●いよいよ見えてきたPlayStation 3のメモリ構成 次世代PlayStation(PlayStation 3?)に採用される次世代メモリ「XDR DRAM(Yellowstone:イエローストーン)」の正式なスペックと生産計画が発表された。XDR DRAMはRambusが開発した次世代メモリで、2.4~4Gtpsのピン当たり転送レートを達成する。XDR DRAMが登場する2005年時点では、最高速のDRAM技術となる。
Rambusやソニー・コンピューターエンタテインメント(SCE)は、まだPlayStation 3へのXDR DRAMの搭載を明言はしていない。しかし、多くのDRAM業界関係者が「PlayStation 3やCellプロセッサへのXDR DRAMの採用は、1年以上前から決まっていたこと」と証言する。市場性がはっきりしないこのXDR DRAMに、東芝、エルピーダメモリ、Samsung Electronicsと3社ものDRAMベンダーが製造に乗り出すことが、なによりの証拠だ。 また、DRAM業界関係者からの情報により、PlayStation 3に搭載されるXDR DRAMチップ数は4個以上であることがわかった。XDR DRAMの最初の量産チップの容量は512Mbit。そのため、PlayStation 3搭載メモリが4個だとすると、メモリ容量は256MBになる。 PlayStation 3に搭載されるXDR DRAMの転送レートはピン当たり3.2Gtps(Giga transfer per second)と見られる。4個構成の場合、システム全体のメモリ帯域は25.6GB/secに達する見込みだ。 今回、東芝、エルピーダ、SamsungがXDR DRAMの生産計画も明らかにした。その結果、副次的に、PlayStation 3の生産時期も明らかになった。XDR DRAMの本格量産が立ち上がるのは、2005年第1四半期なので、2005年前半にPlayStation 3が登場すると見られる。これは、XDR DRAMの立ち上げ時期には、PlayStation 3以外に大口のXDR DRAMのアプリケーションが存在しないためだ。逆を言えば、PlayStation 3に合わせた生産計画になっている。 また、東芝がXDR DRAMの市場予測を明らかにしたために、PlayStation 3の生産数量の予測も見えてきた。2005年の立ち上がり時期は月産数十万台規模だが、2006年には一気に増えて年間2,000~3,000万台弱の生産が見込まれているようだ。だとすると、SCEはPlayStation 3では、約1年の助走を経て、そのあとは一気に立ち上げる計画を持っていると推定される。
●PlayStation 3が見えるからXDR DRAMへと向かう 「現在、我々は次世代の(ゲーム)コンソールや関連テクノロジーの開発を行なっている。その中で(Rambusと)アライアンスをして、幾つかのテクノロジーの開発を進めている」 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の岡本伸一コーポレート・エグゼクティブ兼CTOは、先週開催されたRambus Developer Forum(RDF)で、このように言葉を選びながらRambusのテクノロジーとPlayStation 3の関係を示唆した。 もちろん、このスピーチだけでは、この日発表されたXDR DRAMが、PlayStation 3に採用されるのかどうかは分からない。ところが、カンファレンスのフロアーに行くと、誰もがXDR DRAMが次世代PlayStationに採用されることを前提に話をしている。DRAM業界ではこの件が周知の事実だからだという。 DRAMの世界は、PCやサーバーに使われるメインストリームのDRAM(Commodity DRAM)とその派生品が主流で、それ以外のDRAM技術はなかなか成功できない。XDR DRAMは、ゲーム機などのコンシューマグラフィックス、GPUのビデオメモリ、ネットワーク機器、デジタル家電をターゲットにする。しかし、「PlayStation 3以外ではXDR DRAMの市場はまだ規模が不鮮明。東芝やソニーがゲーム機以外の自社製品に使ってくるかもしれないが、当面は、PlayStation 3のためのメモリと言っていい」とある業界関係者は言う。逆を言うと、PlayStation 3が決まっていなければ、SCEと密接に提携している東芝以外は、XDR DRAM生産には踏み切れないのだという。 事実、昨年取材したあるDRAMベンダーは「Yellowstoneはネットワーク機器などには最適だが、その分野は意外と市場規模が小さい。開発コストを考えると、それだけでは参入できない」と言っていた。また、昨年夏、ある海外DRAMベンダーを取材した際には「Yellowstone(を製造するかどうか)は、PlayStation 3の生産計画次第だ。東芝1社でまかない切れないとすれば、Yellowstoneはやる価値がある」と聞かされた。 今回、東芝に加えてエルピーダとSamsungがXDR DRAMの生産計画を明確にしたことは、それだけXDR DRAMの需要(=PlayStation 3)が見えてきたことを意味している。
●搭載DRAM個数が増えるPlayStation 3 DRAMベンダーがそれなりにXDR DRAMにやる気を出している理由は、PlayStation 3でメモリの需要がPlayStation 2よりも増えることも大きいという。「PlayStation 2よりもPlayStation 3の方が搭載するDRAMチップ数が多い。だから、端的に言って、DRAMベンダーにとって参入チャンスがある」とあるDRAM業界関係者は語った。 このDRAMチップ数については、複数の業界関係者が似たようなことを言っている。そのため、PlayStation 3は、PlayStation 2のRDRAM数(2個)を上回る、4個以上のXDR DRAMを搭載すると見られる。以前このコーナーで2個と推定したが、それは間違っていた。8個になるとさすがにゲーム機には高コスト過ぎるため4個だと思われる。実際、ある業界関係者は4個だと言っている。 また、あるDRAM業界関係者は「今回は、(SCEが)最初からマルチベンダーを強く求めてきた」と内情を明かす。RDRAMは当初は東芝ワンソースだったが、あとからSCEはマルチソースにした。SCEがXDR DRAMでマルチソースを望んでいるのは、メモリ搭載量が増えたこと以外に、RDRAMとXDR DRAMのポジションの違いが影響していると見られる。 RDRAMはPlayStation 2に採用された時点ではPCのメインメモリとして主流DRAM技術になる見込みがあり、多くのメーカーが採用すると見られていた。そのため、セカンドソースは得やすい状況にあった。実際、PlayStation 2のチップ「Emotion Engine」が最初に発表された「1999 ISSCC」でのQ&Aで、なぜRDRAMを使うのかという質問に対して、SCE側はRDRAMがPCでの標準メモリになるからだと答えていた。つまり、もともとSCEはメモリ採用では、広いソースから入手できることも重視していたわけだ。 ところが、XDR DRAMはPCメインメモリのような大きな市場はまだ見えない。昨夏の段階では、まだXDR DRAMベンダーは東芝一社しか見えていなかった。もし、東芝1社しか生産しないと、PlayStation 3の出荷が伸びた場合には、供給不足が発生する可能性がある。そのため、複数ソースの保証を求めたと考えられる。 ●256MBのXDR DRAMを搭載、メモリ帯域は25.6GB/secへ PlayStation 3がXDR DRAMを4個搭載するとなると、メモリ帯域とメモリ量は簡単に計算できる。XDR DRAMは、2.4/3.2/4Gtpsの3スピードビンで登場する。しかし、実際にはターゲットとなるのは3.2Gtpsで、立ち上がりではフルに全チップを3.2Gtpsには持っていけない可能性があるため2.4Gtpsのスペックもあると推定される。 各DRAMベンダーが製造するXDR DRAMは、32M×16構成の512Mbit品。データ線はポイントツーポイントの接続になる(アドレス線はバス型)ため、4個搭載するとしたら64bitのメモリインターフェイスとなる。そのため、3.2GtpsのXDR DRAMを使うと、3.2Gtps×64bit=約25.6GB/secのメモリ帯域となる。 同時期のデスクトップPCは、デュアルチャネルDDR2-533からDDR2-667への移行期。帯域は8.5~10.7GB/secとなる。つまり、PlayStation 2ではメモリ帯域は同時期のPCと同等だったのが、PlayStation 3ではPCの2.x倍になるというわけだ。ちなみに、PlayStation 2の3.2GB/secと比べると約8倍となる。 このメモリ帯域の向上は、Rambusのプレゼンテーションでも裏付けられる。「エンターテイメントプラットフォーム、メモリサブシステムでは、5年置きに10倍のメモリ帯域幅が必要となる。Nintendo64では0.5GB/sec、次(PlayStation 2)が3.2GB/secで、さらに今後も進展する」とRambusのDave Mooring社長はゲーム機のメモリのトレンドを語った。つまり、言外に、次のゲーム機ではRambusの技術で10倍程度の帯域を実現できることを示唆したわけだ。5年で10倍のトレンドだとすると、25.6GB/secのメモリ帯域はほぼ合う。
ただし、5年で10倍の帯域拡大は、DRAMの高速化ペースを越えている。そのため、世代ごとにメモリインターフェイス幅とDRAMチップ数も増やさなければならない。Rambusのソリューションでは、Nintendo64では1チップのRDRAMだったのが、PlayStation 2では2チップのDirect RDRAMになり、おそらくPlayStation 3では4チップのXDR DRAMになると推測される。 これは必然的にメモリ搭載量の増大も意味する。PlayStation 2では128Mbit品のRDRAMが2個で32MBのメインメモリだった。それに対して、PlayStation 3ではXDR DRAMが512Mbitで立ち上がるため、4個で合計256MBのメインメモリとなる。 このように、RDFでの発表と周辺情報から、PlayStation 3のメモリ構成はかなり見えてきた。しかし、それ以上に面白いのは、DRAMベンダーの計画から、PlayStation 3のスケジュールと生産計画も透けて見え始めたことだ。これについては、次にレポートしたい。 □関連記事【7月10日】Rambus、次世代DRAM技術Yellowstoneの正式名称を発表 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0710/rambus.htm 【5月29日】【海外】SCEIのPlayStation 3の心臓「Cell」の正体 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0529/kaigai01.htm 【2002年7月4日】【海外】Rambusが次世代RDRAM技術「Yellowstone」の概要を発表 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0704/kaigai01.htm 【2002年3月28日】【海外】PlayStation 3のグラフィックスチップはこんな構成になる http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0328/kaigai02.htm (2003年7月14日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
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