会場:San Mateo Marriottホテル PalmSource Developer Seminarの最終日となる7日(現地時間)、次期OS「Palm OS 6」の概要が公開された。 ■アプリケーションソフトもARMネイティブに
カンファレンス編でもお伝えしたように、Palm OS 6の大きな変更点はARMコードで作られたアプリケーションソフトが使えるようになることだ。 Palm 0S 5では、対応プロセッサが68000アーキテクチャからARMアーキテクチャへ変更された。だがPalm OS 5は、OS自体はARMコードで記述されているものの、その上に68000プロセッサのエミュレータ環境であるPACE(Palm Application Compatibility Environment)が動いており、動作するアプリケーションは、すべて68000コードで記述されたものだけに限られていた。 速度の必要な処理の場合、ARMコードで記述した一種のライブラリ(ARMletと呼ばれる)を呼び出すことはできたが、あくまでも本体アプリケーション自体は68000コードで作られていなければならなかった。 このような構成になったのは、従来のPalm OSがマルチタスクやメモリ保護といったOS機能を提供していなかったため、ネイティブARMコードを使ったアプリケーション環境は従来の環境と大きく違ったものにならざるを得ず、そのためのデザインと準備期間を作る必要があったのだ。また68000とARMでは、メモリやレジスタ内部での数値の並び(エンディアン)が違うため、これを解決するための開発期間が必要だったということもある。 ■メモリの制約から解放 Palm OS 6では、ARMネイティブコードによるアプリケーションが実行できるようになるが、このアプリケーションに関してメモリ保護やプロセスの独立性などが提供される。またこれに伴い、従来あったさまざまな制限(リソースサイズが最大64KBだったこと、グローバル変数に関して制限があったことなど)が解除され、あまり制約無くアプリケーションを作ることが可能になる。 Palm OS 5のPACE上では、アプリケーションはいわばOSから呼び出される「大きなサブルーチン」のような形になっており、プロセスとして独立していなかった。また、アプリケーションが実行時に利用するメモリ(ヒープ領域)は1つしかなく、ほかの部分は通常のコンピュータでいう「外部記憶」としてデータベース領域として使われていた。そのため、他のアプリケーションを一時的に呼び出して使うといったことを行なうには、1つしかないヒープ領域を明け渡すなど複雑な手順が必要だった。 Palm OS 6では、メモリ保護やプロセスの独立性など、最近のOSがアプリケーションに対して提供している機能をようやくARMネイティブコードプログラムに対して提供できるようになるわけだ。なお、PACEも引き続き提供され、この部分では従来との互換性が保たれる。
■データベースも使いやすく もう1つの大きな機能追加は、データベースに対してスキーマが導入され、他のアプリケーションからの利用が簡単になる点。Palm OSは、メモリの大部分をデータを格納する「データベース」として使っているが、このデータベースでは、レコード単位までの管理はOS側で提供されるものの、レコードの内部はアプリケーションが自分で解釈して使っていた。 スキーマの導入により、レコード内部のいわゆるフィールドまでがOSの管理下に入り、他のアプリケーションがデータベースレコードの物理的な構造を知らなくとも利用が可能になるほか、後からフィールドを追加してもアプリケーションに影響が出にくい(フィールドを介してデータにアクセスしていれば、新規フィールドの有無にかかわらず処理が可能)といったメリットが生まれる。 なお、標準で内蔵されるPIMアプリケーションが、このスキーマを使ったデータベースに対応する予定だ。 そのほか、従来行なわれていた表示用メモリ(スクリーンバッファ)に対するアクセスが禁止される代わりに、ハードウェアアクセラレータなどに対応が可能になる。また、ユーザーインターフェースコンポーネントにも変更があるようだ。
■搭載製品は2004年初め?
Palm OS 6はまもなくβテストが開始される予定で、今年の秋には、ライセンシーに対して最終コードが提供されるという。実際にPalm OS 6を搭載した製品がいつ出るのかについては、その後のライセンシーの作業次第になる。Palm OS 5では、PalmSourceが2002年6月にライセンシーへの出荷開始を発表、同年10月にソニーが最初のPalm OS 5搭載マシンを発表している。実際の作業期間などは不明だが、3~4カ月程度で製品出荷にこぎ着けたわけだ。 それから想像すると、今年9月(PalmSourceの表現は秋)にPalm OS 6の出荷が開始されたとして、ビジネスを考えると年末ぎりぎりに発表、出荷ということはないだろうから、製品の出荷は2004年に入ってから、と推測される。開発が順調なら、2004年1月のCESあたりで製品が披露されるかもしれない。 Palm OS 6で、PalmOS機は本格的にARMアーキテクチャへの移行を開始することになる。Palmが299ドルでARMアーキテクチャのPalm OS 5搭載機を提供しはじめたように、おそらく来年は、ほとんどの機種がARMアーキテクチャに移行することになるだろう。 □PalmSourceのホームページ(英文) (2003年5月9日) [Reported by 塩田紳二]
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