第229回
深く、より深く、プロの現場に染みていたデジタルイメージング



 最近、不定期日記の様相を呈してきているこの連載だが、もちろんそれには理由(言い訳)もある。1月に2週間、そして今月も2週間と、長期の出張が続いたためだ。約半分は海外の、しかもPCとは関係のない取材ばかりで、ちょっとネタガレを起こしていたのだ。

 とはいえ、何も話がないわけではない。“モバイル”とは異なるテーマも入ってしまうが、今週は出張中のトピックを2つに分けて紹介したい。最初の話題はデジタルイメージングがテーマだ。

●1/1.8インチコンパクト機が買い頃?

 まず最初の目的地はラスベガスのPMA 2004。PMAのレポートは、本誌でも現地レポートを行なっていたが、これとは別の切り口で展示されていた製品を見てみたい。

 PMA現地で、もっとも日本のプレスに話題になっていたのは、エプソンのレンジファインダー機とコニカミノルタのα7 Digital(仮称)。特にα7 Digitalは、EFレンズユーザーの僕にとっても“安くなっているAマウントのGレンズを今のうちに買っておこうか”と思わせる雰囲気。

 “雰囲気”というのは、まだ完全なモックアップでツマミも回らない状態だからだが、ボディ内蔵型手ぶれ補正の性能が満足できるものならば、レンズシステムごとの乗り換えも検討価値アリと思う。批判的な意見の多い600万という画素数も、個人的には“丁度いい”ところ。秋の登場が待ち遠しい。

エプソンのレンジファインダーデジカメ(左)とコニカミノルタのα-7 Digital

 コンパクト機の中で注目したのは、1/1.8インチCCDを用いた機種。小型機や高倍率ズーム機が流行の昨今、極小の1/2.7インチCCDの方が魅力的な製品フォームファクタを実現できるが、その一方で同じ画素数ならば1/1.8インチCCDの画質や感度の高さは魅力。昨年ヒットしたキヤノンのIXY Digital 400の例を出すまでもなく、コンパクトであるならば1/1.8インチCCD採用機の方がベターな選択だろう。

 PMAで披露された中で言えば、IXY Digital 450、IXY Digital 500、ソニーのDSC-W1、DSC-P100、ニコンのCOOLPIX 4200、COOLPIX 5200あたりが該当する。中でもDSC-W1とCOOLPIX 4200/5200が、見た目のコンパクトさ、薄さ、持ちやすさ、操作性などで気に入った。個人的に購入するならば、おそらく400万画素のCOOLPIX 4200を選ぶだろう。

キヤノン IXY Digital 500 ソニー DSC-W1
ソニー DSC-P100 ニコン COOLPIX 5200

 もっとも、僕がデジタルカメラを選ぶ場合は、少なからず“お仕事”で使うことも考えなければならない。そこで要求されるのは、高倍率ズームと手ぶれ補正だったりするわけで、PowerShot S1 ISの購入を検討している。手ぶれ補正付き高倍率ズーム機の中では、コンパクトさと機能、単三電池が利用できるバッテリシステムなどでアドバンテージがあると思う。1/2.7インチCCDというサイズを考えると、400万画素ではなく300万画素CCDをチョイスしているところも個人的には好感が持てる点だ。

 2/3インチCCDを用いた高級機で注目を集めていたのは、Lレンズを搭載したPowerShot Pro1。28〜200mm相当で3cm接写が可能なスーパーマクロモードを持つ、蛍石使用のレンズが自慢だが、画質に関しては、評価できるほど比べていないのでここでは触れない。ただ、F3よりも暗く、ISO50が標準感度で、望遠端が200mm相当のカメラに、手ぶれ補正機能がないというのは、ちょっと辛いんじゃないかな? と思っている。とはいえ、昨年シェアトップの販売力を誇るキヤノンだけに、ヒット商品になるのかも。

 ボディ内手ぶれ補正機能を持ったコニカミノルタ DiMAGE A2の方が良さそうとは思うが、一方で800万画素化による画質の低下なども心配されるところ。実際、2/3インチ800万画素CCD採用機の評判は、あまり芳しいものではない。A2のボディにA1のCCDを入れた製品があればなぁと思う人も多いのではないだろうか?

キヤノン PowerShot S1 IS キヤノン PowerShot Pro1 コニカミノルタ DiMAGE A2

●“インクジェットプリント”が当たり前だったNYC

 PMAの後に向かったのは、ニューヨーク・マンハッタン。ここでの話は、PCからかなり遠くなってしうまうので、ここではごくごく簡単に済ませることにしたいが、少なくともニューヨークを拠点にしているフォトグラファーの半分以上は、デジタルへの移行を済ませているということ。あるファッション系の撮影スタジオマネージャによると、7割以上がデジタルだとか。

 このスタジオでは光ファイバーネットワークでスタジオをサーバールームと結び、撮影された写真(RAWデータ)をその場でオペレータが現像。インターネットを通じて、クライアントに撮影内容の確認をお願いできる環境を提供している。クライアント側もデジタル化を望んでおり、デジタルカメラ自身、デジタルイメージのワークフローを熟知していないと、仕事が減ってしまう状況にあると、あるフォトグラファーは話していた。

 また撮影した写真のプリントを、アートとして販売する写真家が米国には約5,000人存在するそうだ。そのうちの一人に話を伺ったところ、顔料系インクジェットプリンタでマット紙に出力。サインと通し番号を入れたプリントアウトを成果物として販売しているという。また、様々な現像、焼き付けテクニックを駆使し、望みのプリントを追い求める彼らは、かつては現像所との往復で1枚のプリントを仕上げるのに数週間かかる場合もあったという。

 かつて1冊を作るために7年を要していたのが、インクジェットプリンタでプルーフ出力を行なうようになり、1年で完成するようになったというから、これは大きい。プロフェッショナルの現場で、デジタルカメラが使われ始めて数年が経過するが、ほとんどのフォトグラファーがこの2年ほど、全くフィルムを使っていないという。

 しかも、全フォトグラファーが揃って顔料系インクジェットプリンタを使っているのにも驚く。ニューヨークにあるプロ向けのショップを訪れオーナーに話を聞いてみたが、思い思いのマット系用紙に作品を出力するのが定番だという。様々なエンボステクスチャを持つ画材用紙を利用するフォトグラファーも多いとか。さらに、自らのポートフォリオをCD-Rに焼き、自分でデザインしたCD-Rラベルをダイレクトプリントしてクライアントに配るといった使い方もするという。

 フォトグラファーに対するサポートも、フィルム処理や紙焼き時の技術的なアドバイスから、デジタルイメージ処理のノウハウや出力時のコツなどの面でアドバイスすることが、主業務へと移り変わってきている。

 これらの話は、詳しく別の記事として取り扱うために取材したものだが、インクジェットプリンタがあまりにプロの世界へと深く食い込んでいることに驚いた。もちろん、自分自身、インクジェットプリンタで写真を出力しているのだが、プロが自らの作品を成果物として仕上げるために使っているとまでは思っていなかったからだ。

 もっとも、写真を撮影するという行為そのものの本質は、デジタルの世界になっても何ら変わっていない。従軍カメラマンとして知られるエディ・アダムス氏に、ベトナム戦争の時にデジタルカメラがあったら、何か変わっていたと思うか? と愚問ながら伺ってみた。

 「何も変わらないよ。フィルムよりショット数が増えれば便利だろうが、本質は何も変わらない。米国で新聞や雑誌に掲載されるまでの時間が短くなっただけだ。それ以外、何も変わっちゃいない」。

コマーシャル分野のフォトグラファーにとって、インクジェットプリンタを使ったポートフォリオやテストプリント、プルーフは必要不可欠になっているとか アート系フォトグラファーにとっては、プリントされた成果物が命。出力物を自前のオフィスで確認できるからだ。写真はJay Maisel氏のオフィス ファッション誌、カタログなどの撮影でナンバーワンというSplashlight Studio。光ファイバーネットワークでスタジオ間を結び、イメージデータのサーバストレージサービスなども提供している
自らの作品をファインアートとして販売しているJOYCE TENNESON氏。レタッチやインクジェット出力のための専門家を自らのアトリエに抱えている。写真集では7年かかっていた作業が1年で終わるようになったとか ベトナムなどの戦争写真で知られるピューリッツアー賞フォトグラファーのエディ・アダムス氏も、今はデジタル。ワークフローの改善は著しいという

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(2004年2月25日)

[Text by 本田雅一]


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