●エプソン E-100 「女性に使いやすいプリンタ」をコンセプトに開発されたことで、今年3月の発表時にも話題に上った、エプソンの「E-100」(写真45)。サイズは256×154×163mm(幅×奥行き×高さ)と大きめ。背面の給紙トレイと前面の排紙トレイを開く必要もあり、設置の奥行きは多めに確保する必要がある(写真46、47)。ただし、キヤノン、松下電器産業、ソニーの各昇華型製品よりは、若干短めで済むこともあり、むしろ幅の広さのほうを気にする人のほうが多いかも知れない。
用紙サイズはハガキ、L判、カードサイズ(54×86mm)の3種類。フォトシールなどの一部用紙を除いては、全サイズで4辺フチなし印刷が可能だ。インクジェットプリンタらしく、背面の給紙トレイに斜めに用紙をセットする格好となる。 本体周りの特徴としては、まず持ち運びに便利な取っ手が付いていることが挙げられる。前面には、CF、メモリースティック、SDメモリーカード、スマートメディア、xD-Picture Cardの各スロットが設けられており、メモリカードからのダイレクトプリントが可能だ(写真48)。この対応メモリカードは、現状のデジカメほぼすべてをカバーするといえるもので、PictBridge非対応デジカメを使っている人も安心できる。 そのほか外観の特徴は、上面に設けられた液晶ディプレイと操作ボタン(写真49)、背面にはTV出力端子も備える(写真50)。本体背面にはデジカメと接続するUSB A端子、PCと接続するためのUSB B端子も装備されているほか、専用のACアダプタ(写真51)を接続するコネクタがある。 また、インクカートリッジも本体背面に収納される(写真52)。本製品のインクカートリッジは6色が一体となった専用カートリッジで、各色ごとに交換することはできない。一体カートリッジだと1色でもなくなった時点ですべて交換、ということでコスト面のデメリットが大きいのだが、製品の性格を考えると手軽さを優先させた本製品の姿勢もアリだと思う。 メモリカードからのダイレクトプリントは上面の液晶と操作パネルを利用して行なう。写真を選択して出力することも可能なのだが、この液晶では写真の確認などは行なえず、画像の番号(ファイル名の若い順から1番、2番……と割り振られる)を選択するという、実に指定のしづらい手法となってしまう(写真53、54)。よって、スタンドアロンで使う場合は、DPOF指定をあらかじめ行なっておくか、インデックスプリントを出力して選択することなるだろう。
背面のビデオ出力端子を利用すれば、TVなどにメモリカード内の写真を映し出して選択することもできる(画面15)。もっとも手軽で、インデックスプリントのように用紙も無駄にならない現実的な手法になるだろう。ただし、松下、ソニー製品のようなレタッチ機能やレイアウト印刷などの指定は行なえず、あくまで画像を選択する機能のみに留まっている。色調整やシャープネスコントロールを行ないたい場合は、やはり液晶ディスプレイを利用して操作しなければならない(写真55)。
印刷品質については、最大2,880×1,440dpiの解像度を持ち、顔料系インクを使った6色印刷となる。ただし、カメラからのダイレクトプリントを行なった場合の解像度は1,440×720dpiとなるの要注意だ。実際の印刷サンプル(サンプル6)はPictBridgeを使って出力したものなので後者の解像度となる。そのためかジャギーというよりは、段差といった雰囲気で、解像感に乏しい印象を受ける。また昇華型プリンタの印刷に比べると、無地部分の粒状感が目立つ。色合いは派手過ぎず、地味過ぎず、記憶色に近い忠実な色再現ができているように思える。このクセのなさは万人に好まれそうに感じられる。 PCと接続した場合は最大解像度での印刷も可能だし、ドライバレベルで多彩な機能を利用することができる。まず色合いについては本体側の機能としてスーパーフォトファイン5を明示的に指定できるほか、ドライバレベルで明度、コントラスト、彩度、CMYの各色調整を行なえる(画面16、17)。また拡大・縮小やレイアウト印刷、スタンプマーク付加(画面18)、インクジェットプリンタには必須のヘッドクリニーング機能などが提供されている(画面19)。 PictBridgeによるダイレクトプリントでのL判印刷に要した時間は約2分3秒。イニシャライズに要する時間が少々長めなのは気になったが、インクジェットプリンタとしてはまずまずの速度ではないだろうか。ちなみに筆者が所有するPM-A850では、L判に印刷するのに約3分48秒も要している。また騒音についても、ヘッドが動く「サーッ」という音は耳障りではあるがかなり抑制されており、昇華型も含めて静かな部類に入る。 本体価格は22,000円前後。今回紹介する機種ではもっとも安価だ。ランニングコストは公称値で22.7円。昇華型の最安値よりも圧倒的に安い。価格面の魅力では、本製品が頭一つ突出しているといっていいだろう。 ●日本HP HP Photosmart 245 日本HPの「HP Photosmart 245」(写真56)も、インクジェット方式のフォトプリンタだ。本体サイズは230.5×113×131mm(幅×奥行き×高さ)で、前述のE-100より一回り小さい印象。日本HP製品らしく、前面トレイから給排紙を行なう仕様のため、本体サイズは比較的コンパクトに感じられる(写真57~59)。ただし、印刷中は背面側へ用紙が飛び出す量がやや大きいので、この点には要注意だ(写真60)。
用紙はハガキ、L判のほか、A6サイズ、同社純正の10×15cmの各用紙に対応。3辺フチなし印刷となるため、ミシン目の入ったL判用紙または10×15cm用紙がサプライ品に用意されている。 本製品は、今回紹介する製品中、唯一PictBridgeに対応しない製品で、メモリカードからのダイレクトプリントのみに対応する。メモリスロットは本体前面に用意されており、CF、メモリースティック、SDメモリーカード、スマートメディア、xD-Picture Cardの各スロットを装備する(写真61)。このスロットの種類はE-100と同様で、ほぼすべてのデジカメをカバーするといっていいだろう。操作は本体上面に設けられた各種操作ボタンと液晶ディスプレイを利用する(写真62)。
本体前面には、このほかにインクカートリッジを装着するスペースもある(写真63)。このインクカートリッジは同社のインクジェットプリンタで利用されているものと同一だ。本体の背面側には、こちらにはPCと接続するためのUSB B端子、ACアダプタを接続するためのコネクタが用意されている(写真64、65)。 メモリカードからのダイレクトプリントとなるため、写真の選択を行なう操作感が気になるところだが、本製品の液晶ディスプレイはカラー液晶であり、メモリカード内の写真を参照しながら選択したり、各種設定変更を行なえる。写真を1枚ずつ見ながら選択できるのはもちろん(写真66)、すべての写真を印刷、インデックス印刷といったまとめて印刷する方法(写真67)も利用できる。また、写真の明暗やフレームの作成(写真68、69)、コントラストの調整(写真70)など、ごく簡単ながらレタッチ機能も有しており、スタンドアロンでも十分に利用可能なレベルにある。
さらに秀逸なのがドライバの機能だ。用紙の選択はもちろん、彩度や明度・色調を調節する機能、デジタル写真に特化した特殊な自動調節機能、透かし印刷機能などを持つ(画面20~24)。もちろんインクジェットプリンタに必須のプリントカートリッジクリーニングやインク残量の確認も可能だ(画面24)。E-100もそうだったが、昇華型プリンタに比べて、インクジェットプリンタのほうがドライバの機能が優秀な傾向にある。製品数の多いA4インクジェットプリンタのノウハウが活かされているのだろう。
印刷品質はというと、解像度は4,800×1,200dpiの3色印刷。3色が一体となったインクカートリッジで、同社のA4インクジェットプリンタでも利用されるタイプである(写真71)。実際の印刷サンプルは高画質設定でSDメモリーカードから印刷を実行したものだが、3色印刷とは思えないほどクオリティは高い。細かく見るとインクジェット特有のインクの伸びも見られ階調の中間色が端折られている印象も受けるものの、肉眼でパッと見ただけではそうと気付かない。解像感も高く、発色の鮮やかさもあって、全体的に印象の良い仕上がりになっているといえる。 印刷速度は約2分25秒。インクジェットプリンタとしては及第点だろう。音は今回の試用製品中でも平均的で、E-100より若干うるさめなのが気になるところである。 本体価格は25,000円前後。ただしランニングコストに関しては、インクカートリッジなどがオープン価格ということもあってメーカー公称値が発表されておらず、またインクの使用可能枚数の目安なども公表されていないため不明。 ●個性の強い製品が並立するフォトプリンタ 以上のとおり、6製品のフォトプリンタを試用してきた。総合的には、同じ価格帯で、フォトプリンターという同じセグメントで対抗する製品とは思えないほど、各製品の個性が強いのが印象的だ。元々はPCと切り離せない関係だったデジカメだが、今ではPCを使わない人にも愛用されるという世相を反映しているのだろう。 とくにキヤノン・オリンパスの2製品が興味深い。PCを使わずに写真印刷をしたい、というニーズに対してシンプルな製品を用意する、という回答が良い。マニュアルを読む気すら起こらない人も、ここまでシンプルな製品であれば使おうという気になるのではないだろうか。 ただ、この2製品のみがお勧めというわけではない。多機能さ求めるなら松下・ソニーが候補になるし、PCとの接続も考慮するならエプソン・日本HPという選択になるように思える。さらに細かい点にこだわると、最終的にはユーザーそれぞれのニーズが製品の選択を決定する。そのぐらい各製品は個性的だ。 そこで、最後にもう一度、本文中で触れてきた各製品の良い点・悪い点についてまとめておいた(表)。フォトプリンタは、PCの操作が苦手な人にとっては非常に便利な存在で、強くお勧めできる。逆に、すでにPCを使ってデジカメの写真を印刷している人にとっては、購入の動機を感じない製品ジャンルかも知れない。だが、PCを使わないことで撮影→紙への出力のタイムラグは軽減できる。そうした幅広いユーザーに愛用される可能性があるフォトプリンターの選択の一助となれれば幸いだ。
□関連記事 (2004年5月28日) [Text by 多和田新也]
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