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EDEX2003 電子ディスプレイ展開幕
~新技術による付加価値創出の動きが目立つ

会場:東京ビッグサイト

会期:4月9日~11日

入場無料(登録制)



 電子ディスプレイの展示会「EDEX2003 電子ディスプレイ展」が9日、東京ビッグサイトで開幕した。業界関係者向け展示会のため、出展されているのはパネルやドライバICなどのデバイスがほとんどだが、フラットパネルディスプレイの最新技術動向を俯瞰できるイベントとしてPCユーザーにも注目される。

 全体的な傾向では、PCに関連する展示がその割合を減らしており、AV機器や携帯電話、カーナビなどのアプライアンス向け製品の割合が増えている。PC向け液晶においても、大型化傾向が一段落し、ワイド化、高精細化がやや進んでいるものの、目を見張るような新製品が展示されているわけではない。

 そんな中でも、実用化が進む有機ELディスプレイや、いくつかの新技術が展示されている。技術的な努力によってディスプレイに新たな負荷価値を付与する動きが見られ、PCユーザーもまだまだ注目すべきイベントと言える。

●最注目は東芝松下の「スキャナ付きディスプレイ」

 会場内で最も注目を集めているのが、東芝松下ディスプレイテクノロジーの「インプットディスプレイ」。低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイの画面に印刷物などを当てると、画面がそのイメージを等倍でキャプチャし、表示するというもの。データを表示するための機器であるディスプレイが、入力機器にもなるという新技術だ。

 インプットディスプレイは、パネル上にシリコンの回路を一体化するSOG(System On Glass)技術により、液晶画素の中にイメージセンサを仕込んである。このイメージセンサが画面に当てられた原稿を読み取るわけだ。

 展示されているのは320×240ドット(QVGA)、26万色表示可能な3.5型のインプットディスプレイで、キャプチャ機能は960×240画素、モノクロ64階調。会場を訪れた人の名刺など読み取る様子を実演していたが、名刺1枚を5秒程度でキャプチャし、表示していた。

東芝松下ディスプレイテクノロジーの「インプットディスプレイ」。一見ただのQVGA液晶だが…… 画面に名刺を当てて、ふたを閉めてキャプチャすると…… 画面にキャプチャした画像が表示される

 同社では携帯電話やカーナビ、PCなどにインプットディスプレイを装備し、掌紋などによる簡易認証や、バーコード読み取り機能などを実現することを提案している。また、いずれは解像度などを高め、高度な指紋認証機能などを実現したいとしている。

 実演で見た限りでは、液晶の画素とイメージセンサの画素が同居しているために、キャプチャして表示された画像はやや荒くなっていた。が、様々な応用が考えられ、将来が楽しみなデバイスではある。

 同社はインプットディスプレイのほかにも、SOG液晶を「衝撃・振動に強く、構造がシンプルで小型化・薄型化が容易」などとアピール。また、有機ELディスプレイも展示している。

□インプットディスプレイのニュースリリース
http://www.tmdisplay.com/tm_dsp/press/2003/03-04-03_j.htm

インプットディスプレイの概要 参考出品された10.4型UXGA液晶 3.5型有機ELディスプレイ

●CGシリコンと3D液晶で元気なシャープ

 韓国、台湾の安価で高品質なフラットパネルディスプレイ攻勢の中で、シャープは独自技術をアピール。パネル上にシリコン回路を形成する「CGシリコン技術」や、CGシリコン技術によりパネルと回路を一体化したシステム液晶、裸眼で3D画像を鑑賞できる3D液晶などをメインに展示している。

 同社は2002年10月のフラットパネルディスプレイ展「LCD/PDP International 2002」でも同様な内容で展示していたが、今回は実際にシステム液晶を採用した製品が多数追加されており、同技術の定着ぶりを見せつけた。

 また、FAや計測器などに使われる製品だが、マイナス10度~65度までの広い温度範囲で動作する「ストロング液晶」も展示。ラインナップは640×480ドット(VGA)表示可能な10型パネルと、800×600ドット(SVGA)表示可能な12型パネルとなっている。

入り口近くの横長ブースで派手な展示のシャープ CGシリコン技術の展示ではおなじみの、ガラス板上に形成されたZ80 CPUと、そのCPUを搭載したMZ-80C
システム液晶を搭載したオリンパスのμ-10 Digitalや、ペンタックスのOptio 33L。このほか、Viewcam Z VL-Z7/Z5、Zaurus SL-C700といった自社製品もシステム液晶採用製品として展示されている 新製品のXGA 7.1型システム液晶 3D液晶を搭載したMebius

●各社有機ELに注力、三洋は15型を展示

 ここ数年の電子業界をにぎわせている新技術が有機ELディスプレイ。表示が高品質なほか、視野角が広い、応答速度が高い、バックライト不要で消費電力が低い、薄型・軽量など、次世代ディスプレイとして注目を浴びている。が、まだ量産が始まったばかりの技術とあって、展示されているものは大きくても3.5型で、携帯電話やPDA、デジタルカメラ向けの製品ばかりだ。

 そんな中、三洋電機は2002年10月のLCD/PDP International 2002に続いて15型有機ELディスプレイを参考出品。前回よりも外観が洗練され、より小型になっている。

三洋電機の15型有機ELディスプレイ ちなみにこちらは2002年10月に展示された15型有機ELディスプレイ

●コダックは「有機ELの元祖」をアピール

 15型有機ELディスプレイを参考出品した三洋電機と合弁で、有機ELディスプレイの製造会社を設立したコダックは、世界初のアクティブ型有機ELディスプレイ搭載デジタルカメラ「LS633」を出品している。LS633は実機を手にとって操作できる状態になっており、多くの注目を集めていた。

 同社は会場で報道関係者向けのブリーフィングも開催、有機ELへの取り組みをアピールした。同社社長室の矢畑彰則室長は「有機ELの基本特許はコダックが開発した。フィルム、カメラと並び、有機ELディスプレイ事業についても、“有機ELの元祖”であることをアピールしていきたい」と述べ、有機EL事業への意気込みを語った。

 また、同社ディスプレイプロダクツ事業部の伊藤昌弘ディレクターはアクティブ型有機ELディスプレイの開発や量産での課題を解説、具体的な数値は明らかにされなかったものの、現在の歩留まりや製造コストはまだ芳しいものではなく、399ドルというLS633の価格は有機ELディスプレイのコストを度外視したものであることを明らかにした。

 ロードマップについては、当面は7型以下のモバイル向け製品を主流に取り組む姿勢を示した。将来は10型以上のPC用XGAディスプレイやHDTVへの応用も視野に入れているものの、当面の課題は高精細化、高効率化で、伊藤ディレクターも個人の見解として「液晶ディスプレイやプラズマディスプレイと共存していく」という見通しを明らかにした。

 LS633のディスプレイは有機ELのうたい文句どおり高品質だ。応答性のよさや視野角の広さも実感できる。カメラ自体のスペックや仕上げも魅力的で、日本での発売予定が無いのが大変残念に感じられた。

□関連記事
【3月5日】プロカメラマン山田久美夫のPMA 2003レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0305/pma02.htm

コダックのブースでは有機ELディスプレイを搭載したデジタルカメラ「LS633」を手にとることができる LS633
撮影画像を4倍で表示したところ。細部や立体感が表現される 同社の液晶搭載デジカメ(下)で同じ画像を表示してみた 視野角の広さも有機ELの特徴
同社のアクティブ型有機ELの構造 ロードマップ。高精細化、高効率化を目指す ディスプレイプロダクツ事業部の伊藤昌弘ディレクター

□EDEX2003のホームページ
http://edex-ess.jesa.or.jp/
□関連記事
【2002年4月16日】「EDEX2002 電子ディスプレイ展」開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0416/edex.htm
【2002年10月30日】LCD/PDP International 2002開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1030/lcd.htm

(2003年4月9日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]


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