元麻布春男の週刊PCホットライン

デジタルカメラを買い足した理由



●筆者にとってのデジカメとは

 筆者にとってデジカメは、第一義的には仕事のツールだ。あえて「道具」と呼ばなかったのは、仕事の道具としてのカメラで撮った写真をメシのタネにしているわけではないから。

 “ツール”を日本語に訳せば“道具”になるのだから自己矛盾のようにも思えるのだが、何というか「道具」と呼べないちょっとした引け目が「ツール」という言葉に込められていたりもする。過去には仕事として写真を撮っていたこともあるのだが、それは遠い昔の話だ。

 もちろん、プライベートでまったく写真を撮らないというわけではない。たとえば旅行に持参したり、ペットの写真を撮ったり、というくらいには利用する。が、写真を撮る行為そのものが趣味かと言われれば答えはノーだし、カメラを収集することもやはり趣味ではない。

 筆者が撮る仕事の写真は大きく2つにわけられる。1つは、取材やイベントの時に携帯し、あとから原稿を書く際の参考とするための「メモ」としての写真、そしてもう1つは筆者が書いた原稿の添え物? としての写真だ。前者はたとえば、IDFなどのイベントでスクリーンに映し出されたスライドの写真だったり、展示会場で撮った写真だったりする。後者は、テストのために借用したり、購入したりした機材を自宅で撮影する、といったものだ。時に前者が後者に化けることもあるが、あくまでも写真は筆者の仕事において二次的なものであり、脇役に過ぎない。

FinePix F401
 ここ最近、筆者が使ってきたのは富士写真フイルムのFinePix F401だ。すでに同社のラインナップでも1世代前のモデルになってしまったが、上で言う前者の使い方においてほとんど困らないため、今も使い続けている。メモ代わりの写真をディスプレイ上で見る分には、この200万画素機で十分だし、ストロボの焚けないことが多い室内でISO400やISO800といった高感度がそこそこ使え、AFもそれなりの速度が維持される点が重宝している。

 加えてバッテリの持ちが良いことも大きなメリットで、IDFなどに出かけても予備バッテリを使う機会がほとんどなくなった。F401の前に使っていたFinePix 6800zでは、バッテリがそれほど持たなかったため、光学式ファインダを使うことが少なくなかったが、F401になってから光学式ファインダを覗くことがほとんどなくなった。

 そこそこ小さいこと、AUTOで極端にホワイトバランスを外すことがないこと、激速とは言わないまでもストロボのチャージを含めてもそれなりにレスポンスが良いことなど、致命的な問題の極めて少ないカメラであることは確かだと思う。

 旅行先などでシャッターを押してもらうことも頼みやすいし、他人(特にあまりカメラや写真に詳しくない普通の人)にすすめても無難なカメラだ。ベストセラーを記録したのもうなづける。ちなみに筆者による普通の人の定義は、ストロボの自動発光を無効にできない人、だったりする。ストロボの強制発光ができるようなら、絶対“普通”ではない(笑)。

 だが、無難であっても、決して欠点がないわけではない。大きな問題の1つは、液晶ディスプレイであっても視野率、いわゆる「ファインダ」が100%でないこと(それでも6800zよりは改善されていると思うが)。特にマクロ域では視差が大きくなり、あまり寄れないこととあわせて、大きな弱点となっている。


●PowerShot A60を買った理由

PowerShot A60

 もう少しマクロの撮りやすいカメラがあれば、それに越したことはないなぁ、と考えていたら、たまたま立ち寄った量販店の期間限定割引の文字に惹かれ、ついキヤノンのPowerShot A60を買ってしまった。

 今更200万画素でもあるまい、という声も聞こえてきそうだが、メモやWeb用途ならこれで十分。本当は、メディアにCFを使うカメラを買いたくなかったのだが、今回は手元で余っていたCFメディアと単三型のニッケル水素電池を使いまわすことも1つの目的だったので、目をつぶることにした。キヤノンのデジカメを使うのはPowerShot S10以来だからずいぶんと久しぶりだ。

 今回、PowerShot A60を買った理由の1つは、コストパフォーマンスの高さが期待できたことである。その代表がDIGICと呼ばれる信号処理プロセッサ(映像エンジン)だ。現在キヤノンは、DIGICを下はA60から上はEOS 10Dまで、幅広い製品に採用している。一番下のA60であればこそDIGICの性能をもっとも安価に享受できるだろうからだ。もちろん、同じDIGICといっても、A60のDIGICとEOS10DのDIGICでは、CeleronとPentium 4くらいの差はあるかもしれないが、基本的な絵の傾向は共通している。

 これをもって、安かろうが高かろうが同じ絵、と評する人もいるようだが、筆者は必ずしもそうは思っていない。デジカメの画像がCCDだけで決まらないように、デジカメの画像は映像エンジンだけでは決まらない。光学系など重要な要素はほかにもある。

 銀塩カメラだって、オートボーイで使おうがEOS-1で使おうが、コダクロームはコダクロームであって、カメラが変わったからといって突然ベルビアになるわけではない。オートボーイで撮ったコダクロームとEOS-1で撮ったコダクロームは、同じフイルムであっても、完全に同じ写真にはならない。

 これまでデジカメでは、同じメーカーでも機種が違うと、全く違う傾向の絵作りが行なわれて驚くことも少なくなかった。DIGICを搭載したことで、キヤノンのデジカメはベースとなるフイルムが統一された、という風に受け止めており、完成度が1段階あがったように思っている(DIGICの絵が好きか嫌いかは、もちろん個人差があることだろうが)。

 そして、こうした共通化で最も恩恵を受けるのが、最下位モデルであるA60なのは間違いないところだ(コストパフォーマンスだけを考えれば、Pentium 4よりCeleronの方が高いのと理屈は同じ。絶対的なパフォーマンスはまた別の話だが)。A60は、ローエンドの入門機としてはマニュアルモードをはじめ撮影モードが充実しているが、これも上位モデル用に開発されたチップやファームウェアの流用が前提にあるハズで、その点でもコストパフォーマンスは高い(このクラスでフォーカスも含めたフルマニュアルが必要か、という疑問もないわけではないが、特定の機能を削る方がかえってコストアップになる、という事情はあるかもしれない)。

 そういう意味では、真ん中の機種より、上か下の方が買いやすい(割り切りやすい)気もするが、こればっかりは用途にもよる。Webなどディスプレイで見るか、せいぜい2L版程度でプリントする筆者には、下位モデルで十分だが、ぜひA4版でプリントしたい、と思っているのなら、それなりの画素数を持ったそれなりの価格のカメラを購入する必要があるだろう。それに絵作りをおいておいても、一眼レフであるEOS 10Dでは撮影可能で、A60では絶対に撮れないシーンというものが必ずある。それは、レンズが交換可能なことによる画角の違いだけでなく、ストロボやフィルタなどのアクセサリによるもの、シャッターレリーズラグの違い、あるいは適応可能な感度範囲など、さまざまな要件で決まるものだ。

 ただ個人的に一眼レフタイプを買おうと思わないのは、すでに銀塩の時代に、一眼レフを止めた経緯があるからだ。荷物がかさばるのがイヤで、一眼レフからコンタックスGに切り替えたのは、銀塩時代の末期のこと。デジタルになったからといって、一眼レフに戻るのはイヤだし、そもそも今のデジタル一眼レフは、当時使っていた銀塩の一眼レフより大きく重い。あの頃より確実に年齢を重ねた今、あの頃より重いカメラは勘弁して欲しい。

 というわけで購入したA60だが、おそらくこのカメラを持って外に出ることはほとんどないだろう。外出用には、壊れでもしない限りF401を使い続けるつもりだ。それがあるから、電源が単三電池4本で重いことも、パステルカラーでオジさんにはちょっと気恥ずかしいデザインも気にならなかったのである。

 ただ、A60による撮影は、まだ修行中というところで、どうも露出を読み違えることが多い。最近、このコラムに添えられる写真がバラついていると感じたとしたら、それはきっとこれが理由だ。

PowerShot A60作例 FinePix F401作例

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【2月28日】キヤノン、新デザイン/5点測距AFの低価格PowerShot 3機種
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0228/canon3.htm
【2002年7月5日】フジフイルム「FinePix F401」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0705/hot208.htm

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(2003年7月2日)

[Text by 元麻布春男]


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