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ユビキタスIDセンター、超小型IC 3製品を標準IDタグとして認定
~坂村所長、「ユビキタスIDはオープンアーキテクチャ」と強調

ユビキタスコミュニケータを持つ、ユビキタスIDセンターの坂村健 所長

6月23日発表



ユビキタスIDのアーキテクチャ

 ユビキタスIDセンターは23日、ユビキタスIDを実現するためのIDタグとなる超小型チップ3製品を、標準IDタグとして認定したと発表した。あわせて、今年度中によこすか葉山農協や京急ストアとともに、ユビキタスIDによる食品トレーサビリティ実証実験を開始することも発表した。

 ユビキタスIDは、社会に流通している製品などすべてのモノにIDを付け、自動的にモノを識別できるようにする技術。ユビキタスIDセンターは、ID体系や基盤技術を構築するために3月に設立された。なお、ユビキタスIDセンターは、坂村健 東京大学教授が会長を務める「T-Engineフォーラム」内に設けられ、同氏が所長を務めている。T-Engineフォーラムは、ユビキタス・コンピューティング環境を構成するハードウェア、ソフトウェア等を研究開発する組織。

●超小型チップ3製品を標準IDタグとして認定

 ユビキタスIDではICチップなどをIDタグとして、識別したいモノに装着する。IDは「ユビキタスコミュニケータ」と呼ばれる端末で読み取り、そのIDをもとにサーバーから製品の情報を受け取り、利用する。

 今回認定されたのは、IDタグとなるICチップ。実際の利用に際しては、何種類ものICチップが混在して利用されることが想定され、その場合に互換性を確保するために認定が行なわれる。認定された3製品は、日立製作所の「ミューチップ」、凸版印刷の「T-Junction」、YRPユビキタスネットワーキング研究所/東大/ルネサステクノロジの「eTRON/16-AE45X」。

凸版印刷のT-Junction ルネサステクノロジほかのeTRON/16-AE45X 認定チップのクラス一覧

 ミューチップは2001年6月に発表された非接触ICチップで、0.4mm角の本体内に2.45GHzのアナログ回路と128bitのROMを集積したもの。T-Junctionは915MHzと2.45GHzに対応する1mm角のチップで、1,024bitのEEPROM(ユーザー領域は896bit)を内蔵する。どちらも演算機能や電源は搭載しておらず、電波(RF)で動作する。

【お詫びと訂正】記事初出時、ミューチップのサイズを4mm角と表記しましたが、0.4mm角の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。

 eTRON/16-AE45Xは接触/非接触の両インターフェイスに対応しており、EEPROMのほか、ROM、RAM、暗号コプロセッサなどを搭載する。

 ユビキタスIDセンターでは標準IDタグとしてICチップ以外に、バーコード、スマートカード、コンピュータノードなどを幅広く含めており、これらを9つのクラスに分類している。今回発表された製品のうち、ミューチップとT-Junctionは読み出し専用の非接触型RFIDであるClass 1に属し、eTRON/16-AE45Xは計算能力を有するタグであるClass 4に属する。

●ユビキタスコミュニケータをデモ

 会見では、ユビキタスIDセンターが試作した、タグのIDを読み取るユビキタスコミュニケータも公開された。

 ユビキタスコミュニケータは大き目のPDAのような外観をしており、情報を表示する液晶ディスプレイのほか、スピーカーを備える。

 世界中で、どんなIDタグでも読み取れるように、日本で使われるRFID用周波数帯2.45GHzのほか、米国などで使用される915MHzにも対応する。また、ID読み取りインターフェイスのほか、IDに基づく製品情報を取得するための無線LAN、携帯電話などの通信機能を搭載。さらに所有者以外の乱用を防ぐために、バイオメトリクス認証用の指紋リーダーも備える。そのほか、デジタルカメラ、USBポート、シリアルポートなども搭載している。

 ユビキタスコミュニケータの利用デモンストレーションでは、IDタグがついた薬3種類をコミュニケータで読み取り、服用期限や、併用の可否など、各々の製品情報をサーバーから取得して、ディスプレイに表示したり、音声で出力する様子が公開された。

 坂村所長はデモの後、「将来はユビキタスコミュニケータの機能がすべての携帯電話に搭載される」とのビジョンを語った。なお、後述する実証実験でもこのユビキタスコミュニケータを実験が行なわれる場所に配布して使用する。

ユビキタスコミュニケータ 側面にUSBやシリアルポートなどが搭載される。無線LANはCFカードのアダプタが装着されていた 指で指している部分が指紋リーダ

●「畑をユビキタス化する」農産物の追跡を実験

実証実験の特色

 実証実験は、YRPユビキタスネットワーキング研究所、よこすか葉山農業協同組合、京急ストア、東京大学坂村研究室が共同で行なう。場所は横須賀、葉山、京浜急行沿線の京急ストアなど。時期は認定IDタグの出荷に合わせるとし、「今年度中」とされている。

 実験では農作物のトレーサビリティを実証する。よこすか葉山農協のキャベツや大根など、生鮮食料品にIDタグを装着し、その作物がどのように作られ、流通しているかを、消費者が読み取れるようにするもの。また、食品事故が発生した場合に、すみやかに原因特定や被害範囲の確定ができる。

 生産現場では、食品だけでなく、肥料や農薬にもIDタグを装着し、管理に利用する。肥料や農薬には天候などに応じた複雑な利用規定があるが、誤って規定以上の量を使用してしまうような事故をユビキタスIDによって防げるとし、これを坂村所長は「畑をユビキタス化する」と表現した。

 さらに「ユビキタスIDは何が誰に販売されたかを管理するのではなく、ユーザーが生産流通のことを把握するためのもの、そのようなセキュリティポリシーに基づいて運用される」と述べ、ユビキタスIDがプライバシー侵害などにつながるとの懸念を「誤解」と否定した。また、運用ポリシーの作成もユビキタスIDセンターで行なわれているとした。

●「オープンアーキテクチャ」を強調、軋轢を否定

 会見において坂村所長は、ユビキタスID構想が、日本の独占市場を目指したものと理解されがちな現状を否定する発言を繰り返した。その例として、ユビキタスID構想は、当初は会員内のみで作成されるものの、その後は一般に広く公開される「オープンアーキテクチャ」であること、ユビキタスIDセンターがおかれたT-Engineフォーラムには、世界各国の企業約180社が所属しており、その数が日々増えていることなどを述べた。

 特に、慶應大学の村井純 教授が日本でのリサーチディレクターを務める「オートIDセンター」との軋轢、といった文脈で語られがちなことにも触れ、オートIDセンターの研究者がユビキタスIDセンターを訪れたことなどを紹介した。

 また、ユビキタスID構想はすべてのモノを自動識別することをを目指しており、そのためにはICだけでなくバーコードなども重視しているとし、半導体による流通改革を目指すオートID構想との違いを強調した。

 なお、会見に出席した株式会社日立製作所 ミューソリューションベンチャーカンパニーの井村亮CEOは、ユビキタスIDの市場規模として「2010年に87兆円」とのデータを紹介し、一大基幹産業になるとの予測を述べた。

□ユビキタスIDセンターのホームページ
(6月23日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://uidcenter.org/
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(2003年6月23日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]


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