会場:McEnery Convention Center, San Jose, 米
Intelが開発者向けに開催しているIntel Developer Forum(IDF) Fall 2003の2日目は、モバイルとエンタープライズに関する基調講演が開催された。 2日目の基調講演のトップバッターとして登場した、Intel モバイルプラットフォームグループジェネラルマネージャのアナンド・チャンドラシーカ副社長は、同社が2004年後半にリリースを予定しているSonomaプラットフォームの概要などに関して説明した。 Sonomaプラットフォームでは、90nmプロセスのCPUであるDothan、新世代チップセットのAlviso(アルビソ)、次世代無線LANのCalexico2などから構成されており、現在のCentrinoモバイル・テクノロジの後継となる製品だ。 ●早い立ち上がりを見せるCentrinoモバイル・テクノロジ 壇上に立ったチャンドラシーカ氏は「これまで当社はモバイルPentium III、モバイルPentium 4と製品をリリースしてきたが、Centrinoに関してはこうした前の世代の製品に比べてかなり早い立ち上がりを見せている」と述べ、Centrinoの立ち上がりの早さを強調した。 チャンドラシーカ氏は、Centrinoの特徴として、よりスリムなフォームファクタ、より長時間のバッテリー、高性能という3つの要素をあげ、「これらの新しい特徴により、ノートPCにイノベーションを提供してきた」と、Centrinoの製品に自信を見せた。 さらに、チャンドラシーカ氏は「今後もCentrinoの拡張を続けていく、今日は新しいチップセットであるIntel 855GMEをリリースする」と述べ、これまで「Montara-GME」と呼ばれていた製品を、Intel 855GMEとしてリリースすることを明らかにした。 Intel 855GMEは、Intel 855GMの後継となる製品で、DDR333のメインメモリに対応したほか、内蔵されているグラフィックスの機能が拡張されている。具体的には、内蔵グラフィックスの動作クロックが250MHz引き上げられたほか、動作クロックを負荷に応じて変動する機能が用意されている。 また、Intel 855GMEにはDPST(Dynamic Power Saving Technology)と呼ばれる機能が用意されている。DPSTでは、色温度などを調節することで、輝度を動的に調整し、液晶ディスプレイの消費電力を下げるというものだ。実際、チャンドラシーカ氏が行なったデモでは、当初は5Wを消費していた液晶ディスプレイが、DPSTを有効にすることで3Wまで下がるという様子がデモされた。
●90nmプロセスのDothanのデモでは、現行のBaniasと比較 また、Intelが第4四半期中にOEMメーカーへの出荷を予定しているDothan(ドサン)に関するデモを行なった。 Dothanは製造プロセスルールが90nmに微細化され、L2キャッシュが2MBに増量される製品だ。ダイサイズは87平方mmで、1億4,000万トランジスタから構成されている。また、マイクロアーキテクチャも若干の改良が加えられており、効率よくL2キャッシュにデータをプリフェッチするEnhanced Data Prefetcher、リード/ライトの長さを調節することにより、効率よくレジスタを利用する“Enhanced Register Data Retrieval”といった新機能が追加されている。このため、L2キャッシュが1MBの現行Pentium M(Banias)に比べて高い性能を発揮すると見られている。 今回チャンドラシーカ氏が行なったデモは、同じクロック周波数(クロック数は非公開)のDothanとBaniasを並べ、Excelの演算とレンダリングを同時に開始させ、どちらが早く終わるかをテストした。その結果はDothanの圧倒的な勝利となった。 なお、今回Dothanがいつリリースされるかに関しては明らかにされなかった。が、IntelはOEMメーカーに対して、出荷は第4四半期だが、発表は2004年の第1四半期になると通知している。なお、発表時のクロックは1.80GHz、1.70A GHzが予定されている。
●2004年の末に予定されているSonomaプラットフォーム
チャンドラシーカ氏は、2004年の後半にリリースを予定している“Sonomaプラットフォーム”に関する説明を行なった。 Sonomaプラットフォームとは、次世代Centrinoのことで、CPUのDothan、チップセットのAlviso、無線LANモジュールのCalexico2から構成されている。Centrinoのことを開発コードネームで“Baniasプラットフォーム”と呼んでいたが、それと同様の呼称と考えればいいだろう。 Sonomaプラットフォームの最も大きな特徴は、Alvisoと呼ばれるPCI Expressベースのチップセットが採用されていることだ。 今回公表されたAlvisoのスペックは「2005年のノートPCプラットフォームを予測する」や、後藤弘茂氏が「4GHzと5Wを目指し、二極化が進むIntelのノートPC向けCPU」で伝えたとおりで、デュアルチャネルのDDR2、新設計のグラフィックスコア、PCI Expressをサポート、サウスブリッジはICH6-Mで、Azaliaオーディオをサポートし、Serial ATA HDD、ExpressCard(「NEWCARD」と呼ばれた次世代PCカード)をサポートといったスペックとなっている。 注目すべきは、Calexicoの次世代版であるトリプルモード(IEEE 802.11a/b/g)に対応したCalexico2が、Sonomaプラットフォームの一部となっている事実だ。Calexico2は今年の終わりにリリースされ、現行のCentrinoの一部になると考えられていたのだが、どうもその計画には変更が加えられたようだ。 当初、IntelはCalexico2でIEEE 802.11aに対応させる予定だった。ところが、このプランは変更され、現在ではIEEE 802.11b/gのみをサポートする無線LANモジュールが計画されているという。つまり、年末の時点で揃うのは、IEEE 802.11a/b/gではなく、IEEE 802.11b/gということになる。 現時点では、Calexico2がSonomaよりも前にリリースされるのか、それとも同時になるのかは明らかになっていないが、再びIntelの無線LAN計画が後退してしまった可能性は高い。IntelはCentrinoのブランドネーム戦略で、再び苦しい立場に追い込まれる可能性が高まってきた。 このあたりの、Intelのモバイルに関する戦略に関しては別レポートで詳しく解説したい。 ●シリコンだけでなく、周辺部分の省電力化にも取り組むIntel
また、チャンドラシーカ氏はEBL(Extended Battery Life)イニチアシブの成果として、平均消費電力が3Wで動作する液晶ディスプレイを公開した。 現在のノートPCに使われている液晶ディスプレイの平均消費電力は、サイズにより異なるが、一般的な15型ないしは14型の液晶で4~5W程度。システム全体で10W台前半の平均消費電力であるCentrinoマシンの中では、最も電力を消費しているデバイスになっている。そこで、EBLでは、細かな省電力の積み重ねを行なうことで、3W近くという低消費電力を実現したという。 チャンドラシーカ氏は「処理能力が上がることで、消費電力も増えると考えるかもしれないが、Sonomaではこうしたシリコン以外の部分の積み重ねで、より低消費電力になるはずだ」と力強く語り、今後もIntelがCentrinoの強化をつとめていくと、基調講演をまとめた。 □IDF Fall 2003のホームページ (2003年9月18日) [Reported by 笠原一輝]
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