米MicrosoftのRobbie Back CXO(Chief Xbox Officer)はE3 2004会場で行なわれたインタビューで「日本市場への挑戦を決してあきらめることはない」と話した。同氏は現行Xboxでの主要な失敗原因を2つ挙げ、5~10年の長期間をかけて先行するソニー・コンピュータ・エンターテイメントに追いつくと述べた。 ●日本市場でXboxに足りなかったもの --米国ではある程度の成功を収め、ワールドワイドでも任天堂GameCubeとほぼ同じ出荷台数を達成しているXboxだが、日本市場における存在感は非常に薄い。日本でXboxが成功できなかった原因は何だと分析しているのだろうか? 「確かに我々は日本市場でうまくいかなかった。6つぐらいの原因を見つけているが、その中でも2つのクリティカルな点について触れたい」。 「ひとつは日本市場向けの開発チームが存在しなかったことだ。これは社内のゲームタイトル開発チームという意味ではない。日本市場を開拓するチームを強化し、デベロッパの支援にも力を入れる必要があったが、それが遅れてしまった。現在はその点をすでに強化している」。 「もうひとつはコンテンツの違いだ。日本とアジアは他の地域とは好まれるコンテンツの傾向が異なる。北米では“リアリティ”が重要になるが、アジア圏では“ファンタジー”が必要になる。Xboxが発売された当初、ファンタジーを見せるゲームが存在しなかった。売れるゲームがなければ、ゲーム機ビジネスがうまくいかないのは自明だ。自分たちでもっと日本市場向けの質の良いタイトルを開発しなければならない。しかし、幻想的な世界観を作り出し、質の良いロールプレイングゲームを開発するのは時間がかかる」。 --Xboxはすでに日本での活動を大幅に縮小している。日本市場に普及させることをあきらめることはないのか? 米国におけるゲーム機市場は拡大成長を続けているが、日本市場は縮小を続けている。 「我々は日本市場をあきらめることはない。日本市場が縮小していると言うが、縮小してもなお、北米、欧州と並んで大きな市場だ。絶対的な市場サイズは大きい。たとえ今後5年間、全く成長しなかったとしても、(挑戦に値する)十分に大きな市場だと考えている」。 --次世代機における日本市場の再立ち上げプランは持っているか? 「まずXbox Liveに対応したファンタジーロールプレイングゲームを作りたいと考えている。次世代機でどれぐらい日本市場に入り込めるか? 全くわからない。ある時点まで、具体的な数字は言うことができない。しかし、わずか3%という日本市場におけるXboxのシェアが良い数字ではないことはよくわかっている。これを改善するまでは決してあきらめない」。 「また“成功は成功を呼ぶ”ものだ。現世代のXboxがまず北米で成功し、欧州でも成功を収め、成功へのモーメンタムが発生すれば日本市場にもその勢いを波及させることもできる。言い換えれば、モーメンタムをいかに作り出すかが重要だ」 --Microsoftはソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)を追い越すことができるとしたら、どのぐらいの時間が必要だと思うか? 「インストールベースではSCEIに先行を許しているため、市場規模で彼らを追い越すのは非常に難しいだろう。しかし5~10年のレンジでは、ソニーを追い越すことも可能だと考えている」。 ●次世代機に必要な要素とは? --火曜日に任天堂の岩田氏は、マシンの馬力で勝負する時代ではなく、ユーザー体験のディメンジョンを増やす方向で次世代機を拡張するべきと主張した。グラフィックだけを強化してもゲーム性が変化しなければ、ユーザーの体験レベル本質的には変化しない。このことは、今後に登場する可能性のあるすべてのゲームコンソールが抱える問題にはならないか。 「今以上に馬力が必要ないという状況にはない。もちろん、ビジュアルが改善されたから売れるというものではないのは確かだ。体験レベルを引き上げる新しい何かが必要なことは確かだろう。我々はデベロッパに新しいツールを提供することで、それを達成できると考えている」。 「しかしグラフィックもサウンドも、まだまだ十分なレベルに達し、感覚的な飽和に至るまでには時間がかかる。たとえばPS3や次世代Xboxが“フォトリアリズム”なグラフィックを実現したとしよう。それがもし今日のゲームと同じ内容ならば、それはうまくいかない。音楽に非常に多くのジャンルが存在するように、ゲームもまた多様性が必要だ」。 「たとえば、もっとゲームを気軽に立ち上げて、カジュアルに遊べなければならない。これはゲームの難易度を下げるという意味ではなく手軽さだ。ユーザーを難しい場面で自動的に手助けするような機能も将来は重要だろう」。 「我々の具体的な取り組みとしては、Xbox Arcade(インターネットから手軽に遊べるアーケードゲームをダウンロードして遊べる製品/サービス)がある。MicrosoftはGaming Zoneというゲームサイトを立ち上げているが、そこで遊んでいるユーザーの半分以上は意外なことに女性だ。手軽に遊べるからというのがその理由だ。同様に、女性たちを引きつけられるだけの手軽さをゲームが持つ必要がある」。 ●携帯ゲーム機の可能性 --今年のE3は携帯ゲーム機が話題の中心だった。Microsoftは携帯ゲーム機に関してどのようなプラン/意見を持っているのか。 「Microsoft全体としては、ポータブルデバイスを重要視しており、大きく継続的な投資も行なっている。たとえばPocket PCや携帯電話向けOS/ソフトウェアなどがある。今年の秋には、Portable Media Centerというデバイスも出てくる」。 「しかし、ゲーム機という切り口では、現在、どのような形態のデバイスがベストなのか結論が出ていない。iPodのような音楽プレーヤやPortable Media Centerのようなマルチメディアプレーヤなど、ハードディスク内蔵携帯デバイスがいいのか、それとも他にアイディアがあるのか」。 「ノキアは携帯電話とゲーム機を融合したN-Gageを発売し、SCEIは音楽や映像を再生する機能を持つPSPを発表したが、価格はどうなるだろう? ゲーム機にとって価格は重要な要素だ。彼らの普及シナリオはどの様なものなのか現時点ではわからない」。 「任天堂のNintendo DSはある面で新しい要素もあるが、顧客への十分なインパクトがあるとは思わない。PSPに関しても論理的な戦略があるのか?現時点では見えていない」。
□E3のホームページ (2004年5月14日) [Text by 本田雅一]
【PC Watchホームページ】
|
|