会場:Jacob K.Javits Convention Center(米国ニューヨーク州)
CeBIT Americaは、IT業界のリーダー向けに最新のIT技術を紹介するというコンセプトで開催されている。しかし、その規模はと言えば、幕張メッセ級のホールが30近くもある、広大な会場で開催される本家CeBITに対して、CeBIT Americaはそれこそ幕張メッセの半分程度の面積の展示会場と、ややこぢんまりした印象だ。そうしたCeBIT Americaの展示会場の模様と注目製品などを紹介していこう。 ●昨年のPC EXPO/TECHXNYとあまり代わり映えのしない出展企業
CeBIT Americaの主催者は、前日に行なわれたメディア関係者向けのプレビューで、企業のCTOやIT担当者などが新しいIT技術を発表する場としての価値を高めていきたいと語り、COMDEXや昨年までこの時期に行なわれていたPC EXPO/TECHXNYとは一線を画したいと語っていた。 しかし、会場に出展している企業を見る限り、どうもその意図とは異なったショーになっているようだ。出展している企業は、昨年のPC EXPOとほとんど代わり映えがしない企業だし、出展している内容も、企業のIT向けソリューションというよりは、単体で動作する製品や、コンシューマ向け製品など、主催者が意図している方向とは違った展示が多かった。 また、コンシューマ向けだった従来のPC EXPOとは違う方針をとったことで、ソニーのようなコンシューマ向け製品中心の企業は出展しておらず、目玉が少ないショーとなってしまっている。 さらに、来場者の対象を企業のIT担当者としてしまったためか、来場者の数は明らかに昨年より減っている。実際、昨年のPC EXPO初日は多数の来場者でにぎわい、通路は来場者で埋まって通過するのに一苦労だったが、今年のCeBIT Americaの初日は、来場者が減っていた昨年のPC EXPOの最終日よりもさらに少ない来場者という印象だった。 初年度ということを考えると致し方ない面もあるが、このようにややちぐはぐな面も目立ったのは事実だ。そうした意味では、来年以降には何らかの方針転換を図るか、もう少し誘致する出展企業についても再検討した方がいいだろう。
●HPは15.4型のWUXGA液晶を搭載したCentrinoノートを展示
今回、CeBIT Americaの展示で最も力を入れていた企業の1つがHPだが、HPはブースにおいて初日に発表された2種類のノートPCを展示していた。1つは、昨日の記事で紹介したHP Compaq nc4000だが、それとは別にHP Compaq nx7000という製品も同時に発表している。 HP Compaq nx7000の最も大きな特徴は、液晶に15.4型のTFT液晶ディスプレイを採用していることだ。解像度はWUXGA(1,920×1,200ドット)、WSXGA+(1,680×1,050ドット)、WXGA(1,280×800ドット)の3種類が選択可能な、いわゆるワイド液晶が採用されている。 WUXGAの液晶ディスプレイはデルコンピュータからInspiron 8500やLatitude D800などがラインナップされており、nx7000もそうしたハイエンド向けノートPCの一種ということになるだろう。 プラットフォームはCentrinoモバイル・テクノロジに対応しており、CPUはPentium M 1.60GHz~1.30GHz、チップセットはIntel 855PM、メモリは256MBないしは512MBで最大2GB、HDDは30~80GB、光学ドライブはDVD+RW/+RドライブないしはDVD/CD-RWコンボドライブ、GPUはMOBILITY RADEON 7500(32MB)ないしはMOBILITY RADEON 9200(32/64MB)、100BASE-TXのEthernet、IEEE 802.11bに対応したIntel Pro/Wireless 2100という仕様になっている。価格はBTOになっており最小構成で1,699ドルから。すでにHPのWebサイトなどから注文可能になっている。
□ニュースリリース
●HPはTM5800ベースのシンクライアントを展示
HPはTransmetaのCrusoeをCPUとして利用しているシンクライアントを展示した。HP Compaq thin client t5700は、5月21日に発表されている製品で、OSはWindows XP Embedded。基本的にRDP(リモートデスクトップ)の機能を利用してPCに接続して利用したり、Internet Explorerを利用してWebベースのアプリケーションを利用する用途などに利用する。 CPUはTM5800 1GHzが採用されており、メモリは標準256MB、最大で512MB(DDR SDRAM)、ストレージとして192MBのROMとフラッシュメモリを最大で512MBまで増設可能となっている。背面にはEthernet、オーディオ入出力、USBポート、シリアル、パラレルなどのポートが用意されていた。 液晶ディスプレイと比べてもわかるように、非常に小さく、ちょっとした小型デスクトップPCのような形だ。これにHDDを入れて出荷すれば日本などの市場で受けそうな気がするが……。
□ニュースリリース
●VIA TechnologiesはC3ベースの超小型PCを展示
VIA Technologiesは同社のブースにおいて、C3を搭載した超小型PCを展示した。Nimble MicrosystemsのNimble V5という製品で、VIAのC3 667MHz、20GB HDD(2.5インチ)、256MBメモリ、Apollo CLE266(グラフィックス内蔵)というスペックになっており、スペックはこうした超小型PCとして標準的なものだ。 ユニークなのは、インスタントメッセンジャーの利用を前提としていることで、前面には大型のスピーカーとマイクが用意されている。また、基本的に2台目としての利用を前提としており、本体の内部にディスプレイとキーボード、マウスの切り替えスイッチが内蔵されている。 1台目のPCのキーボード、マウス、ディスプレイのコネクタをNimble V5のポートに接続することで、Nimble V5の前面にあるスイッチを利用して切り替えることができるのだ。つまり、現在持っているデスクトップPCにそのままもう1台追加することができるというわけだ。 予想小売り価格は699ドル(1ドル120円換算で、約84,000円)で、今年の後半には出荷を予定しているという。なお、日本での販売は未定で、現在代理店を募集中であるということだ。
□Nimbleのホームページ
●3ComやメルコがIEEE 802.11g対応のアクセスポイントを展示
IEEE 802.11委員会により、IEEE 802.11gの規格が正式に策定されたことを受けて、CeBIT Americaでもいくつかのベンダが11gに対応した製品を展示していた。 別のレポートでも紹介したように、HPは11a/b/gないしは11b/gに対応したノートPCを発表したが、それ以外にも3Comとメルコが11gに対応した製品を展示していた。 メルコの子会社であるBUFFALO TECHNOLOGYが発表したのは、日本では未発表のUSB対応802.11gアダプタであるWLI-USB-G54と、ブリッジステーションのWLA2-G54の2製品で、いずれもIEEE 802.11gに準拠している。 WLI-USB-G54はUSBケーブルでPCに接続し、アクセスポイントなどに接続するのに利用できる。54Mbpsという帯域幅に対応するため、USB 2.0に対応する。USB 2.0に対応しているPCで利用した場合にはUSBがボトルネックになることなく利用できる。WLA2-G54は、ネットワークの両側で利用することで、2つのネットワークを接続できる製品。 なお、いずれの製品もIEEE 802.1x、WPA(Wi-Fi Protected Access)に対応しており、セキュリティの点でも最新の仕様となっている。 出荷はいずれも7月の予定で、WLI-USB-G54の予想小売り価格は179ドル、WLA2-G54は149ドルとなっている。
□CeBIT Americaのホームページ (2003年6月20日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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