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坂村教授、新携帯端末プラットフォーム
「ユビキタス・コミュニケータ」を発表
~12月のTRON SHOWにも出品

ユビキタス・コミュニケータでレタスのIDタグを読み取る坂村健 教授

10月24日発表



 YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(UNL)は24日、携帯端末プラットフォーム「ユビキタス・コミュニケータ」(UC)を発表、リファレンス機を公開した。

●ユビキタスIDとT-Engineを核とする携帯端末「UC」

UC。ディスプレイ左上の丸い部分がCMOSカメラ。左下が指紋センサー。ディスプレイ下の○が並んでいる部分はボタンとして使われる

 UCは、ユビキタス・コンピューティングを目指して規定されたハードウェアとソフトウェアのプラットフォーム「T-Engine」を採用した携帯情報端末。ユビキタスIDセンターが定めるタグ「ucode」のリーダ/ライタとしての機能を核に、動画再生機能や各種通信機能を備える。

 CPUはSH-3、フラッシュメモリ 8MB、SDRAM 32MB、画像SDRAM 32MBを搭載。画像処理/暗号処理/ビデオコントローラ/eTRONインターフェイスの各機能を備えた独自開発のASICを搭載しており、VGAで30fpsのMPEG-4動画やJPEG画像の再生機能、eTRONベースのセキュリティ機能を備える。

 インターフェイスはSDカードスロット×2、eTRONSIMスロット×1、スイープ型指紋センサー、USBのホストとクライアント用端子各1ずつなど。赤外線送受信、無線LAN機能、Bluetoothなどの通信機能を内蔵するほか、SDスロットにPHSカードなどを装備することができ、環境に応じた最適な通信機能を使用できる。

UCの機能。3種類のコミュニケーションが可能 左側面にはSDカードスロットやUSBコネクタ、オーディオ、ビデオ入出力が並ぶ 右側面にはSDカードスロットとeTRONSIMスロット
RFリーダーはマルチバンド対応。様々な通信機能を備える セキュリティ機能のほか、動画再生機能などを備える 専用ASICを独自に開発した

 ハンズフリーマイクとスピーカを搭載しており、携帯電話としての利用も考慮されている。また、外部デジタルビデオ入出力とRGBビデオ出力を備え、デジタル地上波放送やSバンド衛星デジタル放送(モバイル放送)を視聴できるアダプタも開発中としている。

 RFタグのリード/ライト用アンテナは2.45GHz、13.56MHz、UHFのマルチバンドタイプで、様々な規格のRFタグのリード/ライトが可能。ただし、UHFのRFタグ利用は電波法で制限されているため、現時点では使われない。さらに、CMOSカメラを搭載しており、ucodeの1つとして規定されているバーコードの読み取りも可能になっている。

 ディスプレイは320×320ドットのタッチパネル付きカラー液晶。本体サイズは120×17.2×75mm(幅×奥行き×高さ)、重量は175g。

●ユビキタスIDの動作を実演

 発表会ではUNL所長/T-Engineフォーラム会長/ユビキタスIDセンター代表/トロンプロジェクトリーダー/東京大学教授の坂村健氏が、UCについて説明し、リファレンス機によるRデモを披露した。

 UCの主たる機能はユビキタスIDのリード/ライト。ユビキタスID普及活動の一角を担うデバイスとしての役目を負う。

 UCでは、商品などに付けられたRFタグやバーコードを読み取って、そのモノが何であるかを判別し、モノに関する情報をユビキタスIDサーバから取得、表示することが可能。また、レストランなどの施設に設けられた赤外線発信機などから、その施設に関する情報を受け取ってユーザーに提示することもできる。サーバーから情報を取得するのに数秒のタイムラグがあるものの、モノの情報取得にとどまらず、個人の判別など、様々な応用が考えられる。

UCの背面上部、オレンジ色の「ucode」ロゴがある部分に、RF ID読み取りアンテナが内蔵される RFタグを読み取ると、サーバーからそのタグが貼られている商品の情報を取得し、表示する。少ない情報なら、タグから直接取得する場合もある 動画情報が付属するモノもある
衣類(左)や大根に付けられたRFタグ。RFタグは、タグが貼られていることがわかるように取り付けられ、かつ、ユーザーが取り外せるようになるよう、セキュリティガイドラインで定められている。衣類のタグの左側に、ミシン目がついていて、切り離せるようになっていることに注目 UCによるユビキタスID利用の仕組み。1でタグを読み取り、2でそのタグに関連する情報をサーバーから読み出す

 また、タグの書込み機能により、ユーザーがオリジナルのタグを作成、身の回りのモノに貼り付けて利用することもできる。

 デモでは、大根のタグを読み取り、その大根の価格や生産地をサーバーから取得、表示するほか、生産者からのメッセージムービーを再生する様子などが公開された。個人情報管理ソフトなどが動作するところは見ることができなかったが、超漢字などのアプリケーションを容易に移植可能としている。

●オープンアーキテクチャのリアルタイムOSならではの多機能端末

 携帯情報端末には現在、Palm OSやWindows Mobileなどのプラットフォームが存在しているが、T-EngineベースのUCは、オープンアーキテクチャであることと、リアルタイムOSであることを特色とする。

 オープンアーキテクチャであることにより、開発期間を短縮できるほか(UCのリファレンス機は2カ月で開発したとしている)、Windows、Linuxなどの資産を移植することも可能になり、端末デザインの自由度が増すとしている。また、リアルタイムOSのT-Kernelを採用することにより、高速な動作が可能になったとしている。

 坂村氏は「T-KernelはiTRONの弱点と言われていたスタティック・メモリ・アロケーションをダイナミック・メモリ・アロケーションに改め、ファイル処理機能も加え、開発が容易になった」、「LinuxやWindowsの機能をアタッチすることも可能」とT-Kernelのアドバンテージを述べ、同OSを「最強のリアルタイムOS」とした。

 また、「WindowsやPalmだけでなく、様々なプラットフォームが様々な目的のために共存するのがコンピュータの楽しいところ。UCの機能をWindowsやPalm、Linuxなどのプラットフォームで実現することも不可能ではないが、オープンアーキテクチャでリアルタイム処理が可能なT-Engineこそが、UCに最適なプラットフォーム」と、UCを新たな携帯情報端末プラットフォームとして発展させていく意気込みを表明した。

 UCの価格は「現在のPDAやデジカメ並み」とし、すでに商品化に向けた動きがあることもうかがわせた。

 なお、UCは12月11~13日に東京国際フォーラムで開催される「TRON SHOW 2004」にも出品される。同イベントにはCPUをARMやMIPSアーキテクチャとしたUCや、LinuxやWindowsとのハイブリッドOSなども展示される予定。

□YRPユビキタス・ネットワーキング研究所のホームページ
http://www.ubin.jp/
□T-Engineフォーラムのホームページ
http://www.t-engine.org/japanese/press.html
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0730/tengine.htm

(2003年10月24日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]


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