会期:2月18日~21日(現地時間) Intelが開発者向けに開催している会議「Intel Developer Forum」は3日目を迎えた。本日はエンタープライズデーということで、サーバー/ワークステーション向けプロセッサとネットワーク向けプロセッサなどに関する基調講演が行なわれた。 この中で、Intelのマイク・フェイスター副社長(エンタープライズプラットフォームグループジェネラルマネージャ)が、デュアルプロセッササーバーやワークステーション向けのXeonに、1MBのキャッシュを搭載するバージョンを今年の後半にリリースすることを明らかにした。 ●コードネームGallatinで知られる1MBのL3キャッシュを内蔵したXeonを第3四半期に投入
今回フィスター氏が明らかにしたロードマップによれば、今年の前半に現行のPrestoniaコア(0.13μmプロセス)の最高クロック版であるXeon 3.06GHzを追加し、さらに2003年の後半には1MBのキャッシュを内蔵したXeonを投入することになるという。さらに、もともと2003年の後半に予定されていた90nmプロセスの“Nocona”(ノッコナ)は、2004年に移され、1MBのL2キャッシュを搭載して登場するという。 これまでのIntelのロードマップでは、2003年の前半にはPrestoniaのクロックを上げていき、2003年の後半にNoconaを投入するというものだったから、若干の変更が行なわれたと言ってよい。さらに、Xeon MPのロードマップについてもふれ、Xeon MPの90nmプロセス版のコードネームが“Potomac”(ポトマック)であることを明らかにした。 衝撃的だったのは、1MBのキャッシュを搭載したXeonが、今年の後半に投入されることだ。実は、この1MBのキャッシュのXeonは、Prestoniaコアではない。これは、“Gallatin”(ギャラティン)として用意されていたコアで、本来はXeon MPの後継となるべく開発されたCPUだ。Gallatinには、Prestoniaが内蔵している512KBのL2キャッシュに加えて、1MBないしは2MBのL3キャッシュが内蔵されている。今回、フィスター氏が言及したのは、このうち1MB版の方で、OEMメーカー筋の情報によれば、3.06GHzを超えるクロックグレードでXeonとして第3四半期に投入されるという。 なお、フィスター氏は、Xeonのチップセットの今後についてもふれ、E7501の後継チップセットとして“Lindenhurst”(リンデンハースト)、新しく投入する4ウエイ用のチップセットが“Twincastle”(ツインキャッスル)であることを明らかにした。なお、E7505の後継となるワークステーション用のチップセットは“Future”として存在だけが明らかにされたが、OEMメーカー筋の情報によればコードネームは“Tumwater”(タムウォーター)になり、デュアルチャネルのDDR2-400をサポートし、PCI Express x16をグラフィックス用としてサポートし、PCI Express x4/x8をサポートすることになるという。
それでは、本来大規模サーバー用であるXeon MP用に計画されていたはずの、Gallatinが急遽デュアル用であるXeon用として利用されることになったのだろうか? 理由は2つ考えられる。 1つは、NoconaがIntelが考えていたよりも後にずれ込んでしまったことだ。Intelは、もともと90nmプロセス技術で製造したCPUコアを第3四半期には製品として投入する予定だった。ところが、様々な理由から90nmプロセスは1四半期ないしは2四半期遅れてしまい、本格的なスタートは2003年の終わりから2004年の頭頃となる可能性が高まっている。現在IntelがOEMメーカーに説明しているロードマップによれば、Noconaは第4四半期に3.40GHz以上のクロックで投入される予定となっている。従って、1四半期遅れた分を、現在ある手持ちの駒でなんとかしのがなければならない。 以前から0.13μm(130nm)プロセスのPrestoniaコア(Xeon用)やNorthwoodコア(Pentium 4用)は、3.2GHzあたりが上限と言われており、これ以上クロックを上げるのは歩留まりの点から考えて難しい可能性が高い。その証拠に、CanterwoodやSpringdaleなどと一緒にリリースされるはずだったPentium 4 3.20GHzは、当初のプランよりもやや後ろになっているという。これは、いくら好調なNorthwood/Prestoniaコアとはいえども、さすがに限界に近くなっていることを示唆しているといえる。仮に、歩留まりの点であまり良好ではないとすれば、デスクトップPC用に回す分で手一杯と考えられ、ワークステーション用であるPrestoniaに回す分は十分ではない可能性がある。このため、別の手段を考えなければならなかったということではないだろうか。 もう1つ考えられる理由が、AMDのOpteron対策だ。AMDはOpteronを、4月22日にニューヨークで発表する。クロックグレードは1.8GHz、1.6GHz、1.4GHzの3つだ。モデルナンバーがどうなるのか、現時点では明らかではないが、AMDのジョン・クランク氏は「おそらくIA-32をターゲットとしたものになるだろう」と示唆しており、Xeonを意識したモデルナンバーとなる可能性が高い。たとえば、AMDが1.8GHzのモデルナンバーを3200+とか、3400+などに設定してきた場合、3.4GHz以上のクロックをNoconaで実現するまで、パフォーマンスで対抗できないことになってしまう。そこで、Gallatinを3.06GHzや3.2GHzなどでリリースすることで、対抗しようという訳だ。 こうしたことからも、IntelがOpteronをいかに警戒しているかがわかるというものだろう。 ●Pentium 4へGallatin投入も一時検討されていたが、Athlon 64の延期でプランは消滅なお、情報筋によれば、インテルは一時GallatinをPentium 4として投入することを検討し、実際に評価を行なっていたという。情報筋によれば、これはAthlon 64がもともとのスケジュール通り第1四半期の終わりに投入されるという事態を想定してのものだったようだ。すでに、後藤弘茂氏が記事( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0124/kaigai01.htm )でふれているように、AMDは一時期1MBのL2キャッシュを搭載するSledgeHammerを、ClawHammerとしてリリースする計画を持っていた。そのプランでは第3四半期に3400+をリリースする予定となっていたため、90nmプロセスルールが若干後ろにずれ込んだIntelとしては、何らかの手を打つ必要があった。そこで、1MBのL3キャッシュを搭載したGallatinをPentium 4として投入することで、パフォーマンスでAMDを振り切ろうという計画であったようだ。 実際、Intelデスクトッププラットフォームグループ共同ジェネラルマネージャ ウィリアム・スー氏にGallatinをPentium 4に投入するプランは存在するのかと確認したところ、「その話のソースはどこなんだい? (笑)。確かに、そういうオプションはあり得ると思うが、現時点では製品として投入するなどは決定していない。ただ、Prescottのキャッシュは1MBであることからもわかるように、1MBキャッシュという展開はあり得るだろう」とのべ、実際に製品化するかどうかはまったく未定だが、少なくともそうしたプランを検討されていることは否定しなかったし、今後のオプションとして取りうる可能性があることを示唆した。 このように、Intel内部ではGallatinのPentium 4投入が検討されていたのはほぼ間違いない状況だが、結果的にこのプランはペンディングのままだ。それは、言うまでもなく、AMDが自滅してくれた、つまりAthlon 64の出荷を9月に延期したためだ。その情報筋によれば、パフォーマンスは非常によかったそうで、パワーユーザーにとってはやや残念な話だ。
しかし、このプランが存在していたということ自体が、Intelがいかに周到にAthlon 64を迎え撃とうとしていたかを如実に示しているということができるだろう。すでに、HTテクノロジを3GHz以下にも浸透、さらには800MHzのシステムバスとデュアルチャネルDDR400という一手を打ってきただけでなく、さらにその先にはGallatinのPentium 4投入というバックアッププランまで検討していたとは、Intelという会社は、競合他社にとって相変わらず“パラノイア”(偏執狂)であるようだ。
□IDFのWebサイト(英文) (2003年2月21日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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