VIA PT800とSiS648FXを試す
~シングルチャネルP4チップセットの存在意義とは?



VIAのシングルチャネルPentium 4チップセットのPT800

 チップセットベンダのVIA Technologiesは、Intel製CPUのバスライセンスに関する合意後、初めてのIntel向けチップセットとして、PT800をリリースした。PT800は、新たに800MHzのシステムバスをサポートし、DDR400も正式にサポートされている。

 また、SiS(Silicon Integrated Systems)も、SiS648を800MHzシステムバス、DDR400に対応させたSiS648FXをリリースしており、ここに来てサードパーティの800MHzシステムバスをサポートするチップセットが出そろいつつある。本レポートではそうしたPT800、SiS648の2製品のパフォーマンスを探っていきたい。



●800MHzシステムバスとシングルチャネルDDR400をサポートするPT800

 今回VIAが発表したPT800は、以前VIAがリリースしていたP4X400の後継となる製品だ。P4X400では、システムバスが533MHz、メモリがDDR333、グラフィックスがAGP 8Xとなっていたが、PT800ではシステムバスが800MHzに引き上げられ、メモリはDDR400に対応している。メモリのチャネル数は、引き続きシングルのままで、システムバスとメモリがグレードアップされた以外は、基本的にはP4X400のアップデートバージョンだと考えていいだろう。

 SiSのSiS648FXは、SiS648のバージョンアップ版となる。PT800と同じように、800MHzのシステムバス、DDR400をサポートしており、ほぼPT800の対抗製品と言うことができる。ただ、サウスブリッジはSiS963であり従来製品とほぼ同じで、Serial ATAコントローラは内蔵していない。まもなく、SiSは次世代のサウスブリッジとしてSiS964をリリースする予定になっており、そちらではSerial ATAをサポートする予定となっている。


●Serial ATAやRAID機能を標準でサポートするVT8237

 これに対して、サウスブリッジが従来製品のVT8235からVT8237へとバージョンアップされたPT800では、標準でSerial ATAがサポートされる。

 VT8237のSerial ATAコントローラの特徴は、最大で4デバイスまでサポートできることだ。IntelのICH5が最大で2デバイスであるのに比べるとスペック上では上回っていると言える。

 ただし、内蔵されているPHY(物理層)は2つのみとなっており、標準では2デバイスしか利用できない。4デバイスを利用可能にするにはPHYを追加する必要があるため、マザーボードベンダレベルの実装では2デバイスサポートのみとなる可能性が高い。

 また、VT8237ではRAID機能が標準でサポートされる。IntelのIntel 875P/865ファミリーではオプションでRAID機能をサポートすることが可能だが、VT8237では特に追加投資なくRAID機能が実現できるため、マザーボードベンダは標準でRAID機能を搭載してくる可能性が高い。サポートされるのはRAID 0、RAID 1、RAID 0+1の3種類で、RAID 0+1を利用するにはハードディスクが4つ必要になるので、実際にはRAID 0とRAID 1が利用可能だと考えた方がいいだろう。

 RAIDの設定は、POST時の拡張BIOSユーティリティにより行なうか、OSが起動した後で利用できるユーティリティで設定することが可能だ。

新しいサウスブリッジのVT8237 PT800マザーボード上に用意されるSerial ATAのコネクタ VIA RAID Toolを利用することでRAIDの設定をWindowsから行なうこともできる他、BIOSセットアップの画面からも設定可能


●Intel 875Pのシングル構成をほぼ上回るPT800

 それでは、ベンチマークプログラムを利用して、PT800、そしてSiS648FXのパフォーマンスを確認していこう。

 今回テストに利用したのは、PT800搭載マザーボードがVIAリファレンスのVT8248B、SiS648FXがASUSのP4S800という2製品で、いずれも現時点での両チップセットのリファレンスと言えるマザーボードだ。

 比較対象として用意したのは、Intel 875P+デュアルチャネルDDR400、Intel 875P+シングルチャネルDDR400、さらにIntel 850E+PC1066、E7205+デュアルチャネルDDR266、P4X400+DDR400、SiS655+デュアルチャネルDDR333という構成で、マザーボードとメモリ以外は基本的には同じ構成になっている。

 ただし、Intel 850E、E7205、P4X400、SiS655はシステムバスが533MHzまでしか設定できないので、CPUにはPentium 4 3.06GHzを利用している(800MHzに設定可能なチップセットはPentium 4 3GHzを利用している)。

 結果はグラフ1~グラフ5の通りで、環境は以下の通りだ。

【テスト環境】
チップセットIntel 875PIntel 875PIntel 850EE7205P4X400PT800SiS648FXSiS655
マザーボードIntel D875PBZIntel D875PBZIntel D850EMVRGIGA-BYTE GA-8INXPVIA P4PB 400VIA VT8248BASUS P4S800GIGA-BYTE GA-8SQ800 Ultra
チップセットドライバIntel 5.00.1012Intel 5.00.1012Intel 5.00.1012Intel 5.00.1012Hyperion V4.47Hyperion V4.47SiS AGP V1.16SiS AGP V1.16
メモリDDR400/2chDDR400/1chDirect RDRAM/2chDDR266/2chDDR333/1chDDR400/2chDDR400/1chDDR333/1ch
メモリモジュールPC3200(3-3-3)PC3200(3-3-3)PC1066-32PC2100(2.5-3-3)PC2700(2.5-3-3)PC3200(3-3-3)PC3200(3-3-3)PC2700(2.5-3-3)
容量512MB
ビデオチップATI RADEON 9700 PRO(325MHz)
ビデオメモリ128MB(DDR SDRAM/620MHz)
AGP Aperture Size256MB
ビデオドライバATI CATALYST 3.0 6.14.01.6255
標準解像度1,024×768ドット/32bitカラー/85Hz
サウンドYMF-754R
EthernetIntel PRO/1000 MT Desktop Adapter
ハードディスクIBM IC35L040AVVN07-0(40GB)
光学ドライブTEAC DV-516E
フォーマットNTFS
OSWindows XP(英語版、SP1、DX9)

■ベンチマーク結果

【グラフ1】ScienceMark V2 メモリ帯域幅 【グラフ2】SYSmark2002/Office Productivity

【グラフ3】TMPGEncフレームレート 【グラフ4】3DMark2001 Second Edition 1024x768ドット 32bitカラー(DXTC有効)


【グラフ5】FINAL FANTASY XI Official Benchmark


■Photoshopのフィルター実行時間
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0711/photoshop.htm

 グラフ1はScienceMark V2を利用したメモリ帯域幅の実効レートを計測するテストだ。帯域幅が6.4GB/secに達するデュアルチャネルDDR400をサポートするIntel 875Pが飛び抜けているが、その次にPT800が来ている。ただ、Intel 875PのシングルチャネルやIntel 850Eなどとの差はほとんどないと言ってよく、平均点をクリアしているという言い方が無難だろう。

 グラフ2~5は実際のアプリケーションなどを利用したベンチマークだが、PT800は、グラフ4の3DMark2001 Second Editionの結果を除き、Intel 875Pのシングル構成を上回っている。Intel 850EやE7205との比較でも、多くの項目で上回っており、Intel 875Pという最新世代のデュアルチャネルチップセットには劣るものの、従来のデュアルチャネルチップセットは上回り、シングルチャネルのチップセットの中ではトップクラスというのがPT800の位置づけということになるだろう。

 SiS648FXに関しては、TMPGEncのエンコードテストのフレームレートがやや低いのが気になるが、それ以外の項目ではPT800に匹敵するパフォーマンスを発揮しており、DDR400対応や800MHzシステムバス対応の効果があることを伺わせている。


●シングルチャネルとしては高い性能を発揮するPT800とSiS648FX

 以上のように、PT800、SiS648FXは、シングルチャネルとして見れば、Intel 875Pに匹敵するような処理能力を発揮する。ただ、Intel 875Pのデュアルチャネルとの比較では明らかに劣っており、絶対的なパフォーマンスが重要視される自作市場ではやや厳しい存在といっていいだろう。

 ただ、シングルチャネルのみのサポートとなっていることもあり、マザーボードの価格としてはデュアルチャネルマザーボードよりはやや安価に設定されそうだ。例えば、SiS648FXを搭載しているASUSのP4S800は12,000円弱と、同じASUSのIntel 865PE搭載のP4P800が16,000円弱となっているのに比べて4,000円ほど安価になっている。この4,000円という差を大きいと見るか、小さいと見るかは人それぞれだが、800MHzのシステムバスのPentium 4を利用して、とにかく安価にPCを自作したいというユーザーであれば選択肢に入れてもいいだろう。

 また、VIAのPT800は、SiS648FXとほぼ同じ価格帯であることが予想されながら、Serial ATAやRAID機能が標準で利用できることは強みであると言える。そうした意味で、Pentium 4プラットフォームで、低価格にSerial ATAやRAIDを利用したいというユーザーであれば今後登場するPT800を搭載したマザーボードを検討してみるといいだろう。

□関連記事
【7月8日】VIA、HTテクノロジに対応したPentium 4用チップセット「PT800」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0708/via.htm

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(2003年7月11日)

[Reported by 笠原一輝]


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