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セイコーエプソン、中期計画「Action07」を策定
~プリンタ・プロジェクタ・ディスプレイの3分野に集中

草間三郎社長

3月25日 発表



 セイコーエプソン株式会社は25日、2006年度に売上高1兆7,700億円、経常利益9%以上などを目指す「Action07」を発表した。

Action07の概要

 同社では、2003年1月に、中長期基本構想として「SE(セイコーエプソン)07」を策定し、「Digital Image Innovation 画像と映像の融合領域を目指して」を全社的な方向性として掲げている。今回発表した「Action07」は、それをもとにした実行計画と位置づけられる。

 セイコーエプソンの草間三郎社長は、「プリンタ事業、プロジェクタ事業、ディスプレイ事業の3つの事業領域に経営資源を集中する。当社のコアビジネスの領域は、いずれも成長領域であり、この時期に策定したこの中期計画はまさに千載一遇のチャンスといえる」とした。

●経常利益率9%、無借金経営目指す

2006年度の目標

 Action07では、2006年3月期に、売上高で1兆7,700億円以上、経常利益率9%以上、フリーキャッシュフローが2004年から2006年までで1,500億円、2007年度末までに実質借入金残高ゼロを目指すとともに、2004年から2006年までの設備投資の累計で3,200億円を投資するというもの。2006年度までの売上高の年平均成長率は8%となる。

 「2003年度見込みで営業利益率は5%。過去最高は7%であり、まずはこれを目指す。将来的には、経常利益率10%以上を目指したいが、そのステップとしてAction07では2006年度末に9%台を達成したい。同時に目標に掲げている、フリーキャッシュフローの創出と無借金の実現によって、次の成長のステージに入ることができる」としている。

 プリンタ事業に関しては、インクジェットプリンタ分野において、2005年度には複合機が半数を越えると予測していることから、この分野に対する展開を積極化。単機能プリンタに関しては、6色以上の高性能モデルの人気が高まると見ていることから、フォト対応での強みを発揮してシェアを拡大したいとしている。

インクジェットプリンタ中期市場動向

 「EPSON=Photoというイメージを定着させ、写真文化をさらに進化させることで、エプソンのブランドイメージおよび価値向上を図りたい。同時に、プリントボリュームの創出によって、収益性の高いインクなどの消耗品による収益向上、独自の高耐久性インクを浸透させることなどに力を注ぎたい」としている。

 高耐久性インクの「つよインク」に関しては、「現段階ではインクの切り替え時期ということもあって、予想よりは売り上げが低い状態だが、今後は急速に広がっていくだろう」とした。

 プリンタでは、カラーレーザープリンタ事業が、低価格化とメンテナンス性の高さなどからモノクロプリンタの置き換え需要を生み出しており、「国内では生産が追いつかない状態」だという。「従来はOEMのエンジンだけだったが、これに加えて独自のエンジン、独自のトナーカートリッジも用意することができ、差別化や収益性向上という点でも効果が期待できる」とした。

 プロジェクタ事業は、米国を中心に大型液晶プロジェクションTVの需要が高まっていることから、同事業を加速させる考えだ。すでに、2004年1月のCESで発表した47/57型の大型液晶プロジェクションTV「LIVING STATION」を米国市場向けに3月から出荷。57型で3,999ドルの低価格も要因となり、好調な売れ行きを見せているという。

液晶プロジェクションTVの優位性

 「次のステップでは1インチ50ドルを目指したい。エプソンは、この分野での認知度はまだこれからだが、大切に育てていきたい製品のひとつ」と位置づけた。

 液晶プロジェクションTVにおいては、同社の高温ポリシリコン(HTPS)技術が低消費電力、低騒音、高輝度、低コストなどのメリットを発揮しており、「プラズマや直視型液晶ディスプレイと比べて圧倒的なコストパフォーマンスの高さがある。液晶プロジェクションTVは、厚い点が指摘されるが、それを補ってあまりあるコストパフォーマンスだといえる」と自負する。

 そのほか、データプロジェクションやホームプロジェクション市場に対しても、製品投入を積極化させる考えだ。

 ディスプレイ事業の中心は携帯電話やデジタルカメラ用の液晶モニタ用途で、24日発表された三洋電機との合弁企業による事業が主軸となる。

 新会社の三洋エプソンイメージングデバイスでは、カラーSTN、MD-TFD、低温ポリシリコンTFT、アモルファスTFTという4つの方式の液晶を生産、供給することになる。

 「1つの会社でこれだけの技術を擁することができ、様々な応用がきくという点では今後の市場がどういう方向に進もうが心配はない。エプソンは携帯電話向け、三洋電機はデジタルカメラ向けで実績があるが、それぞれのいいところを融合して、携帯電話、デジカメ向けだけでなく、今後、成長が期待されるカーエレクトロニクス機器や、モバイル向けデジタルTVなどへの供給を加速させたい」と話している。

 中小型の液晶ディスプレイへの需要は、2003年度は、前年比3倍の伸びとなっており、今後もその成長が続くと予測されている。だが、「成長を牽引するのが、カラーSTNなのか、アクティブ系なのかが不透明である。とはいえ、新会社ではどちらに転んでも対応できる体制を構築できている」と、今回の合弁会社の意味を語った。

 なお、今回の中期経営計画の中には、この合弁会社の連結子会社化による影響は含まれていない。

設備投資計画

 一方、設備投資に関しては、初年度となる2004年度には約1,200~1,300億円を投資。2005年度以降は1,000億円程度を予定している。2004年度の計画としては、高温ポリシリコンTFTの能力の増強として、千歳、諏訪南を対象に約300億円を投資。そのほか、豊科ではMD-TFD新技術への対応など前工程への投資で約40億円、ディスプレイ生産の中国一極集中を分散させるためにフィリピンでの生産拠点の拡張で約30億円、酒田のモバイルグラフィックスエンジンの0.15μmおよびO.18μmの生産能力の増強で80億円の投資などを予定している。

 また、研究開発投資に関しては、エプソンの保有する強い技術を核とした技術プラットフォームに形成による「先行待ち伏せ型研究開発」の実施を掲げ、マイクロ液体プロセス技術、低温ポリシリコンTFT技術、次世代電子写真技術、デジタルプロジェクション技術への研究開発投資を継続的に行なうほか、有機EL事業、インクジェット技術の工業化への応用などにも積極的に投資していくという。

 今回の中期経営計画は、好調な決算を続けている同社の体質をさらに強化することを狙ったものだ。独自技術の強みを生かしたコア事業の強化がさらに積極化しそうだ。

□セイコーエプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/osirase/2004/040325.htm
□関連記事
【3月24日】エプソンと三洋、液晶事業を統合
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0324/epson.htm
【1月7日】エプソン、北米に液晶リアプロジェクションTVを投入(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040107/epson.htm

(2004年3月25日)

[Reported by 大河原克行]


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