオーディオジャックが用意されているほか、前面にはヘッドフォンとライン入力共用の端子が用意されている

●体感速度を考えてHDDはRAID0をデフォルトに

【Q】今回のモデルではコンシューマ製品としては珍しく、RAIDを採用しています。RAIDを採用したのはなぜですか?

【戒能氏】Intel 915を利用してRAIDが実現できると聞いたとき、type Rでは絶対RAIDが必要だと考えました。というのも、RZのお客様でHDD容量が足りないと訴える方が少なくなかったからです。実際調べてみると、かなりの方がHDDを増設していることがわかっていました。そこで、シリアルATAを4台接続できるなら、絶対RAIDでしょうと思っていました。

 そんなわけで、開発チームには、絶対に4台入れるようにしろ、と“お願い”しました(笑)。

【Q】今回初期出荷状態では、2台のHDDでRAID0(ストライピング)という設定になっています。なぜRAID1(ミラーリング)ではないでしょうか。

【戒能氏】HDDが2台しかない場合、ミラーにするのか、ストライプにするのか、悩ましいところですね。確かに最初は信頼性重視でミラーリングという案もあったのですが、せっかく250GBのドライブを2台積んでいるのに、250GBしか使えないというのでは、少々寂しいのじゃないかと考えました。また、現在のWindowsの場合、体感速度はHDDの速度に依存している部分も少なからずあると考えています。それなら、ストライプが一番いいのではないかということで決めました。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー近藤博仁氏

【近藤氏】出荷時にはRAID0で出荷していますが、もちろん後から変えることも可能です。type Rを買っていただけるお客様であれば、使い方によってはRAID1にしたり、RAID0+1にしたり、Matrix RAIDにしたいという方もいらっしゃると思います。そういう要求に応えるために、RAIDの設定を変更できることが必須であると考えました。そこで、我々独自の機能として、リカバリ時にRAID設定を変更できるユーティリティを入れ込んでいます。

【Q】それはリカバリツールにRAIDの設定項目が用意されているということですね。

【近藤氏】そうですね。今回我々はリカバリツールとして2枚のディスクを用意しています。1枚がリカバリ用のディスクで、もう1枚がRAID設定用のブートCDです。Intel様から提供されているIAA(Intel Application Accelerator)4.0でも変更できますが、IAAでは一度RAID0からRAID1に変更してしまうと戻せないのです。

 そこで、どうせならリカバリ時にユーザーが自由に設定できたほうがいいだろうと考えました。コンシューマでRAIDをやるのは、我々だけでなく、Intelも初めてなのです。このため、彼らも手探り状態なので、お互いに協力してこうした形式にしました。

【Q】個人的にはホットスワップがあるといいなぁと思いましたが。

【木樽氏】Longhornになれば、シリアルATAのホットスワップなどのネイティブコマンドがOSでサポートされるようになると思いますが、現在のXPではIAAをいれなければならないという事情もあります。また、弊社のマシンだと、デバイスベイになっているわけではないので、本体のケースを開けないとHDDを交換できません。この状況では、電源を抜いて、HDDを抜いてというのはちょっと現実的に難しいのではないかと考えました。

【戒能氏】個人的には外付けでホットスワップ可能なデバイス、たとえばUSBやIEEE 1394との差別化が難しいと考えています。内蔵ドライブは大容量という方に特化する方向で考えています。

内蔵のHDDスロット。ドライブベイに3つ、またFDDが入っている3.5インチスロットからFDDを取り外すことで1つ、合計4つのHDDを内蔵できる Intel Application Acceleratorを利用してドライブを表示している画面。このように最大で4台までのRAIDを構築できる

●ぎりぎり間に合った片面2層対応ドライブ

【Q】今回、テレビチューナはRZと大きくは変わっていないのですね?

【戒能氏】基本的な画質という意味では変わっていないです。ただ、ハードウェアデコーダをはずして、ソフトウェアベースのものに移行しています。これは、Do VAIO対応のためです。

【大沢氏】ハードウェアとしては同じなのですが、Do VAIOの機能として実現しているのは、ビデオ出力における一般のビデオファイル再生です。これまでのRシリーズでは、Sビデオ端子に出力できるのはGiga Pocketで録画したMPEG-2ファイルのみでしたが、type Rでは一般のファイル、DivXやAVIなども再生できます。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 大沢宗哲氏 ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 大西孝典氏

【Q】つまり、フリーソフトを使ってフィルターをいじらなくてもいい、ということですね。

【戒能氏】そういうことですね(笑)。

【Q】Giga Pocketがなくなり、Do VAIOになりました。確かに使い勝手は向上したとは思いますが、柔軟性という意味ではGiga Pocketの方があったと思いますが、どうでしょうか?

【戒能氏】確かにそういう議論があることは認識しています。このため、TMPGEnc AutherにDo VAIOボタンを用意して、それを押すとDo VAIOで録画したコンテンツのリストが取得できたりなど、工夫しています。今後、Giga Pocketのユーザーにも満足していただけるようにDo VAIOを発展させていかないといけないと考えています。

【Q】一方で、Click to DVDの方は、Do VAIOにもインターフェイスが用意されていて、DVDを焼くまでの動作をリモコンで行なえるなど使い勝手が向上しています。

【大沢氏】このClick to DVDなのですが、他のVAIOに採用されているバージョン2.0に比べて.1バージョンがあがっていてバージョン2.1になっています。その.1がDVD+Rの2層ディスク書き込み対応分です。また、ご指摘のようにDo VAIOと連携するようになっており、ユーザーインターフェイスをDo VAIOで用意し、記録エンジンはClick to DVDのものを利用しています。

【Q】Click to DVDは新しい機能はありますか?

【大沢氏】番組のカテゴリ分けですね。これまでGiga Pocketでは、フォルダによる分類でしたが、Click to DVD 2.1では、カテゴリを明確にしています。また、字幕の中に情報を書き込む機能を用意しています。Click to DVDでは静止画をスライドショーにする機能がありますが、そうして書き込んだディスクをDVDで再生している時に字幕ボタンを押すと、撮影情報などが字幕として表示されるようになります。

【Q】iEPGのデータは字幕として表示されないんですか?

【大沢氏】iEPGには著作権の問題があります。タイトルは問題ないのですが、詳細データは契約上できないことになっているので、難しいです。

【Q】2層ドライブへの対応はどうしていますか?

【大沢氏】ライティングエンジンに手を入れています。コンテンツの容量が約2倍になっているので、たとえば今まで2時間しか入らなかったところが4時間になります。そのあたりでユーザーインターフェイスの部分に手を入れたりなどの改良を行なっています。

【Q】その2層ドライブですが、メーカー製PCとしては初めての採用ですね。

【戒能氏】企画担当としてはあったらほしいとは思っていました。タイミング的には結構ぎりぎりで、夏モデルでは難しいかなと思っていたくらいでした。

【大西氏】メディアの規格が固まったのが今年に入ってからで、そこからメディアを作り始めるという状況でした。スケジュールとしては本当にぎりぎりでしたね。前モデルで8倍速のドライブを採用していたので、次のステップとしてはやはり2層と考えていましたし、ドライブの開発チームにも頑張ってもらいました。

 ただ、最初はドライブもない、メディアもない、という状態で、どんどんしわ寄せが後ろに行きました。実際に、メディアに書けるようになったのが、3月の半ば頃ですね。

【大沢氏】2.0の実装が終わってほっとしたたころなんですが、いきなり2層やれと言われて、「えーーーー!」という感じでしたね(笑)。3週間でやれと言われましたよ。

【大西氏】業界のトレンドとしてはそこに向かっていることは明らかだったのですが、実際にスタートしたのは確かに遅くて、厳しかったですよね。

【Q】昨年の10月のCEATECでテクノロジデモしてからということを考えると結構早かったですね。

【大西氏】アフターマーケットでは5月からということは決まっていたので、それなら本体組み込みの方もそれに近いスケジュールで、と考えました。

【根路銘氏】順序としてはドライブの開発をして、メディアを開発してというステップを経てきましたが、1枚何千円もするメディアをかき集めてきて、テストをしていきました。ソフトウェアの方には「1枚ウン千円だよ」だから大事に使ってねと(笑)。

ソニー株式会社 ホームエレクトロニクスネットワークカンパニー 根路銘国高氏 ソニー株式会社 ホームエレクトロニクスネットワークカンパニー 小納谷 玲子氏

【Q】2層対応ドライブはコスト的には変わらないのでしょうか?

【根路銘氏】構造的には大幅に変わっているわけではないので、量産が進めば製造コストに大きな差はないと考えています。ただ、現在の製品には新規で起こした部品などもいくつか使っており、それが理由でコスト増になってしまっている部分はあります。

【大西氏】1層と2層の間が50μmぐらいしかないので記録時にレンズの収差(ひずみ)や迷光が影響する場合があります。その場合はピックアップの精度を追い込むなどの改良が必要で、コストアップになる事があります。

【Q】ところで、製品に2層のメディアはついてくるんですか?

【戒能氏】そこも議論があったんですが、今回は見送っています。2層のメディアは生産が非常にタイトで、全部入れてしまうと数が足らなくなる可能性がありました。それが原因で出荷が遅れては困るので入れていません。また、リライタブルならいいのですが、ライトアットワンスなので、一度焼いたらおしまいです。それほど付属させるメリットはないのではないかと考えました。

【Q】2層のメリットとはなんだと思いますか?

【戒能氏】長時間のコンテンツを1枚のディスクに入れられるようになることですね。より圧縮率の高い形式でTMPGEncでエンコードし、1枚のディスクに入れれば、たとえば連続ドラマの全回を1枚に入れるような使い方もできると思います。光メディアの安心感というか、保存性の高さはあると思うので、そうした点をアピールしていきたいと考えています。

採用されているTVチューナカード。従来モデルにあったMPEG-2のデコーダ機能は省略されている 採用されているドライブはソニーの片面2層対応DVD±RWドライブ

●最初から穴を開けることを前提とした設計

【Q】ケースですが、ユニークなデザインですね。筐体が大きく吹き抜けになって、一見するとターボエンジン搭載車のエアインテークみたいですよね?

【熊野氏】エアインテーク風にしたのは、デザインからの要望でした。このプロジェクトに入ったときにどういうマシンかと聞くと、「熱い」と言われたのですよ(笑)。これまでのパターンだと、デザインの後半に放熱のことがようやく出てきて、仕方なく穴を開けたりすることはありましたが、今回はそれでは間に合わないだろうと考えました。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 熊野大岳氏 ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 小林紀男氏

 最初の段階からデザイン側としては吸気口を開け、それがデザインのインパクトにもなるという狙いがありました。ただ、一口に吸気口を開けるといっても、強度の問題などがあって、一度は諦めかけたのですが、内部のレイアウトを見直し、FDDを少しずらすなど、工夫をしました。デザイン的には外装で語るよりは、メカや構造で語りたかったのです。

最初から大きな吸気口が開いた状態を前提に設計されたtype R。冷却効果だけでなく、デザイン上のアクセントにもなっている

【Q】たしかに、某自動車メーカーの「type R」に似たイメージはありますね(笑)

【熊野氏】デザインしているときにはあまり気にしていなかったのですが、完成してみると、車のイメージと重なって、かなりよい反応が得られるのではないかと思うようになりました(笑)。

【戒能氏】これまで、初代のVAIO Rからずっと同じデザイナーが担当してきたのですが、今回はじめて熊野さんにお願いしました。

 マイクロタワーはデザインの自由度って低いじゃないですか、外形もそうだし、デバイスの位置などもきっちり決まっています。デザイナーとしては非常にやりにくい素材だと思うのです。以前のRシリーズでは、かなりやり尽くしたという状況でした。青色LEDを採用したりするなど、外装で勝負という感じになってしまっていました。

 吸気口を開けるというと、VAIOだとLXがそうだったのですが、筐体側面に穴をあけ、そこから吸気していました。このケースも何かしらの吸気口を用意しないと厳しいというのは最初から見えていました。中途半端に穴を開けるぐらいなら、いっそのこと吹き抜けのエアインテーク状にし、デザインに活かしたらどうだろう、と考えたのです。

 今までとは違ったシンプルで印象的なデザインに仕上がったんじゃないかと思っています。

【Q】エアインテーク部分を持って運ぶ人が多そうですね。

【戒能氏】逆に企画の側からはエアインテーク部分を持てるように、強度を持たせてほしいとお願いしました。

【小林氏】通常だとレイアウトを並べて、そこにパーツを入れていくのですが、type Rでは、最初にフレームのデザインが決まっていたので、割と自然にこのデザインができあがりました。

【戒能氏】通常、まずケースが決まって、それをデザイナーに渡して外形を作ってもらう形式をとりますが、type Rでは、デザイナー、メカエンジニア、熱設計のエンジニアなどを一同に集め、こういうデザインになったので、どうにか入れ込んでほしい、というディスカッションを最初に行ないました。このように、これまでとは違ったやり方をやったことが、いい方向へつながったと思っています。

●115Wは余裕でクリアする1年後を見据えた熱設計

【Q】熱設計もかなり大がかりなものになっています。

IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 石川 雅幸

【石川氏】今回はCPUヒートシンクの熱をヒートパイプで、ケース後部のファンに接地しているヒートシンクに熱伝導させて放熱する仕組みになっています。

【熊野氏】デザイン的にも静かさを感じるようなデザインにしたったというのはありました。たとえば、メーカーによってはブツブツと穴をたくさん設けるデザインを意図的に採用しているところもありますが、それだとうるさそうな印象を与えてしまいそうなのと、せっかくの静かさがスポイルされてしまいますので。

【Q】CPUの熱設計のポテンシャルも高そうですね。Pentium 4 560(3.60GHz)の115Wはクリアしていますか?

【石川氏】115Wは楽勝でクリアしています。どのくらいというのは具体的に申し上げられませんが、基本的にはこの設計を1年以上使うつもりで、余裕を持った設計をしています。そのため、今後1年間はほぼクリアできる設計にしています。

【Q】ヒートシンク自体もかなり大型ですね。

【石川氏】最初に騒音のレベルというのを決めていたので、それはクリアできるように余裕を持たせました。容量だけで比較するなら、今までのヒートシンクの4倍の容量になってします。

【Q】素材はアルミベースで、ヒートパイプだけ銅ですね。

【石川氏】そうです。最初は銅ベースがいいかと思ったのですが、試作してみたところ、1度程度しか温度が変わらなかった。以前の熱設計では熱源を広げるという考え方が主流でしたので、銅にするメリットがありました。現在は、熱源を広げている暇があったら奪った方がよいという考え方が主流です。熱をいかに奪うかという観点では、銅にしてもアルミにしてもあまり違いはありませんでした。

【Q】冷却ファンもかなりゆっくり回転していますね。

【石川氏】最大で2,000rpmぐらいですが、普段は800rpmぐらいです。回転数などはCPUの温度などに応じてBIOSからコントロールしています。

【Q】水冷は検討しましたか?

【石川氏】水冷もいろいろ試してみたのですが、水冷は熱を移動させるというのは有効で、受熱ポイントを増やせる。たとえばCPUだけじゃなくて、GPUやHDDも冷やすのには有利なのですが、冷却効率という観点でみると、まだまだ空冷の方が有利です。

【Q】ファンは、電源、CPUのほかにもあるんですか?

【戒能氏】HDDのところに1つ付いています。HDDが2台であれば必要ないのですが、最大4台を目標にしていたので、必要になりました。Intel 865のモデルではHDDが2台まででしたので、ここはついていません。

【Q】騒音レベルは下がっていますか?

【石川氏】前のモデルに比べると、5dBぐらいは下がっていると思います。ですが、負荷をかけたときの落差はかなり大きく、CPUファンの回転数はフルロードになってもほとんど上がりません。そういう違いはお客様の実利用環境では大きいと考えています。

ヒートシンクには大型のファンが取り付けられており、ゆっくり回って冷却する ヒートシンク単体。人間の手と比べると非常に大きなものであることがわかる

●今後はデジタル放送やHDコンテンツへの対応などが鍵

【Q】近い将来に問題になるであろうデジタル放送への対応はいかがでしょうか?

【戒能氏】このマシンは動画をいじったりとか、そういう人向けへのメッセージになっていますが、デジタル放送対応にすると、どうしてもタイムシフトだけということになってしまいます。我々としてはデジタル放送へのソリューションとしてType Xを出すので、その反応を見て考えていきたいなと考えています。

【Q】今後のRシリーズはどうなっていくでしょうか?

【戒能氏】今回のモデルは昨年の半ばにスタートして、開発者としてはかなり満足できる完成度になったと考えています。RZの時なんかはあーしたい、こーしたいというのはあったのですが、今回は割とほとんどクリアできたんじゃないかなと思っています。

 以前は、DVでキャプチャーできてフレーム単位で編集できればOK、あるいはMPEGで録画してDVDにできればOKというのがありましたが、今はより圧縮比の高いコーデックにトランスコードしたり、HDコンテンツの編集もしたいとか、新しいニーズもでてきつつあります。今は1台ですべてやるのが難しくなっていますが、今後もすべてを1つでクリアできるマシンを作るにはどうしたらいいのか、というのが課題になると感じています。

【Q】本日はありがとうございました。


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【5月10日】ソニー、吹き抜け式新筐体/2層記録式DVD採用の「VAIO type R」
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(2004年7月20日)

[Reported by 笠原一輝]


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