後藤貴子の 米国ハイテク事情

なぜか日本よりゆるいアメリカのデジタルTVコピー規制




●日本はコピーワンスなのにアメリカはコピーフリー

 日本でもついに12月から始まった地上波デジタルTV(DTV)。まだ関心は薄いが、とにかくTVは変化を始めた。

 ところで、デジタルコンテンツ配信で常に論点となるデータ保護では、日本の地上波DTVは、ご存じのとおり“コピーワンス”だ。不正なデジタルコピーに市場を荒らされてはコンテンツ配信ができないというのはもっともだが、1回録画したらそれきりではアナログのときより不便なのも確か。この問題は今後も、日本のDTVや、家電/PCの行方を揺さぶりかねない。

 そこで比較して面白いのは、地上波DTV放送で先行する米国の状況だ。

 米国では放送開始後もコンテンツ保護策の議論が先送りされていたが、11月にようやくFCC(連邦通信評議会)の方針が決まり、2005年7月から実施されることになった。ところがこの方針を見ると、米国のコンテンツ保護は日本と比べてかなりゆるいものになるのだ。

 なぜなら、個人のデジタルコピーが制限されないことになっているからだ。家庭内LANなどのパーソナルデジタルネットワーク内でならば、コピーもデータ転送も何度でもできるという。これは、著作権にうるさい映画会社が強い国という米国のイメージとまるで違う。

 なぜ米国のDTVのコンテンツ保護は日本よりゆるいのか、どのようにゆるいのか。本当に言葉どおりそうなのか。

●FCC決定の概要

 FCCが決定した米国の地上波DTVのコンテンツ保護策は、放送ストリームにフラグとなるコードを埋め、FCCが後日決定する細則に従って、コンテンツ保護/記録技術を組み入れたDTVがそのフラグの有無を検知し、検知の結果によって出力及び記録に制限をかけて、インターネットなどへの「無差別再配信」を防ぐというもの。そして上に書いたように、個人的コピーに関してFCCは、『ニュースリリース』の冒頭から、「消費者がデジタルコピーを作るアビリティは影響されない」、「ブロードキャストフラグはインターネット上の大量配信を防ぐことだけを求めるもの」と強調し、個人のコピーはOKと明確に言っている。

 では、FCCのコンテンツ保護策がどういうものか、もう少し細かく見てみよう。

 発表文書(決定の概要を述べたニュースリリースと、決定の公式文書である『オーダー』)を基にすると、ポイントは次のようにまとめられる。(「」の中は発表文書からの引用)

1.「FCCは、地上波DTVに、海賊行為防止メカニズム“ブロードキャストフラグ”を採用する」

 ブロードキャストフラグについて、FCCはニュースリリースでこう説明する。フラグは「デジタル放送ストリームに埋め込むことのできるデジタルコードで、DTV受信機にシグナルを出し、デジタル放送コンテンツの無差別の再配信に制限をかける」。

 さらにオーダーでは、フラグをRedistribution Control Descriptor(直訳すると“再配信管理記述子”)と呼び替え、米国のDTVの方式を定める標準化組織ATSC(Advanced Television Systems Committee)の標準のひとつであるATSC Standard A/65Bに定義されたものを使うと説明している。

 このほかオーダーでは、フラグ以外のコンテンツ保護策として、ソース自体の暗号化のほうがフラグより保護がきつくなって効果的だとか、フラグの補完としてウォーターマーク(透かし)を開発すべきなどの提案もあったことを明らかにしている。だがFCCは、暗号化については既存の機器が使えなくなり消費者の負担コストが大きいことや特定技術の開発/採用に時間がかかることなどから採用しない、ウォーターマークは今はまだ技術が成熟不十分でインプリメントできないと結論した、と述べている。

2.「フラグの使用は放送業者の裁量に任せる」

 つまり、放送業者は自身の裁量で、このコードを放送のストリームに埋め込むことができるし、埋め込まなくてもよい。FCCによれば、ニュースや公共的番組にだけはフラグ使用を禁止するかという議論があったが、結局、それも放送業者の裁量に任すことにした。またCATVや衛星放送の業者も、放送業者が選んだ以上のプロテクションを再配信の際かけてはいけないと決められている。

3.「地上波DTV受信可能な製品は、2005年7月1日までに、ブロードキャストフラグの要求に従わなければならない」

 2005年後半から米国で販売される(米国から輸出される製品は除外)DTV受信可能な機器すべてが今回のコンテンツ保護策の対象となる。もう少し詳しく述べた部分では、対象となる製品は「地上波DTVを受信し復調する(demodulatorを含む)デバイス」と説明され、PC/IT製品を含むことがはっきり述べられている。ただし、「デジタルチューナーがインストールされていないデジタルVCR、DVDプレイヤー、PCは新しいルールに従う義務はない」。また、「既存のTV、VCR、DVDプレイヤーなどはフラグシステムのもとでも完全に機能する。消費者は新しい機器を買わなくてもDTVを受信し視聴できる」とも述べている。

 地上波DTV受信可能な製品が従うべき「フラグの要求」とは、FCCが定めたコンプライアンス(compliance; 準拠すべき条件)及びローバストネス(robustness; 堅牢性の基準)のルールに従って、フラグを検知し、その結果によってデジタルコンテンツの出力や記録に制限をかけることだ。コンプライアンスルールは、DTV受信機器がどんな場合にどう出力や記録を制限するか決め、ローバストネスルールは、どの程度の制限かを決める。今回の決定のキモであるコンプライアンスルールはかなり細かく、他の機器等への出力も記録も、FCC承認の技術で保護するのが基本(詳細は後述)。ローバストネスルールは、専門家レベルでなく「一般ユーザー」レベルと定めた。

4.目的はインターネットなどでの「無差別再配信」(indiscriminate redistribution)を防ぐことにある

 オーダーでは、「再配信管理システムのゴールは、(1)消費者が放送番組をコピーしたり著作権法に合致する家庭内などのパーソナルデジタルネットワークで再配信したりするのを排除あるいは妨害するものではない、(2)コンテンツが無差別再配信から適切に防護されうるところにコンテンツを送信する場合までインターネットの利用を閉ざすものではない」と述べている。

5.「コンテンツ保護/記録技術を承認(approve)する恒久的プロセス」形成のためにさらにパブリックコメントを求める

 FCCのオーダーには、規則の制定に関してまだ様々な意見が必要なことが述べられている。ただし、2005年7月までに対応製品を作れるよう、「特定の技術の提案」を「暫定的に認証(certify)」していくと述べている。

 この公式発表を見ると、コピーや転送には規制をかけるのだが、その規制はやはり、かなりゆるいように見える。

 まず、個人のコピーやパーソナルデジタルネットワーク環境内の再配信ができるようにしているし、ローバストネスルールも、専門家レベルでなく一般ユーザーレベルに、わざわざ敷居を低くしている。

 それに、この方式では放送局から送り出すコンテンツデータそのものに暗号やウォーターマークを入れるのでなく、フラグを追加して目印を付けるだけであり、既存のDTVでもフラグ付き番組を受信可能なようにしている。ということは既存のDTVやデジタルレコーダーからならデジタル出力にFCCの制限がかかっていないので、インターネットへの再配信もできてしまうのではと思われる。さらに、上の再配信管理のゴールについての説明を読むと、大量のばらまきではなく、かつFCC承認技術でコンテンツ保護している受け手に送るなら、インターネットでコンテンツを送ることを認めるようにも読みとれる。それなら、P2Pを可能にする抜け穴もできてしまいやすいのではないか。

●コピー可能で満足、の矛盾の理由

 しかしその割には、コンテンツ保護派ロビー団体であるMPAA(米映画協会)は、フラグシステムに賛成しているのが妙だ。MPAAは3月に行なわれたフラグに関する連邦議会の公聴会で、フラグが「最も適切かつ効果的ソリューション」と述べているのだ。

 DTVのコンテンツ保護がきつくても不思議のないはずの米国で保護がゆるいように見え、かつ、コンテンツ保護派がそれでいいと言っている。これは矛盾しているようだが、そこには次の3つの理由が考えられる。

  1. ゆるい保護策は“フェアユース”かわしだから
  2. ゆるい保護策は“スピードバンプ”ねらいだから
  3. ゆるい保護策は実は“トロイの木馬”だから

1.ゆるい保護策は“フェアユース”かわし

 これは、FCCやMPAAがコピーワンスのような強いコピー制限を提案すると、消費者団体等との“フェアユース”論争になり、難航が予想されるので、それは避けてゆるい保護にしたのではないか、という意味だ。

 フェアユース(公正使用)とは、米著作権法で認められている、著作物の使用権。作品の批評、解説、報道、研究調査などの非営利的目的で著作物の一部を利用する場合は、著作権者の許可を得なくてもよい、という権利だ。この権利の主張が、米国では強い。例えばフェアユースは消費者団体のほか、米家電業協会CEAやPC業界にも支持されている。英語でフェアユースというとき、“フェア”は“フェアプレイ”のフェアであり、著作権者のお情けで利用の自由をもらっているのではなく正々堂々の権利だという意識が、用語の中にも染みこんでいる感じなのだ。

 そして、米国でフェアユース意識が強くなったきっかけは、まさにTV録画にあるだろう。'80年代前半の裁判で、VTRを使ったアナログTVの個人録画がフェアユースとして認められ、今のようなTVやVTRの楽しみ方が当たり前となった。そのために、消費者の側でも、いったん法で認められたこの自由を守りたいという意識が強くなったと思われる。

 その裁判とは、Betamaxのメーカーだったソニー(Sony Corporation of America他)が、個人録画のできるVTRの製造/販売は著作権侵害だとして、米映画会社(Universal City Studios他)から訴えられたもの。一審VTR勝利、二審映画会社勝利の一勝一敗の後、'84年、個人のVTR録画はフェアユースという、エポックメーキングな判決が最高裁によってなされた。このときの米最高裁の判決理由は、無料の公共電波で放映されたTV番組を消費者が非商業的なホームユースのために録画するのは合法的なフェアユースであり、またVTRはそのように合法的に広く使用されていて、たとえ一部消費者が著作権侵害的な使い方をしたとしても、VTRメーカーが販売時にそれがわかるわけではないので責任はない、というものだった。

 この判例によって、今のTVの楽しみ方とビジネスモデルの枠組みが確立された。消費者は録画の便利さを満喫でき、家電/PC業界は録画デバイスを売ることができ、皮肉なことに映画業界自身も、普及したVTRのおかげで古い映画をTV放映するだけでなくビデオとして売って儲けられるようになった。TVがホームエンターテイメントの王座に50年間もいられたのも、家庭録画がフェアユースと認められたおかげかもしれない。

 つまり、TV放送の個人コピーに制限を加えようとすると、それは'84年以来の体制(消費者の意識や業界のビジネスモデル)を崩す、なかなか大変な作業となる。第一、法律論議にもなり、FCCに制限を加える権限があるかという論議にもなってしまう。だからMPAAやFCCは、正面からぶつかることを避けたのではないか。

 もっとも、'84年の判決は、当時の平均的ユーザーがVTRを、あとで番組を見る“タイムシフティング”のために使用していたことから、VTRはむしろ番組の視聴者を増やし、著作権者に損害を与えるとは言えない、との判断に基づいていた。ソニー自身も、この“タイムシフティング”が論拠となって、つらい裁判を乗り切れたと語っている。ということは、もし消費者が録画によって個人ライブラリーを構築して著作権者に損害を与えているとみなされていれば、TV録画はフェアではなくアンフェアな行為だということになって、認められないほうに転んでいた可能性だってある。また、オリジナルと同じクオリティのクローンを作ってしまうデジタルコピーは、劣ったものを作るアナログコピーとは本来、根本的に違うものでもある。だから今後、デジタル時代のフェアユースを論点とした裁判も出てくるかもしれない。

 とはいえ、こと今回のDTVのコンテンツ保護規格作りに関しては、まさにそうした論議や裁判にはまって決着に時間がかかるのを避けるために、MPAAやFCCは、個人コピーの自由を残したのではないか。

2.ゆるい保護策は“スピードバンプ”ねらい

 というのは、米国の地上波DTV放送はすでに始まっているからだ。だから完全さよりも早く保護策を実施することが優先事項となる。始まっているゆえに、コンテンツ保護策の完全さを今さら求められない点もある。これが“ゆるい規制”について考えられる2つ目の理由だ。

 FCC自身、オーダーで、フラグにはコンテンツ保護策として脆弱な点もあるが、今はこれが最適だと言っている。「フラグ式システムを始めることで得られる利益、つまり無差別再配信を防ぎ、価値の高いコンテンツを地上波放送にとどめるための“スピードバンプ”メカニズムを作れるという利益は、批判が指摘する脆弱性を凌駕している」と述べているのだ。スピードバンプとは、道路や駐車場でクルマにスピードを出させないために、わざと作ってあるコブのことだ。違法車両の全面禁止(=完全なコンテンツ保護)は今はできないから、まずはゆるくバンプを作って走行スピードを抑える(=カジュアルなインターネット大量配信を防ぐ)のがいいというわけだ。

 完全な保護より早い保護が必要な理由はいくつかある。

 米国で地上波DTV放送開始が決まった'97年、開始した98年秋には、今ほどのブロードバンド普及も、P2Pによる音楽業界の打撃も、まだ見えていなかったため、コピー対策は後手に回った。このため、少ないとはいえ、すでにDTVが売られてしまっている現在、これまでのDTVを使えなくするコンテンツ保護策(暗号化など)はとることができない。

 しかも、優良コンテンツが地上波DTV放送から逃げたり、無対策DTVやブロードバンドがこれ以上増えたりする前に、一刻も早く対策を講じなければならない。MPAAは、3月の連邦議会で、こう訴えている。フラグのインプリメンテーションが遅いと「デバイスメーカーがフラグ非対応製品という大量のレガシーを作るのを許し、(結果的に)フラグが無効になる」。技術開発に時間がかかる策(ウォーターマークなど)や、意見調整に時間がかかる策(専門家レベルのローバストルールなど)がとれない理由もここにある。

 さらに制約を付け加えると、一般に米国人は日本人より家電にお金を使わないから、DTVはできるだけ安くなければならない。フラグシステムは、“アナログホール”(アナログ出力ではフラグが効かないので、アナログ出力映像を再度デジタイズしてインターネットに配信できてしまうという問題)を無視しているが、これは、この問題解決に有効なウォーターマークが未成熟という理由のほかに、アナログ出力を保護しようとすると、既存のアナログTVにデジタルチューナーSTBを載せるだけでとりあえずDTV放送が受信できますという売り方ができなくなり、DTV普及が遅れるからともいわれている。

3.ゆるい保護策は実は“トロイの木馬”

 だが、“一見ゆるい保護策”の真意はもっと深いかも知れない。3つめに考えられる理由は、ゆるいように言っているが実はそうでない、または今はゆるくても今後強くできる布石を打ったのではないかということ。ゆるく見える保護策は、承認保護技術付きの機器を抵抗なく受け入れさせるためのトロイの木馬で、保護技術機器が普及した頃に、保護の基準を強める作戦かも、ということだ。

 というのは上の『FCC決定の概要』の3に書いたように、FCCのコンプライアンスルールでは、デジタル出力もデジタル録画も、“承認された”技術で守られていることが原則だ。オーダーの添付資料を見ても、条件がけっこう細かく、DTVコンテンツをフラグ対応機外に出すまいという締め付けがありありとしている。

 例えばリリースの冒頭で「消費者がデジタルコピーを作るアビリティは影響されない」とシンプルに述べて、まるきり自由なように聞こえた個人の録画にしても、フラグ対応機で録画したものは、承認されたコンテンツ保護/録画技術を使っていない機器(フラグ非対応機)には転送できないようにしてある。

 録画のコンプライアンスについて、オーダーの添付資料にはこう書いてある。

 「フラグでマークされていたコンテンツは、次以外の方法でデジタル記録してはいけない。

(1)記録を有効かつユニークに一台のDTV受信機器(Covered Demodulator Product)に関連づけ−−暗号プロトコルその他の効果的手段を使って−−、その記録が他の製品に利用可能な形でアクセスされないようにする方法。但しそのような記録のコンテンツがこのサブパート(FCCの規則で今回加えられたパート)で許可された通りに他の製品にパスされる場合を除く。

(2)暫定承認の条件として当てはまる義務にみな沿った上での、承認された記録手法。−−録画がリムーバブルメディアにされたときには、暫定承認でリムーバブルメディアに関して使用を明白に認められた、承認記録手法のみ使ってもよい」。

(「フラグの有無をスクリーニングされなかったコンテンツの場合」についてもほぼ同様の内容のオーダーが書かれているが、ここでは省く)

 (1)は、あるフラグ対応機器で録画したものは、本当は、その機器以外では利用不能になるような処理をしなくてはいけない(つまりこれではコピーワンスと変わらない)が、FCC承認技術を使った方法でなら、別の対応機器に伝送してもよい、と言っているように読める。またリムーバブルメディアへの録画の扱いも、暫定承認がまだなので、具体的にどうなるか不透明に見える。これでは、「消費者がデジタルコピーを(数の制限なく)作れる」のは、ウソではないが、真実をそのまま語っているとも言い難いだろう。

 その他のコンプライアンスルールも同様だ。

 例えばオーダー本文に戻ると、オーダーではコンプライアンスルールは大体、MPAAと5C(日立、Intel、松下電器産業、ソニー、東芝)が提案したものが適当なベースになるとして、その提案の概要をこう説明している。

 「復調器製品が、スクリーニングしなかったコンテンツあるいはフラグでマークされたコンテンツを、次の方法のどれかで出力することを要求する。(1)アナログ方式、(2)8-VSB, 16-VSB, 64-QAM または 256-QAM 変調方式、(3)承認された出力コンテンツ保護技術に結びついたデジタル出力、(4)承認されたデジタル録画技術、(5)標準的なデジタルエンコード/コンポーネントアナログビデオ信号未満の解像度のための保護していないDVI出力」。

 そして細かい添付資料を読むと、承認された技術を使わなくてよいという(5)の部分は、

 「復調器製品がコンピュータ製品に組み入れられ、DVI Rev. 1.0互換モードでオペレートしている、保護されていない出力にコンテンツをパスする場合、そのイメージは、35万ピクセル/フレーム−−例えば4:3比率に対し720×480ピクセル−−かつ30fps未満であること…(以下略)…」。

と説明されている。この部分は、すでにDVIにつなぐ液晶モニターなどが出回っているので保護できなくて、そ れで解像度などで制限を加えたのだろうが、このように読めば読むほど、細かな規定が見受けられる。

 不透明点も多い。コピーフリーの決定に次いで重要な、“パーソナルデジタルネットワーク環境(PDNE)内では、消費者が自由にDTVコンテンツを再配信できる”点についても、肝心のPDNEの範囲の定義がまだ決まっていない。オーダーでは、「DTVの再配信管理スキームを始めるために、PDNEの明確な境界線を現時点で定義することが必要とは思わない」と後回しにされている。

 不透明という点では、採用が義務づけられる具体的な技術が、FCCや他の団体が承認した技術となることも不透明材料だろう。どんな技術にするかについて、MPAAなども提案や意見ができるため、ルールの範囲内でもけっこう保護寄りになるかもしれないし、採用に手間取って、最悪の場合、2005年7月の締め切りが守れない可能性もある。実際、これまでにも、MPAAや、5C、Philips、Microsoftなどの家電/PC企業が、技術の提案を行なおうとしたものの、お互いの提案に反対し合って、決まらなかった経緯がある。

 こう見ると、今回の決定は一見ゆるい規制でもって、新規のDTV受信機器をフラグ対応機器に置き換えさせることが第一目的のようにも見える。2005年前半出荷分までのDTVは非対応かもしれないが、そういう製品もそのうち壊れていく。あとに残るのは、DTV放送を受信したらフラグを検知し、そのフラグに従って出力や録画に制限をかける能力のある機器だ。そうしたら、放送時のフラグを変えて、もっと制限をきつくするのは簡単だと考えているのかもしれない。消費税をいったん導入したあとで税率を上げるように。ということは、米国の“コピーも転送も自由”は、仮の姿なのかもしれない。

●PCはどうなる

 なお、今回の規制は、PCについてもできる限りの制限をかけようとしている。デジタルチューナーカードやデジタルチューナー内蔵のPCやPDAは規制を受ける。

 例えば添付資料によれば、「PCのデモジュレータ/アドインカードが、コンテンツを同じコンピューターにインストールされた関連するソフトウェアにパスしたりする場合は次のようにすること、(a)ローバストメソッドを使う、あるいは(b)暫定承認の条件として当てはまる義務にみな沿った上で、そのようなコンテンツのために承認されたデジタル出力保護技術でプロテクトする。スクリーニングしていないコンテンツもフラグでマークされたコンテンツも、暗号化しない圧縮フォームで、“ユーザーからアクセス可能なバス”をパスさせてはいけない」、「ユーザーからアクセス可能なバスとは、エンドユーザがアップグレードやアクセスができるよう設計されたデータバス。スマートカードインターフェイス、PCMCIA、カードバス、あるいはPCIなど。メモリーバス、CPUバスなどの内蔵アーキテクチャは含まない」などとしている。とりあえずはチューナーカードから丸裸のMPEG-2データを通過させないように苦心したのだろう。

 もっともMicrosoftやIntelなどPC系企業が今後、承認に向けて技術をFCCに提案するときは、当然、PCとのつながりがクローズアップされる。NGSCB(旧Palladium)、La Grandeなどのプロテクションの実装が、ますます必要とされるようになるだろう。

□FCC Adopts Anti-Piracy Protection for Digital TV.
News Release:(英文、PDF)
http://hraunfoss.fcc.gov/edocs_public/attachmatch/DOC-240759A1.pdf
Order:(英文、PDF)
http://hraunfoss.fcc.gov/edocs_public/attachmatch/FCC-03-273A1.pdf
□MPAAの3月の議会証言(英文)
http://www.mpaa.org/Press/Broadcast_Flag_2003_03_06a.htm
□Betamax判決(英文)
http://www.hrrc.org/history/betamax/
□Betamax判決
http://www.sony.co.jp/Fun/SH/2-20/h5.html
□関連記事
【11月17日】地上デジタル/BSデジタルの全番組が来春よりコピーワンスに(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20031117/cci.htm

(2003年12月26日)

[Text by 後藤貴子]


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