大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

NECはWeb直販に本気で取り組むのか?
〜NEC Directスタートで見せるその片鱗


NECダイレクトを運営するNECのパーソナルソリューション事業部が入るゲートシティ大崎ウエストタワー

 NECが、1日から、新たなWeb直販サイト「NEC Direct」をスタートした。

 従来、121@storeで行なってきたWeb直販サイトを大幅にリニューアルしスタートしたNEC Directは、これまでの買い換え、買い増しといった個人ユーザーをターゲットとしていたサイト構成から、新たに初めてパソコンを購入するといった初心者向けにもセット商品を用意したり、訪問セットアップサービスなどの付加価値商品を提供するなど、より品揃えの幅を広げたのが特徴だ。

 今年度は、残る2月、3月の2カ月の売り上げ計上となるが、「この2カ月間は、最低でも121@storeの2倍の売り上げを見込みたい」(NECパーソナルソリューション事業部・村木一至事業部長)と意欲を見せる。

●直感的にわかるサービス名

NEC Directのホームページ
(2月2日)

 今回のNEC Directのサービス開始における大きな特徴のひとつが、121@storeからNEC Directへの名称変更だ。

 従来の121@storeという名称は、周知のように、NECのユーザー向けポータルサイトである121wareとの連動性を持たせたものだが、121を、すべての人が本来の「ワントゥワン」と呼んでくれるわけではなかった。「ひゃくにじゅういち」や、「いちにいいち」という呼称の方が、自然とさえ受け取れたからだった。

 そして、最大のマイナスは、これがNECの直販サイトであるということが、直感的にはわかりにくいことであった。

 メーカー直販サイトのウリのひとつは、メーカーが直接販売するという安心感や信頼感にある。それが121@storeでは、メーカー直販であるということが通じにくいのだ。NECが自らの社名を新たな直販サイトの冠をつけたのは、まさにメーカーダイレクトであることを示す狙いが大きいのだ。

 NECを冠としたことは、見方を変えれば、NECが「本気」になって、Web直販を開始した証ともいえそうだ。

●NEC本社が乗り出す

パーソナルソリューションの村木一至事業部長

 そして、もうひとつ、「本気」を予感させることがある。

 それは、かつての121@storeが、NECの100%出資子会社であるNECパーソナルプロダクツの運営であったのに対して、NEC Directは、NECの本社が直接乗り出す事業であるという点だ。

 昨年4月、NECはパーソナルソリューション事業部を設置、続いて昨年10月には、121@storeの部門とBIGLOBEの一部部門、パソコンの商品企画の一部を同事業部に統合した。さらに、2月1日付けで、121@storeの営業権をNECに移管した。

 つまり、これによって、NEC本体でWeb直販を開始する体制が整備されたというわけなのだ。

 「NECの本社部門の事業部がWeb直販を開始するということは、それだけで、事業に対する重みが従来とは違うことが対外的にもわかるはず」と村木事業部長は語る。

 だが、スタート時点での状況を見る限り、「本気」の様子が、あまり伝わってこない感じも受ける。

 用途提案を機軸とした約100種類におよぶセットメニューを用意し、これまでサイトで購入しにくかった初心者層を取り込もうという施策や、事前セットアップサービス、訪問セットアップサービスの付加価値サービスは、確かに意欲的だ。

パーソナルソリューション事業部営業部長兼NECダレイクト店長 浅沼明夫氏

 「従来のサイトでは、ひとつひとつ仕様を決定してもらう必要があったため、初めてパソコンを購入する初級者には難しい面もあった。例えば、初めてパソコンを購入する高齢者に対して、電話でオペレータがガイドした結果、購入手続き完了まで1時間30分もかかった例があった。幅広いセットメニューを用意することで、こうした煩わしさから初心者ユーザーが開放される」(パーソナルソリューション事業部営業部・浅沼明夫部長)というメリットもある。

 購入相談用のフリーダイヤルを用意し、30人の専任体制で、100種類のセットメニューのなかからどれが最適かを示してくれるサービスを用意し、「近い将来には1,000メニューに増やしたい」(村木事業部長)というメニューの拡大にも、これで対応する考えだ。

 「これまで獲得できていなかった初心者層の構成比を1割程度にまで引き上げたい」(村木事業部長)という点での体制整備には余念がない。

 しかし、一般的に、Web直販で「本気」かどうかを評価するバロメータには、低価格が用いられるが、今回のNEC Directのサイト開設では、その低価格ぶりがあまり前面には出てきていない。そのために、同社の「本気」ぶりが伝わってこないのかもしれない。

 この点に関する今後の対応については、村木事業部長は言葉を濁すが、デル、日本HPや、最近になって価格戦略にも進出しはじめた富士通などへ対抗するには、やはり「低価格」も検討材料のひとつであることは間違いないだろう。

 NEC Directの取り扱い製品は、パーソナル事業ラインが担当するVALUSTARおよびLaVieになる。コンピュータ事業ラインが担当する企業向け製品となるMATE、VersaProは対象から外れている。

 個人向け製品が中心となるため、新たな初心者層獲得の製品群やメニューを強化することが得策であると判断するのは当然だろう。

 だが、VALUSTARおよびLaVieは、SOHO市場も明確なターゲットのひとつになっている。今回のメニューでは、この部分をターゲットとしたメニューがごっそりと抜けているのだ。

 「まずは、テレビ、音楽、写真を楽しもうというAVソリューションの3つの個人向け用途提案のなかからスタートした。次のステップとしてビジネスユースを想定したメニューを用意したい」と村木事業部長は語る。

 そして、「ビジネスユースを想定した際には、価格戦略もひとつの検討材料であることは間違いない」と続ける。

 すでに、コンピュータ事業ラインでは、昨年の段階で、MATE、VersaProにおいて、Jシリーズという製品を用意。低価格性を追求し、デル対抗となる製品を用意した経緯がある。生産は、VALUSTARやLaVieと同じNECパーソナルプダクツが行なっていることから、単純に考えれば、パーソナル事業ラインの管轄であるNEC Directでも同様の戦略的製品を投入することは可能だろう。

 ビジネスユース向け製品群を品揃えする際に、NEC Directがどんな価格戦略を打ち出すのかが、本気を推し量るバロメータといえるかもしれない。

●BIGLOBEとの動きは?

BIGLOBEのホームページ
(2月2日)

 もうひとつ、今後の動きに期待したいのが、BIGLOBEとの連動だ。

 現時点では、BIGLOBEの契約代行サービスなどに留まっているが、パーソナルソリューション事業部が、個人向けパソコン事業とBIGLOBE事業との連動を視野に入れた取り組みであると、社内的に位置づけられていることを考えれば、この程度の連携で終わるものではないことが明らかだ。

 同社幹部の間からは、「パソコン事業とBIGLOBE事業を統合した、新たな製品、サービスによる新ブランドを創出する方向で検討を開始している」という声もあがっている。今後、これがNEC Directを通じて表面化してくる可能性もあるのだ。

 2月からのスタートは、まずは助走という側面が強い。うがった見方をすれば、下期のなかで、残り2カ月間の売り上げを計上することで、下期に事業を開始したという体面を保つ狙いもあったのかもしれない。

 となると、新年度となる4月以降に、「本気」となる施策が相次ぐのかもしれない。

 果たして、NEC Directは本気なのかどうか。答えは、数カ月後の動きを見るまでわからない。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□NEC Direct
http://www.necdirect.jp/
□121ware
http://121ware.com/
□BIGLOBE
http://www.biglobe.ne.jp/
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【1月28日】NEC、新直販サイト「NEC Direct」を2月1日より立ち上げ
〜121wareは情報・サポートサイトとして継続
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0128/nec.htm

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(2004年2月2日)

[Text by 大河原克行]


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