石井英男のDigital Life

週刊誌の付録で作るロボットとは?
「週刊リアルロボット」の魅力を探る(その1)




17号までのステージ1で完成した「サイボット」のボディ

 昔から、付録がついた雑誌はあったが、最近は、コレクション性の高い付録がメインで逆に雑誌本体がおまけといったほうがふさわしいものまで登場し、話題を呼んでいる。

 デアゴスティーニ・ジャパンの「週刊リアルロボット」は、毎号付属するパーツを組み立てていくことで、本格的なロボットが完成するというユニークなコンセプトの雑誌で、豪華付録(?)付き雑誌やコアなマニア向け雑誌を多数発刊している同社のラインナップの中でも、特に異彩を放っている。

 週刊リアルロボットは昨年春に創刊され、現在も刊行が続いているが、すでにシリーズ後半に突入しており、付録のロボット「サイボット」でさまざまなことができるようになっている。そこで、週刊リアルロボットの中身と、付録のロボット「サイボット」で何ができるのかを、数回に分けて紹介していきたい。

●1号あたり1,190円という価格は高いか?

毎号付録にロボットのパーツが付いてくる「週刊リアルロボット」

 週刊リアルロボットの創刊号は2003年3月4日発行で、その後週刊ペースで刊行が続いている。筆者は、創刊号のみ書店で購入したが、そのあとは定期購読を申し込んでいる。定期購読の場合、2週間に一度、2号分まとめて送られてくる(送料は無料)。週刊リアルロボットは全74号の予定とされており、執筆時現在(1月23日)で44号まで届いているため、すでに折り返し地点を過ぎている。

 週刊リアルロボットの1号あたりの定価は1,190円(創刊号のみ特別定価で490円)なので、74号まで全て購入すると、合計の価格は1,190×73+490=87,360円となる。1カ月あたりの出費は5,000円以下であるが、中高生はもちろん、社会人でも気軽に購入できる金額とはいいがたい。

 週刊リアルロボットのウリは、毎号付属するパーツを組み立てていくことで、「サイボット」と呼ばれるロボットを手に入れられることである。ロボットというと、ホンダの「ASIMO」やソニーの「QRIO」などの2足歩行ロボットを思い浮かべる人も多いだろうが、2足歩行ロボットは、高度な技術に基づいて作られており、必要なパーツの数も多い。無理をさせると倒れて壊れる可能性も高く、初心者が組み立てるにはハードルが高い。

 サイボットは、2つのモーターで動く、シンプルな構造のロボットであり、誰にでも簡単に組み立てられるように設計されている。しかしサイボットは、単なるオモチャやラジコンではなく、周囲の状況を理解するためのセンサーを持ち、自分で判断(もちろんそれほど高度な判断ではないが)して、行動する本格的なロボットである。

 また、PCと組みあわせることで、オリジナルプログラムを作成し、赤外線経由でサイボットにダウンロードすることもできるなど、ロボットの基本的な技術を学ぶための教材としては、必要にして十分な機能を持つ。もちろん、直接何かの役に立つというわけではないのだが、ロボットに興味がある人や、自分の手で何かを作ってみたいという人にとっては、魅力的に映るだろう。

 前述したように、週刊リアルロボットは現在続刊中であり、まだサイボットも最終形態にはなっていない。そのため、価格を含めた総合評価については、シリーズが完結したあとで、もう一度考えてみたい。

●サイボットでできることとは?

 週刊リアルロボットは、欧州で先行発売されていた雑誌であり、日本で刊行されているのは、その日本語翻訳版という位置づけになる。サイボットの前身にあたる「ドワーフ」は、英レディング大学人工頭脳学科で開発されたロボットで、その開発リーダーのケビン・ウォーリック教授は、自らの体内にシリコンチップを入れる実験などで知られている。ドワーフの進化版であるサイボットは、そのケビン氏のお墨付きのロボットというわけだ。

 サイボットは、雑誌の刊行とともに進化していくのだが、その進化の過程は以下の4つのステージに分けられる。

・ステージ1(1〜17号)……サイボットのボディの完成。
 光に反応したり、ラインを追跡する、障害物を避けるといった基本機能を装備したボディが完成する。

・ステージ2(18〜35号)……ハンドセットが完成し、プログラミングが可能に。
 ハンドセット(リモコン)が完成し、サイボットのリモコン操作やPCからハンドセットにプログラムを転送して、プログラミングが可能になる。

・ステージ3(36〜50号)……ヘッドセットが完成し、音声認識が可能に。
 ヘッドセットが完成。音声認識とサウンド再生が可能になる。

・ステージ4(51号以降)……サイボット同士が対話をし、サッカー対戦ゲームができる。

 そこで今回は、ステージ1が終了した段階(本体のみ)でできることを紹介していく。

●特別な工具は不要で、組み立て作業は簡単

 週刊リアルロボットには、毎号サイボットを組み立てるためのパーツが付属するのだが、1号あたりに付属するパーツの数は多くても10点程度、少ないときはわずか1点である(各号の内容と付属パーツについては、http://www.deagostini.co.jp/dea/back/rbt_back.htmを参照のこと)。

 そのため、1号分のパーツを組み立てるのにかかる時間は30分もあれば十分だ。組み立て方法は、その号の巻頭記事「サイボット:ステップ・バイ・ステップ」に写真入りで丁寧に解説されている。必要な工具はドライバーとラジオペンチ(なくてもなんとかなるがあったほうが楽)程度で、ハンダ付けなどの作業は一切不要だ。

 光I/Oボードやソナープロセッサーボードなどの基板は、コネクタピンで接続されるようになっている。ケーブルの取り回しなどもよく考えられており、細かい作業が苦手でも問題はない。記事にはルビはついていないが、親が読んで説明してあげるなどすれば、プラモデル作りなどが好きな小学生なら十分組み立てられるだろう。ただし、パーツの加工精度はそれほど高くなく、パーツとパーツのつなぎ目に隙間ができてしまうこともある。

週刊リアルロボット11号の本誌と付属パーツ 週刊リアルロボット12号の本誌と付属パーツ。この号では、パーツは1個(ライン追跡センサー)しか付属していない サイボットの組み立て方を解説する「サイボット:ステップ・バイ・ステップ」。写真が多用されており、説明も丁寧なのでわかりやすい

10号までのパーツを組み立てたところ。まだ、触角(アンテナ)はついていない ライン追跡センサーをケースにはめ込んでいるところ

ソナーからの信号を処理するソナープロセッサーボード。基板上のパーツはあらかじめハンダ付けされている ソナーI/Oボードをソナープロセッサーボードに接続しているところ。基板同士はコネクタピンで接続される

●ステージ1で実現されるサイボットの機能

 サイボットのステージ1(1〜17号まで)では、サイボットの基本的なボディが完成する。ボディは青色と半透明のプラスチック製で、2本の触角(アンテナ)を備えた外観は、ちょっと昆虫に似た印象を受ける。ボディの全長は25cmである。

 サイボットに限らず、ロボットでは、外界の情報を認識するためのセンサーを装備している。人間でいえば、「目」や「耳」「鼻」など、五感を感じる器官にあたる。センサーの種類や数が多いほど、それだけ外界の情報を細かくとらえられるので、より高度な行動が可能になる。

 サイボットでは、光を感じる「光センサー」と超音波で前方の障害物を探知する「ソナー(超音波センサー)」を、ボディの左右上面に1個ずつ合計2個装備しているほか、ボディの底面に床に書かれたラインを識別するための「ライン追跡センサー」を装備している。なお、ソナーは、送信機と受信機が1セットとなっており、自ら超音波を出して、物体に反射してかえってきた超音波を受信することで、障害物を探知する(暗闇でも壁にぶつからずに飛べるコウモリなどと同じ原理)。

サイボットの正面写真。左右に感覚器官となるソナーや光センサーを装備している サイボットの底面写真。ライン追跡センサーと2つのモーターが装着されている。後輪駆動で、前輪はキャスターのように自由に回転するようになっている 左右に装着されている光センサー。電子ブロック世代の人間には昔懐かしいCdS素子を使っているようだ

左右に装着されているソナー。上側が受信機で、下側が送信機となっている 底面に装着されているライン追跡センサーのアップ。赤外線LED2個とフォトトランジスタ2個で構成されている

 ステージ1では、自分でサイボットの行動プログラムを書くことはできず、あらかじめ用意されている4つのモード(光追跡モード、物体回避モード、物体追跡モード、ライン追跡モード)を選んで、サイボットを動かすことになる(光追跡モードと物体回避モードについては低速モードも用意されているので、合計6種類)。モードの切り替えは、ディップスイッチによって行なう。

 光追跡モードは、光センサーによって一番明るい方向を検知し、そちらに向かって進むというモードで、懐中電灯の光を追跡したり、影を避けながら明るい窓側に向かって進むことが可能になる。

ソナーI/Oボード上に実装されているディップスイッチによって、モードを切り替えることができる 【動画1】QuickTime/約2.8MB
光追跡モードでは、一番明るい方向に向かって進む。部屋を暗くして、懐中電灯の光を追跡させてみた

 物体回避モードは、ソナーによって進行方向の障害物を検知し、障害物を避けるように動くモードで、壁や家具、人間などの障害物にぶつからないように動いてくれる。物体追跡モードは、物体回避モードとは反対に、ソナーで移動する物体を検知し、追いかけるというモードだ。

 なお、物体回避モードと物体追跡モードでは、ソナーの感度の調整が重要となる。ソナーの感度は、基板上の半固定抵抗器をドライバーで回すことで調整できる。調整はややシビアなのだが、触覚(アンテナ)の先端にはLEDが内蔵されており、ソナーによって障害物が探知されるとLEDが光るので、LEDを見ながらソナーがうまく動作するように調整すればよい。

半固定抵抗器(ポテンションメーター)をドライバーで回して、ソナーの感度を調整する 【動画2】QuickTime/約4.2MB
物体回避モードでは、ソナーによって壁や家具、人間などの障害物を検出し、ぶつからないように動く
【動画3】QuickTime/約2.9MB
物体追跡モードでは、前方の移動する物体を検知し、その物体を追跡するように動く(一定の距離を保って追いかけるので、物体にぶつかるわけではない)

【動画4】QuickTime/約7.7MB
ライン追跡モードでは、床面に書かれた黒色のラインを識別し、そのラインに沿って進むことができる

 ライン追跡モードは、底面に装着されているライン追跡センサー(赤外線LED2個とフォトトランジスタ2個で構成されている)によって、床面に書かれた黒色のラインを識別し、そのラインに沿って進むというモードだ。黒色のラインが印刷されたテスト用ポスターも付属しているが、紙に自分でラインを書けば、そのラインに沿ってサイボットを動かすことができる。

 サイボットの実際の動きについては動画を見てほしいが、自分で組み立てたロボットが、一所懸命に動いている様子は、眺めているだけでもなかなか楽しい。ただ、ギヤから発する音がかなりうるさいことが気になった。グリスも付属しているのだが、グリスをしっかり塗っても、あまり音は小さくならなかった。深夜に動かしていると、家人から苦情が出るかもしれない。

 もちろん、ステージ1はあくまでサイボットのボディが完成したという段階であり、自由にプログラミングが可能だという、サイボットの本領が発揮されるのはこれからだ。ステージ2以降のサイボットの進化については、本連載でまた紹介していくので、楽しみにしていてほしい。

●1号あたりのページ数は少ないが、中身も充実

 次に、週刊リアルロボットの本誌自体の内容を紹介しよう。週刊リアルロボット本誌は、欧州で先行して発刊されているものの翻訳版であり、ページ数は毎号19ページ+裏表紙となっている。毎号の内容は、「サイボット:ステップ・バイ・ステップ」、「ロボットインアクション」、「ロボスター」、「バトルロボット・スタジアム」、「サイバーサイエンス」、「ネットワーク」という6つのコーナーから構成されている。

 「サイボット:ステップ・バイ・ステップ」は、サイボットの組み立て方法を解説するページで、サイボットに使われているセンサーなどの仕組みの解説もコラムとして掲載されている。

 「ロボットインアクション」は、我々の身の回りで実用化されているロボットや現在開発中のロボットを解説するコーナーである。例えば、「サイバーペットの誘惑」と題された回では、「たまごっち」や「ファービー」にはじまって、「AIBO」や「アイサイビー」などが紹介されている。

 「ロボスター」は、映画やテレビなどに登場する有名なロボット“スター”を紹介するページだ。映画ターミネーターに登場する「T-800」などのあくまでもフィクションのロボットから、実在する「ピノ」まで、多くの有名ロボットが紹介されている。欧米版の翻訳ということで、国内ではあまり知られていないロボットが紹介されていることも多い。

 「バトルロボット・スタジアム」は、ヨーロッパで人気のロボット格闘大会「バトルロボット」に登場するロボットを紹介するページである。日本でもROBO-ONEなど、ロボットの格闘大会はあるが、バトルロボットは、大きなくちばしや回転のこぎり、斧などを備えたロボットが登場し、相手ロボットの装甲を破壊してしまうこともあるという過激なものだ。人気バトルロボットの製作者がロボットの作り方を解説してくれるコーナーもあるのだが、日本では入手しにくいパーツを使っているなど、国内ではやや事情が異なる部分もある。

 「サイバーサイエンス」は、ロボットに使われているさまざまな技術を解説してくれるページだ。写真やイラストが多用されているので、一般の人にもわかりやすい。

 「ネットワーク」は、テレビや新聞で話題のロボットについての最新情報が掲載されているページで、専門用語の解説やクイズ、ロボット史の重要人物を紹介するコーナーもある。

 1号あたりのページ数は少ないが、74号分なら合計1,400ページを超える計算になる。記事は一般向けにわかりやすく書かれているので、ロボットに興味がある人なら、面白く読めるだろう。なお、週刊リアルロボットをファイリングするための専用バインダー(1冊1,280円で、約15冊を綴じることができる)も用意されているので、定期購読するのなら、バインダーも購入しておくことをお勧めする。

別売りの専用バインダー。1冊1,280円で、週刊リアルロボット本誌を約15冊綴じることができる 専用バインダーにファイリングしておけば、整理も楽だ

□デアゴスティーニ・ジャパンのホームページ
http://www.deagostini.co.jp/
□週刊リアルロボットのホームページ
http://www.realrobot.net/

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(2004年1月27日)

[Reported by 石井英男]


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