世界初のEfficeon搭載ノート「MURAMASA PC-MM2-5NE」
〜より軽く、より長時間駆動を目指したモバイルノート



シャープのMURAMASA PC-MM2-5NE

 10月にサンノゼで発表されたTransmetaのEfficeonは、2000年にリリースされた低消費電力なノートPC向けCPU“Crusoe”の後継としてリリースされたこともあり、大きな注目を集めた。そのEfficeonを搭載した製品の第1弾として、シャープからMebius MURAMASA「PC-MM2-5NE」が発表された。

 PC-MM2-5NEはTM8600 1GHzを搭載し、重量が910gと軽量で、厚さも15.7mm〜19.6mmときわめて薄い。また、従来モデル「PC-MM1-H6W/H5W」と同じく、デスクトップPCなどから外付けHDDとして利用できる“DirectHD”機能も用意されており、持ち運びに適した軽量1スピンドルノートPCを検討しているユーザーには注目の製品となっている。

 今回はPC-MM2-5NEの試作機にふれる機会があったので、そのファーストインプレッションをお届けしていきたい。なお、レビューには試作段階の製品を利用したため、ベンチマークテストを行なうことが出来なかったほか、実際の製品では変更される可能性があることをお断りしておく。

【お詫びと訂正】初出時に本体の厚さが誤っておりました。最薄部は15.7mm、最厚部19.6mmが正しい数値です。ご迷惑をおかけいたしました関係者の皆様にお詫びして訂正させていただきます。


●ついに登場したEfficeonノートPC、動作クロックは1GHz

 今回シャープからリリースされたPC-MM2-5NE(以下本製品)は、従来モデルがシルバーベースのデザインだったのに対し、液晶部分がブラック、本体部分がシルバーというツートンカラーになるなど外装が大きく変更されている。しかし、その最大の特徴は、外装よりもむしろ内部コンポーネントにある。それが、CPUにTransmetaのEfficeonを採用していることだ。

 Efficeonの最初の世代にはL2キャッシュが1MBのTM8600、512KBのTM8300という2製品がラインナップされている。本製品に搭載されているのはTM8600で、動作クロックは1GHzだ。ただし、EfficeonにはCrusoeと同じように、CPUの負荷率に応じてクロック周波数、駆動電圧を段階的に変動させる“LongRunテクノロジ”に対応しているため、実際の動作時のクロック周波数は負荷に応じて変動する。なお、本製品では、1GHz〜533MHzの間で変動する設計となっている。

 CPUがEfficeonに変更されたことにあわせて、チップセットなどの周辺部分も変更されている。Efficeonでは、ノースブリッジはCPUに統合されているが、サウスブリッジに関してはHyper Transport経由で接続されることになる。

 これにあわせ、本製品ではサウスブリッジにULi(かつてのALi)のHyper Transport対応サウスブリッジ「M1563M」が採用されている。

 また、グラフィックスアクセラレータは、従来製品ではSMI Lynx 3DM+が採用されていたが、本製品ではATIのMOBILITY RADEON(M6)に変更された。MOBILITY RADEONは、DirectX 6世代のGPUで、最新のDirectX 9対応ゲームなどにはやや荷が重いが、DirectX 7世代の3Dゲームぐらいであれば実行することが可能だ。

 なお、TM8600ではAGP 4Xのサポートが追加されており、本製品でもMOBILITY RADEONはAGP接続となっている。ただし、AGPの動作モードは2Xとなっていた。TransmetaのOEMメーカーの関係者によれば、EfficeonのAGPバスを安定させて動作することは難しいそうで、本製品もそうした事情を考慮してマージンをとり、2Xモードで動作させている可能性が高い。ただ、2Xでも4Xでも、実際の3D描画性能に与える影響はほとんどないと言ってよく、特に気にする必要はない。

液晶の部分がブラックになるなど新しいデザインとなっている。写真右は従来製品との比較 ATIのドライバのプロパティで確認するとAGP 2Xモードになっていた


●Crusoeに比べて高速になったOSとアプリケーションの起動

 気になるEfficeonの性能だが、残念ながら今回は試作機ということで、通常行なっているようなベンチマークプログラムを走らせることができなかった。ただ、従来製品であるPC-MM1-H5Wを用意することができたので、アプリケーションの起動時間やOSの起動時間を比較してみた。

 PC-MM1-H5WはCrusoe TM5800 1GHzを搭載していて、本製品に搭載されているEfficeonのTM8600 1GHzと比較するのに最適な製品と言ってよい。

 最初に、PowerPointによるスライドの起動時間を計ってみた。計測に利用したのはPowerPoint2002で、ファイルサイズは4.02MB。結果は次の通りで、Crusoeに比べて大幅に起動時間が短縮されていることがわかる。

【PowerPointの起動時間】
 1回目2回目3回目
Efficeon TM8600 1GHz
(PC-MM2-5NE)
28.0418.9518.78
Crusoe TM5800 1GHz
(PC-MM1-H5W)
51.9129.4429.78

【PowerPoint起動ムービー】約9.57MB(MPEG)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1209/pp.mpg

 同じように、OSの起動時間も計測してみたが、こちらもCrusoeに比べて起動時間が短縮されていることがわかった。

【OSの起動時間】
Efficeon TM8600 1GHz
(PC-MM2-5NE)
43.70秒
Crusoe TM5800 1GHz
(PC-MM1-H5W)
58.25秒

 こうしたことから、EfficeonがCrusoeに比べて大きな性能改善があることをかいま見ることができた。なお、繰り返しになるが、今回利用した製品はあくまで試作版であり、性能などに関しては今後改善される可能性が高い。今後製品版を入手でき次第、Pentium Mとの比較など、より詳細な性能をチェックしていきたい。


●ワンタッチで省電力設定を変更できる“MOBILEスイッチ”を搭載

 本製品のメインメモリは256MBがオンボードで搭載されているが、拡張メモリソケットは特に用意されていないので、これ以上増設することができない。ただ、モバイルに特化したという本製品の用途を考えれば、実用上は問題ないだろう。拡張メモリのソケットを省くことで、ボディに穴を開ける必要が無くなり、その分薄く、軽くすることが可能で、むしろそちらのメリットが大きいと評価できるのではないだろうか。

 HDDは日立グローバルストレージテクノロジ(HGST)のDK14FA-20が採用されている。DK14FA-20は1.8インチの20GB HDDで、小型軽量に貢献している。ただし、HGSTのWebサイトにもDK14FAの詳細は公開されていないため、現時点ではスペックなどは明らかではない。

 液晶ディスプレイに関しては、10.4型のTFT液晶と従来モデルと大きな違いはない。レビューに利用した試作機では、最大輝度が104cd/平方mで、輝度を8段階で調節することができた。

【輝度(簡易輝度計で計測】
輝度のレベル輝度(cd/平方m)
1103
278
358
432
522
612
77.48
84.4

 全体的に輝度はやや暗めだが、モバイル向けという本製品の用途を考えると、妥当なところと言えるのではないだろうか。なお、本製品では新しく“MOBILEスイッチ”と呼ばれるスイッチが用意されている。これを“MOBILE”側に設定することで、輝度/クロック設定などがモバイル向けに最適化され、駆動時間が最大40%延長されるという。モバイル環境時には重宝しそうだ。

デバイスマネージャの表示。サウスブリッジはULiのM1563M、GPUはATIのMOBILITY RADEON(16MB)、HDDはHGSTのDK14FA-20 “MOBILEスイッチ”を利用することで省電力の設定をワンタッチで切り替えることができる


●クレードルを利用してデスクトップPCから外付けHDDとして利用可能

 本製品のキーボードは約17mmピッチの6列配列キーボードだ。キーストロークは約1.7mmと、数字上はやや少ない感じがするが、実際に入力してみるとキーはやや堅めで、でさほど違和感なく入力することができる。

 ストローク重視のユーザーにはやや厳しいかもしれないが、ストロークよりもキータッチ重視のユーザーであれば快適に入力できるだろう。ポインティングデバイスはパッドタイプで、やや小さめだが、それでも十分画面の端から端まで操作できる。

 本体に用意されているI/Oポートは、左側面にはクレードルコネクタ、ヘッドフォン端子、USB 2.0×1の3つが用意され、右側面にはPCカードスロット(Type2×1)、USB 2.0×1、Ethernet、ACアダプタの4つが用意され、後面にアナログRGBポート(ミニポート、別途ケーブル付属)が用意されている。モデムが用意されていないのが気になるが、それ以外としては必要十分なものが用意されていると言っていいだろう。

 なお、標準で無線LANが内蔵されており、IEEE 802.11b(11Mbps)、IEEE 802.11g(54Mbps)の両方のモードに対応している。コントローラにはIntersilチップが採用されているようで、デバイスのプロパティにはIntersil独自の高速モード“Nitro”に関する設定が用意されていた。また、無線LANの電波は、Fn+F1でオン、オフすることが可能だ。

 本製品にはクレードルが標準添付されており、USBケーブルでデスクトップPCと接続することで、本製品のHDDをデスクトップの外付けHDDとして利用できるようになるほか、同時に充電することが可能になる。これにより、面倒なファイルの同期といった作業をしなくても、ノートPCとデスクトップPC間でファイルを共有できる。また、ユニークな機能としては、デスクトップPCの光学ドライブを利用してリカバリするなどの機能も用意されている。

キーボードは約17mmピッチで、ストロークは約1.7mm 液晶のラッチは無くなり、すぐに液晶を開いて利用することができる

本体の右側面。左からPCカードスロット、USB 2.0、Ethernet、ACアダプタ。Ethernetコネクタにはゴム製の蓋がついている 本体の左側面。左からクレードルの接続ポート、ヘッドフォン、USB 2.0

後面にはアナログRGB出力が用意されているが、別途添付のケーブルを利用する必要がある 底面には、特に何も用意されていない 付属のクレードルに取り付けることで充電と、デスクトップPCの外付けHDDとして利用することが可能


●約11時間稼働が可能な大容量バッテリをつけても1.17kgと軽量

 バッテリは、11.1V/1.8Aで19.98Whという容量になっている。バッテリ容量に関してはCrusoe TM5800 1GHzを搭載した従来製品(PC-MM1-H5W)と同じだが、バッテリ駆動時間(公称)は若干延びており、約3.5時間となっている(PC-MM1-H5Wは約3時間)。

 なお、実利用環境として、輝度がレベル3(58cd/平方m)でOffice XPやNetscape Communicatorなどを利用しながらバッテリ駆動させてみたところ、2.4時間程度の利用が可能だった。

 比較として、比較的近いカテゴリになると思われる、ソニーのバイオノート505 Extreme(X505)では、約2.8時間だった。ただ、ソニーのX505はバッテリの容量が22.2Whとやや多く、直接の比較とはならない。バッテリ容量などから考えると、本製品は妥当な利用時間と言えるのではないだろうか。

 なお、オプションで中容量バッテリ、大容量バッテリが用意されており、中容量バッテリを利用した場合には約6時間、大容量バッテリを利用した場合には約11時間の駆動が可能で、中容量バッテリ装着時には約990g、大容量バッテリ装着時にも1.17kgなり、大容量バッテリを装着しても比較的軽量な点が評価できる。

本体に付属する標準バッテリ。公称値で3.5時間の駆動が可能 付属のACアダプタは本体に合わせて小型なものとなっている


●薄さ、軽さのコストパフォーマンスという観点でX505を上回る

 本製品は以上のようにミニノートPCとしては十分なスペックを備えながら、重量は約910g、厚さは15.7mm(最薄部)と軽さ、薄さを実現している。

 ソニーのX505の重量が785g(ソニースタイルモデル、通常モデルは825g)、厚さ9.7mm(最薄部)にはかなわないものの、Ethernetポートや無線LANを内蔵しているということを考えれば十分、匹敵する軽さ、薄さを実現していると言えるだろう。

 重要なことは、X505が通常モデルで30万円、ソニースタイルモデルで35万円という価格であるのに対して、本製品はオープン価格ながら市場想定価格は18万円前後という価格帯に設定されていることだ。薄さ、軽さに対するコストパフォーマンスという点では、本製品が明らかに上回っているだろう。

 18万円前後という価格は、競争力のある価格だと言ってよい。というのも、超低電圧版Pentium Mを搭載した製品は、概ね、19万円前後〜20万円台前半という価格で販売されているからだ。

 また、本製品はクレードル込みの価格であり、その分を割り引いて考えればさらに値頃感があると言える。実際、従来モデルのPC-MM1-H5Wには、クレードルなしのPC-MM1-H3Eが用意されており、(HDDが15GB、OSがProからHomeになるという違いもあるが)約2万円の価格差が付けられていた。このため、実際には1万円程度は割り引いて考える必要があると言える。そうしたことを考慮すると、18万円前後という価格以上に値頃感があるのではないだろうか。

 本製品は、薄くて軽いノートPCは必要だが、サブノートPCにそれほどコストをかけられない、というユーザーにお薦めしたい製品と言える。

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【12月8日】シャープ、初のEfficeon搭載ノート「MURAMASA PC-MM2」
〜Crusoeに比べパフォーマンスは約1.4倍に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1208/sharp.htm

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(2003年12月9日)

[Reported by 笠原一輝]


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