今回から始まった「石井英男のDigital Life」は、筆者が気になったPC関連製品や技術、日頃考えていることなどを紹介していく連載である。あまりジャンルを絞らずに、面白そうなモノがあったらできるだけ取り上げていこうと思っている。今回は、インタービデオジャパンから発売されているDVDプレーヤーソフト「WinDVD 5」のモバイルテクノロジーの効果について検証してみたい。 ●ポータブルDVDプレーヤー代わりにも使える小型軽量2スピンドルノートPC
2スピンドル以上のノートPCでは、多くの製品が光学ドライブやDVD-ROM/CD-RWコンボドライブまたは記録型DVDドライブを搭載しているので、映画などのDVD-Videoタイトルを楽しむことができる。バイオノートTRやLOOX T、Let'snote W2といった小型軽量2スピンドルノートPCなら、持ち歩いてポータブルDVDプレーヤー代わりとして使うのも十分可能であろう。 筆者も海外旅行の際など、飛行機の機内で、ノートPCをポータブルDVDプレーヤー代わりに使うことがよくある。しかし、こうした使い方をする場合に問題になるのが、バッテリ駆動時間である。カタログなどで表記されている公称バッテリ駆動時間は、光学ドライブにアクセスしない状態で計測されていることが多い。 光学ドライブが常に回りっぱなしになるDVD-Video再生時のバッテリ駆動時間は、公称バッテリ駆動時間に比べてかなり短くなってしまう。大容量バッテリが用意されている機種では大容量バッテリを利用することで、駆動時間を延ばすことができるが、その分、サイズが大きくなり、重量も増えてしまう。 ●メインメモリをキャッシュとして使うことで、光学ドライブの回転を抑制
そこで注目したいのが、インタービデオジャパンから7月25日に発売されたDVDプレーヤーソフト「WinDVD 5」だ。WinDVDシリーズは、PowerDVDシリーズと並ぶ有名DVDプレーヤーソフトであり、数多くのPCにプリインストールされている。WinDVD 5は、このWinDVDシリーズの最新バージョンで、インターフェースが一新されただけでなく、オーディオの詳細設定が行なえる「Audio Booster」や中央部分を保持した左右部分を伸張することで、より自然な表現が可能になったスマートストレッチ機能、インターレース映像をより美しくプログレッシブ化するプログレッシブデインターレース機能、画像にエフェクトをかけるマルチビデオエフェクト機能など、さまざまな機能が強化されている。 これらの機能は特にノートPC向けというわけではないが、WinDVD 5には、ノートPC向けの「モバイルテクノロジー」と呼ばれる機能も搭載されている。モバイルテクノロジーは、バッテリ駆動時のみ有効になる機能で、メインメモリを先読みキャッシュとして使うことで、光学ドライブの回転をできるだけ抑制し、DVD-Video再生時のバッテリ駆動時間の延長を実現するという技術だ。 リリースによると、Centrinoモバイル・テクノロジ搭載マシンでは特に効果が大きく、最大約40%もの駆動時間の延長が可能だという(Centrino以外のモバイル向けIntel製CPUを搭載した場合では最大約20%の延長が可能)。これが本当なら、2スピンドルノートPCをポータブルDVDプレーヤー代わりに使っているユーザーにとっては非常に嬉しい機能であろう。 なお、WinDVD 5シリーズには、上位製品のWinDVD Platinum 5(標準価格8,800円)と下位製品のWinDVD Gold 5(標準価格4,580円)の2製品が存在する。Audio Boosterやプログレッシブデインターレース機能、マルチビデオエフェクト機能は、WinDVD Platinum 5にのみ実装されているが、スマートストレッチやモバイルテクノロジーは、下位のWinDVD Gold 5にも搭載されている。 ただし、モバイルテクノロジーは、Intel製CPU搭載ノートPCでのみ有効な機能であり、AMDやTransmeta製CPUを搭載した機種では利用できないので注意が必要だ。 ●旧バージョンと比較すると、最大4割以上の駆動時間の延長を実現
そこで、WinDVD Platinum 5を利用して、モバイルテクノロジーを有効にすることで、どれだけ駆動時間が延びるか実際に検証してみることにした。検証に利用したノートPCは、シャープのMebius MURAMASA PC-MV1-C1W(以下PC-MV1-C1W)とエプソンダイレクトのEDiCube S150H(以下S150H)である。 搭載CPUは、PC-MV1-C1WがモバイルPentium III-M 1GHz、S150HがPentium M 1.40GHzである。なお、メモリは両機種とも512MBに増設してある。また、バックライトの輝度は、PC-MV1-C1Wが8段階中下から4段階目、S150Hが16段階中下から8段目に設定し、無線LAN機能はオフにした。テストは各条件で2回ずつ行なっている。また、特に断らない限り、電源のプロパティの電源設定は「ポータブル/ラップトップ」としている。 結果は、下の表1、2にまとめた通りだ。まず、ノートPCにプリインストールされていた旧バージョンのWinDVD(PC-MV1-C1WではWinDVD 3.2、S150HではWinDVD 4がプリインストールされていた)で、DVD-Videoを再生してみたところ、PC-MV1-C1Wでは、平均1時間31分程度(このノートPCは購入後1年3カ月が経過しているので、バッテリがかなりへたってきている)、S150Hでは平均3時間18分程度の連続駆動が可能であった。ただし、再生が強制的に停止した状態でもバッテリ残量は15%であったが、旧バージョンのWinDVDでは、バッテリ最低限度を変更することはできないので、これ以上再生を続けることはできなかった。 【表1】Mebius MURAMASA PC-MV1-C1W
次に、WinDVD Platinum 5をインストールし、デフォルトの設定(モバイルテクノロジー関連の機能は全てオフ、バッテリ最低限度は15%)でテストをしてみたが、PC-MV1-C1Wの再生時間は平均1時間35分、S150Hでは平均3時間19分であり、旧バージョンと大差はなかった。 そこで、モバイルテクノロジーのタブを開いて、「モバイル電源の最適化を有効にする」チェックボックスにチェックをつけて、再び計測を行なってみた。モバイル電源の最適化のチェックボックスにチェックをつけることで、メインメモリへの先読みキャッシュ機能が有効になる。この際のメモリの使用量は「最大」「平均」「最小」の3段階から選べるが、ここでは、デフォルトの「最大」を選択した。すると、PC-MV1-C1Wの再生時間は平均1時間45分に、S150Hの再生時間は平均3時間41分に延びた。 通常は、再生時に常にDVDドライブのアクセスランプが点灯するが、モバイル電源の最適化機能を有効にすると、先読みキャッシュ機能が働くため、DVDドライブのアクセスランプが消えていることが多くなる。なお、モバイルテクノロジーはその原理からもわかるように、メインメモリ容量が大きいほど、一度にたくさんのデータを読み込めるので、再生時間の延長効果が大きくなる。 モバイル電源の最適化を有効にしていない状態に比べると、1割程度再生時間が延びている。なお、「WinDVDモバイル電源設定を有効にする」チェックボックスにチェックをつけると、電源のプロパティの電源設定に「Intervideo DVD5」というプロファイルが追加される。そこで、電源設定をIntervideo DVD5にして同様にテストをしたが、再生時間はほとんど変わらなかった。 また、旧バージョンのWinDVDではバッテリ残量が15%になると、強制的に再生が停止したが、WinDVD 5ではその最低限度を3~25%の間で変更することができる。そこで、最低限度を3%に下げて、モバイル電源の最適化のチェックボックスを外したところ、PC-MV1-C1Wでは平均1時間58分、S150Hでは平均3時間42分の再生が可能であった。最後に、最低限度を3%にした状態でモバイル電源の最低化を有効にしたところ、PC-MV1-C1Wでは平均2時間10分、S150Hでは平均4時間5分という長時間再生を行なえた。 WinDVD 5同士の比較では、モバイル電源の最適化機能の有効/無効の選択によって、約1割の差しか出ていない。しかし、旧バージョンのWinDVDでは、バッテリ残量の最低限度が15%固定であったために、結果的に再生時間が短くなっていた。WinDVD 5で最低限度を3%にしてモバイル電源の最適化機能を有効にした場合は、旧バージョンでの再生時間と比べて、2~4割以上も駆動時間が延びている。これは非常に大きな差である。 ●液晶パネルでの効果が大きいMovie EffectorII
また、ノートPCでDVD-Videoを再生すると、CRTなどに比べて、色や明るさが見劣りすると感じられることがある。しかし、WinDVD Platinum 5に搭載されているマルチビデオエフェクト機能の一つ「Movie EffectorII」を使えば、暗く見えがちの液晶パネルでも、明るく自然な画質での表示が可能になる。Movie EffectorII(表記はムービーエフェクター)以外にもシネマエンハンスメントやヴィンテージ、ネガティブ、シャープネスといった合計7種類のエフェクトが用意されており、複数のエフェクトを同時にかけることもできる。マルチビデオエフェクト機能は、画面を縦に二つに切って右半分だけにかけるというハーフスクリーンモードも用意されているので、エフェクト無効時の画像との違いを比較する際に便利だ。
●移動中にノートPCでDVD-Videoを見たい人にはイチオシ
WinDVD 5は、DVDプレーヤーソフトとしての基本機能が充実しているだけでなく、独自のモバイルテクノロジーを装備しているなど、完成度の高い製品である。価格的にも手頃なので、コストパフォーマンスについても不満はない(旧バージョンや他社製品からのアップグレード/乗り換え版も用意されている。アップグレード/乗り換え版の標準価格は、Platinumが5,480円、Goldが3,580円となる)。 モバイルテクノロジー(先読みキャッシュ機能およびバッテリ最低限度の変更機能)によって、旧バージョンに比べると、大幅な再生時間の延長を実現しているため、移動中にノートPCでDVD-Videoを見る機会が多いという人には特にお勧めしたい。 □関連記事
(2003年8月8日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
|
|