WinHEC 2003 ビル・ゲイツ氏基調講演レポート


Itanium 2とOpteronでWindows XP 64-Bit Editionをデモ


Microsoft会長兼CSAのビル・ゲイツ氏
会期:5月6日~8日(現地時間)
会場:Morial Convention Center

 ハードウェアエンジニア向けカンファレンスであるWinHECが、5月6日から3日間(現地時間)にわたり、米国ルイジアナ州ニューオリンズにおいて開催されている。初日となる本日は、Microsoftの会長兼CSA(チーフ・ソフトウェア・アーキテクト)のビル・ゲイツ氏による基調講演などが行なわれた。

 この中でゲイツ氏は、開発コードネームAthens(アテネ)で呼ばれてきた先進的なPCのプロトタイプや開発コードネームXeel(シール)で呼ばれてきたクロスプラットフォームのコントローラインターフェイスなどを公開した。


●HPと共同開発された“Athens”、新コントロールインターフェイス"Xeel"をデモ

デモで利用されたAthens(アテネ)。大型の液晶ディスプレイにBluetoothのハンドセット、USBカメラがついており、CPUなどが内蔵されている本体とは1本のケーブルで接続されている
 ゲイツ氏は基調講演の中で、“Athens”と呼ばれるHewlett-Packard(HP)と共同で開発した新しいコンセプトPCを公開した。

 Athensは、USB接続されたカメラとBluetoothで接続されているコードレスハンドセットが取り付けられた大型ワイド液晶部と、CPUなどが内蔵されているPC本体の部分から構成されており、両者の間は1本のケーブルでのみ接続されているという。このAthensを利用して、メッセンジャー経由で電話がかかってくると、Bluetoothのハンドセットで応答したり、付属しているカメラを利用して動画メールを作成して送るなどのデモが行なわれた。

 ゲイツ氏は「エンドユーザーのコンピューティング体験をよりよいものとするために、ソフトウェア業界とハードウェア業界が協力して新しい波を引き起こす必要がある。Athensはそのよい例だと言える」と述べ、今後もMicrosoftがハードウェアベンダと協力してPCの改革を行なっていくということを強調した。

 また、このほかゲイツ氏は“Xeel”と呼ばれる新しいコントロールインターフェイスの仕様を公開した。これはタブレットPC、Pocket PC、スマートフォン、スマートディスプレイ、SPOTなどの各デバイスで、オーディオ再生などのボタンの構成を共通化することで複数のプラットフォームで同じ操作性で操作できるようになるというメリットがあるという。

LongHornと思われる次世代Windowsがインストールされており、動画メールなどが当たり前の機能となるという Xeelを説明するスライド。要するに複数デバイス間で操作性を同じにするという試み


●ItaniumとOpteronでWindows XP 64-Bit Editionをデモ

Itanium 2を利用したデモ。64bitアプリケーションを利用して高解像度の画像を快適に拡大・縮小することが可能となるという
 またゲイツ氏は、同社が開発中の「Windows XP 64-Bit Edition」について触れ、「今年、高い処理能力を持つ、複数の64bit MPUで動作するWindowsを見ることができるだろう。これらはサーバーやハイエンドワークステーションをサポートし、16bitから32bitへ移行する以上にスムーズに移行が行なわれることになるだろう」と述べ、同社が計画しているWindows XPの64bit版へ移行することで、サーバーやワークステーションにおいてこれまでよりも高い処理能力を実現することができるはずだと強調した。

 ゲイツ氏の基調講演では、Itanium 2を搭載したHPのワークステーションであるZX 6000で動作しているIA-64版と、Opteron搭載機で動作しているAMD64版のWindows XP 64-Bit Editionによるデモが行なわれた。Itanium 2によるデモでは、高解像度の航空写真をリアルタイムに表示するデモを行なった。解像度は67,000×5,700ピクセルとなっており、10.8GBを超えるデータとなっている。それを思いのままに拡大したり縮小したりすることで、Windows XP 64-Bit Editionの64bitアプリケーションの処理能力の高さをアピールした。

 引き続き、AMD64版のWindows XP 64-Bit Editionを利用したデモが行なわれた。利用されていたのはOpteronベースのワークステーションで、これを利用して32bit版のMAYAでスターウォーズに登場するR2D2が描かれた3D画面を編集したあとで、Mental Imagesの64bitネイティブのレンダラーであるMental Raysを利用して高速にレンダリングするデモが行なわれた。さらに、32bit版のWindows Media 9を利用してスターウォーズに関するコンテンツ再生が行なわれるなど、32bitアプリケーションと64bitアプリケーションを同じプラットフォームで実行することができるメリットがアピールされた。

Opteronを利用したデモ。32bitアプリケーションのMAYAで3Dシーンを作成し、それを64bitのMetal Raysを利用してレンダリングするというデモ。32bitと64bitアプリケーションをシームレスに利用することをアピール


●明らかにOpteronとの組み合わせに重きが置かれていた64bit Windows XPのデモ

 今回Microsoftが行なったデモは、非常に大きな意味を持っている。エンドユーザーにしてみれば、3Dのデザインを行なうMAYAのようなアプリケーションは32bitでもさほど大きな問題ではない。しかも、そうしたMAYAのようなプロユースのアプリケーションは決して安価ではなく、従来のものがそのまま使えるというメリットはかなり大きい。

 しかし、性能面に大きな影響を与えるレンダラーだけを64bitにすることで、レンダリングにかかる時間を最小限の投資で削減することができる。

 今回Microsoftは、Itanium 2とOpteronの両方のプラットフォームでデモを行なったが、前者と後者の重みを考えると、明らかに後者のデモの方に重きが置かれていたように見えた。Microsoftは、Intelに対してプレッシャーをかけている印象だ。

 これまでの資産の保護や、32bitから64bitへの移行ということを考えれば、AMDのAMD64(開発コードネームx86-64)のようなアプローチが、IA-64に比べれば明らかにスマートであり、ソフトウェアベンダにとってもメリットがある。

 なお、今回ゲイツ氏は、Windows XP 64-Bit Editionをいつ出荷するのか、Opteron/Athlon 64版を正式にリリースするのかなどについては何も触れなかったが、すでに初日のレポートでも触れているように、WinHECの参加者には「Pre-Release」とかかれたOpteron/Athlon 64版のWindows XP 64-Bit Editionが配布された。今回公開されたWindows XP 64-Bit EditionのBuild番号はCeBIT時のBuild3754からBuild3790に上がっており、着実に前進していることを印象づけている。

□WinHEC 2003のホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/winhec/
□関連記事
【5月6日】【海外】Prescottは64bitアドレッシングを実装?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0506/kaigai01.htm
【3月17日】【Cebit】AMDがクライアント向け64bit版Windows XPの初期開発版をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0317/cebit06.htm

(2003年5月7日)

[Reported by 笠原一輝]


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