マイクロソフトの新型マウスのサンプルが編集部に届いた。新型マウスに関しては本日24日からの発売となる(フェイクレザー加工モデルを除く)。 ●注目はワイヤレスのデキ具合 新製品は「Wireless IntelliMouse Explorer」と「Wireless Optical Mouse」のふたつ。マイクロソフト製マウスには、既に同名の製品が存在するため、付属ドライバの機種選択ではそれぞれの名称の後ろに便宜上「2.0」というバージョン名が入っているが、製品名は同じままである。 マイクロソフト製マウスは「Intelli」という名前が入っているものが5ボタン、「Explorer」が含まれていると左右非対称の右手専用デザイン+光学センサーというルールで名称が付けられている。従ってWireless IntelliMouse Explorerは、5ボタンかつ右手専用デザインの光学センサーワイヤレスマウス。Wireless Optical Mouseは3ボタンの光学センサーワイヤレスマウスということになる。 両機種に共通する主なアップデートは、ホイールを左右方向にスウィングすることで、新たに左右方向の動きを入力可能になったチルトホイールの採用、新しいワイヤレス技術を採用したことによる操作レスポンス、追従性の向上、混信の少なさ。それに省電力機能の強化である。 中でもワイヤレス部の性能と省電力性の向上は、従来のマイクロソフト製マウスが不得手としていた部分だけに注目されるところだ。 従来のマイクロソフト製ワイヤレスマウスは、ワイヤレス部の性能と省電力性に関して、(多少というレベルではなく)明らかに直接のライバルであるロジクール製のものに劣っていた。ワイヤレス部の問題から、手の動きに対して遅れてマウスが動き、動きそのもののスムースさもない。また省電力モードからの復帰時間が長めで、利用していてハッキリと省電力モードからの立ち上がりの遅さを感じるなど、デザインやCADといった用途だけでなく、一般的な利用においても快適さを損なう傾向があった。 ●有線マウスと変わらないレスポンスを実現
ライバルのロジクールは、同世代のワイヤレス製品においても、マイクロソフト製品よりもずっとレスポンシブだったが、さらに今年になって光学センサーの性能を大幅にアップさせたMXシリーズを投入。MX700は有線マウスなみのレスポンスと追従性を実現した。 このため、筆者は先代のWireless IntelliMouse Explorerをきっかけに10年近く使い続けたマイクロソフト製マウスの使用をやめ、有線のデュアルセンサーを搭載したロジクール製マウス、そしてMXシリーズと立て続けにロジクール製品を選んだほどである。ロジクール製マウスは、ワイヤレスだけでなく光学センサー部の性能でもマイクロソフトに先んじている部分がある。 今回の製品に関しも、実際に使用し始めるまでは乗り換える気などまったくなかった。改善されるとしても、知れたものだろうとタカを括っていたからである。 しかし、新型のワイヤレスモジュールは、ロジクールのMX700などに採用されているFast RFと体感上はほとんど同じレスポンスを実現している。実際にマウス読み取りデータの転送サイクルを「mouserate」というソフトウェアで計測してみると、PS/2接続時は92Hz(有線マウスの場合は100Hzもしくは200Hz)、USB接続時は125Hz(USBマウスクラスドライバの上限値)を記録する。なお、PS/2マウスドライバのサンプリングレートをデフォルトの100Hzから200Hzに変更してみたが、結果は92Hzと全く同じ結果になった。 ロジクールのFast RF採用機は、PS/2接続時にサンプリングレートを200Hzにすると、USB時と同程度まで読み取りサイクルが向上するが、一般的な利用では92Hzでも100Hzでも、さらには125Hzでも、体感上の違いは感じられない。また前モデルにあった遅れてマウスが追従する感覚や、省電力モードからの復帰時間を体感するといったことも、全くない。
マウスをゲームデバイスとして用いているヘビーなFPS(一人称視点のシューティングゲーム)ゲーマーの中には、200Hzじゃなければダメという人もいるようだが、そうした特殊な用途でなければ、十分な性能だと思う。少なくとも、レスポンスや追従性でワイヤレスマウスを見送っていた読者は、再考してみる価値があるだろう。 なお、マイクロソフトは有線タイプのIntelliMouse Explorerも、チルトホイールを採用する新型に切り替える予定だ。ワイヤレスモデルの性能がアップしたことを受けてか、有線タイプではさらなる高速化を目指してUSBフルスピードモードを使った、高速サンプリングを実現させるという。デザインも今回発表の製品とは異なるそうだ。有線版の発売は、米国では来年2月とアナウンスされているが、国内版は年内との情報もある。 有線マウスが好き、あるいは高速サンプリングによる追従性が不可欠という人は、それを待ってみるのもいいかもしれない。 ●軽量派向けに電池1本でも駆動が可能 もうひとつ、ワイヤレスマウスの弱点に内蔵電池の存在があった。問題のひとつは電池寿命。もうひとつは重さである。 このうち電池寿命に関しては、約6カ月というスペックを伝えることはできるものの、実際に使い始めて2カ月を経ていないため、実際のところはよくわからない。しかし、9月初旬のWireless Worldで記者に配布されたWireless Optical Mouseは、その後、約1カ月半に渡って毎日使い続けていたが、バッテリモニタ画面のメモリはひとつも減らなかった。6カ月使えるかどうかはケースバイケースだろうが、少なくとも1カ月や2カ月で電池交換が必要になることはなさそうだ。 マイクロソフトによると、新型ワイヤレスマウスはいずれも、2段階の省電力モードを持ち、復帰速度が非常に速いモードには、常に細かく入るようになっているのだとか。さらにしばらく使っていないとスリープモードに入るが、その場合でも復帰時間を感じることはない。 さらに光学センサーは毎秒1,500~6,000スキャンまで可変動作。マウスの移動速度が遅い場合、読み取りやすい場合などは、スキャン回数を落とすことで電力消費を抑え、移動速度が速い、あるいは読み取りにくい場所などの場合は、スキャン回数を上昇させることで精度を確保する。 このような工夫で省電力化されたこともあり、電池1本だけでも動作可能になったことも魅力だろう。そのおかげで、重さの問題もあまり気にならない。Wireless Optical Mouse単体の重さは90g。単三乾電池1本が約24gのため、1本内蔵時は114g、2本内蔵させても138gしかない。Wireless IntelliMouse Explorerは10gアップの単体重量100gで、こちらもなかなか軽量だ。
ちなみに手元にあるMX700はニッケル水素電池が2本入っていることもあり174g(単体は120g)と重め、先代のWireless IntelliMouse Explorerは単体重量106gと、実は今回のモデルよりも4g軽いが、電池1本で駆動すれば新モデルの方が20g軽くなる。有線マウスは100~110gのものが多い。 個人的にはある程度の重さがあるマウスの方が好みのため、電池は2本入れているが、軽量派の人は参考にして欲しい。 ●便利なチルトホイールだがIEの実装に不満
さて、やっとチルトホイールのい話題だ。チルトホイールの構造は、先日、分解記事が掲載されているため、そちらを参照してもらいたい。従来との違いは左右にスウィングし、デジタルながら左右方向の入力が可能になったこと、それにホイール回転からクリック感がなくなり、無段階に回るようなったことだ。 余談だがチルトホイールの機構部を収める必要があるためか、ボタン類の接点には従来のマイクロソフト製マウスに採用されていたマイクロスイッチではなく、小型のタクティールスイッチが用いられている。そのため、クリック時の音がマイクロスイッチのキレの良い高めの音ではなく、ペコっという多少間抜けな音になってしまった。 ただし音は変わったが、実際の操作感には大差はない。実際にマイクロソフト本社の開発担当者に、その点を聞いてみたが、クリック感の設計は従来のものと同じになるように、部品メーカーと打ち合わせて調達しているとの話だった。 このチルトホイール、メリットはふたつある。左右方向の入力が可能になったことで、従来は面倒だった左右スクロールが、マウス操作ひとつで簡単に行えるようになったこと。特にExcelで巨大なワークシートを扱っているユーザーには嬉しいところだろう。テレビ番組表などをWebページで調べるときなど、横長のWebコンテンツを閲覧する際にも役立つ。 ただし、WordやExcelでの動作が非常にスムースなのに対して、Internet Explorerでの動作は今ひとつ。デフォルトでは左右方向のスクロール速度が遅すぎ、スクロールバーをドラッグした方が遙かに手早く操作を完了できる。スクロール速度を最大にすれば、この問題は解決されるが、今度はWordやExcelでの横スクロール速度が速くなりすぎて使い物にならない。根本的な問題解決にはIE側のアップデートが必要かもしれない。 もうひとつの特徴、スムースな回転は、個人的には気に入ったが、従来のクリック感があるホイールに慣れている人は、多少違和感を感じるだろう。ただ、IEのスクロールがスムースに行なえるのはなかなかの快感。30分も使っていれば、最初に感じる違和感もなくなる。また、ホイールの回転速度に合わせてスクロール速度を加速させる機能があり、こちらも慣れると非常に快適だ。 ホイールボタンの割り当ても、デフォルトが変わった。従来はスクロールモードへの切り替えが割り当てられていたが、横スクロールがチルトホイールで可能になったことに伴いアプリケーションの切り替えがデフォルトとなった。 ●ドライバ機能の充実に期待 良いところばかりを指摘してきたが、不満の残る部分もある。付属ドライバ「IntelliPoint 5.0」は、新しいホイールの機能に対応したが、その一方で機能を若干簡略化している。サイドボタンに割り当てられる機能が減ってしまったのだ。サイドボタンをデフォルトの[進む][戻る]から、[Ctrl]と[Shift]に変更して、拡大縮小やホイール操作でWebページを前後する設定は、5ボタンマウスの定番的なカスタマイズ。しかしIntelliPoint 5.0ではそれが行なえなくなっている。また、ホイールのチルト機能は左右スクロール以外に割り当てることができない。
こうした柔軟なカスタマイズは、IntelliPoint 5.1以降で対応する予定とのこと。もちろん、今回発売されたマウスでも利用可能になるだろうが、なぜ従来からあったサイドボタンへの機能割り当てがなくなったのかが不可解。好意的に解釈すれば、ドライバ設定の幅を広げすぎ、ユーザーの間口を狭めたくないからなのかもしれない。 また、Wireless IntelliMouse Explorerのサイドボタンは、従来のものよりも小さく、押しにくくなった。特にユーザーから見て奥側のボタンには手が届きにくい(誤操作はしにくくなった)。ホイールボタンもかなり強く押さなければ動作しない(こちらはチルト機構を使った時に誤動作しないためだろう)。 一方、塗装など外装部の仕上げなどは良く、低価格化が進むPC周辺機器の中にあって、なかなか高い質感を演出している。他製品に比べ、多少高めの価格設定がされているマイクロソフト製マウスだが、それだけの価値はあると思う。
□マイクロソフトのホームページ (2003年10月24日) [Reported by 本田雅一]
【PC Watchホームページ】
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