WWDC 2003前日レポート

次期Mac OS Xのプレビュー版配布。新ハードのお披露目も?


会期:6月23日~27日(現地時間)
会場:サンフランシスコ「Moscone Center」


落成したばかりのMoscone West。ガラス張りの外観が美しいコンベンションホールだ。従来のSouthとNorthが地下施設中心だったの対して、Westは地上施設が中心の構造になっている
 Apple Computerが開発者に対して、次期OSに関連する情報や技術情報などを開示するWWDC(Worldwide Developers Conference = 世界開発者会議)が、6月23日(現地時間)から開幕する。

 当初のアナウンスでは5月19日~23日の開催が予定されていたが、「次期Mac OS Xにあたる開発コードネーム“Panther”のプレビュー版を、より完成された形で参加者に配布するため」という理由で、およそ1カ月の延期が3月に発表されていた。

 それにともない、会場も例年のサンノゼからMacworld Conference&Expoの会場としてお馴染みのサンフランシスコ「Moscone Center」へと変更された。このMoscone Centerは数年来続いていた拡張工事を終え、従来のNorth、South両ホールに加えて、新たに「Westホール」が先日落成した。WWDCはこのWest側で開催されるということで、ちゃっかりとこけら落としの大規模イベントと銘打ったPRも行なわれている。

 WWDC 2003は、今年もスティーブ・ジョブズCEOの基調講演がオープニングとなる。ここ数年は開発者会議としての原点に帰る形でハードウェアに関連する新製品の大がかりな発表などは控えられ、Mac OS Xのバージョンアップを中心とした講演内容が続いていたが、今年はふたたび様変わりする可能性が高い。

 また、海外サイトを中心に、昨年10月のMicroProccessor ForumでIBMが仕様を公開した「PowerPC 970」を搭載する『PowerMac G5(?)』なる新製品が発表されるという観測が流れている。その背景には“Panther”が64bit対応のコードを含むのは、64bitプロセッサであるPowerPC 970をサポートするためというもっともな理由があるわけだ。

 もちろん後藤弘茂氏のレポートにもあるように、現状ではApple、IBMのどちらも口を噤んではいるものの、次期PowerMacのプロセッサとしてPowerPC 970が採用されるのはほぼ確定したロードマップだろう。新型PowerMacという形をとるかどうかは蓋を開けてみないとわからないが、何らかの形で関連した発表があるのは間違いないと予測される。

 もうひとつ例年と講演の傾向を異にする可能性の根拠としては、同社の各種イベントに対する取り組みの転換がある。米国で年二回開催されていたMacworld Conference&Expoは、ある意味で新製品を大々的にアナウンスするスティーブ・ジョブズCEOのオン・ステージであったわけだが、7月に予定されているNew York開催は紆余曲折のすえMacworldの冠こそ残ったものの、規模と方向性では大きな転換が行なわれた。

 Apple Computerによる講演も、主役のスティーブ・ジョブズCEOではなく、ハードウェア担当の(上級職ではない)副社長によって行なわれることが先日発表されている。少なくとも夏季のMacworldは、同社にとって最重要というべきイベントではなくなったわけだ。10月からの次期会計年度に向けた戦略の公開は、9月のApple expo Parisではやや遅く、時期的にも例年夏季Macworldに費やしていたリソースがこのWWDCへと注がれると考えるべきだろう。中には、ハードウェア、ソフトウェアともにこれまでにないほど多数のアナウンスがこのWWDCで行なわれるという見方もあるが、ことApple Computerの発表については、当日実際にリリースを目にするまでは本当のことがわからないと言うのが現実だ。

 WWDCのメインとなるセッションは現時点では内容が明らかにされていないものも含めて、23日午後から5日間にわたって100を優に超えるセッションが予定されている。これらのセッションは参加者と同社の間でNDA(Non Disclosure Agreement=機密保持契約)が結ばれている。プレス関係者も正規の参加申し込みを行なったうえ、デベロッパとしてこのセッションに参加しているため、個々のセッションの内容を記事として公開することができない。会期中は唯一、スティーブ・ジョブズCEOによる基調講演と、NDAに抵触しない製品情報のみを記事として紹介することになる。

 WWDCへの参加費用は、ひとりあたり1,595ドル(ただし参加者の多くは早期申し込みによる割引制度を利用しているため1,295ドル)で、この価格は“Panther”をはじめとする各種配布物やカンファレスバッグはもちろん、会場内での朝昼食、スナックやドリンクなどホスピタリティとして提供されるものなどが含まれたものだ。なお会場内ではAirMac(AirPort)による無線LANや、Ethernetの接続ポート、そしてインターネットカフェなど高速のネットワーク接続環境も提供されている。

 基調講演は、23日午前10時(日本時間、24日午前2時)から2時間程度行なわれる。また日本でも、有楽町の東京国際フォーラムを会場にして、同時通訳付きの基調講演の中継イベントが催される。PC Watchでは基調講演の現地レポートをはじめ、日本国内での情報も交えてWWDC 2003関連のニュースをお届けする予定である。

広々としたエントランスホールでは、事前登録者へのパスの交付が行なわれていた。すでに土曜日から交付が開始されていることや、来場者の多くが事前登録を終えていることで、身分証などの本人確認だけでパスが交付される。そのため、ほとんど混雑は見られなかった。写真左手奥には展示ホールが位置し、2階、3階には大小のカンファレンスルームが並ぶ。スティーブ・ジョブズCEOの基調講演は、3階の最も広いカンファレンスルームで開催される コンコースでは、いかにも何かありげな会場の準備が進んでいた。この様子から想像するに、ここには明日なんらかの垂幕が登場するのではないかと思われる 毎年デザインが楽しみなカンファレンスバッグ。今年は手提げとショルダーの2Wayで利用できるタイプだった。写真下に比較用の15型PowerBookを配置しているが、見てわかるとおり17型PowerBookでも余裕で入りそうな大きさだ。もちろん内部はクッション性のある素材が使われている。ほかに、バッグと同じエンボスのWWDC 2003タグが縫いつけてあるメモ帳とロゴ入りのペン、Tシャツ、カンファレンスガイドなどが主な配布物。ほかにいくつかの書類もあるが、NDAへの抵触を避けるため掲載していない

□Apple Computerのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□WWDC 2003のホームぺージ(英文)
http://developer.apple.com/ja/wwdc2003/
□WWDC 2003基調講演上映会のお知らせ
https://sec.apple.co.jp/regist/wwdc_keynote/
□関連記事
【3月24日】Apple、開発者向けイベントWWDCを6月に延期
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0324/apple.htm
【2002年10月21日】【海外】究極のMacintosh用CPU「PowerPC 970」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1021/kaigai01.htm

(2003年6月23日)

[Reported by 矢作 晃(akira@yahagi.net)]


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