笠原一輝のユビキタス情報局

【WinHEC編】
Crusoe搭載で450gのマイクロPC「FlipStart」




450gという軽量を実現したVulcanのFlipStart。148×101×26mmというコンパクトなケースを採用

 昨年のWinHECでマイクロPCのプロトタイプを展示したVulcanだが、今年のWinHECでは実際に来場者が操作できるサンプルを展示し、今年の終わり頃に市場に出荷することを明らかにした。

 今回展示されたVulcanの「FlipStart」は、2月に開催されたDEMO2004というイベントで初めて公開された製品で、1GHzのTM5800、256MBのメインメモリ、30GBのHDD、5.6型の1,024×600ドット液晶ディスプレイというスペックながら、450gという軽量を実現しており、来場者の大きな注目を集めた。



●小型パッケージのCrusoeを採用したVulcanのFlipStart

Efficeonを搭載したMebius MURAMASA(10.4型液晶搭載ノートPC)との比較。ノートPCとしてはかなり小さいMebius MURAMASAが大きなノートPCのように見えてしまう

 1月に行なわれたInternational CESでは、OQOがUltra Personal Computer“Model 01”を展示して大きな注目を集めた。OQOのModel 01はCrusoe TM5800 1GHzを搭載し、256MBメモリ、20GB HDD、800×480ドットの5型液晶というスペックで、400g弱という軽量さを実現していた。

 今回Vulcanが展示したFlipStartも、それに匹敵する軽量さを実現している。スペックは下表のとおりだ。

 FlipStartが展示されたのはTransmetaのブースで、その理由はCPUにCrusoeを採用しているからだ。

 しかも採用されているCrusoeはただのCrusoeではない。昨年Transmetaが発表した21×21mmという小型パッケージのCrusoeだ。従来タイプのCrusoeは32.5×25mmという横長のパッケージを採用していたのだが、これだと実装面積は812.5平方mmとなる。だが、新しい21×21mmのパッケージでの実装面積は441平方mmとなり、面積は半分近くまで減少することになる。このため、FlipStartのようなマイクロPCでは非常に恩恵が大きいのだ。

 このほか、メインメモリはオンボードで256MB(増設不可)、30GBのHDDなどを内蔵しており、ノートPCとして十分Windows XPが動作するスペックになっている。

【Vulcan FlipStartスペック】
CPUCursoe TM5800/1GHz(小型パッケージ)
メモリ256MB(最大256MB)
HDD30GB
液晶ディスプレイ5.6型1,024×600ドット
キーボードQWERTY配列
ポインティングデバイススティック/パッド
バッテリ駆動時間約2時間
通信機能IEEE 802.11b/g準拠無線LAN、Bluetooth(オプション)
ポートUSB 2.0×2、赤外線通信ポート、ドッキングポート

●QWERTY配列のキーボードとパッド/スティック両方のポインティングデバイスを搭載

 入力デバイスは、キーボードと2つのポインティングデバイスを採用している。キーボードは一般的なQWERTY配列で、矢印キーが左上に移動している以外は一般的なキーが用意されている。

 ポインティングデバイスは、右上にパッドとスティック型の2種類が用意され、ボタンは左上に用意されるという形になっている。さらに本体の右側面にはジョグダイヤルがあり、これを利用した操作も可能だ。

 こうしたデザインになったのは、両手でがちっと本体を握って利用することを前提にしているためで、キー入力やポインタの操作などは親指で操作することを前提にしているという。以前モバイルユーザーに大人気だったHP200LXを彷彿とさせるデザインだ。

 ディスプレイ部は1,024×600ドット表示が可能な5.6型液晶で、こうした製品としてはそれなりに大型のディスプレイが採用されている。ユニークなのは、液晶ディスプレイの裏側部分に130万画素のCCDカメラが内蔵されていることだ。

 なお、今回公開された製品では未搭載だったが、液晶の裏側にはPCの動作状況を示す小型ディスプレイがオプションで用意されるという。

 LID(Low power Intractive Display)と呼ばれるこのディスプレイは、Outlookのメール着信や予定表の表示などが出来るほか、MP3ファイルの再生も可能になるという。LIDを装着した場合には、同時にBluetoothないしは携帯電話などのモジュールも装着可能になる。

QWERTY配列のキーボードを採用している キーボードの左上にはポインティングデバイス用のボタン、中央部にはCtrl+Alt+Del相当のログイン用のボタンなどが配置されている ポインティングデバイスはパッドとスティックの2種類が用意されている
本体右側面にはジョグダイヤルも用意されている 画面の解像度は1,024×600ドットとなっている 液晶の裏側には130万画素のCCDカメラが用意されている

●IEEE 802.11g準拠の無線LANが利用可能

 本体に用意されているポート類は、USB 2.0×2、ヘッドフォン端子、ドッキングステーション用コネクタなどが用意されている。ドッキングステーション端子には、オプションで用意されているドッキングステーションを接続可能で、Ethernetポートや外部ディスプレイ出力などを利用できる。本体側にはUSB 2.0端子が用意されているが、端子の形はミニ端子となっており、一般的なUSB機器を接続するにはアダプタを利用する必要がある。

 標準で利用できる通信手段は、内蔵されている無線LANと赤外線通信ポートのみということになる。標準で搭載されている無線LAN機能は、IEEE 802.11b/gに対応したもので、前述のようにオプションのLIDを装着することでBluetoothを利用することも可能になる。

 なお、バッテリにはリチウムポリマーが利用されているが、容量などに関しては明らかにされなかった。ただし、カタログスペックでは2~6時間とやや広めの数字が発表されていた。

本体背面に用意されているポート、左からACアダプタ、ミニUSB×2、赤外線通信ポート、拡張ドッキングコネクタ 本体底面に用意されているバッテリ。素材にはリチウムポリマーが採用されており、容量は非公開だが、カタログスペックで2~6時間駆動が可能

●今年の終わり頃に標準的なノートPCの価格で、米国で発売

 これだけのスペックを実現しながら重量がわずか450gというのだから、昔HP200LXにはまったユーザーでなくとも気になる製品と言えるだろう。

 リリース時期は今年の終わり頃、いわゆるクリスマス商戦期を予定しており、Vulcanが用意しているFlipStartのWebサイトを通じてエンドユーザーに販売されるという。

 価格は現時点では未定だが、ハイエンドとミッドレンジの間ぐらい、メインストリーム向けノートPC(1,500ドル程度)と同じような価格帯に設定したいと考えているとVulcanの関係者は説明した。

 ただし、製品を日本など米国以外の国へも発送可能かどうかは現時点では何も決まっていない。日本のユーザーが購入できるかどうかはまだ白紙という段階であるという。

 Vulcanの担当者によれば、将来的には米国以外の地域でも販売していきたいという意向は持っているとのことで、OEMメーカーなどから要求があればOEM製品として出荷することも検討しているということで、期待したいところだ。


□FlipStartのホームページ
http://www.flipstartpc.com/
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~Windows搭載、スライド式キーボード付で400g弱
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0111/ces10.htm
【2003年12月12日】【笠原】Pentium M追撃を狙うTransmetaとVIA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1212/ubiq36.htm

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(2004年5月8日)

[Reported by 笠原一輝]


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