会期:10月26~30日(現地時間)
Microsoft Professional Developers Conference 2003(PDC2003)のレポートは、Longhornそのものについてが中心になってしまったが、最後にその雰囲気をお伝えして、このイベントのレポートをおしまいにしよう。 ●古川副社長も入れなかったPDC2003 PDCは定期的に行なわれるものではなく、開催される年もあれば、開催されない年もある。昨年は開催されず、その前の年、つまり2001年には、今回と同じくロサンゼルスで開催された。 初日のキーノートスピーチで、MicrosoftのBill Gates会長は、今回のPDCを「Longhorn PDC」と呼んだ。確かに今回のPDCは、Longhorn関連のセッションが半数以上を占め、残りはWhidbeyとYukonのセッションでほとんどのセッションが構成されている。 PDCはソフトウェアデベロッパ向けのイベントであるため、APIの変更となるWinFXの登場は大きな問題。しかも春のWinHECで、「詳細はPDCで」とアナウンスされたため、前評判も高かった。
そのためか、開催の2週間ぐらい前にWebの登録サイトが閉まってしまった。申し込み多数のため、定員に達したらしい。プレス関係でも申し込みができなかった人が多数出た。当日会場での申し込みができないという話もあって、取材をあきらめた人もいた。一般参加者が多すぎて、想定参加者を越えてしまったらしい。どれぐらいすごいのかというと、Microsoft米国法人の古川副社長でさえ、社員枠に入ることができず、一般参加者(Attendee)で参加していたぐらいなのである。 つまり、今回のPDCは「Sold Out PDC」とも言える。その原因はもちろんLonghornである。Windows XP(Whistler)の後継がLonghornとなることは、2001年に開催された前回のPDCでも明らかにされていたが、その実態がはっきりするまで2年の歳月がかかっている。しかも、登場は今のところ早くて2005年。これまでのリリース実績から考えれば、2006年、つまり3年以上先であってもおかしくない。 みんなそうとわかっていても、今回のような盛況ぶりなのである。PDCは有料のイベントで、食事などが提供されるのだが、そのテーブルは700以上。テーブルに10人は座れるので、約7,000人分、その他、ランチボックスが会場内で配られるので、全体として1万人近くは参加したのではないかと思われる。
前回のPDCのテーマは、いまやどこにいったかわからない「.NET MyServices」(HeilStorm)だった。9.11直後(PDC2001は2001年10月23日開催)だったこともあって、少し閑散とした雰囲気もあったが、それでも多くのデベロッパが参加していた。しかし今回は、どこも人人人という感じで、部屋に入りきれないセッションがいくつもあった。 2~3年以上先の製品なのにここまで注目されるのは、今回のアップデートが大きなものになるからで、多くのアプリケーションはマネージドコード化およびWinFX対応が必要になるのである。もちろん、しばらくはWin32のままでもアプリケーションは動作できるだろう。しかしLonghornの特徴的な機能を使うためには、WinFXへの対応が必須となる。それには、ほんとうに2年で足りるだろうか? という不安がデベロッパにもあるのだろう。アプリケーションを移植したとしても、必要なパフォーマンスが出せるかどうか、新機能をどうやって取り込むべきか、デベロッパのすべきことは少なくない。
●とりあえずの未来はLonghorn PDCのセッションには、Microsoft ResearchのRichard Rashidによるものもあった。内容は、学生が授業にPCを使う例や、手書きの数式を認識してグラフを表示するなど、それほど先の話ではなく、あと少しで我々の手に届きそうなものばかりだった。ソフトウェアの場合、できてしまえば、特殊なハードウェアを使わない限り、製品化はかなり早い。もっとも、製品としてビジネスが成り立つかどうかはわからないが……。 IntelがIDFで行なったGelsinger副社長の研究に関するスピーチのほうが、遙か先に思える。しかしMicrosoftのイベントは、Intelのきまじめさに比べると、気楽で親しみやすさがある。現在でこそエンタープライズを標榜するソフトウェアメーカーだが、かつては元気のあるデベロッパの1つだった。
筆者から見れば、ラボのデモよりもLonghornのほうが未来的なものに見えた。あまりにやることが多く、またWinFXが成熟した物になるまでにかなり時間がかかりそうだからである。 Windowsなども、壮大な構想、再度の延期、無難な仕様の製品、頻繁なバージョンアップによって、だんだんと成熟してきた。これまでの経緯を考えると、WinFXはWin32に匹敵する壮大な計画である。 PDCの参加者もそれはわかっているはず。しかし、これだけの人が集まってしまうのは、それなりの魅力というべきか、惹き付けるものをMicrosoftが持っているからであろう。確かにビジネスを考えると、Windowsは市場も大きく、マーケティング的にはそこでのビジネスしかあり得ないという結論もある。 今回のPDCで、Microsoftもデベロッパたちも、もうLonghornに向かって走り出している。これは、日本にいるときには感じられなかったある種の「熱気」でもある。「熱気」といっても、参加者は興奮しているわけでもない。彼らのとらえ方はかなり現実的なものだと思う。米国では、企業のWebサイトをIISで構築することも多く、システム全体としては日本よりもMicrosoftへの依存性が高い。それゆえ、デベロッパからすると、Microsoftのマーケットではビジネスを行ないやすい。彼らにとって、Longhornは次なる挑戦テーマでもあり、WinFXは越えなければならないハードルなのである。 □PDC 2003のホームページ(英文) (2003年11月4日) [Reported by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
|
|