会場:McEnery Convention Center, San Jose, 米
パラノイアを自称するIntelが、再び本領を発揮した。来週の23日(日本時間24日)にAMDがAthlon 64を発表するが、そのAthlon 64を撃墜すべく、Intelがついに奥の手を出してきた。 元々Xeon向けに開発していた2MBのL3キャッシュを搭載したコア「Gallatin(ギャラティン)」を、“Pentium 4 Extreme Edition”として、ここ数カ月の間に発表すると、デスクトッププラットフォームグループジェネラルマネージャのルイス・バーンズ副社長がIDFで行なわれた基調講演において唐突に明らかにしたのだ。 直前までIntel社内でも限られた関係者しか知らなかったというこの製品は、ゲームユーザー向けとされており、圧倒的なパフォーマンスを発揮しそうだ。このPentium 4 Extreme Editionが発表された背景に迫っていきたい。 ●Athlon 64潰しの秘密兵器、バックアッププランとして存在していたGallatinのP4投入がついに現実へ 前回のIDFレポートの中で、筆者はGallatinをPentium 4として投入する可能性が存在するというレポート( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0221/idf04.htm )を書いた。Athlon 64の処理能力が思ったよりよかったときの対抗策として、L3キャッシュを搭載したGallatinをPentium 4として投入するというプランが、この時、Intelの社内にあったのだが、これはAMDがAthlon 64のリリースを遅らせたことで、一時的にペンディングになっていた。 ところが、このプランが突如復活した。AMDのAthlon 64の処理能力が、Intelが考えていたよりも高いものだったようなのだ。現時点ではAthlon 64が発表されていないため確認しようがないのだが、Athlon 64の性能はそれなりに高いものだという。であれば、それに対抗するという意味を込めてGallatinのPentium 4投入が復活し、実際に製品として投入されることになったと考えることができる。 今回発表されたPentium 4 Extreme Editionは、0.13μmの製造プロセスルールで製造され、512KBのL2キャッシュ、2MBのL3キャッシュを備える。システムバスは800MHzで、Intel 865ファミリーおよびIntel 875を搭載したマザーボードで利用できるという。つまり、現行のマザーボードでも、BIOSアップデートなどで対応できる可能性が高いといえる。 なお、今回はあくまで製品発表の意向表明という形になっており、具体的な発表日、価格などは明らかになっていない。しかし、製品がAthlon 64をターゲットにしたものであるならば、その登場は決して遠くないと思われる。 ●Prescottのバックアッププランとしての意味も持つPentium 4 Extreme Edition だが、OEMメーカー筋の情報を総合すると、どうやらこのPentium 4 Extreme Editionは、決してAthlon 64潰しという意味だけではないという。 OEMメーカー筋の情報によれば、いくつかのOEMベンダに第4四半期ないしは第1四半期に予定している製品で、Prescottに換えてPentium 4 Extreme Editionのオファーを受けたところがあるという。そのの情報筋によれば、Prescottのリリースは当初は10月というように通知されたということなのだが、発表の日付自体が年明けに延期されたとIntelが通知してきたという。 IDFの会場においてバーンズ副社長は、Prescottの出荷時期についての質問に対して「これまでの予定通りだ、第4四半期中に出荷する」とこれまでと変わらない答えをしている。ところが、「いつ発表するのだ」という質問に関しては「いつ発表するかはOEMメーカーとの関わりがあり、発表近くにならない限り明らかにできない。出荷に関しては第4四半期中には売り上げがあると予定している」と述べ、発表期日は明らかにできないが、出荷は第4四半期中にあるという微妙な表現に変わっていた。つまり、発表に関しては、2004年に延期することに含みを持たせたと言っていいだろう。 実際、IntelはNorthwoodの時も、2001年の第4四半期中にリリースとしていたが、第4四半期中に出荷、発表自体は2002年の第1四半期になったという前例もある。そうしたことを考えると、2003年中のPrescottの発表はなくなったと考えるのが自然だろう。 したがって、IntelはPrescottの発表前に、AMDのAthlon 64に対抗できる製品を投入する必要がある。ところが、現行のNorthwoodコアは、ライフサイクルの終わりにさしかかっており、これ以上クロック周波数を上げるのは難しい状況だ。そこで、2MBのL3キャッシュを搭載し、高いパフォーマンスを実現可能なGallatinをPentium 4として投入、その代わりとするということが考えられたというのは容易に想像できる。 本来Prescottを発表するはずだった第4四半期に、Pentium 4 Extreme Editionを発表することで、そのダメージを最大限に抑える……、そうIntelが考えても不思議ではない。
●Intelにとって2つの意味を持つPentium 4 Extreme Edition 現時点では、Prescottの発表がなぜ、第1四半期に延期になってしまったのかについて、その原因は明らかになっていない。以前より問題が指摘されていた熱の問題なのか、それとも他に何か原因があるのか、引き続き調べてみる必要があるだろう。どちらにせよ、ユーザーがPrescottを手にすることができるのは、どうも今年中ではなく来年となってしまったのはまず間違いない状況だ。 今回のPentium 4 Extreme Editionについては、2通りの評価があると思う。冒頭で述べたように、パラノイア(偏執狂)を自認するIntelが、AMDを叩き潰すための総力戦に出てきたという面と、もう1つはPrescottのバックアッププランとして、GallatinをPentium 4に投入せざるを得なくなったという面だ。 エンドユーザーにとっては、もしかするとPrescottよりも高い処理能力を持つかもしれない2MBのL3キャッシュを搭載したGallatinを、Pentium 4の価格で入手できるようになったということは歓迎していいだろう。果たして、どのような処理能力を持っているか、今からAthlon 64とのパフォーマンス競争の行方が楽しみになってきた。 □IDF Fall 2003のホームページ (2003年9月17日) [Reported by 笠原一輝]
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