多和田新也のニューアイテム診断室

注目の「Athlon 64 3200+」を検証
~Cool'n'Quiet、64bit Windowsもテスト




●クーラーも一新されたAthlon 64

 弊誌では9月の発表時点で、すでにAthlon 64 FX-51とPentium 4 Extreme Editionについてレポートをお送りした。しかし、両機種ともシリーズのフラグシップ機種とはいえ、価格的にも性格的にも、通常のシリーズとはやや離れた存在ではある。そこで、事実上、購入できる最上位機種である「Athlon 64 3200+」を「Pentium 4 3.20GHz」と比較しながらあらためてレポートする。

 Athlon 64のスペックやマーケティングポジションなどについては、すでにこちらの記事でも触れられているのでここでは割愛し、さっそく製品を見ていくことにしたい。

 Athlon 64はこれまでのCPUとはまったく異なる、754ピンの新しいパッケージを採用しているのは既報の通りで、表面はOpteronやAthlon 64 FXと大きな違いはないが、裏面を見ると中央部にピンが配列されていないのでそれと区別できる。

Athlon 64 3200+プロセッサ。OpteronやAthlon 64 FXと見た目に大きな違いはないが、よりPentium 4に近い印象を受ける 裏面はOpteronなどと異なり、中央部にピン配列がないのが特徴 CrystalCPUIDのAthlon 64 3200+での実行結果

 また、表面にはAthlon XPなどと同様にオーダーナンバー(正式にはOrdering Part Number:OPN)と呼ばれる、CPUのスペックを表す文字列が記されている。この内容については、AMDのWebサイトで提供されている「AMD Athlon 64 Processor Power and Thermal Data Sheet」に説明がある。

 現時点でAthlon 64は1製品しかリリースされていないが、今後製品バリエーションが増えたときに、ここを見ればスペックを判別できるわけだ。ちなみに今回試用したAthlon 64 3200+のオーダーナンバーは、表1のような意味になる。

【表1:Athlon 64 3200+のオーダーナンバーの内容】
オーダーナンバー 表している内容 今回試用する製品の場合
ADA ブランド名 Athlon 64
3200 モデルナンバー 3200+(2GHz)
A パッケージタイプ 754ピンOμPGA(リッド付き)
E コア電圧 1.50V
P Tcase 70度
5 L2キャッシュ容量 1MB
AP CPUID Model 4

 表面でもう一つ注意したい点がある。CPUの表面にある取り付け方向を示すマーカーだ。CPUパッケージが似ているPentium 4ではマーカーが固定レバーの付け根方向に来るよう設置するが、Athlon 64はまったく正反対である。正しい位置でないと取り付けができないので間違える心配はないだろうが、最初は戸惑うかも知れない。

 ソケットの形状が変更されたのに伴い、CPUクーラーもまったく新しい形状のものが必要である。特徴はリテーナーに引っ掛けるツメの部分に黒いレバーが取り付けられている点で、このレバーを上げた状態だとツメが緩み、下げるとツメが締めつけられるようになっている。つまり、レバーを上げた状態で取り付け、リテーナーにツメを引っ掛けたのちレバーを下げる、という取り付け動作を行なうことになる。Pentium 4用CPUクーラーほど取り付けやすくないというのが率直な感想だが、それでもSocket Aのそれにくらべれば格段に取り付けやすくなっている。

CPUの取り付け方向はこの向きが正解。ソケット部分にもマークがあるが分かりにくいので注意 Athlon 64 3200+に付属するCPUクーラー。ヒートシンクは最近流行の薄いフィンを敷き詰めた形状で、ツメの部分にあるレバーが特徴
レバーを上げた状態だとツメが緩んでいるので、この状態でリテーナーに引っ掛け…… リテーナーにツメが正しく引っ掛かったら、レバーを降ろして固定する


●Athlon 64対応チップセット2種

 新しいCPUが登場すれば対応するチップセットも話題に上る。原稿執筆時点で搭載マザーボードが入手可能なチップセットは、VIAの「K8T800」とNVIDIAの「nForce3 150」である。

 まず、各社からかなりの製品が登場しているVIAのK8T800だが、ノースブリッジであるK8T800と、サウスブリッジである「VT8237」で構成される。Athlon 64ではメモリコントローラがCPUに内蔵されているため、ノースブリッジであるK8T800内には当然ながらメモリコントローラがなく、AGPのグラフィックトンネルとしての動作がメインである。

 つまり、AMDからリリースされている「AMD-8151」に近いものだと思っていいのだが、AMD-8151はI/O Hubとの接続もHyperTransportで行なわれるのに対し、K8T800とVT8237の接続はVIA製チップセットでおなじみのV-Linkが使われるという違いがある。

 もちろん、K8T800にはAthlon 64と接続するHyperTransport Linkも内蔵されており、この帯域幅は上り/下りともに1.6GHz(800MHz×2)/16bitとなっている。

VIAのK8T800 こちらはサウスブリッジのVT8237 HyperTransport AnalyzerのK8T800搭載マザーでの実行結果

 もう1つのチップセットであるnForce3 150は、Opteron向けチップセットとしてすでに登場していた「nForce3 Professional 150」のAthlon 64向けとなるチップセットで、1チップのなかにAGPのほか、IDEコントローラやUSB、サウンド、LANといった主要なデバイスを組み込んでいる。こちらのHyperTransport Linkの動作速度は、上りが1.2GHz(600MHz×2)/8bit、下りが1.2GHz/16bitと非対称になっているのも特徴だ。

 現状、国内で入手できるのはこの2つのチップセットを搭載したマザーボードのみだが、VIAは統合型チップセット「K8M800」を予定しており、NVIDIAはnForce3 150にSerial ATAコントローラを追加した「nForce3 250」や、さらにGigabit Ethernetコントローラを搭載する「nForce3 250 Gb」を予定している。

 このほか、SiSが「SiS755」や「SiS760」を発表しており、ALiも「M1687」を予定していることから、今後さらに選択肢が増えていくことだろう。

NVIDIAのnForce3 150 HyperTransport AnalyzerのnForce3 150搭載マザーでの実行結果
今回テストに使用するASUSTeKのK8T800搭載マザー「K8V Deluxe 今回テストに使用するGIGABYTEのnForce3 150搭載マザー「K8N Pro


●Athlon 64はCool'n'Quietテクノロジにも対応

 さて、Athlon 64に関して、MSIのサイトに面白い情報がある。こちら( http://www.msi.com.tw/html/e_service/techexpress/tech_column/6702/page11.htm )をご覧いただきたいのだが、Athlon 64をCool'n'Quietテクノロジに対応させる方法が掲載されているのである。

 Cool'n'Quietは、Athlon XPやDuronの低電圧版でサポートされていた技術で、CPUの負荷が低いときにクロックを落とすことで発熱を抑える仕組みだ。しかし、Athlon 64におけるCool'n'Quietの動作はちょっと違うようだ。

 先に紹介した「AMD Athlon 64 Processor Power and Thermal Data Sheet」の“Table.4”を見てみると、クロックは2,000/1,800/800MHzの3段階が用意されており、各クロック時の動作電圧は1.50/1.40/1.30Vと記されている。つまり、クロックとともに動作電圧も可変するということを表しているのだ。これが正しく動作するのであれば、さらに発熱を抑えられるわけであり、興味深い。ちなみにこのデータシートを見る限り、Athlon 64 FXはCool'n'Quietに対応していないようである。

 実際にCool'n'Quietを動作させるためには、AMDのサイト( http://www.amd.com/us-en/Processors/TechnicalResources/0,,30_182_871_9706,00.html )から、使用OSがWindows 2000/Meなら「AMD Athlon 64 Cool'n'Quiet Software for Windows ME and Windows 2000, Version 1.0.1.7 」を、Windows XPなら「AMD Athlon 64 Processor Driver for Windows XP, Version 5.2.3790.2」(いずれも原稿執筆時点)をダウンロードし、MSIのサイトにある通りインストールすればいい。

 ただし、Cool'n'Quietを動作させるためには、BIOSがCool'n'Quietをサポートしている必要がある。今回試したASUSTeKのK8V Deluxeには、BIOSにCool'n'Quietの有効/無効を切り替える項目が用意されている。一方、GIGABYTEのK8N ProはBIOSにこのような項目がなく、ドライバを組み込んでもクロックが変化しなかったことから、現時点では未対応のようである。

 K8V Deluxeでドライバをインストールして試したところ、確かにクロックは2,000/1,800/800MHzの3段階に変化しているし、それに合わせてコア電圧が調節されていることも確認できた。Athlon 64用CPUクーラーの選択肢が少ない現状では、静音化手段の1つとして注目できそうだ。

ASUSTeKのK8V Deluxeには、BIOS内にCool'n'Quietに関する項目が用意されている K8V Deluxeでも、BIOSバージョン「1002」では、デバイスマネージャに「Processor」の項目が表れず、ドライバをアップデートできない ベータ版のBIOSである「1003」にアップデートすることで、ドライバをインストールできるようになる
Cool'n'Quiet対応ドライバインストール後の動作クロック。2,000/1,800/800MHzの3段階で可変しているのが分かる こちらはコア電圧の様子。Cool'n'Quietドライバインストール後、アイドル状態では1.296Vで動作 TMPGEncでエンコード作業を行なってみたところ、コア電圧は「1.488V」まで上昇する


●Windows XP 64-Bit Edition環境も含めてベンチマーク

 それでは、Athlon 64 3200+のパフォーマンスをチェックしてみよう。テスト環境は表2の通り。テストはK8T800とnForce3 150によるパフォーマンスの違いや、Pentium 4 3.20GHzとの比較をメインに行なう。

 また、今回Windows XP 64-Bit Editionのベータ版を入手できたので、こちらでもテストを行なってみる。ただし、64bit OSとはいっても、ベンチマークソフト自体が32bitであるのと、(当然といえば当然なのだが)64bit対応ドライバがほとんどリリースされていないため、チップセット、ビデオ周りはWindows XP 64-Bit Edition標準のものを利用している。

 そのため、一部テストで明らかに異常なスコアが出ていたり、ベンチマークソフト自体が正常動作しなかったものもある。一般で入手できるものでもないので、“Windows XP 64-Bit Editionの現状”として、あくまでも参考程度に見ていただきたい。

 なお、特に断りがない限り、いずれのテストも1,024×768ドット/32bitカラーでテストを行なっている。

【表2:テスト環境】
CPU Athlon 64 3200+ Pentium 4 3.20GHz
チップセット K8T800 nForce3 150 Intel 875P
マザーボード ASUSTeK K8V Deluxe GIGABYTE K8N Pro ASUSTeK P4C800
メモリ PC3200 DDR SDRAM 1GB(512MB×2)
ビデオカード ASUSTeK V9560 Ultra/TVD/128MB(NVIDIA GeForce FX 5600 Ultra)+Detonator XP 45.23
HDD Seagate Barracuda ATA IV(ST380021A)
OS Windows XP Professional(ServicePack1/DirectX 9.0b)
Windows XP 64-Bit Edition(Beta1 Build1069)  



●CPU性能

 まずはCPU単体の性能を見るため、「Sandra 2004」の中からCPU関連のベンチマークの結果を見てみよう(グラフ1、2)。ご覧の通り、いずれの結果もPentium 4 3.20GHzがダントツの好成績である。Athlon 64 3200+の実クロックが2GHzであることを考えればこうした差が出るのは仕方ないのだが、少なくともCPUの演算性能だけを見た場合には、このような差があるわけだ。

 Athlon 64 3200+の結果のみに注目してみると、チップセットの違いによる差は非常に小さく誤差とも言える範囲であるが、K8T800のほうが良いパフォーマンスである傾向にある。

 また、Windows XP 64-Bit Editionでの結果も32bit版Windows XP上での結果と同等か、わずかに上回る性能を出している点も注目できる。ことCPU単体の動作としては、現状でも十分なパフォーマンスが発揮できているようだ。

【グラフ1】Sandra 2004(CPU Arithmetic Benchmark) 【グラフ2】Sandra 2004(CPU Multi-Media Benchmark)


●メモリ性能

 続いてはメモリパフォーマンスを見るため、同じくSandra 2004のCache & Memory Benchmarkの結果を見ていきたい。グラフ3は、Cache & Memory Benchmarkの全結果をグラフ化したものだが、Athlon 64 3200+においては、チップセット間で大きな違いがないことが分かる。

 また、転送サイズが少ない状態、つまりL1 & L2キャッシュの範囲内でのテスト結果はPentium 4が圧倒的な好成績を出していることも分かる。転送サイズが大きな個所、つまりメインメモリ空間でもPentium 4がわずかに上回っているようだ。

 この当たり、もう少し具体的に数値を比較するため、グラフ3から一部結果を抜粋したグラフ4を見ていこう。まず4KBのテストはL1キャッシュの性能を表している。ここはPentium 4 3.20GHzが大きな差をつけているが、これもクロックによる差があるので当然の結果といっていい。

 ただし、L1キャッシュはCPUクロックと同じクロックで動作するので、Athlon 64 3200+(実クロック2GHz)は、Pentium 4 3.20GHzに対しておよそ62.5%の性能であれば同等と言えるのだが、実際のテスト結果は45%前後である。つまり、実クロック差を差し引いてもPentium 4 3.20GHzに劣る結果になっているわけだ。

 256KBでの結果はさらに顕著だ。こちらはAthlon 64、Pentium 4ともにL2キャッシュの範囲内なのだが、Athlon 64 3200+の結果はPentium 4 3.20GHzの36%程度でしかない。キャッシュ性能については、クロック差以上のアドバンテージをPentium 4が握っていると判断できる。

 続く1MBのテストは、Athlon 64 3200+のキャッシュが容量いっぱいまで利用できているかを判断するために示したものだ。先に紹介したグラフ3でもPentium 4のグラフが1MBの位置でストンと落ちているように、キャッシュ容量の差は明確なわけだが、Athlon 64 3200+では1MBのブロックサイズを転送する場合でも256KBの転送速度に近い数値が出ており、L2キャッシュが1MB全域までうまく引き出せているといっていい。

 最後の256MBのテストは、メインメモリの転送速度を比較するためのものだ。Athlon 64 3200+のメモリインターフェイスはシングルチャネル、Intel 875Pはデュアルチャネルであるため、当然ながらPentium 4環境のほうが好成績を出している。が、オーバーヘッドを考えてみると、Athlon 64 3200+は最大帯域幅3.2GB/secに対し1.6~1.8GB/secの速度が出ているので50~56%程度の性能が出ていると言えるのに対し、Pentium 4環境のそれは、6.4GB/secに対し2.4GB/secと38%程度しか発揮できていない。このあたりは、メモリコントローラをCPU内部に組み込むことでメモリレイテンシを抑えるというAthlon 64のアーキテクチャがうまく機能していると言えるだろう。

 面白いのは、K8T800とnForce3 150で差があることだ。CPUがメモリコントローラに組み込まれている以上、チップセットによるメモリアクセスの差はないはずなのだが、わりとはっきりした差がついている。先のCPU関係のベンチマークではK8T800のほうが良い成績を出す傾向にあったが、ここでも同様の結果になっている。ということは、K8T800のほうがよりCPUの性能を引き出せており、その結果メモリアクセス速度も良い結果になっているということだろう。

 ただ、CPUの性能をいかに引き出すかは、BIOSのチューニングも大きく影響する。つまり、K8V DeluxeのほうがK8N ProよりもBIOSのチューンが進んでいる可能性がある、とも言えるわけで、この結果と同様の傾向が今回利用したマザーボード以外でもそのまま出てくるとは限らないので注意してほしい。

【グラフ3】Sandra 2004(Cache & Memory Benchmark) 【グラフ4】Sandra 2004(Cache & Memory Benchmark)


●アプリケーション性能

 ここからは実際のアプリケーションを動かしてみたパフォーマンスを見ていきたい。まずは、「SYSmark2002」である(グラフ5)。このテストはWindows XP 64-Bit Editionで正常に動作しなかったため、データは割愛してある。

 結果を見てみると、コンテンツ作成を行なうInternet Content CreationはPentium 4が圧倒しているが、ビジネスアプリケーションを動作させるOffice Productivityでは差が縮まり、nForce3 150環境ではPentium 4を追い抜く結果となっている。

 Internet Content Creationでこれだけの差がついた原因としては、先のSandra 2004の結果でも分かるようにSSE2の性能に差があったことが1つと、テストで使われるアプリケーションの中にマルチスレッド対応のものが多く、Hyper-Threadingが有効に働いた点が考えられる。一方のOffice Productivityでは、そうした影響が少なく、Athlon 64 3200+が差を縮めたのだろう。

 面白いのは、Sandra 2004ではCPU、メモリテスト共にK8T800が優秀な成績を出していたのに対し、ここではnForce3 150が良い性能を発揮している点だ。実使用下では、CPUとメモリだけで性能が決まるわけではなく、グラフィックやHDDなどを含めたシステムトータルの性能が影響してくる。この結果を見る限り、CPU・メモリ以外のnForce3 150環境のパフォーマンスが、CPU・メモリのビハインド以上に優れていると判断できるわけだ。

 実際のアプリケーションを使ったベンチマークをもう少し見ていこう。グラフ6は、SYSmark2002のOffice Productivity同様にビジネスアプリケーションを実際に動作させたときのパフォーマンスを見る「Business Winstone 2002」の結果だ。

 こちらは、Office Productivity以上にAthlon 64 3200+が優れた成績となり、Pentium 4 3.20GHzを凌駕している。ビジネスアプリケーションにおけるAthlon 64 3200+の優秀さが証明された格好だ。また、K8T800 <n Force3 150の構図も同様である。

【グラフ5】SYSmark2002 【グラフ6】Business Winstone 2002

 続いて、TMPGEncを使ったMPEG-1エンコードの結果を見てみよう(グラフ7)。このソフトも、SSE2の性能が動作速度に大きく影響し、さらにはマルチスレッドの効果も高いため、SYSmark2002のInternet Content Creationのように、Pentium 4 3.20GHzがかなり優秀な成績となっている。

【グラフ7】TMPGEnc(MPEG-1エンコード)

 また、K8T800がnForce3 150以上の性能を出している点は、SYSmark2002やBusiness Winstone 2002と矛盾する結果になっているが、これには理由がある。動画エンコード時にはHDDから動画を読み出していくわけだが、一度に読み出されるのは1フレームでありサイズはそれほど大きくないため、HDD性能などがエンコード速度に与える影響が小さいのだ。

 むしろ、読み出された各フレームが展開されるメモリのアクセス速度と、エンコード処理を行なうCPUの演算性能がエンコード速度に大きく影響する。先のSandra 2004のテストでも分かる通り、今回のテスト環境ではK8T800環境のほうが、CPU単体の演算性能、メモリアクセス速度ともに優れており、この性能が純粋に成績に表れているのである。そういう意味では、Pentium 4 3.20GHzとの差の一因もメモリアクセス速度にあるのは間違いない。

 一方で64-Bit Editionの成績は、逆転しているのも興味深い。つまり、影響が小さいはずのCPU・メモリ以外のファクターにおいて、nForce3 150がK8T800を大きく突き放しているため、成績が逆転してしまっていると言えるのである。おそらくIDEバスマスタドライバあたりが原因だと思われ、現時点ではnForce3 150のほうがドライバの対応が進んでいるためだろうと推測される。

 また、基本的に64-Bit Editionのほうが高速にエンコードできているのも注目だ。先に示したSandra 2004のCPU Multi-Media Benchmarkの結果が32bit版よりも64-Bit Editionのほうが優れていたように、拡張命令を多用するアプリケーションでは優秀な成績を出す傾向にあるようだ。


●3D性能

 さて、最後に3D描画系のベンチマークをまとめて紹介しておこう(グラフ8~12)。全体にAthlon 64 3200+環境が優れた性能を出す傾向にはある。この中で注目しておきたいのは、「Unreal Tournament 2003」の結果だ。Unreal Tournament 2003では、3Dで描画されたフィールドを飛び回るだけのFlybyと、その中を3Dで書かれたキャラクターが動き回るBotmachの2つのテストが行なわれる。FlybyにおいてはAthlon 64 3200+とPentium 4 3.20GHzの差は小さいのに対し、Botmatchでは大きな差となっている。

 Flybyはフィールドを飛び回るだけなので、3Dグラフィック性能が優劣の差となって表れやすく、ビデオカードが同じである今回の環境で差が出にくいのは頷ける。一方でBotmatchは3Dのキャラクターを動かすというCPUによる演算処理が入るため、CPU性能の差も影響してくる。実際のゲームではBotmatchのように3Dオブジェクトが動くのが当たり前だが、そうした処理を行わせる場合はPentium 4よりもAthlon 64のほうが処理性能が高いと言える。

 64-Bit Editionでのテストについても補足しておこう。まず「3DMark03」はGame2以降のテストが実施できず、さらにはGame1の描画もまともなものではなかったため割愛してある。また「Quake III」は極端に低い数値になっているが、これはWindows XP 64-Bit Edition標準のGeForce用ドライバではVsyncをOFFにできなかったためで、リフレッシュレートの85Hzで頭打ちになってしまったためである(ちなみにPowerStripなどでも、VsyncをOFFにするためのフラグが表示されなかった)。

Windows XP 64-Bit Edition(Beta 1 Build1069)のプロパティ画面 64-Bit Edition上で3DMark03のGame1を動作させるとこんな感じ。戦闘機・爆撃機ともにまともに描写されず、何もないところから弾が打ち出されるのは見ていてとても面白いのだが……

 64-Bit Editionでは、K8T800が32bit版Windowsに比べて大きく性能が後退しているが、nForce3 150は32bit版Windowsにかなり肉薄しているほか、一部テストでは成績を上回っているものもあるほどだ。ビデオカード、ビデオドライバが同じである以上、考えられるのはGARTドライバの違いだ。先のTMPGEncのテストもそうだったが、64-Bit Editionのドライバは、現時点ではnForce3 150のほうが進んでいると考えて間違いないだろう。

【グラフ8】3DMark2001 SecondEditon 【グラフ9】3DMark03
【グラフ10】Unreal Tournament 2003 【グラフ11】Quake III
【グラフ12】FINAL FANTASY XI Official BenchMark


●現状では用途次第だが今後に期待

 さすがにモデルナンバーが“3200+”となっているだけあって、Pentium 4 3.20GHzと互角以上に渡り合ってきたAthlon 64 3200+。コンテンツ作成となるとPentium 4が優れた性能を発揮しているが、ビジネスアプリケーションと3D描画に関して光るものがある。Pentium 4 3.20GHzよりも2万円ほど安く、さらには同じモデルナンバーを持つAthlon XP 3200+より安価である点も考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いと言えるだろう。

 また、Cool'n'Quietテクノロジへの対応や、将来登場する64bit対応版Windowsなど、性能以外での人柱的な楽しさも秘めている。

 もう1つ言えることは将来性の違いだ。これまでにも伝えられているようにNorthwoodコアのPentium 4は3.20GHzで打ち止めされ、今後はPrescottへと移行していく。つまり、Northwood Pentium 4の限界地点とAthlon 64のスタート地点が互角の性能を出しているわけで、どちらの将来性が高いかは言うまでもない。

 ただ、Unbufferedメモリに対応し、デュアルチャネルメモリインターフェイスを持つ、939ピン版のAthlon 64の情報が流れているため、手放しで薦められないのも事実。この構図はSocket 423のPentium 4登場時にSocket 478版の情報が流れていた状態に似ている。結局Socket 423版はニッチなアイテムとなり、Socket 478版は登場するや一気にメインストリームに上り詰めたのは周知の通りだ。

 プラットフォームの刷新を考えている人や、完全に新規にPCを組もうと思っている人が「すぐに購入」するなら、Athlon 64 3200+は第一にオススメできる選択肢であるが、それに該当しないユーザーは今後の動向を見守るのも一案である。

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【9月24日】【Hothot!】Athlon 64 FX-51 vs Pentium 4 Extreme Edition
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0924/hotrev229.htm
【9月24日】AMD、64bitプロセッサ「Athlon 64」を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0924/amd.htm

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(2003年10月22日)

[Text by 多和田新也]


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